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アティア・ゼン編 六章 南方へ

同年、八月十日。

ミッケ率いる中央隊が大陸南部にあるアマテラス共栄圏第二十一国ダルタに到着した。

「薄暗いくせにバカあちぃ!!暑さで体力持ってかれる!!」

紺色のカッターシャツを着て黒いスカートを穿いたアージヴァイズは薄暗い空を見て叫んだ。

「体力が減りやすいのは、熱さだけが理由じゃないかもね」

紺色のカッターシャツを着て黒いスカートを穿いたオレンジはアージヴァイズを見てそう言った。

「南方って本当に激戦地?建物壊れたりしてないし、寂しいだけって感じがするけど・・・」

汗を垂らす紺色のカッターシャツを着て黒いスカートを穿いたエコーは周りを見てそう言った。

「・・・」

紺色のカッターシャツを着て黒いスカートを穿いたミッケは水筒を取り出し、水を飲んだ。

「ミリア国の皆様。ダルタにようこそ」

バロ・ラ・ダルタ女王はアージヴァイズたちを見て笑みながら言った。

「なんか・・・女王感ないな」

カッターシャツをパタパタと動かして風を送る暑そうなアージヴァイズはバロを見てそう言った。

「失礼ですよ」

赤眼、灰色髪セミロングヘア。紺色のカッターシャツを着て黒いスカートを穿いたキャロッティはアージヴァイズを見てそう言った。

「良いんですよ」

バロはキャロッティを見て笑みながら言った。

「私は界の主万象様に倣い、民に寄り添う女王を目指しています」

バロはアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「民が不幸に見舞われる中、私だけが良い思いをするわけにはいきません」

バロはアージヴァイズたちを見て笑みながら言った。

「なるほど・・・」

キャロッティはバロを見てそう言った。


挨拶を終えたアージヴァイズたちは軍用車両で基地に向かい始めた。

アージヴァイズたちは移動中、雑談をする。

「あの女王様、民に寄り添おうとしててすごいね」

オレンジはアージヴァイズたちを見て笑みながらそう言った。

「まぁな」

アージヴァイズはオレンジを見て笑みながらそう言った。

「あの人、相当搾取してますよ」

エネルギー拳銃を握ったキャロッティはア五番エネルギー缶を見てそう言うと、ア五番エネルギー缶をエネルギー拳銃に装填した。

「え?」

オレンジはキャロッティを見て少し驚きながらそう言った。

「流石は極東連合サンティラ支部の鬼憲兵総長ですね」

レインはキャロッティを見て笑みながらそう言った。

「お前、そんな肩書持ってたのか?」

アージヴァイズはキャロッティを見てそう言った。

「はい。随分と遊んでもらいました」

キャロッティはアージヴァイズを見て笑みながらそう言った。

「で、どれくらいの財産があるって見たの?」

黄眼、水色髪ツインテール。紺色のカッターシャツを着て黒いスカートを穿いた色白な肌の女性、セシリー・オブ・ティアナンはキャロッティを見てそう言った。

「十万リズは確実に」

キャロッティはセシリーを見てそう言った。

「あり得ないよ!あんなボロボロになるまで服を着てるのに・・・」

眉を顰めたオレンジはキャロッティとセシリーを見てそう言った。

「では、納得していただけるように理由を言います。聴いてくれますか?」

キャロッティはオレンジを見てそう言った。

「うん・・・」

オレンジはキャロッティを見てそう言った。

「先ず、私の目に留まったのは髪の毛です」

「髪の毛?」

「香水にしては柔らかな香りと皮脂などの所謂汚れと言われる類のものではない綺麗な輝き・・・西楓(せいふう)地方、又は、泣代(なくしろ)地方原産の金椿(きんつばき)種油(たねあぶら)を使った一本五十リズの谷須(たにす)金椿混合美容油が生み出したものだと私は思いました」

「な、なんで?そんなの普通わからないよ!」

冷や汗をかいたオレンジはキャロッティを見てそう言った。

「金椿の種油はサンティラ王国の上流階級民が好んでいたんです。とてもよく嗅ぎ馴れた香りです」

「・・・」

オレンジは驚いて黙った。

「そして、次に服」

「服?」

アージヴァイズはキャロッティを見て首を傾げながらそう言った。

「一見着古した服です。しかし、袖からかすかに見えた裏地の布が明らかに質が良かった。汚れたものをどうしても肌につけたくなかったのでしょうね」

キャロッティがそう言うと、アージヴァイズがすごいと一言だけ言葉を漏らした。

「で、でも!それだけ搾取とか十万リズとか・・・」

オレンジはキャロッティを見てそう言った。

「下着」

キャロッティがそう言うと、オレンジが慌ててスカートの裾を押さえた。

「腰のライン、丁度下着のゴムひもが触れる場所が少し膨らんでいた。分厚い、又は、いくつか重なっているフリルがついるはずです」

キャロッティはオレンジを見てそう言った。

「・・・」

顔を紅くしたオレンジはスカートから手を退かした。

「首元などの布はライリー・クロージング社が使っているラグジェパレスシルクという高級な布です。きっと、ライリー・クロージング社が好きなのでしょう」

「ライリー・クロージング社が扱うフリル付きドロワーズの価格は七リズです」

キャロッティはそう言うと、携帯端末の画面を見せた。

「これに加えて高い輸送料か・・・」

緑眼、薄金髪ツインテール。紺色のカッターシャツを着て黒いスカートを穿いた色白な肌の女性、ジュナ・ブラウン・ロイド=パックは携帯端末の画面を見てそう言った。

「庶民離れしてるな」

アージヴァイズは携帯端末の画面を見てそう言った。

「百サラだったものが一リズにも十リズにも百リズにもなる異常で不安定な時代に庶民離れした生活をするなんてあり得ないんです。相当高額な実物資産がない限り・・・」

キャロッティはそう言いながら目を光らせる。

「・・・陛下みたいな人がいるのかもってって期待したのに・・・」

オレンジはうつむいて落ち込みながらそう言った。

「権力者なんてそんなもんだと思うよ?」

エコーはオレンジを見て笑みながらそう言った。

「まぁ、今更驚くようなことでもないか」

アージヴァイズはエコーを見て笑みながらそう言った。

「・・・」

銃座に座ったミッケは黙って寂れた町を見ている。


三十分ほど荒野を走っていると、美しい巨木が見えてきた。

「何だあのすげぇ木!!」

アージヴァイズは小窓から巨木を見て目を輝かせながらそう言った。

「すごいね!」

銃座に座るオレンジは巨木を見て笑みながら言った。

「ミッケも見てみなよ」

端末を持ったエコーはミッケを見て笑みながら言った。

「見なくて良いにゃ」

ミッケはそう一言だけ言って黙った。

「どうかしたの?」

セシリーはミッケを見てそう言った。

「どうかしてても言わないにゃ」

ミッケは前を見たままそう言った。

「・・・」

アージヴァイズたちは顔を見合わせた。


基地に着くと、多くのダルタ民がアージヴァイズたちを出迎えた。

「ようこそ!心炎(しんえん)剣技(けんぎ)の使い手が来たならもう安心だ!」

涙を流すダルタ民1はオレンジの手を握って嬉しそうに笑みながら言った。

「え?期待し過ぎじゃない・・・?」

オレンジはダルタ民1を見て困惑しながら言った。

「頼りにされてるんだ。もっと誇れよ」

アージヴァイズはオレンジを見てそう言うと、オレンジを小突いた。

「現在の部隊と合流しよう」

ミッケは興味なさそうに言いながらテントに向かった。

「はい」

キャロッティとジュナとセシリーとレインはミッケを見て返事すると、ミッケを追った。

「なんか・・・ちょっとそっけなくない?」

ミッケたちを追うエコーはミッケを見てそう言った。

「何かあるなら話せよ」

ミッケたちを追うアージヴァイズはミッケを見てそう言った。

「すみません・・・後でちゃんと言っておきますので」

オレンジはダルタ民たちを見て申し訳なさそうに言うと、ミッケたちを追った。


アージヴァイズたちは第五十四魔塊眷属討伐隊の部隊長カッザーのテントへ行き、挨拶した。

「どうも、ミリア国から来ました。ミリア宿幼討伐隊の五班です」

ミッケはカッザーを見てそう言った。

「君たちが中央隊か」

酒瓶を持ったカッザーはミッケたちを見て笑みながら言った。

「ヴェルベサ系ヴェマズ中位神の眷属神、カッザーだ。君たちの噂は聞いてるよ。とても素晴らしい組織員だってね」

カッザーはアミッケたちを見て笑みながらそう言うと、酒を飲んだ。

「・・・」

アージヴァイズは酒瓶を見て何か言いたげだったが、ミッケがさっさと挨拶を終わらせてテントから出た。

「あいつ、部隊長なのに酒飲んでやがったぞ!あんなんで良いのか!?」

少し怒ったアージヴァイズはミッケを見てそう言った。

「姉さん・・・」

キャロッティはアージヴァイズを見て少し強くそう言った。

「・・・?」

アージヴァイズはキャロッティを見て首を傾げた。

「第五十四魔塊眷属討伐隊の隊員数は千三百名・・・ここに隊員らしき人はどれだけいる?」

セシリーはアージヴァイズを見てそう言った。

「・・・そう言えば、テントの中でしか見なかったな・・・それも数人だった」

アージヴァイズはセシリーを見てそう言った。

「・・・ほぼ全滅ってことか!?」

アージヴァイズはセシリーを見て冷や汗をかきながらそう言った。

「・・・」

キャロッティは黙ってうなずき、セシリーたちは悲しそうにうつむいた。

「・・・そうか・・・」

アージヴァイズはキャロッティを見て申し訳なさそうに言うと、少しうつむいた。

「でも、あんな態度じゃダメだと思うよ。酒に頼ったっていいことないじゃん。後ろを見ずに前を向かなきゃ!」

オレンジはキャロッティを見てそう言った。

「心的外傷後ストレス障害を患った人に向かって酒に頼るな、後ろを向くな、前を向けなんて簡単に言うな」

セシリーはオレンジを見てそう言った。

「でも・・・」

眉を顰めたオレンジは少しうつむいてそう言った。

「一生だ」

ジュナはオレンジを見てそう言った。

「え?」

オレンジはジュナを見た。

「心的外傷後ストレス障害を患った人は一生戦場に囚われる。心だけが戦場に残され、ふとした瞬間戦場に戻ってしまう」

「銃を握る感覚、引き金を引いて腕に来る反動、爆炎と衝撃、熱が背中を焼いていく感覚、警報音と共に聞こえる燃える音が耳から離れない」

ジュナは両手を見てそう言った。

「君もあるんじゃないか?」

ジュナはオレンジを見てそう言った。


「レプシデシアが・・・あんな簡単に・・・」

刀を握ったオレンジ・ゴールドマスターはケイト・クイーンアイを見て怯える。


「・・・」

オレンジは冷や汗を垂らしながらよろめく。

倒れるオレンジをミッケが片手で掴んで支えた。

「・・・」

オレンジはミッケを見た。

「処罰は迎えに任せればいい。じゃないと、任務に支障をきたす」

ミッケは前を見たままそう言った。

「・・・そりゃ困る。私たちは闇化生物をボコすために来たんだからな」

冷や汗をかいたアージヴァイズはミッケを見て笑みながら言った。

「・・・」

冷や汗を垂らすオレンジはアージヴァイズたちを少し見ると、姿勢を元に戻した。


ミッケたちはいくつかのテントに分かれてテントに荷物を置くと探索を始めた。

ダルタ民はみんな赤ワインを飲み、第五十四魔塊眷属討伐隊の文句を言っている。

第五十四魔塊眷属討伐隊は大陸の北部や東部で万単位の闇化生物を討伐してきた精鋭たちだ。

しかし、そんな精鋭組織員たちであってもこのダルタでは力及ばず、そのほとんどが命を落としてしまった。

「・・・不安になって来た・・・」

眉を顰めたアージヴァイズはそう呟いた。

その時、脈動で空気が揺れ、湿気がアージヴァイズを襲った。

「うわっ!」

アージヴァイズは声を漏らすと、手をバタつかせた。

「あれ?嫌な感じがしない」

アージヴァイズは周りを見てそう言った。

「おぉ~!!」

酒瓶を持ったダルタ民たちは刀身が心炎に包まれた木刀を握ったオレンジを見て目を輝かせていた。

「心炎剣技か」

アージヴァイズはオレンジを見て笑みながらそう言うと、オレンジに近づいた。

「これが心炎剣技・・・圧倒的だ」

ダルタ民1は木刀の刀身を包む心炎を見て笑みながら言った。


一方、一人で外周を歩いていたミッケは二人のダルタ民に声をかけられていた。

「ミッケ!ミッケだろう!?」

ダルタ民2はミッケを見て笑みながら言った。

「・・・」

足を止めたミッケはダルタ民3を睨んだ。

「お母さんよ?どうしてそんな顔をするの?せっかく再会できたのよ?」

ダルタ民3はミッケを見て笑みながら言った。

「お前を売りに出したことを怒っているのか?」

眉を顰めたダルタ民2はミッケを見て笑みながら言った。

「もう昔のことじゃない。そんなこと、忘れましょ?」

ダルタ民3が笑みながらそう言った時、ミッケが大きく耳を動かした。

二人のダルタ民は咄嗟にミッケの耳に視線を移した。

「ナタリー・ベクチャー・クロイス、クライス・ローゼ・カーリン。想像してたより宿幼の創造精度は高いようだ」

「何を言っているの?」

「そうだぞ」

「お前たちは既に死んでいるんだよ」

ミッケは二人のダルタ民を見てそう言うと、ベルトに差してある黒鞘に納まった刀を少し前に出し、黒鞘を握った。

「私が殺したから・・・ずっと覚えてるんだよ」

ミッケは刀の柄を握り込んだ。

「・・・」

二人のダルタ民は冷たい目でミッケを見つめた。

「・・・お前に何ができる・・・人の心も分からん化け物が!!」

そう言うダルタ民2の首から液状闇が垂れ、首が落ちた。

「そうだ。私は化け物だ。正義に囚われた化け物だ」

大業物(おおわざもの)明乃白隼(あけのびゃくしゅん)を握ったミッケはそう言いながら曙色の炎を纏う大業物明乃白隼を振った。

首を斬られたダルタ民2が崩れるように座り込み、ダルタ民3が噴き出す液状闇を見て腰を抜かした。

「お前たちのことは躊躇いなく斬れる。何度でもな」

曙色の炎を纏った大業物明乃白隼を構えたミッケはダルタ民3を見てそう言った。

「へ、ヘギャッ!!」

ダルタ民3がミッケを見て悲鳴を上げたその瞬間、大業物明乃白隼がダルタ民3の首を刎ね、炎が広がった。


午後五時五十分。

ミッケたち中央隊が出撃した。

ダルタ民たちはアージヴァイズたちの活躍を祈って数多くの気球を飛ばす。

「すごく綺麗!」

オレンジ色のワンピースで身を包んだオレンジは空に上がる光たちを見て笑みながら言った。

「こんなガキ共に期待しやがって・・・」

青色のワンピースで身を包んだアージヴァイズは空に上がる光たちを背に笑みながら言った。

「こんなに明るくしちゃ光に敏感な闇化生物が逃げちゃうよ」

藍色のワンピースで身を包んだエコーは星が少ない夜空を見てそう言った。

「・・・みんな、集中しろ。神経を研ぎ澄ませ・・・」

ピンク色のワンピースで身を包んだミッケは前を見てそう言った。

「え?何だよ急に」

アージヴァイズはミッケを見て笑みながら言った。

「なんか部隊長ぶろうとしてない?正直ダサいよ?」

オレンジはミッケを見て笑みながら言った。

「・・・何かいます・・・ずっと私たちを見ています・・・」

赤いフリルが付いた黒いワンピースで身を包んだキャロッティは周りを見ながらそう言った。

「わ、わかっかんねぇ~・・・お前らの感覚どうなってんだよ・・・」

驚くアージヴァイズはミッケとキャロッティを見てそう言った。

「うちたちの拠点にも闇化生物が居た。もしかしたら、生存者はいないかもしれない」

ミッケは前を見たままそう言った。

「じゃあ、宿幼をあそこに入れた裏切り者が居るってことじゃ・・・」

キャロッティはミッケを見て焦りながら言った。

「そんなわけないよ!!話しかけてきた人は何もしてこなかった!ミッケは何か変だよ!」

オレンジはミッケを見て大声でそう言った。

「まぁまぁ、私はオレンジを信じるぜ。ある程度は戦えるし、騒がしくするのは得意だからな」

オレンジと肩を組んだアージヴァイズはミッケを見て笑みながらそう言うと、エコーを見た。

「・・・じゃあ、私はミッケの味方をする。そこまで強くないし、特別うるさいわけじゃないからね」

エコーはミッケを見て笑みながら言った。

「エコーも私を信じた方が良い!」

オレンジがエコーを見てそう言うと、アージヴァイズが間に入った。

「戦力は分散させた方が良いでしょう。太陽剣技(たいようけんぎ)が使える私はヴァロン部隊長級柄の方に、ジュナさんはミッケ・カーリン部隊長級柄の方に、セシリーさんは上空から支援をお願いします」

キャロッティはオレンジたちを見てそう言った。

「了解」

ジュナはキャロッティを見てそう言った。

「オケ、総長」

セシリーはキャロッティを見てそう言った。

「・・・」

オレンジはキャロッティを見て少し不服そうに黙り、ミッケを見た。

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