レディフ・フィアンゼ編 七章 迫る最悪の事態。
同年、九月二十日。
数機の疑似神姫がレムフィトの前線であるモントベルワーズビーチ基地上空へ飛来した。
偵察のためか、数時間ほど疑似神姫がレムフィト領海へ飛んできたが、現在は飛んでこない。
とは言え、北海には月浜の艦隊が常駐しているという状況。
レムフィト支部の上層部は最終的に、レムフィトの迎撃装置を警戒して攻撃してこない。と結論を出した。
「と、言うわけでして・・・」
月浜打撃軍の軍人1は上半分が黒、下半分が赤い服を着てデニム生地のショートパンツを穿いたリリーを見てそう言った。
「東和連合の上層部はどこの支部でも無能なんだな。来てるのは精鋭級疑似神姫、No.29カルジェン・バースだ。迎撃設備にビビるわけない。何か裏があるはずだ」
リリーは書類を見てそう言った。
「まぁ、私も同じ考えですが・・・」
「上層部の意見だから何も言えないんだろ?」
書類を持つリリーは月浜打撃軍の軍人1を見てそう言った。
「えぇ・・・まぁ・・・」
「私の考えだが、カルジェンは慎重に行動せざるを得ない状況に立たされている。艦隊を瞬時に殲滅するようなやつが近くにいる可能性が高いってところか」
リリーは書類を見てそう言った。
「艦隊を瞬時に殲滅・・・」
月浜打撃軍の軍人1はうつむきながら言った。
「・・・そんな兵器あるでしょうか?考えつくのはノースドラゴニアの古代兵器ですが、ノースドラゴニアは完全中立国ですからね・・・」
月浜打撃軍の軍人1はリリーを見てそう言った。
「兵器じゃない」
「え?」
「私の考えを言おう」
資料を持ったリリーは月浜打撃軍の軍人1を見てそう言った。
「はい・・・」
リリーを見る月浜打撃軍の軍人1は恐る恐る言った。
「神軍」
リリーがそう言うと、月浜打撃軍の軍人1は驚きながら冷や汗をかいた。
「神軍が北海、それもレムフィトに比較的近い場所に居る。バース級という精鋭級疑似神姫の中でも五本指に入る怪物が中心に居る疑似神姫部隊を容易に止められるなんて神軍くらいだ」
「そ、そんな・・・」
月浜打撃軍の軍人1はリリーを見て焦りながら言った。
「出てくるやつによっては最悪の事態になる。大陸北部の消滅だけで済めばいいけど・・・」
リリーはそう言いながら再び資料を見始めた。
「ど、どうすれば・・・!!」
月浜打撃軍の軍人1はリリーを見て酷く焦りながら言った。
「知らないよ。連合総長様にでも祈っとけば良いんじゃない?」
資料を持つリリーは月浜打撃軍の軍人1を見ながら適当に言った。
リリーと月浜打撃軍の軍人1が話をしていると、ドアがノックされた。
「どうぞ」
月浜打撃軍の軍人1はドアを見てそう言った。
ドアを開け、部屋に入って来たのはクリスティーナだった。
「グローニア総長。少し会議に参加してくれないだろうか」
クリスティーナはリリーを見てそう言った。
「良いよ」
リリーは資料を置いてそう言うと、立ち上がった。
クリスティーナは会議室へ到着するまでリリーと話をし始めた。
「グローニア総長はヘリズランド氏と一番仲が良いのか?」
クリスティーナはリリーを見て笑みながら言った。
「そうだよ。まぁ、メンバーの中で一番古い付き合いだしね」
リリーは前を見て笑みながら言った。
「ヘリズランド氏は戦おうとしないことで有名だが、戦ったら強いのか?」
「私の次に強いよ。それに加えて技術者をやるくらい賢いしね」
リリーはクリスティーナを見て笑みながら言った。
会議室へ着き、クリスティーナがドアを開けると、月浜打撃軍のメンバーと東和連合の上層部が居た。
「なんで戦姫隊のガキが・・・」
東和連合の上層軍人1はリリーを見てそう言った。
「まぁまぁ、レムフィト人が考えることなんてこんなもんですよ」
元戦姫隊の軍人2は東和連合の上層軍人1を見て笑みながら言った。
「ガキにしか頼れない貧乏人がよぉ」
元戦姫隊の軍人2はクリスティーナを見て笑いながら言った。
「今作戦会議にグローニア総長を出席させるように。と皇女陛下から指示を受けている」
クリスティーナがそう言うと、東和連合の上層部たちが冷や汗をかいて黙り込んだ。
「皇女陛下に文句があるなら聴こう。皇女陛下は軍隊の改善を行うために意見を求めておられる」
クリスティーナは東和連合の上層軍人たちを見てそう言った。
「何か言いたいことがあるんじゃないのか?ルーキー」
クリスティーナは元戦姫隊の軍人2を見てそう言った。
「・・・い、いや・・・別に・・・」
冷や汗をかく元戦姫隊の軍人2はクリスティーナから目をそらしてそう言った。
クリスティーナが会議室から出ると、会議が始まった。
しかし、雰囲気は最悪だ。
「被害が最小限になる確率と、被害が最小限になった場合、どれほどの被害が想定されるかを教えてください」
ローランはリリーを見てそう言った。
「被害が最小限になるなんてあり得ない。誰が相手だと思ってるんだよ」
リリーはローランを見てそう言った。
「なんだよそれ!」
元戦姫隊の軍人2はリリーを見てそう言った。
「言えねぇんだろ!?月浜からのスパイめ!」
東和連合の上層軍人たちはリリーを見てそう言った。
ノートに文字を書くローランは東和連合の上層軍人たちのヤジを押し殺すように話しを続けた。
「では、一番考えられる被害想定を教えてください」
ローランはリリーを見てそう言った。
「レムフィト北海岸の放棄が一番考えられるね」
リリーはローランを見てそう言った。
「はぁ!?」
元戦姫隊の軍人2はリリーを見て怒鳴った。
「そんなの現実的じゃない!」
元戦姫隊の軍人3はリリーを見て怒鳴った。
「適当を言うな!」
東和連合の上層部たちはリリーを見ながら怒鳴った。
「歳なんだからそう易々と怒鳴りなさんな。血管切れて死ぬぞ?」
リリーは東和連合の上層軍人たちを見て笑みながら言った。
「ふ、ふざけるな!!私たちにそんな口をきいてタダで済むと思うなよ!!」
東和連合の上層軍人1はリリーを見て激しく怒鳴った。
「困りました・・・」
眉を顰めたローランはリリーに怒鳴る東和連合の上層軍人たちを見てそう言った。
「あぁ、はいはい。わかったわかった」
リリーはそう言いながら立ち上がった。
「邪魔して悪かったな。精々頑張ってくれよ」
リリーは東和連合の上層軍人を見て笑みながら言った。
「おい!クソガキ!あんな奴ら私たちがぶっ潰してやるよ!クソガキは黙って見てろ!」
元戦姫隊の軍人2はリリーを見て怒鳴った。
「威勢がいいね。やられ役みたいで最高だよ」
リリーは元戦姫隊の軍人2を見て笑みながらそう言うと、グットサインを送った。
「ば、バカにしやがって・・・」
元戦姫隊の軍人2はリリーを見て怒筋を浮かべ、歯ぎしりさせながら言った。
「バカにもするさ。量産型戦姫が精鋭級疑似神姫を倒すなんて夢のまた夢・・・」
リリーは元戦姫隊の軍人2を見て少し笑いながら言った。
「・・・」
元戦姫隊の軍人2はリリーを見て怒筋を浮かべ、歯ぎしりをし続けていた。
「綿密に計画し、連携に連携を重ね、運が味方をして・・・そんな完璧な状況でも三等疑似神姫までしか倒せない。今の戦姫は性能が低いからね」
リリーはみんなを見てそう言った。
「連合総長はよく無能ばかり集めたね。類は友を呼ぶとはよく言ったものだね」
リリーは東和連合の上層部を見て笑みながら言った。
「き・・・貴様・・・!!」
東和連合の上層部たちはリリーを見て怒り、震えながら言った。
「・・・ここから去ってほしいならそう言ってくれよ」
リリーは東和連合の上層部を見てそう言った。
リリーの言葉を聞いた東和連合の上層部たちはうろたえ、黙り込んだ。
「・・・座り直してください」
ローランはリリーを見てそう言った。
静寂の中、リリーは再び椅子に座った。
「・・・以前、数回姿が確認された黒の神姫の襲来が最悪の被害。という考えで良いですか?」
「違う」
リリーはローランを見てそう言った。
「違う?」
ローランはリリーを見てそう言った。
「最悪の場合、北海に面した国が消滅し、春雫地方が壊滅することになる。実は今、文句言ってるほどの余裕ないんだよ」
リリーは東和連合の上層部たちを見てそう言った。
「え・・・?」
東和連合の上層部たちはリリーを見て声を漏らした。
「精鋭級のカルジェン・バースが慎重に動く必要があるということは、艦隊を容易に消し飛ばせる存在が近くにいる可能性が高いってことだ」
リリーはローランを見てそう言った。
「まさか・・・神軍!!」
ローランは目を見開き、リリーを見て驚きながら言った。
ローランの言葉に東和連合の上層部たちは背筋を凍らせ、一気に冷や汗をかき、焦り始めた。
「ば、バカな・・・!あの神軍が・・・北海に・・・!?」
焦る東和連合の上層部1はローランを見て冷や汗を垂らしながら言った。
「・・・神軍は・・・敵ですか?味方でなくとも、中立になれるような存在ですか?」
ローランはリリーを見てそう言った。
「敵でも味方でも、戦闘になれば最悪の事態が起きる」
リリーはローランを見てそう言った。
「お、おい!何とかしろ!!それが貴様の役目だろ!!」
焦る東和連合の上層部1はリリーを見て怒鳴った。
「そうだ!!このスパイめ!」
元戦姫隊の軍人2はリリーを見て怒鳴った。
「あんたら人形かよ。知能無さすぎだろ」
眉を顰めたリリーは元戦姫隊の軍人2を見て苦笑いしながら言った。
東和連合の上層部1と元戦姫隊の軍人2はリリーを睨みながら歯ぎしりした。
「まぁ、余裕あるみたいだし、私が動く必要はないね」
リリーは少し楽しそうに立ち上がりながら言った。
ローランは部屋の出入り口へ向かうリリーを見ずにひたすら黙っていた。
「ま、待て!待ってくれ!」
東和連合の上層部1は扉を開けたリリーを見て冷や汗をかきながら言った。
リリーは止まらず部屋から出た。
アージヴァイズたちはリリーを追いかけるように部屋を出た。
「・・・あいつに国を守ろうという意思はないのか!」
「そうだ!」
「そうだ!」
東和連合の上層部たちはローランを見ながら怒鳴った。
「言いたいことはたくさんありますが・・・私が言ったところでどうにもならないでしょう」
ローランは少しうつむきながら言った。
「橘 カエデ連合人事長に一声かけておきますね」
ローランは東和連合の上層部たちを見てそう言った。
「そ、それだけは!それだけはやめてください!」
東和連合の上層部たちはローランを見て驚きながら慌てて言った。
「では、会議の結果を総帥閣下に報告しないといけないので解散でお願いします」
ローランは東和連合の上層部たちを見てそう言った。
東和連合の上層部たちはうつむいて黙り込んだ。
月浜打撃軍とローランが会議室から出ると、会議室は焦りから一気に静かになった。
リリーを追いかけて部屋を出たアージヴァイズたちはリリーを探し、カフェテリアに行ったが、居なかった。
「リリー・・・どこ行ったんだ・・・あいつ・・・」
アージヴァイズは青眼、黒髪に髪の先端を結んだロングヘア。橘花軍の制服で身を包んだ色白な肌の女性が一人だけ居るカフェテリアを見てそう言った。
「誰かに御用?」
青眼、黒髪に髪の先端を結んだロングヘア。橘花軍の制服で身を包んだ色白な肌の女性はアージヴァイズたちを見てそう言った。
「黄緑色の目で、黒い髪の人見なかった?」
アージヴァイズは青眼、黒髪に髪の先端を結んだロングヘア。橘花軍の制服で身を包んだ色白な肌の女性を見てそう言った。
「そんな"人"は見てないな」
青眼、黒髪に髪の先端を結んだロングヘア。橘花軍の制服で身を包んだ色白な肌の女性はアージヴァイズを見て笑みながら言った。
「リリー・・・どこ行ったんだろう」
オレンジは椅子に座りながら言った。
「・・・やっぱりか」
クォーツ島を歩いていたリリー・ゼノクイーンは廃坑の近くに座った黒色のミニコルセットドレスで身を包んだリアンロゼスティたちを見てそう言った。
「金華様。慎重になるのは良いと思いますが、慎重すぎるのも如何なものかと思いますよ?」
リアンロゼスティはゼノクイーンを消滅させたリリーを見てそう言った。
「・・・」
リリーはリアンロゼスティを見つめた。
「その髪留めを解き、一度力を覚醒させればこの世界は終わります。グローニア様も犠牲が必要だと理解していただけますよ」
「台座へ到達できない以上、何をしたところで同じだ。終わらない夜が再来すれば全て崩れる」
リリーはリアンロゼスティを見てそう言った。
「焦る必要なんてないんだよ。戦う運命は変えられないのだから」
リリーは座り、リアンロゼスティたちを見てそう言った。
「・・・一時間です。戦闘から一時間後、カルジェンが戦闘可能な状態だった場合、私たちも参戦します。最善の策を探すのが私たちの役目ですから」
リアンロゼスティは懐中時計を見てそう言うと、リリーを見た。
「・・・わかった」
リリーは金の懐中時計を手に取り、見てそう言った。
一方、アージヴァイズたちは訓練を行っていた。
「大丈夫か?」
計測装置を装着された黒と青が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだアージヴァイズ・レプシデシアは、黄色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだオレンジ・ゴールドマスターと水色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだエコー・ゼレヴィアンを見てそう言った。
「・・・ちょ、ちょっと・・・怖い・・・」
計測装置が装着されたオレンジ・ゴールドマスターはアージヴァイズ・レプシデシアを見てそう言った。
「もうやめたい」
エコー・ゼレヴィアンはアージヴァイズ・レプシデシアを見てそう言った。
「感情は表に出せ。どんな些細な感情でもな」
「後は、飯のことでも考えてのんびりしてろ。今日の晩飯はエビピラフだって」
アージヴァイズ・レプシデシアはそう言うと、前を向いて目を閉じた。
「エビピラフ・・・」
オレンジ・ゴールドマスターとエコー・ゼレヴィアンはそう言うと、前を向いた。
「エビ・・・」
エコー・ゼレヴィアンは前を見て笑みながら呟いた。
「アージヴァイズ・レプシデシア。リンク値百パーセントを維持。精神状態安定。オレンジ・ゴールドマスター。リンク値四十八パーセント。精神状態不安定。エコー・ゼレヴィアン。リンク値六十八パーセント。精神状態安定」
端末から音声が流れた。
「ドリェシェパノ新兵はグローニア総長がいないと訓練に集中できないか」
クリスティーナはアージヴァイズ・レプシデシアたちを見てそう言った。
「そうですね。グローニア総長は頼れるリーダーですから」
ローランはクリスティーナを見てそう言った。
リアンロゼスティたちと別れたリリーは多くの駆逐艦が打ち上げられた状態で放置されている軍艦の墓場と呼ばれる海岸に来ていた。
「ふぅ・・・」
リリーは一息つくと、髪留めを外した。
すると、すると、リリーの髪が朱色に、瞳が空色に、体が男性に戻った。
空色眼、朱色髪ロングヘア。赤いカッターシャツを着て黒い長ズボンを穿いた立華 梨々香は平らな石の砂を手で払い、枕にして寝転がった。
「・・・」
刃が白色に光る赤く燃える刀を握った赤髪の誰かは誰も居ない街を歩いていた。
刃が白色に光る赤く燃える刀を握った赤髪の誰かは何かに向かっている。
(・・・アーヴァン王国・・・?先祖の呪いか?なんて夢だよ・・・)
梨々香は刃が白色に光る赤く燃える刀を握った赤髪の誰かを見つめた。
梨々香は横を向き、刃が白色に光る赤く燃える刀を握った赤髪の誰かが向かう場所を見て目を見開いた。
そこにあったのは、黒いハート型の物体。それも、小惑星並みの大きさだ。
「・・・」
刃が白色に光る赤く燃える刀を握った赤髪の誰かは黒いハート型の物体を見つめると、刃が白色に光る赤く燃える刀を握り込み、担ぐように構えた。
「剣技。黒滅斬撃波」
刃が白色に光る赤く燃える刀を握り込んだ赤髪の誰かはそう言うと、黒いハート型の物体に刃が白色に光る赤く燃える刀を振った。
その瞬間、赤い炎を纏った白い衝撃波が発生し、町の建物が次々と崩れ、バラバラと黒いハート型の塊になっていった。
刃が白色に光る赤く燃える刀から放たれた白い斬撃波は黒いハート型の物体に向かい、黒いハート型の物体が半分以上抉られた。
「アァァァァ!!!!何だ!!この熱は!!なぜ私の世界でここまでの力を!!」
黒いハート型の物体の中に潜んでいた人型の何かが悲鳴交じりに怒鳴った。
「白梅の仇を・・・空の仇を必ず取ると言っただろう?」
刃が白色に光る赤く燃える刀を握った赤髪の何者かは黒いハート型の物体に潜んでいた人型の何かを見て力強くそう言った。
「来れた!」
青く輝く刀を握った黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだ高貴で可愛い少女は着地してそう言うと、黒いハート型の物体を見た。
「・・・?」
梨々香は目を覚まし、視界に映るこちらを覗き込むように見るリベードリヒを見た。
「リベ・・・?なんで・・・」
寝ぼけながら体を起こした梨々香はそう呟いた。
「梨々香になら会って大丈夫かなって思った」
リベードリヒは梨々香を見てそう言った。
「・・・そうか・・・」
梨々香はコンクリートレンガに座りながら言った。
「梨々香。落ち込んでる?」
「あぁ、まぁ・・・流石にわかるか」
梨々香はリベードリヒを見て笑みながら言った。
「・・・私、少し変わってみようと思った」
「無理するな」
梨々香は沸騰するお湯を見てそう言った。
「・・・無理しなきゃ・・・梨々香が苦しいでしょ・・・?」
「誰に何と言われようと、急に変わるべきじゃない」
梨々香はリベードリヒを見てそう言った。
「・・・人に興味なくなってきたかもだし・・・」
リベードリヒは梨々香を見て笑みながら言った。
「私は無理するリベなんて見たくない。見てるととても苦しくなる」
梨々香はリベードリヒを見て悲しそうに言った。
「梨々香・・・」
リベードリヒは梨々香を見て泣きそうになりながら言った。
「ゆっくり変われば良い。リベードリヒ」
梨々香はリベードリヒを見てそう言うと、左手でリベードリヒを抱き寄せた。
「・・・ありがとう。梨々香」
リベードリヒは梨々香を見て嬉しそうにそう言った。
「・・・実はね?リアンロゼスティに言われたの。梨々香のために変わるべきだって」
リベードリヒは少し悲しそうに言った。
「私からの答えを聞いただろう?自信満々に、胸を張ってゆっくり変わると良い」
梨々香はリベードリヒを見て笑みながら言った。
「・・・華燦二主神様・・・」
赤眼、薄朱色髪ツインテール。薄朱色と赤色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだジェシカ・デュ・リーは駆逐艦の外から少し気まずそうに言った。
「ジェシカか。入ってくれ」
梨々香はリベードリヒからゆっくりと離れながら言った。
「・・・」
ジェシカは覗き込むように内部を見ると、駆逐艦内部に入った。
ジェシカ・デュ・リー。
グローニア系眷属神、茜彗星の力を持つ上位神。
この世に数少ない始祖剣技の使い手。
「これを」
ジェシカは百リズ分のリズ紙幣の束を梨々香に差し出しながら言った。
「ありがとう」
梨々香はジェシカを見てそう言うと、札束を受け取った。
「どうぞ」
ジェシカはリベードリヒに百リズ分のリズ紙幣の束を差し出しながら言った。
「ありがとう」
リベードリヒは札束を受け取りながら言った。
「今回は多いね」
リベードリヒはジェシカを見てそう言った。
「アディ式の武装を買う疑似神姫が急増してまして」
ジェシカはリベードリヒを見てそう言った。
「エンジェル姉妹も買い続けているのか?」
梨々香はジェシカを見てそう言った。
「えぇ。最近は疑似神姫まで買収し始めているようで、月浜と戦争すると意気込んでいますよ」
ジェシカは梨々香を見て笑みながら言った。
「月浜国も大変だな。次から次へと敵ができて」
「まぁ、そうですね」
「・・・では、私はこの辺りで失礼します」
ジェシカは梨々香にお辞儀しながら言った。
「はい。ご苦労様」
梨々香はジェシカを見て笑みながら言った。
ジェシカは外に出て、駆逐艦から離れると、光を纏い、途轍もない速度で直上していった。
「ご飯食べよ。お腹空いた」
リベードリヒは梨々香を見て笑みながら言った。
「そうだね」
梨々香はリベードリヒを見て笑みながら言った。
リベードリヒとの食事を終えた梨々香は髪留めをしてリリーになり、モントベルワーズビーチ基地に戻った。
リリーが部屋のドアを開けると、エビピラフを食べて少し上機嫌なアージヴァイズたちがリリーを見た。
「ただいま」
リリーはそう言うと、椅子に座った。
「なんだか良い香り・・・!」
オレンジはリリーを見て笑みながら言った。
「レティツィア社のRみたいな高い香水の匂いがする!」
エコーはリリーを見て笑みながら言った。
「Rなんて名前の香水があるの?」
アージヴァイズはエコーを見てそう言った。
「うん。五十ミリリットルで百リズくらいする香水」
エコーは水を飲むアージヴァイズを見て笑みながら言った。
「ぶうぅぅぅ!」
アージヴァイズは水を吹いた。
「ひゃ、百リズ!?たった五十ミリで!?」
アージヴァイズはエコーを見て驚きながら言った。
「十数分前まで一緒にいた幼馴染が愛用してるからね」
リリーは携帯端末を見てそう言った。
「幼馴染?」
ミッケはリリーを見てそう言った。
「幼馴染って誰だ?」
アージヴァイズはリリーを見てそう言った。
「幼馴染は幼馴染だよ」
「名前は?」
ミッケはリリーを見てそう言った。
「知ってどうするんだよ」
リリーはミッケを見て少し笑いながら言った。
「まぁ、そうだけど・・・」
アージヴァイズはリリーを見てそう言うと、冷蔵庫に向かった。
「どんな子なの?リリーみたいに大人っぽい?」
エコーはリリーを見てそう言った。
「私より大人っぽい。体大きいし、大人しいし」
「へぇ~」
エコーはリリーを見て笑みながら言った。
一方、クリスティーナは今年の春に九十五歳になった橘花国の君主、橘 みより皇女と総帥就任後、初めて会談兼食事会を行っていた。
「どうも。新総帥のクリスティーナ・オブ・クーパーです」
みよりを見るクリスティーナはトマトソースに小さなサラミが数枚、チーズがちょっと乗ったミニピザを机の上に乗せながら言った。
「橘花皇国第二代皇女の橘 みよりです。どうぞよろしく」
モニターに映るみよりはクリスティーナを見てそう言った。
「お元気そうですね」
クリスティーナは薄いトマトソースに細切れのサラミが数粒、チーズがほんのちょっと乗ったミニピザを食べながら言った。
「えぇ、今は国民に介護されているけれど・・・」
木製のスプーンを持ったみよりはモニターに映るクリスティーナを見てそう言うと、とても小さなお椀を持ち、ゆっくりと梅肉が乗ったおかゆを口に運んだ。
「・・・何だが、国民に対して申し訳ない思い出一杯ですよ。つい一ヶ月前まで普通の国民だったのに・・・」
「親族を断頭台へ送れるほど心が強ければ良かったわ。そうしたら、どれだけの命が救えていたかしら」
モニターに映るみよりはクリスティーナが食べる薄いトマトソースに細切れのサラミが数粒、チーズがほんのちょっと乗ったミニピザを見てそう言った。
「そうだ。近々直接会いたいの。月浜打撃軍のメンバーに会いたくてね」
モニターに映るみよりはクリスティーナを見てそう言った。
「そうですね・・・では、今月の二十三日なんてどうでしょうか。グローニア総長も一日基地に居ますので」
クリスティーナはみよりを見て笑みながら言った。
「わかった。じゃあ、二十三日に行くわ」