アティア・ゼン編 十一章 明乃天道
午後九時。
魅惑に襲撃されたオレンジから不安が消えない。
アージヴァイズとエコーはオレンジの心配をしている。
そんな中、ミッケは考え事をしていた。
(天陽系剣技は全ての剣技の中で一割にも満たない・・・)
険しい顔をするミッケは端末を見ていた。
(天陽系剣技以外は宿幼に傷すらつけられない・・・)
険しい顔をするミッケは宿幼に関する資料を見た。
(宿幼すら傷つけられない剣技が存在する意味はなんだ・・・)
ミッケは切ない目で宿幼の絵を見た。
同年、八月二十日。
アージヴァイズたちが朝食をとっている中、ミッケはペテゼのシュム町に来ていた。
「・・・ヴェルベサ系の剣技に存在価値はないのか?」
ミッケは考えながらそう言った。
考え事をするミッケの背後から水牛型の闇化生物が迫っていた。
「・・・」
ミッケは大業物明乃白隼を生成して握ると同時に水牛型の闇化生物を避け、水牛型の闇化生物の首を斬った。
水牛型の闇化生物は脱力し、地面を滑って倒れ、灰になった。
「・・・」
大業物明乃白隼を握ったミッケは周りに集まる水牛型の闇化生物を見た。
水牛型の闇化生物は一斉にミッケに突撃した。
「支援特化相手に容赦ないにゃ~」
大業物明乃白隼を握ったミッケは水牛型の闇化生物を見て笑みながら言った。
「天道、暗天晴らす陽矛!」
アイリアの声と共にミッケの前に陽の矛が突き刺さり、炸裂した。
陽の矛は炸裂と共に陽光を放ち、水牛型の闇化生物を聖陽水晶に変えた。
「・・・・・・アイリア・・・」
陽光を浴びるミッケは目を見開いてそう言った。
最上大業物日炎を握ったアイリアは着地し、ミッケを見た。
「大丈夫?神軍の組織員」
最上大業物日炎を握ったアイリアはミッケを見て笑みながらそう言った。
「アイリア!アイリアだよね!?」
大業物明乃白隼を握ったミッケはアイリアを見て嬉しそうに笑みながら言った。
「・・・ごめん・・・誰だっけ?」
最上大業物日炎を握ったアイリアはミッケを見て申し訳なさそうに言った。
「ミッケだよ!ミッケ・ローゼ・カーリン!」
大業物明乃白隼を握ったミッケはアイリアを見て必死にそう言った。
「・・・あぁッ!!」
最上大業物日炎を握ったアイリアはミッケを見て目を見開き、大声でそう言った。
「君、一人?」
アイリアは使い込んだ短い鉛筆で本を書き写すミッケを見てそう言った。
「・・・私、獣人だからさ・・・」
鉛筆を止めたミッケは少し悲しそうに言った。
「あの時のグローニアキャットか~!」
最上大業物日炎を握ったアイリアはミッケを見て笑みながら言った。
「雰囲気全然違うからわからなかったよ!」
アイリアは最上大業物日炎を黒鞘に納め、笑みながら言った。
「生きてたの!?死んだって聞いてたのに!」
ミッケはアイリアを見て笑みながら言った。
「あの時は情報が錯綜してたからね・・・正しくは、死にかけた」
アイリアはミッケを見て笑みながらそう言った。
「死にかけた?」
ミッケはアイリアを見て驚きながらそう言った。
「梨々香、当時はリリーだったけど・・・に助けられて、ミューテに治療してもらって何とか助かったって感じ」
「師匠は無事?死星と戦ったんでしょ?」
ミッケはアイリアを見てそう言った。
「・・・ミューテは神気浸食症にかかって死んだ・・・」
アイリアはうつむいてそう言った。
「・・・」
ミッケはアイリアを見て目を見開き、黙り込んだ。
「サクチャーたちも症状が出始めてすぐに・・・」
アイリアはミッケを見てそう言った。
六秒ほど黙り込み、冷静さを取り戻したミッケはアイリアと再び話し始めた。
「どうして七陽の勇者が神気浸食症に?」
ミッケはアイリアを見てそう言った。
「わからない。ただ、死星の神気が特殊だったっていう仮説しか今はない」
アイリアはミッケを見てそう言った。
「死星・・・ラーフィア・・・」
怒筋を浮かべたミッケは怒りが籠った声でそう言った。
「昔、奴と何かあったらしいね。梨々香から聞いた」
「あいつはお姉ちゃんに瀕死の重傷を負わせ、お姉ちゃんの師匠を負傷させた・・・あいつの姿形は忘れたことがないッ!!」
怒筋を浮かべたミッケはそう言うと、どこかに向かって歩き出そうとした。
しかし、アイリアはそれをすぐに止めた。
「・・・離してよ」
ミッケは震えた声でそう言った。
「ミッケ、冷静になれ。奴は梨々香と互角に戦えるような化け物だ」
アイリアはミッケを見てそう言った。
「私たちじゃどうしようもできない」
アイリアがそう言うと、ミッケが声にならない声をあげてアイリアに泣きついた。
「悔しい・・・!どこまで!どこまで強くなれば良いんだ!!」
ミッケは泣きながら叫んだ。
「・・・」
アイリアは眉を顰め、黙ってミッケの頭を撫でた。
「ここまで来ても・・・大切なものは何一つ守れない!!」
「家族を、仲間を・・・あれだけ失った私にもまだ大切なものが残ってる」
アイリアはミッケを撫でながらそう言うと、ミッケを見つめた。
「・・・」
泣きべそをかいたミッケはアイリアを見た。
「だから、ミッケにもまだ残ってるんじゃないかな。大切なもの」
アイリアはミッケを見て笑みながら言った。
「・・・」
ミッケはアイリアを見て涙を拭いた。
「アイリアァァァァ!!!!」」
屋根に乗った宿幼魔塊第九眷属アマテルはアイリアを見て叫んだ。
「・・・ある。まだ、たくさん残ってる」
ミッケはアイリアを見て悲しそうに笑みながらそう言うと、アマテルを見た。
「へぇ~魔塊眷属になったんだ。どの魔塊が主か知らないけどさ」
アイリアは笑みながらそう言うと、刀の柄を握り、黒鞘から最上大業物日炎を抜いた。
「・・・支援する」
大業物明乃白隼生成して握ったミッケはアマテルを見てそう言った。
「・・・じゃあ、任せちゃおうかな」
最上大業物日炎を握ったアイリアはミッケを見て笑みながらそう言うと、アマテルに向かって走った。
「アイリアァァァァ!!!!」
アマテルは叫びながらアイリアに液状闇を飛ばした。
「曙陽」
大業物明乃白隼を握り込んだミッケはカルジェンを見てそう言うと、刀身に陽光を纏わせた。
「ここに顕現す」
大業物明乃白隼を握ったミッケはそう言うと、大業物明乃白隼を一振りした。
「完全顕現!?」「夜明だとッ!?」
アイリアはミッケを見て驚きながらそう言い、アマテルは曙陽を見て驚き、そう言いながら両腕で曙陽を防いだ。
アイリアに放たれた液状闇が灰になって消えた。
そして、曙陽はアイリアに力を与える。
「天道、魔払円斬!!」
最上大業物日炎を握ったアイリアはそう言うと、アマテルに最上大業物日炎を振る。
「神技!六手闇斬!!」
背から六本の腕を生やしたアマテルはそう言うと、闇を纏った手刀を振る。
アイリアを左右から狙った六本の腕は曙陽に焼かれ、灰になった。
「ヌグッ!!」
両腕をクロスさせたアマテルは目を見開き、両腕を容易く腕を切断し、頭を斬る最上大業物日炎を見た。
飛び散った液状闇が瞬時に聖陽水晶片に変わる。
茜色の剣筋が見えた瞬間、アマテルが聖陽水晶になった。
黒くくすんだような立方体の金属塊が地面に転がると、アイリアは透かさず黒くくすんだような立方体の金属塊に最上大業物日炎を突き刺した。
その瞬間、神気異常・常夜化が解除されて薄い雲がかかった朝空が見えた。
「アイリア!大丈夫!?」
ミッケは倒れ込んだアイリアを抱えながらそう言った。
「だ、大丈夫・・・少し疲れただけ・・・」
冷や汗をかいたアイリアはミッケを見て笑みながらそう言った。
「曙陽大聖・・・奴の剣技ほど厄介なものはないと永遠が言っていたな」
魅惑は黒い本を見ながら言った。
「威力を上げるなんてやっちゃダメだろ・・・」
魅惑はそう言うと、黒い本を閉じて軽く投げた。
「精神面がクソ雑魚であれ!」
魅惑は祈りながらそう言った。
「ねぇ、七陽の勇者ってことは、神軍に居るんでしょ?」
大業物明乃白隼を握ったミッケは最上大業物日炎を黒鞘に納めるアイリアを見てそう言った。
「まぁね」
アイリアはそう言いながら黒鞘に最上大業物日炎を納めた。
「中央隊に来てよ。アイリア」
「・・・」
黒鞘に納まった刀を握ったアイリアは黙っている。
「アイリアが居れば宿幼の眷属を簡単に倒せる!」
「私にはちょっとした目的があってね」
黒鞘に納まった刀をベルトに差したアイリアは空を見てそう言った。
「だから、まだ立ち止まれない」
アイリアはミッケを見て笑みながら言った。
「・・・」
ミッケはアイリアを見て悲しそうな顔をした。
「じゃあ、またどこかで」
アイリアは笑みながらそう言うと、ミッケに背を向けて歩き始めた。
黒点を創り、黒点に潜む者を・・・多くを奪った高咲 重海を斬る。
アイリアは再び決意して歩き出す。




