表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/98

宿幼決戦編 十四章 正義の火種

午後六時三十七分。

ヒルデガルトが家に戻って来た。

ヒルデガルトは少し酔っているようだ。

「・・・お酒飲んだの?」

アイリアはヒルデガルトを見てそう言った。

「飲んだよ。良い純米酒だった」

ヒルデガルトはコートを脱いでそう言うと、コートをかけた。

「ナハトってレムフィトの人っぽいのに泣代の文化が好きなんだね」

アイリアはヒルデガルトを見て笑みながらそう言った。

「私はグイーザス人だ。そして、私が好きなのは天陽の地の文化だ。一緒にするな」

ヒルデガルトはタイツを脱ぎながらそう言った。

「同じようなものじゃん」

アイリアは笑いながらそう言った。

「その考えは文化の否定になり得る。彼女たちの文化は独自のものであり、天陽の地の文化ではない」

「そ・・・そっか・・・」

アイリアはヒルデガルトを見てそう言った。

その土地で築かれ、何時しかその土地を築くようになった文化を尊重する。

アイリアはそんなヒルデガルトを尊敬すると共に自分の浅はかな考えを反省するのだった。

「お腹は空いているかい?」

ヒルデガルトはアイリアを見てそう言った。

「あぁ、うん。空いてる」

アイリアはヒルデガルトを見て笑みながらそう言った。

「じゃあ、注文しよう」

ヒルデガルトは携帯端末を持ってそう言った。

「料理できないの?」

「できるわけないだろう?私は元王女だぞ?」

携帯端末を持ったヒルデガルトはアイリアを見てそう言った。

「まぁ、そっか」

アイリアは笑いながらそう言った。

「西楓料理でも銀狼(ぎんろう)料理でも泣代料理でも茶平原料理でもなんでも注文すると良い」

ヒルデガルトは携帯端末を差し出してそう言った。

「うん」

アイリアは携帯端末を見て笑みながらそう言うと、携帯端末を受け取った。


午後七時。

アイリアは一人でハンバーガーを食べ始めた。

「・・・」

咀嚼するアイリアはヒルデガルトが籠った部屋を見た。

アイリアは一人で静かに食事をする。

久々ではないのだが、久々な気がして少し落ち着かないようだ。

この家は生活感こそあるがありきたりでヒルデガルトらしさは一切ない。

石鹸もシャンプーもどこにでもある安価な物でこだわりを感じない。

ヒルデガルトから香る何処か甘酸っぱいような、どこか切なさがある香りはアロマだろうか。

となると、あそこの部屋にナハトは自分らしさを詰め込んでるのか。

アイリアがハンバーガーを食べながらそう考えてると、ドアが開いた。

「・・・」

アイリアは警戒しながらドアの方を見た。

「元気ですか?」

梨々香はアイリアを見て笑みながらそう言った。

「梨々香・・・」

アイリアは梨々香を見てそう言った。

「まぁ、元気だよ・・・」

アイリアはそう言うと、ハンバーガーを食べ切った。

「そうですか」

梨々香は少し笑いながらそう言った。

「これから銭湯に行きますけど、一緒に行きますか?」

梨々香はアイリアを見て笑みながらそう言った。

「銭湯?」

「えぇ、今日は色々な人が来ていますからいい刺激になると思いますよ」

「タオルとかないけど大丈夫?」

「簡易のものなら無料で貸し出していますし、何かあれば私が払うので大丈夫ですよ」

「じゃあ・・・行ってみようかな」

アイリアが笑みながらそう言った時、部屋からヒルデガルトが出てきた。

「アイリアも行くって」

梨々香はヒルデガルトを見て笑みながらそう言った。

「そうかい」

ヒルデガルトは梨々香を見て笑みながらそう言った。

「じゃあ、早くコートを羽織りな」

ヒルデガルトはアイリアを見て笑みながらそう言った。

銭湯で入浴を済ませてるから石鹸やシャンプーが安価な物なのかとアイリアは少し納得した。


ヒルデガルトの家から歩いて五分ほどの場所にある銭湯は瓦屋根の立派な建物だ。

お風呂は三ヶ所あり、各自好きな所に行く。

銭湯に行くと各民族の特徴がはっきりとわかる。

グローニアキャット族は点々と固まって入ってる。

銀狼族はお湯に入らずサウナにいる。

茶摘龍(ちゃつみりゅう)族はささっとシャワーだけ。

燦水天狐族の人たちはガチで密集して入ってる。

「ふぅ~・・・」

お湯に浸かったアイリアは笑みながら一息ついた。

「すっ・・・!!」

アイリアは銀狼族の女性を見て驚いた。

(ごぉ!!すっごぉ!!胸もデカいし身長高いしマジでカッコ綺麗って感じ!)

驚くアイリアは銀狼族の女性を見つめる。

「どうした、小娘。ここの銭湯は初めてか?」

銀狼族の女性はアイリアを見て笑みながらそう言った。

「あ、あぁ、その・・・初めてです・・・」

アイリアは動揺しながらそう言った。

「銀狼族なんて珍しいだろう?」

「えぇ、まぁ・・・」

アイリアは銀狼族の女性を見てそう言った。

「初めてのやつには結構見られるんだよ。もう絶滅したもんだと思っていたと話しかけてくるやつも多い」

「そうなんですね・・・」

アイリアは銀狼族の女性を見て笑みながらそう言った。

「ここは私の故郷なんだ」

銀狼族の女性は笑みながらそう言った。

「アーヴァン王国の人・・・だったんですか?」

「いいや、レムフィトに住んでいた。愚者アーヴァンに奪われる前のレムフィトに・・・」

銀狼族の女性は天井を見てそう言った。

「・・・大変な思いをしたんですね・・・」

アイリアは銀狼族の女性を見てそう言った。

「もう昔のことだ。愚者共に汚されたこの地も万象様によって清められ、元に戻って来た」

銀狼族の女性はアイリアを見て笑みながらそう言った。

「万象様ほど素晴らしいお方はいない」

銀狼族の女性は息を吐きながらそう言った。

「・・・正義って何だと思いますか?」

アイリアはお湯を見てそう言った。

「え?」

銀狼族の女性はアイリアを見てそう言った。

「いや・・・ちょっとした独り言です・・・」

アイリアは動揺しながらそう言った。

「・・・同胞を守るためなら悪逆非道の悪鬼にだってなる。これが私の正義だった」

銀狼族の女性は天井を見てそう言った。

「・・・」

アイリアは銀狼族の女性を見た。

「世界でただ一人になって・・・辛い思いをするのだけは嫌だった」

「・・・本当の悪鬼になる前に万象陛下がアーヴァンを滅ぼしてくれてよかったよ」

銀狼族の女性は笑いながらそう言った。

「多くの神や人が死んでも?」

「あぁ、よかった。心の底からそう思う」

銀狼族の女性は笑みながらそう言った。

「・・・」

アイリアは黙った。

「数千万人だ・・・」

「え?」

アイリアは銀狼族の女性を見てそう言った。

「数千万人・・・私の同胞はアーヴァンの愚者共に殺された。私たちは何もしなかった。何もしなかったんだ・・・」

銀狼族の女性は悲しさと悔しさが混ざった声でそう言った。

「・・・何もしなかったのに・・・酷いことをするんだね」

「私たちは何もしなかった。一度吠え、牙を向ければこうはならなかったのに・・・結局、私たちも愚者だったわけだ」

何もしないことを選んだ。

だから、失った。

友達を、仲間を、守りたかった者たちを。

「吠えろ、小娘。大切なものを守りたいなら吠えろ。それでも向かってくるなら噛みつけ」

銀狼族の女性はアイリアを見てそう言った。

この言葉がアイリアの胸に沁み込む。

そして、溢れそうな思いがアイリアの心を燃やしていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ