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宿幼決戦編 十二章 正義はどこへ

同年、三月二十七日。

アイリアはグラディスに呼ばれてアーヴァン王国跡地に来ていた。

「どうだ?いい場所だろ?」

グラディスはボーっと景色を見るアイリアを見て笑みながらそう言った。

「・・・そうだね」

アイリアは景色を見ながらそう言った。

「今は休め。陛下からのお達しだ」

グラディスはそう言うと、湯飲みを持ってお茶を飲んだ。

「・・・私、もう刀を抜けないんだ」

アイリアは少しうつむいて笑みながらそう言った。

「それをわかった上でのお達しだ。黙って休んでろ」

湯飲みを持ったグラディスはアイリアを見て笑みながらそう言った。

「・・・そっか・・・わかったよ」

アイリアはグラディスを見て笑みながらそう言った。

自分の正義が揺らぐこと、それは七陽の勇者にとって致命的なことだ。

力が使えなくなり、酷い場合は刀すら抜けなくなる。

そう、アイリアは酷い状態に陥っている。

「・・・」

アイリアはヒルデガルトを見て少し驚いた。

「なんだい?」

黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだミステリアスながら可愛い少女、ヒルデガルトはアイリアを見てそう言った。

「ど、どうしてここに??」

驚くアイリアはヒルデガルトを見てそう言った。

「私の家に私がいて何がおかしい」

「私・・・の家・・・」

アイリアはヒルデガルトを見てそう言った。

「早く入って座りなよ。客人に立っていられると気分が悪い」

「う、うん・・・」

アイリアはそう言うと、靴を脱いで部屋の中に入った。

お茶を淹れる音だけが部屋に響く。

気まずさを感じたアイリアは口を開いた。

「ナハト・・・」

アイリアは机の上にマグカップを二つ置くヒルデガルトを見てそう言った。

「なんだい?」

ティーポットを持ったヒルデガルトは二つのマグカップにお茶を淹れながらそう言った。

「ナハトには、姉が居たの?」

アイリアはヒルデガルトを見てそう言った。

「らしいね」

ヒルデガルトはそう言うと、マグカップを持ってお茶を飲んだ。

「らしいねって・・・家族でしょ?」

アイリアは呆れたように言った。

「私は側室の子で、姉は正妻の子だから家族っていう感覚はない。一緒に育ったわけじゃないしね」

マグカップを持ったヒルデガルトはそう言うと、お茶を飲んだ。

「会ったこともあるんでしょ?」

「会ったからと言って家族の感情が急に芽生えることなんてあるわけないだろう?」

マグカップを持ったヒルデガルトはアイリアを見てそう言った。

「・・・とても、とても感謝してたよ・・・それに、あの人はあなたのことをよく知ってるみたいだった」

「・・・・・・残された記憶を見たのか」

マグカップを持ったヒルデガルトはそう言うと、お茶を飲み干した。

「・・・」

アイリアは黙ってうなずいた。

「そうかい」

ヒルデガルトはティーポットを持ってそう言うと、マグカップにお茶を注いだ。

再び静寂が訪れる。

アイリアは黙って静かにお茶を飲む。

「リベードリヒ王女は天照大世の第二代落陽の勇者、華砂羅(かさら)に助けられたことがあるそうだ」

頬杖をついたヒルデガルトはアイリアを見てそう言った。

「・・・カサラ?」

アイリアはヒルデガルトを見てそう言った。

「梨々香が先生って呼んで尊敬している人さ」

「梨々香の先生・・・」

アイリアはヒルデガルトを見て少し驚きながらそうった。

「その人に助けられたせいで天陽の地の文化がどうだのこうだの言い始めて、ついには王国から逃げるように出て行ってしまった」

「隣国の言葉すらまともに話せない癖に、勉強も何もしないでとろとろ生きてた癖に・・・」

ヒルデガルトは呆れたように言った。

「・・・苦労とかしそうだけど・・・しなかったのかな?」

アイリアはヒルデガルトを見てそう言った。

「苦労するに決まってるだろう?髪色以外何もかも違う小娘が一人・・・住民の通報からお役人に捕まって知らず知らずのうちに売られて見世物にされて・・・」

ヒルデガルトはアイリアを見てそう言った。

「・・・」

アイリアは眉を顰めて黙る。

「たまたま若武者様が助けてくれたからよかったものの・・・」

ヒルデガルトはそう言うと、ため息をついた。

「その若武者様って誰なの?」

アイリアはヒルデガルトを見てそう言った。

「梨々香だよ。華千﨑(かせんざき)家の御家来衆(ごけらいしゅう)筆頭、華松(かまつ)家にて修行していた頃のね」

ヒルデガルトはアイリアを見てそう言った。

「梨々香って本当に色々な所で活躍してるね」

アイリアはヒルデガルトを見て笑みながらそう言った。

「梨々香は昔からすごいんだよ。芸者から先生と呼ばれたり、若武者たちから師匠と呼ばれたり、誰も殺しちゃいけないって本当に片っ端から困っている人を助けていたって聞いた」

「誰も殺しちゃいけない・・・今の梨々香からは想像できないね」

アイリアは笑いながらそう言った。

雑談をして少し気が晴れたのか、アイリアはケーキを食べられるくらいには元気を取り戻した。

アイリアがケーキを食べ始めると、ヒルデガルトがタイツを穿いてコートを羽織って出かける準備を始めた。

「どこに行くの?」

アイリアは玄関に向かうヒルデガルトを見てそう言った。

「梨々香と会う約束をしていてね」

ヒルデガルトは靴を履きながらそう言った。

「私も行きたい」

アイリアはヒルデガルトを見てそう言った。

「君の様子を報告するんだからダメだ」

ヒルデガルトはアイリアを見てそう言った。

「・・・そっか・・・」

アイリアはそう言うと黙った。

「私は夕方まで戻ってこない。昼食は各自で食べよう」

ヒルデガルトはそう言うと、ドアを開けて家から出た。

「・・・うん」

アイリアは閉まるドアを見てそう言った。


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