宿幼決戦編 三十三章 開幕、宿幼決戦
午後七時半。
夜空が西華国から迫っていると界を渡って来たシゼルたちがミリア国にいる七陽の勇者に報告した。
七陽の勇者は"四柱結界"を展開するために巨大な柱に登る。
「本当に・・・この土地以外死んでしまうのか・・・」
黒鞘に納まった刀を握ったカスミは暗くなっていく空を見てそう言った。
「故郷へと帰れるようになった者たちが再び故郷を失う・・・考えるだけで胸が痛くなる」
黒鞘に納まった刀を握ったローラは階段を見ながらそう言った。
「私たちはこんな惨事を二度と許してはならない。そして、暗黒の元凶を逃がしはしない」
黒鞘に納まった刀を握ったアイリアは荒廃した地平線を見てそう言った。
「理恵さんはついに来なかった・・・だが、今やれることはこれしかない」
ローラは台座を見てそう言うと、黒鞘から最上大業物断暗万陽を抜いた。
三人の勇者はどうにかなれと願いながら台座に最上大業物を力強く突き刺した。
「伝わって来た・・・力が・・・」
アイリアたちはそう言うと、最上大業物を引き抜いた。
すると、台座から金色の炎が噴き出して結界が発動した。
発動されていないのは南側の結界だ。
「南側だけ発動されてない・・・」
桜は結界がない部分を見て焦りながらそう言った。
「外界探査に出てる七陽の勇者は?」
シゼルは桜を見て焦りながらそう言った。
「陛下じゃないんだ。そんなすぐに来れるもんか」
焦るグラディスはシゼルを見てそう言った。
「なにか来る!!」
ウェンディは南側の柱を見て大声でそう言った。
桜たちが南側の柱を見ていたその時、光る何かが南側の柱に降った。
南側の柱にある台座に途轍もない陽力を宿した最上大業物金輪爆が突き刺さり、爆発と共に金色の炎を噴き出して四柱結界が完全に発動した。
「この力・・・理恵さんの力じゃない!」
最上大業物断暗万陽を握ったローラは南の方を見てそう言った。
「きっと陛下じゃ!」
桜はウェンディとシゼルとグラディスを見て笑みながらそう言った。
「流石は陛下!」
シゼルとグラディスは四柱結界を見て笑みながらそう言った。
午後七時三十三分。
ミリア国と八隻の拠点艦に居る全ての神と人が各地の教会に集まった。
「皆で団結し、この危機を乗り越えましょう!」
聖職者たちは祈りながらそう言った。
生きとし生けるものたちは恐怖を打ち砕くために祈る。
「万象様と英雄たちに祈るのです!!」
ミリア大聖堂の教祖はステンドグラスを見て叫んだ。
ミリア国の住民たちは冷や汗をかきながら黙って祈りを捧げ続ける。
「・・・」
白梅は草原に座ると、地面に触れた。
すると、見る見るうちに銀月華が地面から生えて咲く。
「あ、あれじゃないか!?」
「噂の淑女は本当に居たんだ!」
商売籠などを持った者たちは白梅を見て笑みながら言った。
私はとっても孤独。
天陽は未だ顕現せず、人々は日を知らない。
今はただ一人、愛しの人を思う。
梨々香が神刀華炎を顔の横に真っすぐ構えると、神刀華炎が赫色の稲妻を放ち始めた。
そして、梨々香の髪が炎のように揺らめき靡く。




