宿幼決戦編 二十九章 器の内部に潜む者
同年、四月七日。
梨々香がノースドラゴニア残地のカルジェルドクレーターに降り立った。
「・・・」
梨々香はカルジェルドクレーターの土に触れるリベードリヒを見た。
「あの空間斬りの剣士は何者だ?」
リベードリヒは土を握りしめ、落としながら言った。
「八重 桜。天陽の舞第五幕、統一巡行に出てくる天陽神力を多量に吸って成長した八重咲の桜から取った名だろう」
梨々香は神刀華炎を生成して握ると、リベードリヒに向かって歩き始めた。
「・・・」
リベードリヒは振り向きながら青い神気で防護壁を作った。
神刀華炎を握った梨々香は青い神気を一刀両断した。
斬撃波を回避したリベードリヒは綺麗にバク転した。
しかし、着地した瞬間に猛追して来た梨々香が神刀華炎をリベードリヒに突き立て、リベードリヒは神刀華炎に刺された。
「グアァァァァ!!!!」
地面に倒れ込んだリベードリヒは目を見開き、神刀華炎が突き刺さった箇所に走る激痛に悶え、叫んだ。
リベードリヒは青い光になり、神刀華炎から脱出して逃げた。
「・・・やはりか・・・やはり君だったか・・・」
梨々香は神刀華炎の切先についた銀色の霜を見てそう言った。
「梨々香、」
アイリアは梨々香に駆け寄りながらそう言った。
「中央隊ベルコント班が宿幼討伐に向かった」
焦るアイリアは梨々香を見てそう言った。
「わかった」
梨々香はそう言うと、神刀華炎を消滅させた。
「アイリア」
梨々香はそう言うと、アイリアに何かを投げた。
アイリアは少し驚きながら投げられたものを受け取る。
「これって・・・」
アイリアはゼノクイーンネックレスを見てそう言った。
「私はこれからしばらくの間君たちのところに駆けつけられない。もしもの時は任せたよ」
梨々香はそう言うと、赤色の炎を纏って飛び上がった。
「・・・」
アイリアは決意したような表情でゼノクイーンネックレスを見つめる。




