レディフ・フィアンゼ編 八章 戦況が変わる時。
同年、九月二十三日。
みよりを乗せた飛行機がレムフィトのモントベルワーズビーチ空港へ到着した。
みよりを待っていたのは、東和連合の上層部二人とレムフィト支部の軍人四名とリリーだった。
「・・・」
東和連合の上層部とレムフィト支部の軍人はみよりを守る近衛兵と杖を突いて歩くみよりに敬礼していた。
「・・・」
リリーはみよりを見ていた。
「・・・おい!皇女陛下に敬礼しろ!無礼者め!」
リリーを三度見した東和連合の上層部1はリリーを見て小声で言った。
リリーの前まで歩いてきたみよりは驚くほどしっかりと背筋を伸ばし、リリーに敬礼した。
東和連合の上層部たちとレムフィト支部の軍人たちは敬礼するみよりに驚くと、冷や汗をかき、恐る恐るリリーを見た。
「初めまして。アーヴァン王族の末裔、立華 梨々香様」
みよりがリリーを見てそう言うと、東和連合の上層部たちとレムフィト支部の軍人たちの顔色が真っ青になった。
「・・・悪いが、アーヴァン式の返しはわからない」
リリーはみよりを見て笑みながら言った。
「・・・その髪留め・・・」
みよりはリリーの髪留めを見てそう言うと、鬼の形相で東和連合の上層部たちを見た。
「あなたたち」
みよりが鬼の形相で東和連合の上層部たちとレムフィト支部の軍人たちを見てそう言うと、敬礼し続ける東和連合の上層部たちは冷や汗を垂らした。
「は、はい!」
東和連合の上層部たちはみよりを見て情けなく返事をした。
「失礼なことはしてないわね?」
「し、して・・・おりません!」
冷や汗を垂らす東和連合の上層部たちはみよりを見てそう言った。
「・・・」
みよりは東和連合の上層部たちを見つめた。
「なんだあれ!」
一面の窓ガラスに集まる人たちは空を見て驚きながら口々にそう言った。
「・・・」
リリーは空を見つめた。
上空には、翼にエネルギーを蓄積させ、黄色い光を放つ桜眼、桜色髪にツインテール。黄色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだ色白な肌のTT-42B-61-01 ベネローブ・ゲッティが二基のエネルギー砲を構え、空中で静止していた。
「消え去れ元凶・・・!」
空港を見るベネローブ・ゲッティがそう言うと、二基のエネルギー砲が光を放ち、音が吸い込まれたかのように静まり返った。
「・・・!?」
レムフィト支部の軍人たちが驚きながらベネローブ・ゲッティを見たその時、みより以外が気を失って倒れ、黄色い光が消えた。
「・・・抑制装置を付けた状態でこの力・・・」
みよりは空色の神気を纏うリリーを見て驚きながら言った。
(聴覚が・・・めまいも・・・)
激しい耳鳴りとめまいに襲われたベネローブ・ゲッティは気を失いかけ、その場で液状疑似神気を吐いた。
「な・・・何だこの神気濃度は・・・!!」
色が抜けた黄眼、毛先が黄色い白髪にツインテール。黄色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだ生者とは言い難い肌のTT-42B-63-01 ライ・アールジョディーは腕で口を塞ぎ、空色の光を見てそう言うと、冷や汗をかいた。
「撤退だ!」
冷や汗をかくライ・アールジョディーはそう言うと、撤退した。
ライ・アールジョディーに続いて他の疑似神姫たちも撤退していった。
「うぅ・・・見捨てられた・・・死にたくない・・・」
ふらつくベネローブ・ゲッティはそう言いながら手榴弾が取り付けられたベルトを外して投げ捨て、ゆっくりと降下し、滑走路を滑って倒れ込んだ。
「・・・呆れた・・・」
インカムを着けたニーナ・イェーツ・マックイーンはゆっくり背もたれにもたれかかり、天井を見てそう言った。
「リリーが接近すればみよりも接近する。近づいてきたところを遠隔操作の爆弾で吹き飛ばす」
インカムを着けたニーナは情報が映るモニターを見てそう言った。
(来ちゃダメだ・・・来ちゃ・・・ダメなんだ!)
ベネローブ・ゲッティは近づいてくるリリーとみよりを見ると、口を動かし、こっちへ来るなと必死に伝えようとした。
しかし、リリーとみよりは気にせず近づいてくる。
(ダメか・・・」
ベネローブ・ゲッティは近づいてくるリリーとみよりを見つめた。
(クソ・・・死に戻りの前に仲間を裏切った奴らを喜ばせるのか・・・)
ベネローブ・ゲッティは地面に突っ伏した。
「これは見事な鹵獲だな」
リリーはベネローブ・ゲッティを見て笑みながら言った。
「疑似神姫をここまで綺麗な状態で確認できるなんて・・・」
みよりはそう言いながらベネローブ・ゲッティに触れようと近づいた。
「今!」
ニーナはそう言うと、遠隔爆弾を起動させるボタンを押した。
「・・・・・・?」
ベネローブ・ゲッティは不思議そうに顔を上げた。
「特殊組織って名乗る集団だから、もう少し考えてると思ったよ」
リリーはベネローブ・ゲッティを見て笑みながら言った。
「どう・・・して・・・」
ベネローブ・ゲッティはリリーを見て苦しそうに言った。
「人が使う電波は神気濃度がプラス五度以上になると完全に遮断できる。こんなことも対策できないなんて・・・月浜も大きくなりすぎたな」
リリーはベネローブ・ゲッティを見て笑みながらそう言うと、しゃがんだ。
遠隔爆弾の起動には少量の疑似神気エネルギーに加え、疑似神気エネルギーを操る電波が必要だ。
その電波は神気に弱く、神気が辺りにあると完全に遮断されてしまう。
だから、起爆しなかった。
「装備は回収させてもらうよ」
リリーはベネローブ・ゲッティを見てそう言った。
「・・・」
ベネローブ・ゲッティは装備を外すリリーを見た。
「大丈夫かしら」
みよりはベネローブ・ゲッティを見てそう言った。
「大丈夫だよ。神気風の衝撃で三半規管と内臓がやや損傷してるだけだから」
リリーはゲッティ級装備を地面に置いてそう言った。
「・・・これが疑似神姫・・・」
みよりはゲッティ級装備を見て興味深そうに言った。
「なに?それ」
みよりはリリーが触れる物を見てそう言った。
「遠隔操作爆弾だよ。爆薬は雑多な混合爆薬、威力は二十キロ爆弾と同等、価格は一発百リズ」
ゲッティ級疑似神気のコア接続部分をいじるリリーはそう言いながらいくつもある小さな爪を素早く外し、遠隔爆弾を地面に置いた。
「こんな素人の工作物みたいな物が百リズ?どれだけ懐に入れようと思ってるのよ」
みよりは遠隔爆弾を見てそう言った。
空港で巨大な神気を探知して駆けつけてきたレムフィト軍が到着し、リリーたちの所へ来た。
「グローニア総長!皇女陛下!ご無事ですか!」
ローランはリリーとみよりを見てそう言った。
「なんですか?それは」
クリスティーナはリリーとみよりが見るゲッティ級装備を見てそう言った。
「疑似神姫だよ」
リリーはクリスティーナを見て笑みながら言った。
「こっちは操縦士」
リリーはベネローブを見て笑みながらそう言うと、ゲッティ級装備の内部を見るために開けるところを探すみよりを見た。
少し静かになると、クリスティーナたちは顔を見合わせた。
「疑似神姫!?」
クリスティーナたちはリリーを見て驚きながら大声で言った。
「ちょっと!待ってください!疑似神姫が鹵獲できるなんてあり得ないことなんです!操縦士の死体と共に装備も消えてしまいますから!」
ローランは外装を外す部分を探すリリーとみよりを見て慌ててそう言った。
「あぁ、そうか。じゃあ、モントベルワーズビーチ基地で開けよう」
リリーはローランを見て笑みながら言った。
疑似神姫の鹵獲に成功したという知らせを受けた橘 カエデ新任連合総長が喜ぶ中、直前で解任されたひよりが激怒していた。
「どうして私が解任された直後に疑似神姫が鹵獲されるのよ!!」
ひよりは東和連合レムフィト支部の軍人たちを見て怒鳴った。
「そんなこと言われましても・・・」
東和連合レムフィト支部の軍人たちはひよりを見て弱弱しくそう言った。
「本当なら東和連合史上最大の功績!!連合総長として圧倒的な信頼が得られたのに・・・!!」
ひよりは頭を抱えながら怒鳴った。
ひよりが悶えていると、リリーたちが基地に戻って来た。
ベネローブはレムフィト軍の兵服を着た状態で他の兵士に紛れてリリーとローランと基地内へ向かい、ゲッティ級装備だけが素のままで確認できる状態で運ばれた。
操縦士であるベネローブから注意を外すため、ゲッティ級装備を素の状態で運んだのだ。
「奴か・・・奴が私から成果を奪っているのか・・・!!」
ひよりは窓からリリーを見て悔しそうにそう言った。
「・・・トップは私が生きているって知ってる」
ベネローブはリリーを見てそう言った。
「そうだろうね。だって、起爆してないんだもん」
リリーはベネローブを見てそう言った。
「疑似神姫の情報を守るため、私を殺しに来る」
「では、一番安全な部屋を用意しましょう」
ローランはベネローブを見てそう言った。
「安全な場所なんてない。あいつらはどんな場所に隠れようと見つけ出して殺す」
ベネローブはローランを見てそう言った。
「ありますよ。きっと、世界一安全です」
ローランはベネローブを見て笑みながらそう言うと、リリーを見た。
「・・・」
ローランを見つめたベネローブはリリーを見た。
ベネローブはリリーたちの部屋に入れられた。
リリーがいる部屋こそ世界一安全な部屋というわけだ。
「・・・なんだよ。そいつが例の幼馴染か?」
アージヴァイズは蔑んだ目でリリーに引っ付くベネローブを見てそう言った。
「TT-42B-61 ゲッティの操縦士だよ。接点は特にない」
リリーはアージヴァイズを見てそう言った。
「そのゲッティっていうのは鹵獲されたっていう疑似神姫?」
ミッケはリリーを見てそう言った。
「そうだよ」
リリーはミッケを見てそう言った。
「・・・そろそろ疑似神姫たちを調べる技術者たちに呼ばれる頃かな」
リリーが携帯端末を見てそう言うと、ドアがノックされた。
ビクついたベネローブはドアに拳銃を構え、瞬時に安全装置を外した。
「どうぞ」
リリーはドアを見てそう言った。
ドアが開くと、ローランがいた。
「・・・」
ローランを見たベネローブは拳銃に安全装置をかけ、ホルスターにしまった。
「・・・」
ベネローブを見て少し困惑したローランは気を取り直してリリーを見た。
「ちょっと調査に協力していただけませんか?」
リリーを見たローランは笑みながらそう言った。
「良いよ」
リリーはローランを見て笑みながら言った。
「行こうか」
リリーはベネローブを見て笑みながら言った。
「う、うん・・・」
ベネローブはリリーを見てそう言った。
午前十一時二十三分。
疑似神姫の調査にリリーとベネローブが加わった。
なんでも、壊れることを恐れて外装を外すことができずに調査が止まっているとのこと。
それを聞いたリリーは少し苦笑いしていた。
「・・・」
ベネローブは慎重に技術者たちの顔を確認していた。
「ここのノブだとは思うんですけど・・・」
技術者1はノブを見て困惑しながら言った。
「ノブには三つの物理ロックがある」
リリーはゲッティ級疑似神姫を見てそう言うと、ノブに触れた。
「人差し指、中指、薬指で握り込むロック解除ってわけだ」
リリーはノブを握り込んでそう言うと、外装を開けた。
「おぉぉぉ!!」
技術者たちは食らいつくようにゲッティ級疑似神気の内部を見て歓声を上げた。
「ちょっと良いか?」
リリーが技術者たちを見てそう言うと、技術者たちが一斉に退いた。
「AZcodeは必要か?必要ないなら千切り取るけど」
リリーはローランとベネローブを見てそう言った。
「エージーコード?」
ローランはリリーを見て首を貸しながら言った。
「・・・」
ベネローブは周りを見た。
「不安ならそのコアを摘出してから千切るけど」
リリーはベネローブを見てそう言った。
「・・・!?ホント!?できるの!?できたとして・・・人に戻れるの?」
ベネローブはリリーを見て嬉しそうに笑みながら言った。
「あ、あの・・・まずは調査してからで。知れることは知りたいです」
ローランはリリーを見て冷や汗をかきながら言った。
「わかった。じゃあ、皆さんお望み解説でもしようかな」
ベネローブを抱き寄せたリリーは技術者たちを見て笑みながら言った。
「・・・」
ベネローブはリリーを見て目を見開き、顔を紅くした。
リリーが技術者たちに説明する中、ベネローブはそっとリリーを抱きしめた。
(なんだろう・・・あまりに心地良い・・・)
ベネローブはリリーを抱きしめ続けた。
(そっか・・・私が求めていたもの・・・親だ)
ベネローブは説明を続けるリリーを見た。
ベネローブ・ローレン・タンコック。
千六百四十二年、九月二十一日に月浜国のミリア系難民保護区で生まれた。
産母は産後すぐに他界。育母は幼いベネローブを家に置いて逃走。
ベネローブは不審に思った近所の人から通報を受けた警察に保護された。
親が見つからないベネローブは孤児院に送られ、孤児院で生活を始めた。
成長するベネローブだが、楽しいという感情や嬉しいという感情が芽生えなかった。
言われるがまま言葉を発し、行動する。
そんなベネローブだが、生きることには執着を見せた。
生きるために他人を蹴落とすことだって簡単にした。
しかし、それを咎める大人はいない。
関わりを持とうとする大人もいない。
疑似神姫の操縦士になったベネローブは、さらに生への執着を見せた。
本物の命を求め、コアを嫌い、蘇生を嫌った。
本物の命を得るために戦場に出て敵を倒し、金を溜め始めた。
そんな日々を過ごしていた時、ベネローブはリリー・ゼノクイーンに遭遇した。
リリー・ゼノクイーンの圧倒的力から膨大な生命力と優しさを感じ、ベネローブは魅かれた。
リリー・ゼノクイーンが握る赤く輝く刀に首を斬られるその瞬間に強い希望を抱いた。
(・・・リリー・・・)
ベネローブはリリーを力強く抱きしめた。
「・・・」
リリーはベネローブを一瞬見ると、技術者たちを見た。
解説を終えたリリーは最後に質問を受け付けた。
「他の疑似神姫。例えば、月浜四剣士も同じ構造と考えて良いんですか?」
技術者2はリリーを見てそう言った。
「そうだね。コアがあって武装があってそれを繋げる缶や配線がある」
リリーは技術者2を見てそう言った。
「おぉ・・・」
技術者たちは記録を付けた。
疑似神姫の内部が民間報道陣に明かされると、号外によって拡散され、一時間程度で東和連合加盟国に広がった。
号外が月浜にまで拡散されると、月浜政府・軍部は公開された情報は全く信憑性がない情報だと声明を発表。
その裏で月浜軍はレムフィトと返還交渉をしていた。
月浜軍はレムフィト軍の軍人であれば押し切れると考えて行動に出たのだが、返還交渉の任に当たったのはリリーだった。
「り、リリー・・・」
受話器を握った紫眼、薄紫髪にツインテール。深緑色の軍服で身を包んだ生者とは言い難い肌のビゼル・オブ・シーモアは少し動揺しながら言った。
「電話をかけてくるなんて珍しいな。どういう要件だ?」
受話器を握ったリリーは電話機を見てそう言った。
「・・・知っているだろ・・・ベネローブ准尉と42B-61の返還交渉だ」
「あぁ~悪いな。ゲッティ級は解体されてマニアたちに売られたんだ。ベネローブは月浜になんて帰りたくないってよ」
「・・・ベネローブに代われ。近くに居るんだろう?」
「あぁ」
受話器を握ったリリーはそう言うと、ベネローブに受話器を差し出した。
「・・・」
ベネローブは受話器を受け取り、耳に当てた。
「何か用?」
受話器を握ったベネローブは盗聴用の受話器を握ったリリーを見てそう言った。
「お前、どういうつもりだ。どこまで情報を吐いた」
受話器を握ったビゼルは電話機を見てそう言った。
「持っている情報は全部吐いたよ。死にたくないから」
「・・・まぁ、良い。お前は麻薬を盛られて気が狂っているんだ。今なら総帥閣下も許してくれる」
「麻薬漬けの方がマシだろうね。死に戻りに死に戻りで永遠と戦うよりは」
「貴様!!我らIRISを侮辱したな!!」
盗聴していたキッド・ロイ・サマーがたまらず怒鳴った。
「お前らは世界の負け組だ!!お前らはその呪われた心臓で動く死体だ!!寿命という全生物にある誇りを捨てた奴らが誇りを持てるはずがない!!」
受話器を握ったベネローブは電話機を見て怒鳴った。
「・・・」
受話器を握ったリリーは電話機を見つめ、受話器の接続を切り替えボタンを押した。
「・・・後悔するぞ。今ならまだ」
受話器を握ったビゼルは電話機を見てそう言った。
「温厚じゃないね~。もう少し知性が感じられる返還交渉をしようよ」
受話器からリリーの声が聞こえると、ビゼルとキッドが冷や汗をかいた。
「例えば、東月講和会議に参加するので返してくださいとか、占領地を手放すので返してくださいとか」
受話器を握ったリリーは電話機を見つめてそう言った。
「十万リズだ・・・十万リズ払おう」
受話器を握ったキッドは電話機を見てそう言った。
「君たちは橘花国から亡命者の引き渡しを要求されたら、たかが十万リズで亡命者を引き渡すの?」
「・・・」
受話器を握ったキッドは黙り込み、冷や汗を垂らした。
「何か他に案は?」
リリーがそう言うと、静寂が訪れた。
リリーは静寂を切り裂くように言葉を発した。
「交渉決裂だね」
リリーはそう言うと、もう一度静寂を確認してから受話器を戻した。
「じゃあ・・・心臓を貰いにいくか」
リリーはベネローブを見て笑みながら言った。
「うん」
ベネローブはリリーを見て嬉しそうに笑みながら言った。
正午十二時三十分。
ベネローブの心臓移植手術が始まった。
ドナーはノースドラゴニア残地最西端、ヘラスティル州の子供。
ベネローブのためにノースドラゴニア残地から精鋭医師たちが集まり、手術が行われる。
リリーが手術着を着て手術室の中で監視している中、アージヴァイズたちはローランの指示で臨戦態勢に入っていた。
「返還交渉が決裂したため、クルエル部隊に命令が出ているはずです。レムフィトでの激突は間違いとのことです」
月浜打撃軍の軍人1はアージヴァイズたちを見てそう言った。
「決裂させて良かったのか?将校を返さないって条約上アウトだろ?」
アージヴァイズは月浜打撃軍の軍人1を見てそう言った。
「条約上アウトよ。でも、本人が帰還を拒否すれば別。亡命ということになる」
みよりは設計図を描きながら言った。
「・・・いちゃもん付けられて不利になりそうだけど・・・」
オレンジはみよりを見てそう言った。
「グローニア総長が返還交渉の任に当たった以上、月浜政府は直接動けないわ。できて秘密裏に軍部と連携することくらい」
「・・・あんた、月浜に勝てるとでも思ってるのか?疑似神姫を持つ月浜に」
アージヴァイズはみよりを見てそう言った。
「現在優勢よ。月浜は確実に疲弊している。だから、統率が崩れ始めている」
みよりは設計図に文字を書きながら言った。
「うーん・・・そうなのか?」
アージヴァイズは月浜打撃軍の軍人1を見てそう言った。
「亡命者が出ているということはそう言うことなんじゃないですか?」
月浜打撃軍の軍人1はアージヴァイズを見てそう言った。
「月浜は短期決戦となるとやたら強くて厄介なのよ」
みよりは設計図を書きながら言った。
「逆に」
みよりはそう言うと、ペンを置いた。
「長期戦となると弱い。だから、疑似神姫を使って短期決戦へ持ち込もうとする」
みよりはアージヴァイズを見てそう言った。
「・・・でも、疑似神姫を出されたら勝てないじゃないか。何か撃墜する方法があるのか?」
アージヴァイズはみよりを見てそう言った。
「あなたたちが持っている"誇り高き装備"で簡単に撃墜できる」
みよりがそう言うと、アージヴァイズたちは顔を見合わせた。
「・・・こ、皇女陛下。ですが、疑似神姫を撃墜できているのはグローニア総長くらいですし・・・龍王級などには勝てません」
月浜打撃軍の軍人1はみよりを見て恐る恐る言った。
「第三代戦姫隊の初期メンバーは精鋭級最上位の疑似神姫を圧倒している。その誇り高き装備を使って」
みよりは月浜打撃軍の軍人1を見てそう言った。
「初期メンバー・・・」
アージヴァイズはみよりを見てそう言った。
「今残っているのはリリー総長とエリー副総長だけね」
みよりはそう言うと、ペンを握って再び設計図を描き始めた。
「副総長?副総長はアージヴァイズでしょ?」
エコーはみよりを見てそう言った。
「エリーを副総長と呼んでしまうのは昔の名残よ。気にしないで」
みよりは設計図を描きながら言った。
「・・・あいつ、強いのか?」
アージヴァイズはみよりを見続けながら言った。
「強いわ」
「・・・じゃあ、何で前線に出てこないんだよ」
「今は技術者をやっているからよ。その気になれば出てくるわ」