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レディフ・フィアンゼ編 六章。 リリー対常夜の神姫。

同年、九月七日。

橘花国にサウスドラゴニアの最強精鋭部隊、王立精鋭騎士団ドラインネスコとサウスドラゴニア王族へその国の評価を記した書類を提出する王立書記団が来た。

少女たちも強制労働者たちもこの時だけは基地の外に出され、基地への帰還が一日禁止される。


「こんな時だけ私たちを外に出すんだね」


赤い横線が一本入った黒い服を着て黒いショートパンツを穿いたリリーの横後ろを歩く黒いシャツに青いパーカーを着てデニム生地のスカートを穿いたエコーはリリーを見てそう言った。

「王立書記団長の評価次第で物品や通貨の価値が決まるからね」

歩道を歩くリリーは前を見てそう言った。

「通貨価値まで・・・」

エコーの少し後ろを歩く橙色のフリルがついたワンピースで身を包んだオレンジはリリーを見てそう言った。

「国土がバカみたいに広くて、軍事力が異次元ってだけで相当な影響力があるにゃ」

オレンジの後ろを歩く灰色のワンピースで身を包んだミッケはオレンジを見てそう言った。

「そんな異次元な国が貴金属と燃料の産出量大陸一となると・・・逆らうのは無理だな」

リリーの横を歩く黒い長袖シャツを着て黒いショートパンツを穿いたアージヴァイズはリリーを見てそう言った。

「言い訳するのも怖くてできない。だから評価が大幅に下がりそうな存在を隠すんじゃないか」

リリーはアージヴァイズを見てそう言った。

「そうか・・・」

アージヴァイズはリリーを見てそう言うと、前を見た。


少女たちはリリーの奢りでカフェのバルコニー席でのんびりとお茶し始めた。

アージヴァイズたちはお茶を注文し、リリーはカフェオレを注文して飲んでいた。

「どうしてバルコニーなんだよ」

アージヴァイズはリリーを見てそう言った。

「ここからすごい景色が見れるんだよ」

リリーは外を見てそう言った。

橘花国の憲兵団が車道を通行禁止にし始めると、歩道に人が集まり始めた。

「なにか始まるの?」

エコーはリリーを見てそう言った。

「見てればわかるよ」

「ふーん」

エコーはリリーを見てそう言うと、外を見た。

少しすると、聞きなれない大きな音が聞こえてきた。

「うぇ!?」

エコーは驚きながら道路を見た。

重厚な鋼鉄製の防具をつけた二トン後半から三トンあるであろう馬。

そんな馬二頭に曳かれるサウスドラゴニアの国旗が掲げられた豪華で威圧感がある馬車が道を走り抜けた。

「す、すご・・・!」

オレンジは馬車を見て驚きながら言った。

リリーは基地へ向かう馬車を見つめていた。


一方、橘花基地の入り口にひよりたちが待機していた。

そんなひよりたちの所へ五台の馬車が到着した。

「ど、どうも」

馬車から降りた王立精鋭騎士団ドラインネスコの団長、マルグリット・ド・アルネゼデールはひよりを見てそう言った。

「あ、相変わらずすごい馬車ですね」

ひよりはマルグリットを見て笑みながら言った。

「今回はサウスパレード産駒の若い馬だ。体重は二千三百キロとまだまだ」

馬を見たマルグリットはひよりを見てそう言った。

「二、二千三百キロ・・・」

橘花軍の軍人たちは馬を見て驚きながら言った。

「早速ですが、視察を行います」

王立書記団長、ジュリー・ド・ルキーニはひよりを見てそう言った。

「えぇ、どうぞ」

ひよりはジュリーを見て笑みながら言った。

ジュリーたちは基地内を敷地の端から端まで見始めた。

前科がある橘花国の調査はかなり厳しく、落ちている髪の毛一本すら回収し、それを簡易検査機にかけるほどだ。

「この農具の使用者は?」

ジュリーはひよりを見てそう言った。

「え、えぇっと・・・」

ひよりはジュリーを見てそう言うと、橘花軍の軍人1を見た。

「・・・はい。石川 めぐみ一等兵です」

橘花軍の軍人1はジュリーを見てそう言った。

「なるほど」

ジュリーはノートを見ながらノートに文字を書きながら言った。

(石川 めぐみ一等兵の髪の毛をつけておいたから、奴らはその髪を検査して満足するだろう)

橘花軍の軍人1はジュリーを見た。

「毛髪発見」

王立書記団員1はジュリーを見てそう言った。

「・・・そうですか」

ジュリーは髪の毛を見てそう言った。

ジュリーはノートを見てノートに文字を書き始めた。

(あ、あれ?髪は検査にかけるはず・・・)

橘花軍の軍人1はジュリーを見つめた。

「何を緊張してるんだ?」

マルグリットは橘花軍の軍人1を見てそう言った。

「え?あぁ、こう言う仕事は初めてなもので・・・」

橘花軍の軍人1はマルグリットを見て笑みながら言った。

「・・・」

ジュリーは橘花軍の軍人1を見てからノートを見てノートに文字を書き始めた。

「・・・」

ノートに文字を書くジュリーを見たひよりは橘花軍の軍人1を睨んだ。

ジュリーは再び歩き始めた。

ジュリーの後ろを王立書記団員、ドラインネスコ団員、ひよりと橘花軍の軍人たち、マルグリットの順で並び、ついて行った。

ジュリーは基地にある対空車両の前で足を止めた。

「アウスの占領は良い評価ができませんが、軽度の警告でアウスを解放したことは良い評価ができます」

ジュリーは橘花軍が鹵獲したP-921対空車両を見ると、ノートに文字を書きながら言った。

「・・・あ、ありがとう・・・ございます・・・」

ひよりは橘花軍が鹵獲したP-921対空車両を見てそう言った。

「橘花軍による二度目の春雫侵攻は、女王陛下が橘花国に反省が見られない。と、酷評した行為です。これ以上反省が見られない場合、女王令が出る可能性もありますので、どうぞご注意を」

ジュリーはひよりを見てそう言った。

「は、はい・・・」

ひよりはジュリーを見てそう言った。

その後は視察が順調に進み、最後まで何もなく終わると思われたが、そう思ったようにはならなかった。


ジュリーたちは少女たちの部屋の前で足を止め、部屋を見た。


「・・・」


ジュリーとマルグリットは顔を見合わせ、怪訝な顔をする。

不自然なまでに綺麗にされた部屋であるため、疑われたのだ。


「隈なく調査」


ジュリーから命令を受けた王立書記団員たちは一斉に調査を始めた。

証拠こそ見つからなかったが、王立書記団は少女たちの部屋を何か重大な疑惑がある部屋として記録した。

重大な疑惑。と言う記録は、評価を左右する重大な記録で、ひよりにとってこれまでにないほど厄介なものだった。


その頃、少女たちはカフェで軽く食事をしていた。

「月浜はサウスドラゴニアに媚び売ってないのかにゃ?」

フォークを持ったミッケはリリーを見てそう言った。

「なかったね。月浜物流管理局が南大陸から飲料水と引き換えに資材を得ているから頼る必要がないんだよ」

リリーはフォークを持ったミッケを見てそう言うと、カフェオレを飲んだ。

「南大陸のことって詳しく聞いたことないけど、どんな場所でどんな国があるの?」

ケーキを食べるオレンジはリリーを見てそう言った。

「一割の緑地に九割の砂漠。大砂漠地帯の中心部には死油湖という石油の湖がある。水が何よりも貴重で、数十年前まで水を求めて部族間の争いが起きていたけど、極東連合と交易を開始した時から多部族単一人種の王国になった」

リリーはオレンジを見てそう言った。

「石油の湖って・・・焼夷弾攻撃とか受けたらヤバくない?」

エコーはリリーを見てそう言った。

「大砂漠地帯は東西直線距離で五千キロ以上もある。水もなければ大した植物もない。サボテンを求めて生き物が迷い込むことがあるけど、そんな場所に人なんて寄り付かないし、動物も滅多やたらに寄り付かない。燃やしたところで大した実害はないだろうね」

リリーはエコーを見てそう言った。

「ヤバいほど広いじゃん」

「王国の繁栄具合はどんな感じなの?」

アージヴァイズはリリーを見てそう言った。

「緑地が一応王都らしいけど、大型動物の縄張り争いが激しすぎるせいで全然繁栄してないらしい。交易が行われている港町の方が繁栄しているって」

リリーはアージヴァイズを見てそう言った。

「へぇ~」

アージヴァイズたちはリリーを見て関心高そうにそう言った。


「伏せた方が良いよ」


マグカップを持ったリリーはそう言うと、カフェオレを飲んだ。


「え?」


急に発せられたリリーの言葉にアージヴァイズたちはリリーを見て首を傾げた。

その時、途轍もない衝撃波が町を襲い、窓ガラスが一斉に割れ、老朽化した建物が次々と崩れて木材や瓦が舞い上がった。

「・・・」

うずくまっていたアージヴァイズは目を見開き、周りを見渡しながら立ち上がった。

オレンジとエコーとミッケはバルコニーに倒れていて、吹き飛ばされた瓦がカフェの屋根に突き刺さっていた。

「・・・マ、マジかよ・・・ヤバすぎ・・・何が起きたんだよ・・・」

冷や汗をかくアージヴァイズは屋根に突き刺さったを見て驚きながら言った。

「"神気風"だよ」

アージヴァイズと違い、全く動じていないリリーはアージヴァイズを見てそう言った。

「こ、これがあの妙な風だって!?嘘だろ!?」

「・・・ここへ来る」

マグカップを持ったリリーは脚を組み、少し前傾姿勢になりながら空を見てそう言った。

アージヴァイズは空を見ながら身構える。

その瞬間、強烈な風が吹き、垂れた冷や汗が風に飛ばされた。

赤眼、黒髪にツインテール。黒い服に身を包んだかなり白い肌の黒の神姫グイードリヒ・グヴァンゼァムが黒い光と強烈な神気風をまき散らして静止し、リリーたちを見た。

「・・・」

冷や汗を垂らすアージヴァイズは神気風を受けてよろける。


「・・・し、神姫がどうしてここに・・・」


床に片膝を突いたアージヴァイズはグイードリヒ・グヴァンゼァムを見て驚きながら言った。

「やっと見つけた・・・リリー・グローニア・ハッゼウ!」

グイードリヒ・グヴァンゼァムはカフェオレを飲むリリーを見て笑みながら言った。

「さぁ!痛い目を見たくなければゼノクイーンを渡して!」

グイードリヒ・グヴァンゼァムは少し楽しそうに笑むリリーに手を差し出しながら言った。

リリーとグイードリヒ・グヴァンゼァムが見つめ合うと、静寂が訪れた。

「・・・クシュッ」

リリーはくしゃみをした。

「ごめん」

リリーはグイードリヒ・グヴァンゼァムを見て少し笑いながら言った。

(何平然としてんだ・・・!!神姫が・・・神姫が目の前に居るんだぞ!!)

焦るアージヴァイズはリリーを見つめた。

「まぁ・・・今日の所はこれで勘弁してくれよ」

一リズ紙幣を少し乱暴に差し出したリリーはグイードリヒ・グヴァンゼァムを見てそう言った。

「バカにしやがってぇぇぇぇ!!!!」

怒筋を浮かべたグイードリヒ・グヴァンゼァムは目を見開いて怒鳴った。

その瞬間、再度放たれた内臓全てを破壊するような感覚に襲われるほど強い神気風によってアージヴァイズが気を失い、ついに倒れた。

「後悔させてやる!!私に喧嘩を売ったことを!!」

黒の剣を生成して握るグイードリヒ・グヴァンゼァムはリリーを見て怒鳴った。

「はぁ・・・」

リリーは少しうつむいてため息をつくと、立ち上がった。

「五年も神の類として生きているのにその幼稚さか」

リリーは黒の剣を握ったグイードリヒ・グヴァンゼァムを見てそう

言った。

「よ、幼稚・・・?幼稚だって!?」

黒の剣を握ったグイードリヒ・グヴァンゼァムは目を見開き、リリーを見て怒鳴った。

「幼稚だ。幼稚が極まっている」

「な、なんだよ・・・何を持ってるんだよ・・・」

黒の剣を握ったグイードリヒ・グヴァンゼァムはリリーの手に握られた銀色の光る何かを見てそう言った。

「・・・」

リリーが動いたその瞬間、グイードリヒ・グヴァンゼァムは黒の剣を握り込んだ。

振られた黒の剣は斬撃波を放ち、斬撃波がリリーに向かった。

リリーは斬撃波を弾き飛ばし、グイードリヒ・グヴァンゼァムが、グイードリヒ・グヴァンゼァムの目の前まで飛んできた。

(こいつ・・・!!)

黒の剣を握ったグイードリヒ・グヴァンゼァムはリリーを見て驚き、目を見開いた、

リリーの手に握られていたのは、ただのスプーン。

リリーはただのスプーンで斬撃波を弾き飛ばしたのだ。

「剣技!!太陽回転斬り!!」

スプーンを握ったリリーはそう言うと、縦に一回転した。

「こいつ・・・人間じゃない・・・!!」

黒の剣を握ったグイードリヒ・グヴァンゼァムは放たれた陽光を見て唖然としながら言った。

「ダアァァアァァァ!!!!」

黒の剣を手から離したグイードリヒ・グヴァンゼァムは叫びながら顔を押さえ墜ちていった。

「・・・あぁ・・・なんだ!!この傷ぅ・・・!!」

目を見開いたグイードリヒ・グヴァンゼァムは火傷を見て泣きながら言った。

「許さない・・・絶対に殺してやる・・・」

グイードリヒ・グヴァンゼァムは起き上がり、リリーを睨みながら言った。

グイードリヒ・グヴァンゼァムは瞬間移動すると同時に黒の剣を生成して握った。

「・・・」

リリーは振られた黒の剣を避け、カフェテリアから飛び降りた。

走るリリーの近くに斬撃波が当たり、大きな土煙を上げた。

「死ね!死ね!死ねぇぇぇぇ!!!!」

黒の剣を振る怒筋を浮かべたグイードリヒ・グヴァンゼァムは走るリリーを見て怒鳴った。

リリーが遠くへ行くと、黒の剣を握ったグイードリヒ・グヴァンゼァムはリリーを追い始めた。

リリーが道を曲がったことを確認したグイードリヒ・グヴァンゼァムは笑みを浮かべた。

「この直線ごと消し飛ばす!!」

目を見開いたグイードリヒ・グヴァンゼァムは滑るように空中で静止した。

その瞬間、強力な陽光がグイードリヒ・グヴァンゼァムを襲った。

陽光が炎になり、炎が道に並ぶ建物を焼いた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

燃えるグイードリヒ・グヴァンゼァムは赤炎を見て悲鳴を上げた。

(殺される・・・この化け物に・・・)

地面に落ち、転がったグイードリヒ・グヴァンゼァムはゆっくりと迫るリリーとその手に握られた赤く輝く刀を見て目を見開いた。

(乱れる・・呼吸が・・・見たくない・・・あの刀・・・!!)

息を荒げたグイードリヒ・グヴァンゼァムの髪留めが千切れると、神気が溢れて瞬時に傷が治った。

傷が治ったグイードリヒ・グヴァンゼァムはリリーに背を向けて全力で逃げた。

「・・・」

赤く輝く刀を握ったリリーは脚を止めると、黒鞘を生成して握り、赤く輝く刀を黒鞘に納めた。

「・・・う、嘘・・・だろ?」

目を覚まし、起き上がったアージヴァイズはボロボロになった街を見て驚きながら苦しそうに言った。

「なんで・・・どうして・・・どうしてこんな恐ろしい・・・!!」

汗を垂らすグイードリヒ・グヴァンゼァムは高速で飛びながら言った。

「許さない・・・絶対!!許さないぞ!!リリー・グローニア・ハッゼウ!!」

悔しそうにそう言うグイードリヒ・グヴァンゼァムはどこかへ逃げた。

「・・・はぁ・・・」

カフェテリアに戻ったリリーは椅子に座った。

「あ・・・あぁ・・・あ・・・」

アージヴァイズはボロボロになった街を見渡して唖然としていた。

気を失っていた内に起きた途轍もない騒ぎにドラインネスコと王立書記団が駆け付け、状況を確認し始めた。


「・・・」


周りを見ていたマルグリットはリリーと目を合わせた。

「うわぁぁぁぁ!!火がすげぇぁぁぁぁ!!!!」

破裂音を聴いて我に返ったアージヴァイズはカフェの室内から小爆発して上がる炎を見て冷や汗を垂らしながら叫んだ。

「臭!焦げ臭!」

ミッケは急いで起き上がりながら言った。

「も、燃えてる!?」

エコーは炎を見てそう言うと、飛び起きた。

「え!?」

オレンジは炎を見てそう言うと、炎から離れた。

アージヴァイズたちは柵から家屋の屋根に飛び移り、コンクリート塀に飛び移って降りた。

「やはり・・・ゼノクイーン・・・」

マルグリットはゆっくりと上昇するリリー・ゼノクイーンを見てそう言った。

「下がってください!危ないですよ!」

消防団員はマルグリットを見てそう言った。

「・・・」

マルグリットは空に光る赤い星を見ながら下がった。


騒ぎによってリリーが橘花国にいるとバレ、戦姫隊があるかもしれないという疑いが橘花国にかけられた。

橘花国は疑いがかけられると、少女たちにレムフィト支部への異動を命令した。


同年、九月八日。

異動命令が出た少女たちが東和連合レムフィト支部があるレムフィト北海岸、モントベルワーズ州へ到着した。

レムフィト北海岸の街へ早く到着した少女たちは、リリーの奢りでのんびりと昼食をとっていた。


「まともなご飯美味し~」


フォークを片手に持ち、口にトマトソースをベッタリ付けた黄色いシンプルなワンピースで身を包んだオレンジは海鮮トマトパスタを見て笑みながら言った。

「うんめぇ~」

赤い横線が一本入った黒い服を着て黒いショートパンツを履いたアージヴァイズはそう言い、海鮮トマトパスタを食べた。

少女たちはあっという間に昼食を食べ終えると、街を観光し始めた。

しかし、街は百年以上続く不景気せいでほとんどがボロボロになっていて、犯罪が横行するスラム街になっている。

「・・・ん」

子供はバラの花を一輪、リリーに渡しながら言った。

「悪いな。私はこの花が似合うほど綺麗じゃない」

赤紫色のリボンがついた黒いワンピースで身を包んだリリーはバラの花を差し出す子供を見て笑みながら言った。

「ん」

子供がバラの花を一輪、アージヴァイズに渡しながら言った。

「なんだよ。そう言わずに受け取りゃ良いのに」

アージヴァイズはバラの花を受け取りながら言った。

「ん」

子供はアージヴァイズを見ながら手を差し出した。

「え?」

バラの花を持つアージヴァイズは手を差し出す子供を見てそう言った。

「ん!」

子供はアージヴァイズを見て手をもう一度差し出した。

「・・・」

リリーは子供の手のひらに百スー硬貨を置いた。

百スー硬貨を受け取った子供はどこかへ走っていった。

「・・・え?」

アージヴァイズたちは首を傾げながら言った。

「州政府が囲う半グレ集団がバックについてる花売りだよ。無賃労働は当たり前、食事は一日一食、寝床は地下の洞穴だ」

リリーはアージヴァイズたちを見てそう言うと、歩き出した。

「マジかよ・・・」

アージヴァイズはリリーを見てそう言うと、駆け足でリリーについていった。

オレンジたちはリリーたちについていった。


少女たちは少し早めに東和連合レムフィト支部があるモントベルワーズビーチ基地に到着した。

「戦姫隊の皆さま。お待ちしておりました。基地長のローラン・フォルト・ベネトです」

ローランはリリーたちを見て笑みながら言った。

「街、随分荒れてるな」

アージヴァイズはローランを見てそう言った。

「えぇ、まぁ」

ローランはアージヴァイズを見て苦笑いしながら言った。

「海鮮トマトパスタは美味しかったよ。高かったみたいだけど」

オレンジはローランを見て笑みながら言った。

「海の幸が有名だったんですけどね・・・ガイラー前総帥がそれを生かそうとしなかったんですよ・・・」

ローランはオレンジを見てそう言った。

「へぇ~」

アージヴァイズたちはローランを見てそう言った。

「・・・雑談はここまでにして、寮室に案内しますね」

ローランはリリーたちを見て笑みながら言った。


少女たちに用意された部屋は1LDKの部屋。日当たりも程々に良い。

「広ーい!」

オレンジは部屋を見て笑みながら言った。

「前の部屋とは大違い・・・」

藍色の貴族服のような高貴な服で身を包んだエコーは部屋を見て笑みながら呟いた。

「もうここを本部にした方が良いよ」

エコーはクッションが敷いてある木製の椅子に座りながら言った。

「そう言えば、どうして私たちはレムフィトに送られたの?騒ぎを起こしたのは黒い奴じゃん」

エコーは灰色のワンピースで身を包んだミッケを見てそう言った。

「戦姫隊の存在をサウスドラゴニアに知られたくないんだにゃ」

ミッケはエコーを見てそう言った。

「どうして?」

「さぁ。それはわからないにゃ」

「サウスドラゴニア王族はレムフィトとかに来ないし、存在を知られたくないのは確かだにゃ」

ミッケは枕に顔を埋めながら言った。

「リリーが絶対に何か知ってる。黒い奴がゼノクイーンを渡せとか言ってたし・・・」

アージヴァイズはエコーを見てそう言った。

「ゼノクイーンに何か秘密が?」

オレンジはアージヴァイズを見てそう言った。

「秘密しかないだろ。AA-09Aの中で唯一個人の所有物なんだぞ?」

アージヴァイズはオレンジを見てそう言った。


一方、リリーはモントベルワーズビーチ基地の一室に籠るエリー・V・ヘリズランドの部屋へ行き、会っていた。

籠りきりで技術者をしているエリーの部屋は資料が大量に積まれていてかなり狭い。

「陛下。どうしてここに?」

緑眼、金髪にツインテール。タオル生地の青いパジャマ服で身を包み、厚手の黒タイツを履いた色白な肌のエリーはリリーを見てそう言った。

「少し紅雷姫と戦うことになってね・・・騒ぎになって異動命令受けちゃったよ・・・」

リリーはエリーを見てそう言うと、資料の上に腰かけた。

「紅雷姫・・・本当に可哀想な子だね・・・」

エリーはリリーを見て悲しそうに言った。

「自分で選んだことだ。そっとしておくんだ」

リリーはエリーを見てそう言った。

「うん・・・」

「・・・リアンロゼスティのことは何かわかった?」

「夜片眷属討伐隊が調査した結果、やはり夜片眷属だった」

「・・・ヴェルの子孫だから破血を使えると思っていたのだが・・・残念だ」

リリーは唸るようにそう言った。

「奴が夜片眷属ならば、リベードリヒを狙うはずです。護衛を付けましょうか」

エリーはリリーを見てそう言った。

「いいやダメだ。力が発動したらお前たちであっても容易に殺される」

リリーはエリーを見てそう言った。

「お言葉ですが・・・破界終世ノ源神の力は陛下がおっしゃるほどの力ですか?」

「夜の力は圧倒的過ぎる。今のままでは・・・一太刀すら入れられない・・・」

リリーは拳を握り、悔しそうに言った。

(破界終世ノ源神・・・どこまで巨大な力を持っているんだ・・・)

冷や汗をかくエリーはリリーを見つめた。


一方、ローランは戦姫隊の軍人たちを集めて会議を行っていた。

「リリー・グローニア・ハッゼウは月浜との繋がりがあるだけじゃなく、世界を恐怖と絶望に染め上げる力を持っていると言われています」

戦姫隊の軍人3はローランを見てそう言った。

「リリー・グローニア・ハッゼウは月浜に情報を渡している可能性が高いです!あまりに危険です!」

戦姫隊の軍人2はローランを見てそう言った。

「・・・世界を恐怖と絶望に染め上げる力というのは気になりますね」

ローランは戦姫隊の軍人たちを見てそう言った。

「月浜との繋がりは!?」

戦姫隊の軍人3はローランを見てそう言った。

「月浜国という大陸一の産業大国が東和連合にある情報を欲しがるとでも?自分たちを過大評価し過ぎですよ」

ローランは戦姫隊の軍人3を見て少し笑いながら言った。

「・・・」

戦姫隊の軍人3はローランから目をそらした。

「リリー・グローニア・ハッゼウさんが持つと言う世界を恐怖と絶望に染め上げる力というのも、本人が振るおうとしなければ発動しないはずです。神と名乗る者が力を制御できないはずがありませんから」

ローランは戦姫隊の軍人3を見てそう言った。

東和連合に押し付けられる形でレムフィト国の管轄になった戦姫隊は、月浜打撃軍と言う名前に改名され、月浜戦での活躍が期待される部隊になった。


少女たちはアウス仮設支部の火災から生き残った戦姫隊の軍人たち、現在は月浜打撃軍の軍人たちと再会していた。

「あいつらも死んだのか」

リリーは月浜打撃軍の軍人1を見てそう言った。

「はい・・・」

月浜打撃軍の軍人1はリリーを見てそう言った。

「そうか」

リリーは月浜打撃軍の軍人1を見てそう言うと、携帯端末を見た。


戦姫隊の軍人2、3は月浜打撃軍に変わった瞬間、半ば逃亡気味に脱退して戦姫乗りになったという。

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