宿幼決戦編 五章 決戦、天道の勇者対アルフ 其一
同年、三月二十三日。
休暇を終えてミリア基地に戻ったアイリアが初めての任務に出た。
初任務ということもあり、今まで数々の任務をこなして来た中央隊のメンバーたちは自信満々なアイリアを少し心配している。
「私の剣すごくな~い?リリーから貰ってさ~」
るんるんで歩くアイリアは鞘に納まった剣を自慢げに見せながら言った。
「あのボスから?本当に?」
エコーはアイリアが握った鞘に納まった剣を見てそう言った。
「剣を譲るような関係なら、話してくれてるだろ。お前の話なんて聞いたことないぞ?」
アージヴァイズは蔑んだ目でアイリアを見てそう言った。
「私、これでも第三代戦姫隊の初期メンバーだったから。結構強いよ?」
アイリアはアージヴァイズを見て笑みながら言った。
「じゃあ、月浜四剣士と戦ったことあるんだよね?どうだった?」
オレンジはアイリアを見てそう言った。
「・・・」
オレンジの質問にアイリアは少し暗い顔をした。
「リリーやエリーも話したがらなかったことを聞いちゃ悪いよ」
眉を顰めたエコーはオレンジを見てそう言った。
「あぁ・・・流石に仲間も失ってるしな・・・」
アージヴァイズはオレンジを見てそう言った。
「うん・・・ごめん」
眉を顰めたオレンジはアイリアを見てそう言った。
「・・・私はママと戦ったんだ」
アイリアは前を向いたままそう言った。
「・・・ママ?」
オレンジはアイリアを見て少し困惑しながら言った。
「母親・・・と?」
エコーはアイリアを見て少し驚きながら言った。
「アンティーナ・コア。当時、魔剣士って呼ばれてたっけ・・・まぁ、私が生きてるってことは・・・そういうことなんだよ」
眉を顰めたアイリアはオレンジたちを見て笑みながら言った。
「・・・」
眉を顰めたオレンジたちは顔を見合わせた。
「まぁ、ママは生きてるし?あの頃のママはおかしくて、少し嫌いだったから・・・まだ良かったよ・・・」
アイリアは前を向いて少し悲しそうに言った。
「まぁ、ちょっとは期待してるよ・・・」
オレンジはアイリアを見てそう言った。
「ありがとう。言葉をかけてくれて」
アイリアはオレンジを見て笑みながら言った。
「・・・」
眉を顰めたオレンジは申し訳なさそうにうつむいた。
「あ、お婆さんが困ってる」
エコーは困っている人を見てそう言った。
「私が手伝って来る!」
アイリアはそう言いながら困ってる人の所へ駆け寄った。
「大丈夫ですか?手伝いますよ」
アイリアはおばあちゃんを見て笑みながらそう言うと、いくつも重ねられた三十キロの米袋を軽々持ち上げた。
「まぁ、ありがとう」
おばあちゃんは馬車の荷台に三十キロの米袋を乗せるアイリアを見て笑みながら言った。
「お気をつけて~」
手を振るアイリアは馬車を引くおばあちゃんを見て笑みながら言った。
「意外と親切なんだね」
オレンジはアイリアを見て笑みながら言った。
「イェーイ。評価て~ん」
アイリアはオレンジを見て笑みながら言った。
「うーん・・・どういうやつなのかわかんねぇな・・・」
アージヴァイズはアイリアを見て苦笑いしながら言った。
オレンジたちが歩き始めると、アイリアはオレンジたちについていった。
「・・・お前はあんなことをしていたのかい?」
建物の屋根に座った青眼のリベードリヒはオレンジたちを見てそう言った。
「あんな飄々とした態度はとったことないけど・・・あの子から見た私はあんな感じだったんだろうね」
町を巡回するオレンジたちがとある地域に入ろうとした瞬間、薄い黒色の雨が降って来た。
「・・・黒雨。避難するよ」
オレンジは雨粒を見てそう言うと、店の軒先に避難した。
「はぁ・・・薄くて助かった・・・」
安堵するエコーは長椅子に座ってそう言った。
「"死星災害"が多くなってきてるな・・・」
アージヴァイズは降る雨を見てそう言った。
「事態を重く見る必要があるね」
オレンジは降る雨を見てそう言った。
死星災害。
各地の淵地から溢れる神気によって発生する災害。
現在は黒雨、赫雷、灰霧という三種類の異常気象が確認されている。
「・・・」
アイリアは降る雨を見ながら思い出にふける。
「・・・」
刀が飛び、雨に濡れたアイリアは転がるように倒れた。
「アイリア、お前は強い。しかし、今のお前はまだ未熟だ」
雨に濡れた黄緑色眼、金髪ややカールがかかったロングヘア。黒い着物を着た女性は雨に濡れたアイリアを見てそう言った。
「・・・」
雨に濡れたアイリアは刀を握り、立ち上がった。
「邪悪はこの俗世に迫り続けている。強くならなければ呑まれるぞ」
「・・・」
濃くなる黒雨を見るアイリアは飛んできた途轍もない速度で急降下して来たアルフを鞘に納まった剣で防いだ。
その瞬間、途轍もない衝撃波が発生し、オレンジたちが吹き飛ばされ、瓦礫が宙を舞った。




