レディフ・フィアンゼ編 五章。 ベルカンゼウ復興。
同年、八月二十七日。
東和連合は正式にアウス小国と確保していた春雫の地方を放棄。
アウス小国を含めた春雫地方は、サウスドラゴニアから援助を受けて復興作業を開始した。
オレンジがアウス陸軍の元兵士で橘花国の奴隷になっていた母に会いに行っている間、リリーはアウス復興ボランティアに参加し、アージヴァイズたちは橘花でのんびりしていた。
ボランティアに参加したリリーはアウス民から祖母ローリーの話を聞いていた。
「ローリー様は本当に強いお方だった」
苗木を持った元アウス陸軍兵2は苗木を植える薄緑色の作業着で身を包んだリリーを見て笑みながら言った。
「傭兵として戦姫隊に居た頃、あまりの威圧感から橘花の軍人たちがビビッて何もできなかったらしいよ」
元アウス陸軍兵3はリリーを見て笑みながら言った。
休憩するように言われたリリーは一時的に鹵獲されたが、アウスと共に手放された軍艦の解体現場を見ていた。
残った軍艦は金属材に変わり、街の復興で使われる。
瞳の奥が空色に光るリリーは祖国を守るために造られた軍艦が祖国の傷を癒す風景を見て小さく拍手していた。
「・・・どうして拍手するの?」
歩いてきた青眼、薄青緑髪ツインテール。ベージュ色のワンピースで身を包んだ生者の肌とは言い難い肌のTT-42B-29-01 カルジェン・バースはリリーの横で止まり、リリーを見ながら言った。
「祖国こそ守れなかったけど、祖国に貢献するんだもん。すごくカッコいいよ」
リリーは建物の建材として使われる金属材を見て笑みながら言った。
「・・・そっか・・・すごくいい考えだね」
カルジェン・バースは建物の建材として使われる金属材を見て笑みながら言った。
休憩を終えたリリーは、晩御飯の食材を狩っていた。
アウス民は数少ない猟銃やボウガンなどを使って橘花が持ち込んだ巨大なネズミのような水生哺乳類や淡水の大きなエビを狙う中、リリーは二つの網で橘花が持ち込んだ巨大なネズミのような水生哺乳類を捕獲し、先端を削った頑丈な木の棒で絞めていた。
「頼もしいね~」
焚火を突くカルジェン・バースの近くに座るアウス民1は仕留めた巨大なネズミのような水生哺乳類を持つリリーを見て笑みながら言った。
「次はどうするの?」
仕留めた巨大なネズミのような水生哺乳類を持ったリリーはアウス民1を見ながら言った。
「うん。おばちゃんにちょうだい」
アウス民1は仕留めた巨大なネズミのような水生哺乳類を持つリリーを見て笑みながら言った。
リリーは仕留めた巨大なネズミのような水生哺乳類をアウス民1に渡すと、アウス民1は大きなナイフを使って豪快に捌き始めた。
「こういう動物を捌いたことあるの?」
リリーは巨大なネズミのような水生哺乳類を捌くアウス民1を見ながら言った。
「食用ではないけど、皮を得るために捌いてたことはあったよ」
アウス民1は大きなナイフを使って巨大なネズミのような水生哺乳類を捌きながら言った。
「へぇ~」
「・・・君はこの生物を食べるっていることに抵抗とかないのか?」
「別にないよ。どうしてそんなこと聞くの?」
「だって、大きいネズミだよ?普通食べようってならないじゃん」
血がついた大きなナイフを持ったアウス民1はリリーを見ながら言った。
「アウヴァニーがつまみだって言ってハチの子とか食べてたからね。大したことないよ」
「たくましいね~」
血がついたナイフを持つアウス民1はリリーを見て笑みながら言った。
晩御飯の時間になると、たくさんのアウス民が飲食物を求めて広場に集まった。
「ほっ」
リリーは薪に小さな赤い光の粒を飛ばした。
小さな赤い光の粒は薪に当たると、炸裂して激しい炎を起こし、薪に火をついた。
焚火ができると、広場はランプの光で明るなり、温かくなった。
「な、何でローリー様のお孫様がこんな所に・・・!?」
酔った元アウス陸軍兵1は料理を見て笑むリリーを見て驚きながら言った。
「ボランティアで来てくださったんだよ」
アウス民1は酔った元アウス陸軍兵1を見ながら言った。
「うぅ・・・どうしてローリー様までが死んじまったんだよぉ・・・!死ぬのは裏切り者のライリーだけで良かったじゃないか!」
酔った元アウス陸軍兵1は泣き崩れながら言った。
「・・・」
リリーは酔った元アウス陸軍兵1を見ながら料理を食べた。
「ごめんね。普段はこんなこと言わないやつなんだけど、酒が入ってるから・・・許してね」
アウス民1はリリーを見て苦笑いしながら言った。
「大丈夫だよ。大犯罪者を親だと思えるほど寛大な心は持ってないから」
リリーはアウス民たちを見ながら言った。
「・・・まぁ・・・あの事件は非常に残念だった。ゼノクイーンを月浜から出さないためとは言え・・・あまりに犠牲が大きすぎた」
元アウス陸軍兵2はリリーを見てそう言うと、料理を食べた。
「・・・どうして・・・どうしてローリー様が死ななきゃいけなかったんだ!ゼノクイーンを手放してでも残るべき人だったはずだ!」
涙を流す酔った元アウス陸軍兵1はリリーを見ながら言った。
「ママ!ご飯の時間を邪魔しちゃって!」
アウス民かかき分けて怒った橙色のワンピースで身を包んだオレンジが出てきた。
「あ・・・」
リリーはオレンジを見ながら言った。
「あっ!ボス!」
オレンジはリリーを見て笑みながら言った。
「ボ、ボス!?ローリー様のお孫様と知り合いなのか!?」
涙を流す酔った元アウス陸軍兵1はオレンジを見て驚きながら言った。
「戦姫隊のボスだよ!もぉ!涙拭いてよ!」
オレンジは泣きべそをかいた元アウス陸軍兵1を見ながら言った。
「あ、あぁ・・・これはどうも・・・娘が大変お世話になったようで・・・」
元アウス陸軍兵1、グラープン・V・ドリェシェパノはリリーに深々と頭を下げながら言った。
「大した世話はしてないよ」
リリーは頭を下げる元アウス陸軍兵1を見ながら言った。
ここからは何か隠すように戦線の思い出で盛り上がり始めた。
「あの時は勝ったと思ったんだよ~でもさ、空を見上げて赤色の流れ星が見えたときに負けを確信したんだよ~」
グラープンはリリーを見て笑みながら言った。
「でも、ボスはどうして急にアウスへ来たの?」
オレンジはリリーを見ながら言った。
「出撃命令が出たからだよ。レムフィト基地の軍人共はI-1戦姫で勝てるとか言ってたのにさ。手も足も出なくて焦ったんだよ」
リリーはオレンジを見て笑みながら言った。
「I-1が42Bに勝つなんて不可能だよ。悪いけど、I-1は雑魚だからね」
グラープンはリリーを見て笑みながら言った。
「私もそう思ってたよ。私が発言してもチビは黙ってろの一点張りだったし、余程I-1が優れているって証明したかったんだろうね」
リリーはグラープンを見て笑みながら言った。
「子供に頼るくせに意見は聞かないって東和連合の軍人たちは最低だな」
グラープンは骨付き肉を食べながら言った。
「・・・」
カルジェン・ヴォーン・ベイツはリリーを見ながら骨付き肉を食べた。
夜が更けると、リリーは外で星空を見始めた。
リリーが少し星空を見ていると、カルジェンが来た。
「星空が好きなの?」
カルジェンはリリーを見ながら言った。
「嫌いだよ。今はね」
リリーはカルジェンを見て笑みながら言った。
「・・・今、何を考えてるの?」
怪訝な表情をするカルジェンはリリーを見て迫るように言った。
「さぁね」
「リリー。私たち、友達だよね?」
「友達・・・だったね」
リリーはカルジェンを見ながら言った。
「・・・ゼノクイーン・・・恐怖と絶望で世界を闇に染める神がそれに封印されているって、知っているはず」
カルジェンはリリーを見ながら言った。
「そんな力で世界が消せるなら、こんな世界・・・さっさと消してるよ・・・」
リリーはネックレスを取り出し、夜空のように輝く雫型のペンダントトップを見ながらそう言うと、ゼノクイーンを展開した。
「・・・」
カルジェンは夜空のように輝く雫型のペンダントトップがついたネックレスを持つリリー・ゼノクイーンを見つめた。
「この世界は必ず消す。私がこの世界にいる生物を残すという考えに到達できるようにご機嫌取りを頑張ってくれよ」
リリー・ゼノクイーンはカルジェンを見てそう言いながら上昇し、どこかへ飛んでいった。
「・・・」
カルジェンは上昇してどこかへ飛んでいく赤い光を見つめた。
「ゼノクイーン・・・絶対に破壊する・・・あの惨劇は二度と繰り返させない・・・」
カルジェンは星空を見ながら言った。
「・・・」
夜空を飛ぶリリー・ゼノクイーンは地上を見ていた。
リリー・ゼノクイーンは森林の一部を見ると、そこに降下した。
「リベードリヒ!」
リリー・ゼノクイーンは木を背もたれにして座る、息を上げた白いワンピースに身を包んだリベードリヒに駆け寄りながら言った。
「はぁ・・・はぁ・・・」
冷や汗をかくリベードリヒはリリー・ゼノクイーンを見ると、ゆっくりと瞼を閉じた。
リベードリヒの呼吸はゆっくりと元に戻り、眠りについた。
「日に日に酷くなってる・・・」
リリー・ゼノクイーンはリベードリヒの脚元から溢れる闇を見ながら言った。
同年、八月二十八日。
リリーは早朝からサウスドラゴニアから来た物資の荷下ろしを手伝っていた。
「はい」
リリーはカルジェン・バースにアウス原産のフルーツの苗が入った木箱を渡しながら言った。
「・・・」
カルジェン・バースは少し眠そうに木箱を受け取って運んだ。
「・・・リリー様?」
アウス民1はリリーを見て不思議そうに言った。
「どうした?」
リリーはアウス民1を見ながら言った。
「そんな髪色・・・でしたっけ?」
アウス民1はリリーの髪を見ながら言った。
アウス民1が疑問に思うのは当然だ。リリーの髪は黒紫色に染まっていたのだから。
「・・・世の中には触れてはいけないものがあるもんさ。触れない方が良い」
リリーはアウス民1を見て笑みながら言った。
「・・・」
カルジェン・バースはリリーを見つめた。
リリーは荷下ろしを終えると、朝ご飯を食べてから港へ行き、今日採れた魚を見始めた。
「カニだ」
リリーは大きなカニを見て笑みながら言った。
「・・・カニ?」
赤眼、色が抜けた赤髪にツインテール。青い作業着で身を包んだ生者とは言い難い肌のユニ・オブ・ヤングは大きなカニが入った箱を運びながら言った。
「香奈ちゃんから貰って食べてたんだ。結構美味しかったよ」
「へぇ~」
ユニはリリーを見ながら言った。
「だって」
ユニは漁師を見ながら言った。
「って言われてもなぁ・・・売れないんだよ」
漁師は大きなカニを見ながら言った。
「これ買う。いくら?」
大きなカニを指さすリリーは漁師を見て笑みながら言った。
「まぁ、そうだなぁ・・・一サラで良いよ」
漁師はリリーを見ながら言った。
「はい」
リリーは漁師に一サラ紙幣を渡しながら言った。
「はい毎度~」
漁師はリリーを見て笑みながら言った。
リリーはカニを持って広場へ行くと、薪に手をかざして赤い光を放ち、火をつけ、大きなカニを解体してミリア浄水場で貰った水を沸かし、茹で始めた。
「何してるの?」
カルジェンはカニが入った煮える鍋を見るリリーを見ながら言った。
「カニを茹でてるの」
リリーはカニが入った煮える鍋を木の棒で突きながら言った。
「・・・カニ・・・」
カルジェンはカニが入った煮える鍋を見ながら言った。
リリーは茹で上がったカニを皿に取り出し、解体して食べ始めた。
「食べるか?」
カニを食べるリリーはカルジェンを見ながら言った。
「い、いやぁ・・・やめとく」
カルジェンはリリーを見て引きながら言った。
「そうか」
リリーはカルジェンを見てそう言うと、カニを黙々と食べ進めた。
「旨いカニだ。リベードリヒと食いたかったな・・・」
リリーはカニを見て少し寂しそうに笑みながら言った。
「ボス。木材運ぶの手伝って」
オレンジはリリーを見ながら言った。
「あぁ、良いよ」
カニの殻を焚火の中に入れたリリーはオレンジを見てそう言うと、立ち上がった。
「・・・」
カルジェンはカニの脚を見ると、立ち上がってどこかへ行った。
木材を運び終えたリリーが広場に戻ると、アウス民が集まっていた。
「みんな集まってどうしたんだ?」
リリーはアウス民たちを見ながら言った。
「あぁ、んめぇんだよこりゃ」
アウスの長老はリリーを見てそう言うと、カニの身を食べて、酒を飲んだ。
「何かわからないけどすっごい美味しい」
アウス民1はリリーを見て笑みながら言った。
「ありがとねボス!」
カニの身を食べるオレンジはリリーを見て笑みながら言った。
「あ・・・あぁ・・・」
リリーはアウス民たちを複雑な表情で見て笑みながら言った。
「よく食べられるね。それ、海蜘蛛だよ?」
カルジェンはアウス民たちを見ながら言った。
アウス民たちは食べる手を止め、カニを見た。
「・・・」
カルジェンはリリーを見て不敵な笑みを浮かべた。
「これが海蜘蛛!?」
「海蜘蛛ってこんな旨かったのか!?」
「流石だね!ボス!」
オレンジはリリーを見て笑みながら言った。
「確か、カニって言ってたな。こりゃ高く売れるぞぉ・・・」
目を輝かせた漁師はカニを食べながら言った。
「もうみんな集まってるの?」
ユニはみんなを見ながら言った。
「海蜘蛛、捨てる箱に入れて置いたよ」
ユニは漁師を見ながら言った。
「・・・捨てんな捨てんな!あれはカニって言って飛ぶほどうめぇんだぞ!?」
漁師はユニを見て怒鳴った。
「えぇ~え!?お前が捨てて来いっていたのに~!」
ユニは漁師を見ながら言った。
アウス民たちはユニと漁師のやり取りを見て笑っていた。
食事を終えると、リリーは馬や牛の世話をした後に乗馬を始めた。
「・・・馬に乗ったことあるの?」
椅子に座るカルジェンは馬に乗るリリーを見ながら言った。
「一度だけ晩年の大皇星に乗ったことあるんだ。ちょっとだけだけど」
馬に乗るリリーは前を見ながら言った。
「・・・大陸復興を支えた恩馬だもんね。引退後の彼は本当に可愛かったけど、現役時代の彼は本当にかっこよかったよ」
椅子に座るカルジェンは馬に乗るリリーを見て笑みながら言った。
「カルジェン」
馬を止めさせたリリーはカルジェンを見ながら言った。
「なに?」
カルジェンは手綱を握ったリリーを見た。
「君の担当は東和海だったよな?どうして内地にいるんだ?」
リリーはカルジェンを見ながら言った。
「ど、どうしてって?」
カルジェンは手綱を握ったリリーを見て動揺しながら言った。
「君もグラディスたちを倒すと意気込んでいたじゃないか。あんな奴らに負けないって」
リリーは馬から降り、馬の鼻先を撫でながら言った。
「・・・」
カルジェンはうつむいて黙った。
「あれだけ大口叩いて月浜民を期待させたエッグィーたちも内地戦に逃げて来た。もしかして、君も逃げて来たのか?」
リリーは馬を馬房に戻しながら言った。
「に、逃げてない!!休暇中に作戦を考えてるだけだ!!」
カルジェンは馬にブラシをかけるリリーを睨みながら大声で言った。
「じゃあ、内地戦で君を見ることはなさそうだね。友人だった君は私が見えないところで死ぬみたいだから、誰か内地戦に呼ぼうかな」
リリーは馬を見て笑みながら言った。
「・・・」
目を見開いたカルジェンは冷や汗をかき、リリーから離れた。
「!?」
目を見開いたカルジェン・バースは赤眼、頭に黒い二本の龍角。赤と黄のインナーカラーが入った黒髪ツインテール。黒色の丈がかなり短い服を着て黒色のショートパンツを穿き、腕から龍鱗と龍爪を生やした微褐色肌のTT-42B-71 グラディス・ジェンヴァーンを見つめた。
グラディスが黒銀の龍翼を背から生やして広げると、途轍もない熱が発生し、ジェンヴァーンは熱に耐え切れなくなって融解し、吹き飛んでいった。
「これで・・・これであいつは力を使い切ったはず・・・!!」
カルジェン・バースは旋回しながら陽炎が上がる海を見て冷や汗をかきながら言った。
カルジェン・バースたち月浜疑似神姫たちが空中にある光にエネルギー砲を構えたその時、光がかなり速い速度で飛び始めた。
背から生やした黒銀の龍翼を羽ばたかせて飛ぶその姿は、あまりに力強く、力を使い切ったとは思えなかった。
「どうして・・・」
カルジェン・バースはグラディス・ハーツドラゴンを見て唖然としながら言った。
「どうした!戦いはこれからだぜ!?人間!!」
カルジェン・バースたちの上で急静止したグラディス・ハーツドラゴンはカルジェン・バースたちを見て笑みながら言った。
「・・・」
少し昔のことを思い出していたカルジェンは周りを見た。
周りにリリーの姿はどこにもなく、もうどこかへ行ったようだった。
同年、九月一日。
アウス復興ボランティア活動が終わり、リリーは橘花国へ戻ることになった。
「困ったらいつでも相談してくれよ。君は戦後アウス史に残る偉大な恩人だからな!」
アウス民2はリリーと握手をしていた。
「ありがとう」
アウス民たちと握手するリリーはアウス民たちを見て笑みながら言った。
アウスから離れたリリーは列車に乗って橘花国へ戻った。
この列車にもカルジェンがいた。
「・・・ゼノクイーン・・・怖くないの?」
カルジェンはリリーを見ながら言った。
「別に」
リリーはカルジェンを見ながら言った。
「だって・・・ゼノクイーンには"赤紫ノ龍神"が入っているんだよ?」
「この大陸全土を壊滅させた化け物が・・・」
カルジェンはうつむいて胸を押さえ、苦しそうに言った。
「・・・赤紫ノ龍神は神代以前に一度登場したっきり登場しなかった。その赤紫ノ龍神がどうして現代になって出現したか、考えてみたことはあるか?」
リリーはカルジェンを見ながら言った。
「・・・リリー・・・もうやめようよ・・・ゼノクイーンを完全に破壊する方法だってあるんだ。それなのに、どうしてゼノクイーンを捨てないの!?」
カルジェンはリリーを見ながら強く言った。
「一方的に話を勧められると困るな」
「お前たち人間が起こしている争いで同じ人間が苦しんでいるという異常事態を神のせいにしていないか?」
カルジェンを見るリリーはそう言いながらゆっくりと頬杖を突いた。
「神を言い訳にして戦争を続けて何がしたいんだ?」
頬杖を突いたリリーはカルジェンの目を見つめてそう言った。
「・・・リリー・・・あの惨劇を経験していたら・・・価値観が変わっていたかもね・・・」
カルジェンはリリーを睨みながら言った。
「・・・・・・困ったな。五歳児でも良いから話し合いができるやつを寄こしてほしいよ」
リリーはカルジェンを見て悲しそうに言った。
「・・・ゼノクイーンを渡せ。そうしたら、争いは終わる」
リリーを睨み、歯を食いしばったカルジェンはリリーに拳銃を向け、そう言った。
「センパーイ!!玩具なんて出してどうしたんですか~!?」
黒色のミニコルセットドレスで身を包んだリアンロゼスティはカルジェンを見て笑みながら言った。
「・・・」
リリーに拳銃を向けるカルジェンは目を見開き、リアンロゼスティを見て青ざめてよろけた。
「センパーイ!!席そこなんでしょ?久々にあったんですから話くらいしましょうよ!!」
リアンロゼスティは椅子に座りながら言った。
「ここに来ているとはな・・・K・アンディー」
純米酒の小瓶を持つキッドは歩きながらリアンロゼスティを見て言った。
「お!グラディスに遊ばれた月浜四剣士のNo.2さんだ!!チーッス!!」
リアンロゼスティはキッドを見て笑みながら言った。
「本当に怖いものがないんだな」
歩みを進める純米酒の小瓶を持つキッドはリアンロゼスティを見ながら言った。
「あるわけねぇだろ。ヴェルベサ・アンドリーネ・クリスティーナ・ロードハーツの直系子孫だぞ」
リアンロゼスティはキッドを見ながら言った。
「睨むなよ?相手は人間なんだから」
リリーはリアンロゼスティを見ながら言った。
「金華大神様がおっしゃるなら」
リアンロゼスティはリリーを見て笑みながら言った。
純米酒の小瓶を持つキッドはカルジェンの隣に座った。
「お前たちの横暴は必ず止める。私たちが手にした最初で最後の希望をお前たちにぶつける」
キッドはリリーとリアンロゼスティを見ながら言った。
「最初で最後の希望なんて易々と使うなよ」
リリーはキッドを見て笑みなら言った。
「ハッハハハ」「アッハハハ」
リリーはリアンロゼスティと一緒に笑った。
「どうせ試製段階の百番装備アイリスでしょ?あれ、ローラが設計したやつだし」
リアンロゼスティはキッドを見て笑いながら言った。
「キッド・ロイ・サマー。私やリアンロゼスティたちのことはある程度怒らせても良いが、リベードリヒだけは怒らせるなよ?世界を消そうとする私を止めているのがリベードリヒだからな」
リリーはキッドを見て笑みながら言った。
「ふ、ふざけるな!!」
立ち上がり、再びリリーに拳銃を向けたカルジェンはリリーを睨みながら怒鳴った。
「・・・」
リアンロゼスティは手から生み出した血針の先端をカルジェンに向けた。
その瞬間、空間が歪み、赤黒い靄が辺りを一瞬包んだ。
「な、何だ・・・今のは・・・」
冷や汗をかくキッドはリアンロゼスティを見ながら言った。
「流石はチンピラ。金華大神様と敵対することを選んだな?」
血針を握ったリアンロゼスティはカルジェンを見ながら言った。
「止せよ」
リリーは血針を握ったリアンロゼスティを見ながら言った。
「金華大神様。こいつらに必要なのは世界の消滅ではなく、世界の壊滅。恐怖と絶望です」
血針を握ったリアンロゼスティはカルジェンを見ながら言った。
「私はこの世界もこの世界の人間もどうでも良いんだ。だから、世界の壊滅よりも世界の消滅を望む」
リリーは血針を握ったリアンロゼスティを見ながら言った。
「・・・」
血針を握ったリアンロゼスティはカルジェンを見ながら血針を消滅させた。
「・・・」
リリーは頬杖を突き、窓から外を見た。
リリーは橘花国に戻る。
橘花国に戻ったリリーに待っているのは、途轍もない事件である。