アティア・ゼン編 十三章 第三の神具。
北方猫系獣人グローニアキャット族の祖先は、北極猫だと言われている。
強い天陽神気に適合するため進化し、天陽神気を浴びれるようになったことで異常に発達して人になった。
そんなグローニアキャットの中でもミッケの身体能力は高い。天才という他ないだろう。
「というか、黙ってここまで来て大丈夫なの?黒点には神軍幹部が揃ってるよ?」
大きなパンを持ったアイリアはミッケを見てそう言った。
「神軍幹部は黒点を放っておいて黒点に到達できるような人材と戦うバカじゃないよ。その後のことは・・・まぁ、何とでもなるでしょ」
ミッケはアイリアを見て笑みながら言った。
「・・・神軍から離れるんだね」
「神軍は宿幼魔塊を倒すための組織でしょ?それより上の討伐は目標としてない」
「ラーフィアと戦う気?」
「もちろん」
ミッケはアイリアを見てそう言った。
「ラーフィアはリヴァたちを負かした。ラーフィアを倒すにはリヴァたちより強くならなきゃいけないんだ。そんなことできるはずがない」
「アイリアはそう言っておけばいい。諦めてラーフィアから逃げ続ければ良い」
ミッケはそう言いながら荷物を持って立ち上がった。
「待って。一人にしないで」
アイリアがミッケを見てそう言うと、ミッケは再び座った。
一方、梨々香はジェシカ・デュ・リー部隊長級乙と話していた。
「陛下・・・現在もミッケ・カーリン部隊長級柄の捜索を行っておりますが、発見には至らず・・・」
赤眼、薄朱色髪ツインテール。薄朱色と赤色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだ色白な肌の少女、ジェシカ・デュ・リーは梨々香を見てそう言った。
「そうか・・・魔甘のこともある。部隊長級も奴に出会った場合は逃げるように」
急須を机の上に置いた梨々香はジェシカを見てそう言った。
「魔甘・・・第五魔塊魅惑には、太陽剣技の使い手でも敵わないんですか?」
ジェシカは梨々香を見てそう言った。
「太陽剣技は人が生み出した剣技じゃ。故に、曙陽の力を受けても強化されない」
グラスを持った八重 桜はジェシカを見てそう言うと、酒を飲んだ。
「・・・」
ジェシカは桜を見て黙った。
「お前さんたちがどう考えようと、どう抗おうと、魔塊には敵わない。例え、最弱の魔塊、宿幼でも」
桜はジェシカを見て説くようにそう言うと、酒を注いでから炭酸水を注いだ。
「・・・昼飲みとは愉快ですね」
ジェシカは桜を見てそう言った。
「儂らの間では普通なのじゃ。文化の違いというやつじゃな」
桜はジェシカを見て笑みながら言った。
同年、八月二十五日。
ハーゼンド山岳国で一夜を明かしたアイリアとミッケはハーゼンド山岳国を抜けた。
黒点に近づけば近づくほど規模の大きさに驚く。
サウスドラゴニアがすっぽり入ってしまうだろう。
「アイリアはあれをどうするの?」
ミッケは黒点を見ながらそう言った。
「・・・あれを破壊して、高咲 重海を引きずり出す」
アイリアは黒点を見てそう言った。
「あれを!?よく一人でやろうとしてたね」
驚くミッケはアイリアを見てそう言った。
「・・・そうだね」
「少し、焦ってたんだと思う」
アイリアはミッケを見て笑みながら言った。
「・・・」
前を向いたアイリアは少し悲しそうな笑みを浮かべた。
同年、八月二十六日。
髪と服が靡くアイリアとミッケは渦巻く闇とそれを抑える曙陽を見つめる。
黒点は遥か上空にある。だが、目の前にあるような感覚に襲われる。
「行こう。うちが着いてるにゃ」
髪と服が靡くミッケは渦巻く闇を見てそう言うと、大業物明乃白隼を生成して握った。
「・・・うん」
アイリアはそう言うと、黒鞘から最上大業物日炎をゆっくりと抜き、最上大業物日炎を握った。
アイリアとミッケは共に走る。
ミッケから恐れの感情を感じることはない。
ミッケの勇気に背を押されたのかアイリアからも恐れの感情が消えていく。
「曙陽!」
大業物明乃白隼を握り込んだミッケは走りながらそう言うと、刀身に陽光を纏わせた。
「天道!」
最上大業物日炎を握ったアイリアは走りながらそう言うと、刀身に炎を纏わせた。
「ここに顕現す」
光り輝く大業物明乃白隼を握ったミッケはゆっくりと飛び上がりながらそう言うと、大業物明乃白隼を一振りした。
「なにか来るぞ!!」
曙陽を放つ黄眼、白髪ツインテール。白色と黄色と緑色が基調の戦闘服で身を包んだ色白な肌の女性、ローラ・エリザベス・アディは振り向いてそう言った。
神軍幹部たちは振り返って身構えた。
「日炎!!」
最上大業物日炎を握り込んだアイリアは目を見開き、力強くそう言った。
渦巻く闇に最上大業物日炎が触れると、途轍もない量の聖陽水晶片が噴き出し、舞い上がった炎と共に溶解した聖陽水晶が飛び散った。
「き、斬ったッ!!」
グラディスは驚きながらアイリアを見てそう言った。
その瞬間、渦巻く闇が悲鳴のようなうめき声のような音を発し、炸裂した。
天道剣技、日炎が生み出した衝撃波でグラディスとローラとウェンディ以外の神軍幹部たちが吹き飛ばされ、地面が激しく隆起し、大穴の一部が崩れ、六合大結界に大きなひびが入った。
「貴様は・・・貴様はぁぁぁぁ!!!!」
聖陽水晶片が飛び散る中、黒紫色の帽子をかぶり、黒紫色の服を着て黒紫色のロングスカートを穿いた高咲 重海が最上大業物日炎を握ったアイリアを見て怒鳴った。
「久しぶりだな・・・」
最上大業物日炎を握ったアイリアは重海を見て笑みながらそう言った。
「ゴミクズ女!!」
アイリアは重海を睨みながら怒鳴った。
(なぜだ・・・なぜこんな小娘に恐怖を感じるッ!!)
目を見開き、怒筋を浮かべた重海はアイリアを見て口から液状闇を垂らしながらそう言った。
「私の恨み・・・しっかり受け取れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
最上大業物日炎を握り込んだアイリアはそう叫ぶと、重海に最上大業物日炎を突き刺した。
「ブワァァァァァァァァ!!!!」
悲鳴を上げた重海はアイリアと共にラバログの大穴、結晶淵地に向かって急降下していく。
(やっとこのゴミクズ女を斬れた・・・もう、悔いはない)
アイリアと重海がひび割れた六合大結界に激突したその瞬間、六合大結界が砕け散って轟音と共に大陸南部の神気異常・常夜化が解除され、昼空が広がった。
一方、ミッケを捜索しているアージヴァイズたちは昼空を見て驚いていた。
「な、なにが起こった・・・」
業物二頭水龍を握ったアージヴァイズは陽光に焼かれ、灰になる闇化生物たちを見て驚きながらそう言った。
「・・・まさか・・・ミッケが」
大業物心宮を握ったオレンジは焼ける魔塊眷属を見てそう言った。
一方、重海は結晶淵地を歩いていた。
「神具・・・神具さえ手に入れば・・・こんな傷・・・」
液状闇塗れの腹部を押さえる重海は苦しそうに言いながら歩いた。
「・・・」
歩みを進め、最奥に辿り着いた重海は宙に浮かぶ紅い刀身の太刀、第三の神具を見て笑んだ。




