宿幼決戦編 七章 思い出は赫灰と化して散る
「・・・」
最上大業物日炎を握ったアイリアは妙に色彩がはっきりとした大樹を見た。
なぜかとても寂しく、とても懐かしい。
この感情はアイリアを困惑させる。
「・・・来てくださいましたか・・・」
妙に色彩がはっきりとした大樹を背もたれにして座った黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだありきたりながら可愛い乙女はアイリアを見て笑みながらそう言った。
(これが・・・アレフ・・・??邪気も何もない・・・ただの人間みたいなこの子が・・・??)
アイリアは黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだありきたりながら可愛い乙女を見て冷や汗をかく。
「あなたと少し話がしたかった」
黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだありきたりながら可愛い乙女は笑みながらそう言った。
「・・・話?」
最上大業物日炎を握ったアイリアは黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだありきたりながら可愛い乙女を見てそう言った。
「そうです・・・ちょっとした話」
「・・・」
アイリアは黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだありきたりながら可愛い乙女を見つめる。
「陽に憧れ陽に嫌われた王国の王女である私を優しく受け入れてくださり、ありがとうございました」
「あなたのおかげでとても綺麗で、とても楽しい日々を過ごせた」
黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだありきたりながら可愛い乙女は微笑みながらそう言った。
ここに自分が居ないと錯覚するような奇妙な空気をアイリアは感じ取る。
この子には何が見えてるんだろう。この子は誰に感謝を伝えてるんだろう。
アイリアはただひたすらに考える。
あなたが王国に着いたという一報を梨子様と共に見ました。
梨子様はお兄様が戻ってくるまでは婚約しないと言い、集落の人たちもそれを受け入れて、みんなあなたの帰りを待っていました。
あなたは帰ってきませんでしたが、手紙は届きました。
あの日と変わらない綺麗な字・・・あなたの優しさが伝わる文。
みんな、みんな・・・あなたの手紙を見て歳を重ねました。
私も・・・ずっとあなたを思っていました。
老いてシワが深くなった私の所に可愛い可愛い妹が来ました。遥々王国から・・・
あの日と大して変わらない可愛い可愛い妹は、私にあなたの最期を伝えてくれました。
泣いて、悔やんで、心の痛みが伝わるくらい辛そうに・・・
「あなたの活躍を祈っております。あなたなら、きっと仇を討てましょう。華千﨑様」
黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだありきたりながら可愛い乙女は深々と頭を下げてそう言った。
「・・・」
アイリアは赫灰と化して消えていく黒眼、黒髪ロングヘア。黒いワンピースで身を包んだありきたりながら可愛い乙女と色彩が戻る大樹を悲しそうに見た。
アイリアは飛んでいく赫灰を追いかけて振り向いた。
「-----。-------・・・」
梨々香は掌に飛んできた赫灰を見て笑みながらそう言うと、赫灰が消滅した。
「・・・陽に憧れ、陽に嫌われた王国って?」
アイリアは梨々香を見てそう言った。
「夜を司る神の寵愛を受けた王国、グイーザス。友の故郷でもある」
梨々香はゆっくりと歩みを進めながら言った。
「あの人は知り合い?」
黒鞘に納まった刀を持ったアイリアは梨々香を見てそう言った。
「私にグイーザスのことを教えてくださったお方です」
梨々香は大樹を見てそう言った。
「最後くらい・・・挨拶してあげればよかったのに」
アイリアは梨々香を見て笑みながらそう言った。
「あれは神核に閉じ込められていた情報が神気と混ざって見えるようになっただけです。彼女たちは、とうの昔に消えてしまった」
梨々香は大樹を見て思い出に浸りながらそう言った。
「・・・」
梨々香の表情を見て驚くアイリアは大樹を見た。




