アティア・ゼン編 四章 夢中の梨々香は、昼に広がる夜を見た。
午前十時三十分。
昇進試験の不服を申し立てて騒ぎ立てた中野 綾乃の師匠の対処を行うため、梨々香がローラ管轄レムフィト拠点に到着。
ミッケ・カーリンの降格を噂に聞いた記者たちが会見室に集まり大騒ぎ。
そんな状態に梨々香は呆れながらも話を聞いていた。
「・・・」
少し困り顔の梨々香は激しく打ち合うオレンジと綾乃を見ていた。
「あの子はとても素晴らしい剣術を持つ子です。なぜミッケ・カーリンが昇進してあの子が昇進しないのか、不思議で仕方ありません」
ディヴィー部隊長級組織員柄は梨々香を見てそう言った。
「なぜ、不思議に思った」
梨々香はディヴィーを見てそう言った。
「え・・・?へ、陛下は世界最高の剣技を使う剣士!あの子を見ればわかるはずです!」
「わからない。だから、問うている」
梨々香は厳しい目つきでディヴィーを見てそう言った。
「・・・」
ディヴィーは驚き、焦り、冷や汗を垂らしながら梨々香から目をそらした。
「試験を担当した五十名の部隊長級から話を伺ったことは?」
「え?・・・ありませんよ・・・」
冷や汗を垂らすディヴィーは梨々香を見てそう言った。
「では、私が話しましょう」
梨々香はそう言うと、資料を生成して持った。
「なんか見られてる・・・って、あの人、綾乃の師匠じゃない?」
木刀を握ったオレンジはディヴィーを見てそう言った。
「・・・なんか・・・嫌な予感がする・・・」
木刀を握った綾乃は梨々香とディヴィーを見てそう言うと、梨々香とディヴィーに駆け寄った。
「・・・ま、待ってよ!」
眉を顰めたオレンジは綾乃を見てそう言うと、綾乃を追いかけた。
「師匠!」
走って来た綾乃はディヴィを見てそう言った。
「ワンラー部隊長級柄は、コミュニケーション能力がとても低く、部隊長級には向いていないと言っていた」
梨々香は資料を見ながらそう言った。
「あ、あぁ・・・あの、陛下・・・弟子が・・・」
冷や汗を垂らすディヴィーは綾乃を見てそう言った。
しかし、梨々香は容赦なく話をする。
「テクサンジー部隊長級柄は、コミュニケーション能力が低く、焦りやすく、剣技が乱れやすいと言っていた」
「・・・」
綾乃は黙ってうつむいた。
「へ、陛下!!」
ディヴィーは梨々香を見て怒鳴った。
「中野上位」
梨々香は綾乃を見てそう言った。
「はい・・・」
綾乃はうつむいたままそう言った。
「君が思っていることを言い当てよう」
「なぜ、こんな言われ方されなきゃいけないんだ。部隊長級になりたいわけじゃないのに」
「・・・」
綾乃は驚きながら顔を上げ、梨々香を見た。
「う、嘘・・・綾乃、部隊長級になりたいよね?」
驚くオレンジは綾乃を見て笑みながら言った。
「なりたくないよ・・・」
綾乃は怒りが籠った声でそう言った。
「部隊長級にならなきゃ一緒にいたくないっていうなら、別に一緒にいなくて良い」
綾乃はそう言うと、拳を握り込んだ。
「・・・どうして・・・どうしてそんなこと言うのさ!!」
オレンジは綾乃を見て怒鳴った。
「これが私の気持ちだ!!」
綾乃はオレンジを見てそう怒鳴ると、どこかへ走っていった。
オレンジは落ち込み始めた。
「ドリェシェパノ部隊長級柄」
梨々香はオレンジを見てそう言った。
「・・・」
オレンジは慌てて梨々香を見た。
「これ以上は目を瞑れない。私からの最終警告だ」
梨々香はオレンジを見てそう言うと、自家用ジェット機に向かって歩いた。
「・・・」
オレンジは冷や汗をかいたまま黙っている。
「へ、陛下!記者たちが会見室で待っておられますが!」
ディヴィーは梨々香を追いながらそう言った。
「ローラとウェンディが厳正に対処する」
梨々香はそう言いながら足を止めることなく自家用ジェット機に向かった。
一方、会見室で梨々香を待つ記者たちは突然やって来たローラとウェンディに驚き、硬直していた。
「私利私欲のために陛下の名を使い、不健全な報道を行っている記者のみなさん!よくお集まりいただきました!」
ウェンディは記者たちを見て笑みながら言った。
「ほ、報道管理局長・・・」
そう言う記者たちは絶望の表情を浮かべた。
午前三時十一分。
ローラ管轄レムフィト拠点から戻った梨々香は就寝準備を済ませ、就寝した。
夢・・・私は久々に夢を見た。
崩壊前のアーヴァン共栄圏中央国アーヴァン・・・
昔ほど嫌な気分にはならない。
「この子は私の子よ・・・誰が渡すものですか・・・」
白髪の赤子を大切そうに抱きかかえた女性は白髪の赤子を見て笑みながら言った。
二百四十九回目の回帰から一千万年が経過し、----は力の消耗によって回帰を余儀なくされた。
しかし、一人の人間が南の華千﨑から----が入った棺を略奪し、回帰を待つ----を棺から出した。
これが悲劇の始まりだ。
「私の土地に居て逃げられるとでも思った?」
アイリスは白髪の赤子を大切そうに抱きかかえた女性を見てそう言った。
「よくやったよくやった。流石は大陸一の剣士じゃ」
青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性は白髪の赤子を大切そうに抱きかかえた女性に近づきながら言った。
第六魔塊、宿幼。
奴は・・・・の力を奪うために何年もアーヴァン王国内に潜んでいた。
宿幼が白髪の赤子に触れたその瞬間、アーヴァン王国の都市が消滅し、闇色の渦が空まで昇った。
「キュキャィィィィン」
巨大な雫は甲高い音と共に神気風と闇色の神気弾を噴石のように放ち、噴石のように放たれた闇色の神気弾がアーヴァン王国に落ちた。
巨大な闇の竜巻が生み出す暴風と闇色の神気弾によってアーヴァン王国が一瞬にして壊滅。
瞬く間に生物が淡い紫色の水晶と化し、アーヴァン王国が淡い紫色の水晶に包まれた。
私は間に合わなかった。だが、これで良かった。
これがなければ、私たちは再会できなかった。
闇の渦の最深部が黒色に染まり、闇の渦が熱気を放ちながら夜空色に変化していく。
夜空色の渦は一点に集まり、青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性と白髪の赤子が姿を見せた。
「・・・夜見がなぜッ!!」
青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性は眠る白髪の赤子を見て冷や汗をかきながらそう言った。
その瞬間、赤い閃光が発生し、青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性の腕が斬れ、液状の闇が溢れだした。
「・・・」
落ちる腕を見た神刀赤閃を握ったリリーは青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性を睨んだ。
(なんだこいつはッ!!神かッ!?人かッ!?)
青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性は神刀赤閃を握ったリリーを見て目を見開いた。
青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性が左手に光剣を生成しようとしたその瞬間、四股が切断された。
(なんだこの化け物は・・・!剣筋が見えないッ!!)
リリーを見て酷く驚いて怯える青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性が両腕で首を防ごうとしたその瞬間、首から液状の闇が溢れ、斬れた。
(その瞳・・・天理照赫ッ!!)
目を見開いた青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性の頭はリリーの太陽のように燃え、輝く瞳を見つめた。
(逃げなければ・・・死ぬ・・・!!)
青眼、白い狐耳に白髪ロングヘア。白い着物を着た女性の体は危機を回避するため、神気風を放つ。
祖の神気風は白髪の赤子を遠くへ押し飛ばした。
死を恐れた奴の行動はとても賢明だった。
私の注意を----に向かせなかったら、私は奴の核を斬っていた。
「・・・朝か・・・」
梨々香は窓から差す陽光を見てそう言った。




