アティア・ゼン編 十章 ピンチを切り抜ける方法
同年、八月十七日。
アージヴァイズたちがアマテラス共栄圏第十九国ペテゼに到着した。
ペテゼは住民の避難が完了した状態で、居るのは神軍の組織員だけだ。
残された神軍の組織員たちも顔色が悪く、頭を抱えている者も少なくない。
「部隊長多くね?そんなヤバいの?」
アージヴァイズはレテス部隊長級組織員柄を見てそう言った。
「出てしまったんだ・・・」
暗い顔をしたレテスはミッケたちを見てそう言った。
「何が?」
「死星だ」
「死星?」
「あいつはリヴァ様を負かした化け物だ!」
震える神軍上位組織員1はアージヴァイズを見て大声でそう言った。
「陛下ですら撃退で精一杯だったなんて・・・私たちはどうすれば良いんだ・・・」
震える神軍上位組織員1は泣きながらそう言った。
「お・・・おいおいおいおい・・・そんな奴が来るかもしれない場所で行動しろって無茶苦茶だろ・・・」
冷や汗をかいたアージヴァイズは激しく動揺しながらそう言った。
「マジでここで任務するの?」
エコーはミッケを見てそう言った。
「そんな危険な存在が近くにいるなら外には出られない」
ミッケはエコーを見てそう言った。
「外に出られないってことは、撤退もできないってことだね」
セシリーはミッケを見てそう言った。
「終わった・・・」
オレンジは頭を抱えてそう言った。
「神軍幹部はどこに?一人でも良いからいて欲しいんですけど」
キャロッティはレテスを見てそう言った。
「ラバログに集結している。ラバログに第三の神具があるからな」
レテスはキャロッティを見てそう言った。
「来れないってことですか・・・」
「来れないだろうな」
「まぁ、神軍幹部が来たところで死星には敵わんだろうよ」
ムムイ部隊長級柄は腕を組んで悩ましそうに言った。
「死星の力は少なくともあの陛下と互角・・・陛下と戦う前にミューテ先生と戦っているということを加えると陛下以上の力とだとも考えられる」
ムムイは考えながらそう言った。
「そんな奴を神軍幹部がどうにかできるとは思えない」
ムムイはミッケたちを見てそう言った。
「・・・そろそろテントに行こう」
ミッケはアージヴァイズたちを見てそう言った。
一方、ラーフィアは洞窟の中に居た。
「いい技だった。限りなく隙が無く、全ての動きが洗練されていた」
ラーフィアは赤黒い液状神気が付着した壁画を見てそう言った。
「しかし、あなたが恐れるような存在ではなかった」
ラーフィアは砲神眼、ブロンド髪ロングヘア。銅色のミニドレス調の服を着た乙女、テルメス・クレイス・ガンズを見てそう言った。
「虎はまだ覚醒していない。龍を討ち墜とすあの力を・・・正直お前には経験してほしくない」
テルメスはラーフィアを見てそう言った。
「お前はどこか私に似ている。どこかで何か同じような経験をしたのかも・・・」
テルメスはそう言うと、立ち上がった。
「どこへ?」
「現世に帰る」
テルメスがそう言うと、界が現れた。
テルメスが界の中に入ると、界が消えた。
午後二時九分。
死星警報が解除された。
すると、ペテゼに退避していた多くの部隊が帰還してペテゼにはミッケ率いる中央隊と他一部隊が残された。
午後二時十三分。
ミッケ率いる中央隊がペテゼの町に出撃した。
町の至る所に聖陽水晶が転がっていて、聖陽水晶の欠片も散乱している。
「・・・この痕跡・・・天陽系剣技の使い手が来たってことだよね?」
歩みを進めるエコーは聖陽水晶を見てそう言った。
「天陽系剣技・・・それも、攻撃特化の剣技だにゃ」
歩みを進めるミッケは聖陽水晶を見てそう言った。
「どうしてそんなことわかるんですか?」
キャロッティは聖陽水晶を見てそう言った。
「お姉ちゃんの師匠が落陽の勇者って呼ばれる剣士だったんだ。その人の剣技を何度か見たことあってさ」
ミッケはキャロッティを見てそう言った。
「これ、どんな形の闇化生物だったかってわかるぞ!」
足を止めたアージヴァイズは大きな鳥型の聖陽水晶を見てそう言った。
「剣技の精度が高いってことだね」
歩みを進めるオレンジは聖陽水晶を見てそう言った。
「この様子じゃ、闇化生物は居ないかもな」
ミッケたちを追って再び歩みを進め始めたアージヴァイズはそう言った。
ペテゼの町は聖陽水晶だらけ。
どこを見ても聖陽水晶だ。
どうしようか考えたミッケは、聖陽水晶を持ち帰って任務を終わらせることにした。
「・・・どれだけの期間でこれをやったんだろう・・・」
エコーは聖陽水晶を集めながら言った。
「拠点の組織員たちは知ってる感じじゃなかった。だから、数日って感じだね・・・」
オレンジは聖陽水晶を集めながら言った。
「数日でこの数を?」
聖陽水晶を持ったアージヴァイズはオレンジを見てそう言った。
「部隊長級乙が二人いれば倒せる数だからそこは不思議に思わないにゃ」
ミッケは周りを見ながらそう言った。
「まぁ、確かに」
オレンジはミッケを見てそう言った。
「でも、部隊長級乙で天陽系剣技を使えるのはジェシカだけだろ?」
アージヴァイズはミッケとオレンジを見てそう言った。
「そう。そこが不思議なんだにゃ」
ミッケはアージヴァイズを見てそう言った。
「ジェシカ部隊長級乙が曙陽様の強化支援を受けて戦ったら数日で何とか出来るかもしれないけど、曙陽様は召集を受けてラバログに居るにゃ」
ミッケは聖陽水晶を集めながらそう言った。
「あり得ないってことか」
アージヴァイズはミッケを見てそう言った。
「強い剣士が歩き回ってるってことだよね!その剣士を見つければ私たちめっちゃ有利じゃない!?」
オレンジはミッケたちを見て笑みながら言った。
「その剣士が何とも戦うヤバい奴だったらどうする?」
ジュナはオレンジを見てそう言った。
「警戒はした方が良いかもしれないね。対人戦が強い奴だったらヤバいし」
レインはミッケたちを見てそう言った。
午後八時十八分。
ミッケたちがペテゼの拠点に帰還した。
ミッケたちは聖陽水晶を持って拠点に居る組織員に事情を話した。
「大量の闇化生物が聖陽水晶に・・・」
第二十一魔塊眷属討伐隊の隊長、ブドー部隊長級組織員柄は大量の聖陽水晶を見て少し考えながらそう言った。
「最後にホワ町で巡回を行ったのはいつ?その時の結果は?」
ミッケはブドーを見てそう言った。
「・・・今月七日の明け方。ミューテ先生とサクチャー部隊長級柄の部隊だったな」
ブドーはミッケを見てそう言った。
「・・・師匠・・・」
ミッケはブドーを見て少し驚きながら言った。
「サクチャーさん何か話してなかった?」
オレンジはブドーを見てそう言った。
「天道の勇者に助けられたと言っていたな」
ブドーはオレンジを見てそう言った。
「・・・」
ミッケは慌てて周りを見た。
「不味い!!」
ミッケは冷や汗を垂らしながら大声でそう言った。
その瞬間、オレンジとブドーも異変に気が付いた。
何かが外側からゆっくりとテントをギリギリと押しつぶしているのだ。
「斬って脱出するぞ!!」
ブドーは鞘に納まった剣を手をかけてそう言った。
「ダメ!!何が外にあるかわからないんだから!!」
オレンジはゆっくりと縮まる壁を見て大声でそう言った。
「またか・・・何度目のピンチかねぇ・・・」
冷や汗を拭ったミッケは縮まる壁を見て笑みながら言った。
メリメリとなる音が不安を与え、オレンジとブドーに焦りが生まれている。
そんな中でもミッケは冷静だ。
(届け!)
ミッケは力強く手を叩いた。
(届け!!)
ミッケは再び力強く手を叩いた。
「ミッケ!何してるの!?」
冷や汗を垂らすオレンジは縮む壁をしきりに見ながらミッケを見てそう言った。
「ここで届かなかったらヤバい!!」
ミッケが大声でそう言った瞬間、周りが太陽で照らされたように明るくなり、支柱が甲高い音を立てて折れた。
「・・・と、止まった・・・」
冷や汗を垂らしたオレンジはテントの壁を見てそう言った。
「剣王!!どうしてお前はあのお方の邪魔をする!!」
魅惑の悲鳴ともとれる声を聴き、ミッケたちがテントから急いで出た。
「あ、あれはッ!!」
ミッケは魅惑を見て驚きながら言った。
「あれ!あれが魔塊眷属!?」
オレンジは魅惑を見て驚きながら言った。
「陛下!」
ブドーは神刀華炎を振る梨々香を見てそう言った。
「クソォォォォ!!!!運が良い獣人族めぇぇぇぇ!!!!」
華炎を受けた魅惑は悲鳴を上げながら闇の霧になって消えた。
「まさか、魔塊を二体も送り込んでくるとは・・・」
神刀華炎を握った梨々香はそう言うと、地上に降りた。
「陛下!」
ミッケとオレンジに続いて梨々香に駆け寄るブドーは神刀華炎を消滅させた梨々香を見てそう言った。
「あいつがここの魔塊眷属ですか?」
オレンジは梨々香を見てそう言った。
「・・・宿幼の眷属は他に居ます。今は気にしないでください」
梨々香はミッケたちを見てそう言った。
「・・・」
オレンジは少し不服そうに梨々香を見た。
「わかりました。助けていただきありがとうございました」
ミッケは梨々香を見てそう言った。
「では」
梨々香はミッケたちを見て笑みながらそう言うと、宙に神刀赤閃を振って界を生み出し、界の中に消えた。
「どうして・・・?どうしてあいつを放っておくの?」
オレンジはミッケとブドーを見てそう言った。
「私たち神軍の最終目標が宿幼魔塊の討伐だからだ」
ブドーはオレンジを見てそう言った。
「も、もしかして・・・魔塊ってたくさんいるの・・・?」
オレンジは絶望しながらそう言った。
「あの反応はほぼ確定だにゃ」
ミッケはオレンジを見てそう言った。
「また来たらどうしよう!魔塊眷属すら倒せないのに!魔塊になんて勝てないよ!!」
酷く焦り、目を見開いたオレンジはミッケを見てそう言った。
「陛下の言う通り、あいつのことは気にしないでおこう。精神衛生上よくない」
ブドーはミッケとオレンジを見てそう言った。
「く、クソ・・・何たる屈辱ッ・・・!」
魅惑は腕を蝕み続ける火傷を見て悔しそうに言った。
「追い払うだけ・・・追い払うだけの軽い一振りでここまでの傷を負うなんて!!」
魅惑は顔の火傷に触れて悔しそうに言った。
「今の奴なら、安楽どころか永遠すら軽く倒してしまう!!」
目を見開いた魅惑は冷や汗を垂らし、苦しそうに言った。
「この私が絶望という感情を抱くなんて・・・!!」
目を見開いた魅惑は悲鳴交じりにそう言った。
「奴を・・・奴を蜜の沼に落とさなければ・・・」
目を見開いた魅惑は笑みながらそう言った。
一方、梨々香は医師と話をしていた。
「外傷はありません。しかし、神気浸食症の進行速度が早く、私たちではもう手の打ちようがありません」
医師は梨々香を見てそう言った。
「そうですか・・・」
梨々香は医師を見てそう言った。
「あなたたちはよくやりました。最善を尽くしてくれてありがとう」
梨々香は医師を見て笑みながらそう言った。
「現状計測ができない神気濃度帯があると考えています。陛下の過去を話してくれとは言いません。しかし、陛下の過去がみんなを救う技術を生み出すことは確実です。それだけは覚えておいてください」
「えぇ、覚えておきます」
梨々香は医師を見て笑みながらそう言うと、立ち上がった。




