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アティア・ゼン編 二章 姉妹の力で変化する。

同年、五月七日。

月浜の崩壊後、行く先を失った疑似神姫たちがレムフィト基地に集まっていた。

ALコアの摘出、血管洗浄、心臓移植が疑似神姫に施され、人として再び生きる希望を得ることができた。

人に戻った元疑似神姫たちから順に次々と家族や友人と再会していく。

家族との再会を喜ぶ者、家族が人に戻ったことを喜ぶ者たちでレムフィト基地は喜びに満ち、お祭り騒ぎだ。

「姉さん・・・!姉さん!!」

ノエラ・F・ベネトを抱きしめるローランは泣きながら大声でそう言った。

「人として会えるなんて・・・今までこんなに嬉しいことはない・・・」

ローランを抱きしめる赤眼、白髪セミロングヘア。白いワンピースで身を包んだ少女のような女性、ノエラは泣きながらそう言った。

「キャロッティ。良かったな」

アージヴァイズはキャロッティ・ベルコント・二コルを見て笑みながら言った。

「うん、また会えて良かった。姉さん」

赤眼、白髪セミロングヘア。白いワンピースで身を包んだ微褐色肌の少女、キャロッティはアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「お前、これからどうするんだ?レムフィトで暮らすのか?」

「姉さんと同じ神軍の組織員になろうと思うんだ。姉さんと一緒に暮らせるかな」

「・・・そ、そうか・・・まぁ、拠点はここ以外にもあるし、一緒に住めるかわからないけど・・・一緒に住めると良いな」

少し眉を顰めたアージヴァイズはキャロッティを見て笑みながら言った。


同年、五月二十日。

元疑似神姫たちが次々と退院し、神軍から支援金をもらって自立しようと動き始めた。

その中で、八十一名の元疑似神姫が神軍の組織員になり、様々な拠点に移動していった。

ローラ管轄レムフィト拠点に所属することになったのは、ディナット・ロニー・クラーク、キャロッティ・ベルコント・二コル、ゲッテル・オブ・ライリー、ケティ・アリス・ウィルビー、ジュナ・ブラウン・ロイド=パック、サラ・フォーブス・プレザンスの六人だ。

「やはり、良い剣筋ですね。アーヴァン式でしょうか」

ローランは訓練を行う神軍組織員たちを見て笑みながら言った。

「悪い癖は直さなければな」

ローラは訓練を行う神軍組織員たちを見てそう言った。

「悪い癖・・・」

ローランはローラを見てそう言うと、神軍組織員たちを見た。

神軍組織員たちは木刀の刀身に揃えた指を立てるようにして構える。


午後一時七分。

訓練を終えたキャロッティがアージヴァイズの部屋に来た。

「姉さん!私と訓練してくれませんか!?」

木刀を握ったキャロッティはアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「え?」

端末を持ったアージヴァイズはキャロッティを見てそう言った。

「アージヴァイズの妹は強いの?」

青緑眼、黒髪にツインテール。黒いカッターシャツを着て黒い長ズボンを穿いた色白な肌の少女、エコー・ユニ・マルガレーテはアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「そうだな・・・まぁまぁだよ」

アージヴァイズはエコーを見てそう言った。

「姉さんはお強いのですか!?」

木刀を握ったキャロッティはアージヴァイズを見て目を輝かせながら言った。

「アージヴァイズは下位組織員なのに弟子を持つくらい強いにゃ」

ミッケはキャロッティを見て笑みながら言った。

「是非!お手合わせをお願いします!」

「まぁ・・・良いよ」

アージヴァイズはキャロッティを見て苦笑いしながら言った。


木刀を持ったアージヴァイズとキャロッティは訓練場に行き、軽い打ち合いを始めた。

「姉さん!一撃がとても重たいです!」

木刀を握ったキャロッティは木刀を振るアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「・・・そりゃぁ・・・訓練して来たからな」

木刀を振るアージヴァイズはキャロッティを見てそう言った。

「何だかぎこちないね」

エコーは木刀を振るアージヴァイズを見てそう言った。

「久々の再開だし、そんなもんじゃない?」

ミッケはアージヴァイズとキャロッティを見て笑みながら言った。

高揚したキャロッティは本格的に打ち込み始めた。

「姉さん!とてもお強いですね!」

木刀を振るキャロッティは木刀で木刀を防ぐアージヴァイズを見て笑みながら言った。

キャロッティが強く打ち込み始めた途端、アージヴァイズが一気に汗をかき始めた。

「あ、あれ・・・?」

エコーは見る見るうちに押されるアージヴァイズを見て驚きながら言った。

「やっぱりにゃ~」

ミッケはキャロッティを見て笑みながらそう言った。

「え?なに?」

エコーはミッケを見てそう言った。

「あのキャロッティっていう子、どうも赫色が似合うと思わない?」

ミッケはエコーを見て笑みながらそう言った。

「カク色?」

エコーは首を傾げてそう言うと、少し考えてハッとした。

「バカに・・・バカにしやがって!!」

木刀を握ったアージヴァイズは怒筋を浮かべ、怒鳴りながら木刀を振った。

木刀と木刀が激しくぶつかると、両者が離れた。

青く輝く木刀を握ったアージヴァイズは冷気を放ちながらキャロッティに向かった。

「あの光は・・・」

木刀を握ったキャロッティは青く輝く木刀を見てそう言った。

「逃げて!!アージヴァイズの妹!!」

冷や汗をかいたエコーはキャロッティを見て叫んだ。

笑み続けるキャロッティが目を輝かせた瞬間、木刀が赤く染まり、刀身が発火した。

燃える木刀と青く輝く木刀がぶつかると、小規模な水蒸気爆発が発生してアージヴァイズが吹き飛ばされた。

「姉さん!!」

木刀を握ったキャロッティは倒れたアージヴァイズを見て目を見開いてそう言うと、木刀を投げ捨ててアージヴァイズに駆け寄った。

「大丈夫ですか!?お怪我は!?」

眉を顰めたキャロッティはアージヴァイズを見てそう言うと、起こそうとした。

しかし、その時、アージヴァイズがキャロッティの腕を振り払った。

「お前・・・お前みたいな天才はよぉ・・・他の所に行けばよかったんだ・・・」

アージヴァイズはゆっくりと起き上がりながらそう言った。

「姉さん・・・」

眉を顰めたキャロッティはアージヴァイズを見てそう呟いた。

「もう私の所に来るなよ・・・目障りなんだよ」

アージヴァイズはそう言うと、訓練場の出入り口へ向かって歩いていった。

「アージヴァイズ・・・」

眉を顰めたエコーは去るアージヴァイズを見てそう言った。


ミッケとエコーはキャロッティを連れて食堂へ行った。

ミッケとエコーはお茶を飲みながらキャロッティから話を聞いた。

「どうしてアージヴァイズはあんな態度なの?」

ミッケは紅茶に砂糖を入れながら言った。

「そうだよ!おかしいよ!」

エコーは怒りながらそう言うと、ミッケからスプーンを奪って紅茶に砂糖を大量に入れた。

「・・・」

ミッケはエコーを見て笑んだ。

「・・・孤児になったのは私のせいなんです・・・」

眉を顰めたキャロッティはうつむきながら言った。

「ど、どうして?何があったの?」

エコーはキャロッティを見て少し驚きながらそう言った。

「私、親を殺して・・・その時、家も燃えてしまって・・・」

「どうしてそんなことを?」

ミッケはキャロッティを見てそう言った。

「母親が酒を買って来いと姉さんに怒鳴り、暴力を振るっていたんです」

「アージヴァイズを助けるために・・・って感じか・・・」

エコーはキャロッティを見てそう言うと、お茶を飲んだ。

「姉さんはきっと・・・私を恨んでいるんです。私は姉さんから家族も家も奪ったんですから・・・当然と言えばそうですけど・・・」

「そんなことないよ!」

エコーはキャロッティを見て大声でそう言った。

「・・・」

眉を顰めたキャロッティはエコーを見た。

「だって!アージヴァイズの妹がアージヴァイズを助けなかったら、死んでたかもしれないんでしょ!?」

「確かに・・・戦姫隊に入る前だったら四歳後半から五歳前半・・・そんな小さな子が大人から暴力を受けたら死んでもおかしくないよ」

眉を顰めたミッケはエコーを見てそう言った。

「アージヴァイズは勝手すぎるよ!考える頭がないの!?」

エコーは怒りながらそう言った。

「こんにちはー」

料理が乗ったお盆を持った水色眼、銀髪ロングヘア。銀色のミニコルセットドレスで身を包んだ色白な肌の乙女、エリー・V・ヘリズランドはエコーとミッケを見てそう言うと、少し離れた椅子に座った。

「どうしたの?ご飯食べに来たの?」

エコーはキャロッティを連れてエリーの向かいの席に座りながら言った。

「うん、近くで任務があったからね」

フォークを握ったエリーはエコーとキャロッティを見てそう言うと、サーモンクリームパスタを食べた。

「ねぇ!聞いてよ!アージヴァイズったらせっかく妹と再会したのに」

エコーがエリーにそう言っていると、キャロッティがエコーの口を塞いだ。

「・・・どうしたの?キャロッティ・ベルコント・二コル」

咀嚼するエリーはキャロッティを見てそう言った。

「いいえ・・・こんな気軽に幹部の方と話して良いのかな・・・と・・・」

キャロッティはエリーを見てそう言った。

「別にいいよ。同じ部隊のメンバーだった時期があったからね」

フォークを握ったエリーはキャロッティを見て笑みながら言った。

「それにしても・・・あんなのになったアージヴァイズ・ベルコント・ニコルを庇うなんて健気だね」

フォークでパスタを巻くエリーはキャロッティを見て笑みながら言った。

「・・・あなたには・・・どこまでの権限があるんですか?」

冷や汗をかいたキャロッティはパスタを食べるエリーを見てそう言った。

「私はグラディスに次ぐ神軍幹部の二番手だからね。組織員の一人くらい簡単に解雇できる」

エリーは咀嚼しながらそう言った。

「・・・」

冷や汗をかいたキャロッティはエリーを見つめた。

「まぁ、別に解雇しないけど」

フォークでパスタを巻くエリーはサーモンクリームパスタを見てそう言った。

「なに?どうしたの?」

エコーはキャロッティとエリーを交互に見てそう言った。

「アージヴァイズが使ってる剣技がどんな剣技か知ってるんだよね。だから、排除されるかもしれないってビビってるんだよね。シスコンヒーリアズラビットのキャロッティ・ベルコント・二コル」

フォークを握ったエリーはキャロッティを見てそう言うと、パスタを食べた。

「・・・あの剣技・・・やっぱり何か特別なものなの?」

エコーはエリーを見てそう言った。

太陰剣技(たいいんけんぎ)。別名、怠け者の剣技」

エリーは咀嚼しながらそう言った。

「怠け者の剣技・・・」

「特に鍛錬を積むことなく会得できる最強の剣技として人気だった」

フォークを握ったエリーはパスタをフォークで巻きながらそう言った。

「ただ、世の中そんな甘くない」

エリーはフォークに巻かれたパスタを見てそう言った。

「・・・」

エコーとキャロッティはフォークに巻かれたパスタを見て冷や汗をかいた。

「その剣技を使う者は十年も経たずして死ぬことが判明した」

エリーはそう言うと、パスタを食べた。

「じゅ、十年・・・」

エコーは驚きながら言った。

「太陰剣技は短命の剣技として忌み嫌われ、その剣技の継承が剣士たちの間で禁止されたんですけど、それでも使う者が後を絶たず・・・」

キャロッティはエリーを見てそう言った。

「強いから短命になってまで使おうとする人が居るんだね・・・」

エコーは少しうつむきながら言った。

「そういうこと。そして、その剣技を使う者は鍛錬を怠る怠け者だった。だから、真っ先に排除対象に選ばれてきた」

エリーはフォークを置いてそう言った。

「・・・アージヴァイズ・・・性格もあれだし、ヤバくない?」

エコーはエリーを見てそう言った。

「ローラは陛下の眷属だし、ここまで解雇しないってことは何か考えがあって解雇してないんだと思う」

エリーはエコーを見てそう言った。

「ただ・・・太陰剣技が広まれば、責任を問われて管理者から外される可能性がある」

エリーはキャロッティを見てそう言った。

「次に管理人になる可能性があるのは私とメアリーとエミー。この三柱はすぐにでもアージヴァイズを解雇する。太陰剣技の使い手は必要ないからね」

エリーはエコーとキャロッティを見てそう言った。


同年、五月二十一日。

アージヴァイズは部屋で拗ね続けていた。

(あいつは天才だから、どこまでも伸びる)

アージヴァイズは一人暗い部屋で携帯端末を操作していた。

(私は凡人だから、どれだけ頑張っても限界がある)

アージヴァイズは携帯端末の画面に映るニュースを見て画面に触れ、スクロールした。

(あいつみたいな奴が居るから、私たち凡人は苦しむ)

アージヴァイズは携帯端末の画面に映るコマーシャルを見て画面に触れ、スクロールした。

(追いつけないのに努力とか何とか・・・バカみたいだ)

アージヴァイズは電源ボタンに軽く触れ、携帯端末の電源を落とした。


一方、ミッケとエコーは木刀を肩にかけて基地内を歩いていた。

「師匠たちみんな任務とか・・・聞いてないよ」

エコーは空を見てそう言った。

「はぁ~歩き回って損した」

エコーはため息交じりにそう言った。

「まぁ、こんな日もあるにゃ。訓練場で適当に木刀振ってよ?」

ミッケはエコーを見てそう言った。

「うん・・・」

エコーはミッケを見てそう言った。


エコーとミッケが訓練場に行くと、そこには先客がいた。

「・・・」

木刀を握り込んだキャロッティは汗だくになりながら木刀を振っていた。

「アージヴァイズの妹・・・」

ミッケはキャロッティを見てそう呟いた。

「あ、姉さんのお友達」

木刀を握ったキャロッティはエコーとミッケを見て笑みながら言った。

「すごいね。いつから振ってるの?」

エコーはキャロッティを見て笑みながら言った。

「いつ・・・」

木刀を握ったキャロッティはエコーを見てそう言った。

「って、もう明るくなってる・・・」

木刀を握ったキャロッティは空を見て驚きながら言った。

「暗い時から振ってたの!?もうお昼近くだよ!?」

エコーはキャロッティを見て驚きながら言った。

「私、姉さんを守ろうって決めたんです。私が守っていれば、姉さんは剣技を使わなくて済みますから」

木刀を握ったキャロッティはエコーを見て笑みながら言った。

「だから・・・強くならないと」

キャロッティは木刀を見てそう言った。

「・・・アージヴァイズはきっと、姉らしいことをしてあげたいんだにゃ。だから、その考えだと逆に避けられる・・・」

眉を顰めたミッケはキャロッティを見てそう言った。

「姉らしい・・・ですか・・・」

眉を顰めたキャロッティはミッケを見てそう言った。

「まぁ、アージヴァイズのことは私たちに任せてさ。ちょっと息抜きしな」

エコーはキャロッティを見て笑みながら言った。

「・・・はい!」

キャロッティはエコーとミッケを見て笑みながら言った。


正午十二時五分。

食堂に来たアージヴァイズはご飯を食べずにボーっとしていた。

(食欲ないな・・・部屋に籠っておくんだった)

アージヴァイズは天井を見ていた。

「ベルコントさん、どうしたんですか?」

下位組織員1はアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「え?お前ら・・・」

アージヴァイズは弟子たちを見てそう言った。

「今日も剣技教えてくださいよ!」

下位組織員2はアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「あ・・・あぁ・・・剣技か」

アージヴァイズは下位組織員たちを見て笑みながら言った。

(そうだ・・・私は神すら憧れる剣技を使える。少し頑張れば、あいつなんて相手じゃなくなる。天才を負かせることができるかもしれない)

アージヴァイズは弟子たちを見て嬉しそうに笑んだ。


同年、五月二十二日。

訓練場で木刀を振るキャロッティの所にアージヴァイズから相談を受けたアージヴァイズの弟子たちが来た。

「おい!お前、調子に乗ってるらしいな!」

下位組織員1はキャロッティを睨みながら大声でそう言った。

「調子・・・」

木刀を握ったキャロッティは下位組織員1を見てそう言った。

「調子は・・・良いですよ」

木刀を握ったキャロッティは下位組織員1を見て笑みながら言った。

「テメェ嘗めてんのか!!」

下位組織員2はキャロッティを睨みながら怒鳴ると、キャロッティを殴った。

木刀が転がり、キャロッティが倒れた。

「ねぇ・・・暴力沙汰じゃない?」

「下位組織員が一般組織員を殴ったよ?」

「どうしよう・・・上官呼んだ方が良いかな」

自主訓練していた下位組織員たちはキャロッティと下位組織員たちを見てそう言った。

「・・・大丈夫ですよ。きっと、私がいけないことをしたのでしょう」

キャロッティは下位組織員たちを見て笑みながら言った。

「ッ・・・!」

アージヴァイズの弟子たちはキャロッティの手を見て驚いた。

豆がいくつも潰れて血が滲んでいる。

キャロッティが握っていた木刀には布が巻かれているが、その布には血が滲んでいる。

「意味わかんない・・・なんでこんなになってまで木刀振ってるんだよ・・・」

下位組織員3はキャロッティを見て気味悪そうに言った。

「なんで・・・って・・・こうでもしないと強くないれないからですよ」

キャロッティは下位組織員3を見て笑みながらそう言った。

「・・・はぁ?」

アージヴァイズの弟子たちはキャロッティを見て驚きながら言った。

「・・・どうした?」

下位組織員数名に呼ばれて来た青眼、黒髪ツインテール。黒色のカッターシャツを着て赤いコートを羽織り、黒い長ズボンを穿いた褐色肌の乙女、カスミ・ローゼ・カーリン神軍部隊長組織員甲は下位組織員たちを見てそう言った。

「たくさん訓練して、感覚だけでも掴まないと・・・強くならないと・・・誰も守れないじゃないですか」

驚くキャロッティはアージヴァイズの弟子たちを見て笑みながら言った。

「問題が起きたと報告を受けて来たけど」

カスミはアージヴァイズの弟子たちに向かって歩きながら言った。

「ッ!?」

アージヴァイズの弟子たちはカスミを見て焦り始めた。

「何したの?」

立ち止まったカスミはアージヴァイズの弟子たちを蔑んだ目で見てそう言った。

「そ、その・・・相談を受けて!」

焦る下位組織員1はカスミを見て笑みながら言った。

「誰から?」

カスミは下位組織員1を見てそう言った。

「ダメだ!」

キャロッティは下位組織員1を見て大声でそう言った。

その瞬間、カスミがキャロッティの胸ぐらを掴んで投げ飛ばした。

「・・・」

地面に倒れたキャロッティは空を見て目を見開き、冷や汗をかいた。、

アージヴァイズの弟子たちは腰を抜かし、泣きながら震え始めた。

「あんな奴でも、お前にとっては唯一の家族なんだろう?姉を思うならなぜ庇う」

キャロッティの傍に座ったカスミはキャロッティを見てそう言った。

「・・・なぜ・・・って・・・」

冷や汗をかいたキャロッティはカスミを見てそう言った。

「こいつらはあんたの姉に引っ付く怠け者だ。きっと、お前の姉がお前の名前を出して、迷惑をかけられている。と適当な作り話をしたんだろう」

カスミはアージヴァイズの弟子たちを見てそう言った。

「・・・」

冷や汗をかいたキャロッティはアージヴァイズの弟子たちを見た。

「お前さん、このままだと剣技で大切な人を失うよ」

カスミはキャロッティを見てそう言った。

「・・・」

キャロッティは腕で目元を覆って静かに泣き始めた。

「失って後悔する前に何とかしなよ」

立ち上がったカスミはキャロッティを見てそう言うと、訓練所の出入り口に向かって歩き始めた。


泣き止んだキャロッティは訓練所から飛び出すと、流れるようにアージヴァイズを部屋から引きずり出して表に出た。

「・・・なんだよ!!何なんだよお前は!!」

アージヴァイズはキャロッティを見て怒鳴った。

「姉さん!私のことが嫌いなら、今ここで斬って見せてください」

キャロッティはアージヴァイズを見て笑みながらそう言うと、包みの中から木刀を出して握った。

「・・・」

アージヴァイズはキャロッティを見て冷や汗をかいた。

「私は木刀。姉さんは真剣です。姉さんは打たれたところでケガをするだけ!上官たちも承知済みです!私が死ぬだけですから、どうぞ遠慮なく!」

木刀を握ったキャロッティはアージヴァイズを見て笑みながらそう言うと、木刀を構えた。

(そうだ・・・ここでこいつを殺せば・・・)

アージヴァイズはゆっくり立ち上がると、双剣を生成して握った。

「おい・・・本当にやる気か?」

周りの組織員たちがざわめき始めた。

(私は悩まなくて済む!!)

青く輝く双剣を握ったアージヴァイズは途轍もない速度でキャロッティに向かった。

アージヴァイズが冷気を纏ったその瞬間、熱で冷気が消えた。

「!?」

双剣を握ったアージヴァイズは赤く輝く木刀を握り込み、担ぐように構えたキャロッティを見て驚いた。

矢田(やた)様・・・」

カスミはキャロッティを見て驚きながらそう言った。

赤く輝く木刀を握ったキャロッティがアージヴァイズに向かって走り始めると、暁色の霧が生まれ、煌きながらキャロッティの後ろに広がっていった。

(こいつは天才じゃない・・・狂人だ・・・)

双剣を握ったアージヴァイズは広がる霧の輪のいくつも生みながら進むキャロッティを見つめた。


「・・・」

全身包帯ぐるぐる巻きになったアージヴァイズは蔑んだ目で空を見ていた。

「姉さん。死ななくて良かったですね」

病室に入ったキャロッティはアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「お前、斬られる気なんてなかっただろ」

全身包帯ぐるぐる巻きになったアージヴァイズは蔑んだ目で空を見てそう言った。

「はい!姉さんを殺して自分も死のうと思ってました!」

キャロッティはアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「・・・お前はいつもそうだよな。私がどんなこと言っても、私から離れようとしなかった」

「私はドロシー母さんに似てるのに嫌いもせず軽蔑もせずいつも尊敬して・・・私は何もしてないぜ・・・」

全身包帯ぐるぐる巻きになったアージヴァイズはキャロッティを見て悲しそうに言った。

「姉さんは私を外に連れて行ってくれました。丘から見る町の美しさも、浜から見る水平線のワクワクも、山で取れる木の実の美味しさも、山水の美味しさも、全部姉さんが教えてくれたんです」

「・・・」

アージヴァイズはうつむき、涙を零した。


同年、五月二十五日。

アージヴァイズがキャロッティと共に自主訓練を始めた。

走り込みと素振りを行い、力をつけようと頑張り始めた。

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