宿幼決戦編 十八章 黒式の魔女
「・・・あぁ・・・斬られてないんだ・・・助かった・・・」
ドロシーの魂は闇の中を飛んだ。
「白狐様、白狐 真白様」
ドロシーの魂は闇の中を飛び続け、少し遠くに見える暗黒の霧を見つけた。
「白狐 真白様!どうか私に・・・」
暗黒の霧に向かって飛ぶドロシーの魂は異変に気が付いた。
「宿幼の眷属。お前を探していた」
何者かの声が聞こえると、暗黒の霧の中から人影が現れた。
「おッ・・・あ、あなた様はッ!!」
ドロシーの魂は人影を見て驚いた。
「かつて私に傷をつけた落陽大聖を呼び覚ますとは・・・お前は史上最悪の闇塊だ」
「わ、私は宿幼様のため、曳いては、あなた様のためにッ!」
ドロシーの魂は暗黒の霧を見つめた。
「宿幼の眷属ごときが落陽大聖と勝負するなど愚の骨頂ッ!」
怒という文字が満ち溢れる人影はドロシーの魂に真っ白な手を伸ばした。
「あ・・・キェッ・・・!!」
ドロシーの魂は近づく真っ白な手から逃げた。
ドロシーの魂は闇の中を逃げ始めた。
「貴様のせいであの落陽大聖が目覚めた・・・天道大聖よりも大きな力を秘めた怪物がッ!!」
ドロシーの魂は強烈な怒りが籠った声が響く中、逃げ続ける。
「万死に値する」
いつの間にか真っ白な手に掴まれたドロシーの魂を黒式眼が見つめる。
「ウギャァァァァ!!!!」
悲鳴を上げるドロシーの魂は液状闇に変わって蠢き、弾けて消えた。
「・・・ミッケちゃん、大丈夫だ?」
ミッケに肩を貸すカスミはミッケを見てそう言った。
「・・・義足くらい必要かもしれないね・・・」
カスミに肩を借りるミッケはカスミを見て笑みながら言った。
「避難してた住民が戻って来る。オレンジが陛下の炎を撒いたから、もう大丈夫だと思う」
アージヴァイズはミッケを見てそう言った。
「そっか・・・」
ミッケはアージヴァイズを見て笑みながら言った。
(今回も死者は想定数を下回った・・・)
ミッケたちに向かって歩みを進めるオレンジはミッケとカスミを見た。
(あの魔塊眷属相手に・・・)
オレンジは少しうつむいた。
「この結果はみんなのおかげだよ。ご苦労様」
ミッケはアージヴァイズたちを見て笑みながら言った。
同年、四月二日。
梨々香が調査結果を持ってミリア基地に来た。
梨々香はローランと会って話をした。
「多大なる犠牲と損害が出てしまいましたが、中央隊とミッケ副指令とカスミ神軍部隊長級甲が無事ドロシーを討伐しました」
ローランは梨々香を見て笑みながら言った。
「奴らとの戦いに犠牲と損害は付き物だ。君たちが気を病むことはない」
梨々香はローランを見て笑みながら言った。
「はい、ありがとうございます」
「これがサウスドラゴニアの調査で得た情報だ」
梨々香は机の上に書類を置きながら言った。
「やっぱり、あの計画は続いていたんですか」
眉を顰めたローランは書類を見てそう言った。
「決戦は近い。みんなに通達してくれ」
梨々香はローランを見てそう言った。
「はい、わかりました」
ローランは梨々香を見てそう言った。
梨々香は神軍拠点艦一番艦イクイノックスに戻ると、神軍幹部たちと食事を始めた。
「まさか・・・彼女が裏切り者とは・・・」
エリーは一枚の名簿を見てそう言った。
「奴の処分はいつやりましょうか」
グラディスは梨々香を見てそう言った。
「今は良い。彼女には利用価値がある」
箸を握った梨々香はそう言うと、焼き魚を食べた。




