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アティア・ゼン編 一章 開催、部隊長級昇進・昇格試験

同年、四月二十八日、午前一時。

梨々香は料理を持ってヒルデガルトがいる家に行った。

「ヒルデガルト王女。生きてるかい?」

料理を持った空色眼、朱色髪ポニーテール。黒いカッターシャツを着て黒いコートを羽織り、黒い長ズボンを穿いた男性、梨々香はドアを開けて笑みながら言った。

「ひゃぁぁぁぁ!」

風呂上がりの黒眼、黒髪ロングヘア。ミステリアスながら可愛い少女、ヒルデガルトは赤面し、悲鳴を上げながら梨々香にたわしを投げた。

「あたッ・・・」

たわしが当たった梨々香はそう言った。

「訪問する時間を考えたらどうだい!僕の生活リズムは教えたはずだ!」

赤面したヒルデガルトは梨々香を見て怒鳴った。

「昔のこと過ぎて忘れていたよ。申し訳ない」

梨々香は机の上に料理を置いてそう言った。

「はぁ・・・もう、良い」

ヒルデガルトはため息交じりにそう言った。

「そこに座ってても良いが、こっちは見るな」

ヒルデガルトはソファーに座った梨々香を見てそう言った。

「見ないよ」

梨々香はヒルデガルトに背を向けてそう言った。


ヒルデガルトはパジャマを着ると、梨々香の隣に座った。

「もうこっち向いて良いよ」

ヒルデガルトは料理を見ながら言った。

梨々香はソファーに座り直した。

「君はどうして僕を気にかけるんだい?得なんて何もないだろう?」

ヒルデガルトは梨々香を見てそう言った。

「君は娘みたいなものだからね。気になってしまうんだ」

梨々香はヒルデガルトを見て笑みながら言った。

「娘・・・」

ヒルデガルトは少し膨れながら言った。

「それに、華千﨑(かせんざき)一族には損得よりも情を大切にせよという教えがある」

梨々香はサランラップを取りながら言った。

「私の先祖、華千﨑 蘭甜(らんてん)が言ったとされていて」

梨々香が語り始めると、ヒルデガルトが料理を手に取って食べた。

「・・・美味しいかい?」

梨々香はヒルデガルトを見て笑みながら言った。

「美味しいよ」

ピザを持ったヒルデガルトは咀嚼しながらそう言った。

「しかし、君はピザまで作れるようになったのか」

ヒルデガルトはピザを見て笑みながら言った。

「ピザに餅を入れるっていうのは実に君らしい発想だ。中々に美味しい」

ヒルデガルトは梨々香を見て笑みながらそう言った。

「外道と言われなくて安心したよ」

梨々香はヒルデガルトを見て笑みながら言った。

「僕は王国の料理が嫌いだったからそんなこと言わないよ。宮廷料理となると冷めていてパサパサしていて、脂も固まって見た目も最悪。城下町で食べた物が美味しく感じるくらいだ」

「そうかそうか」

「・・・」

ピザを持ったヒルデガルトはピザを食べながら梨々香を見た。

「なんだか変な感じだ・・・僕は君に恋をしたというのに、君は全く動じない」

ヒルデガルトはピザを食べながらそう言った。

「大人に恋してしまうのはよくある事みたいだよ。私の友がそう言っていた」

「僕は俗世の人間じゃないぞ。君は大人に恋をしたことがあるのかい?」

「恋しそうになったことならあるよ」

「あるのかい!?」

ヒルデガルトは驚きながらそう言うと、落ちてきた食べかけのピザをキャッチした。

「うん、華砂羅(かさら)先生に恋しそうになった」

「・・・カサラって男だろう?」

ヒルデガルトはガッカリしながらそう言った。

「まぁ、恋と言うには違ったね。憧れと言うべきだ」

梨々香は少し笑いながら言った。

「----さん、とても愛が重たいお方だろう?」

ヒルデガルトは梨々香を見てそう言った。

「そうだね」

梨々香はヒルデガルトを見て笑みながら言った。

「もしも、----さんが淡白な方だったら、僕と結婚していたかい?」

「してない」

梨々香はそう即答し、ヒルデガルトは落ち込んだ。

「私は出会った時から彼女が好きで、今まで何度も彼女に恋をしてきたからね」

梨々香はヒルデガルトを見て笑みながら言った。

「だから、今回の作戦は躊躇ってしまった」

梨々香はそう言うと、少しうずくまった。

「・・・」

ヒルデガルトは黙ってピザを食べ切った。

「私は彼女を信じるのに時間がかかってしまった。保身に入ってしまった」

少しうずくまった梨々香は悲しそうに言った。

ヒルデガルトは梨々香の頭に手を乗せて撫でた。

「・・・」

梨々香はヒルデガルトを見た。

「・・・君は立派だよ。そうやって一人の人・・・一柱の神を愛し続けてさ」

梨々香を撫でるヒルデガルトは梨々香を見て笑みながら言った。

「・・・僕が撫でてあげたんだ!もうクヨクヨするな!」

ヒルデガルトは梨々香を見て恥ずかしそうに言った。

「ありがとう・・・持つべきものは友だね」

梨々香はヒルデガルトを見て笑みながら言った。

「・・・」

ヒルデガルトは梨々香を見て笑むと、器を持ってスープを飲み始めた。


同年、五月一日。

この日、旧レムフィト軍から存続していた唯一の部隊が解散し、ついに旧レムフィト軍が消えた。

その部隊の名前は月浜打撃軍。月浜を打ち倒すために創設された精鋭部隊である。

月浜打撃軍元メンバーは解散と同時に各班に振り分けられ、各々新しい道を進み始めた。

そんな中、月浜打撃軍元メンバーのアージヴァイズ・ベルコント・ニコルが復帰した。

しかし、復帰したアージヴァイズは弟子ができたことで傲慢さが増し、増々多くの者から避けられるようになった。

「このまま強くなったら神軍の長より強くなっちゃくかもなぁー!!」

足を組んだ青眼、枯草色髪にツインテール。白いカッターシャツを着て黒い長ズボンを穿いた色白な肌の少女、アージヴァイズ・ベルコント・ニコルは嬉しそうに言った。

「・・・」

月浜打撃軍元メンバーだったエコーたちは蔑んだ目でアージヴァイズを見ていた。

「神軍の長は最近来てねぇのか?」

アージヴァイズは弟子たちを見て笑みながら言った。

「来てないです!」

下位組織員1はアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「そうかそうか!私に恐れでもなしたか~!?」

アージヴァイズはそう言うと、大笑いした。

アージヴァイズの弟子たちはアージヴァイズに続いて笑った。

笑っていたアージヴァイズは疲れた様子で来たミッケ・ローゼ・カーリンとオレンジ・V・ドリェシェパノを見た。

アージヴァイズの弟子たちも続けてミッケとオレンジを見た。

「お疲れ!」

赤眼、黒髪ツインテール。黒いカッターシャツを着て黒いミニスカートを穿いた色白な肌の乙女のような女性、グリードリヒ・ポリー・ヤングブラッドはミッケとオレンジを見て笑みながら言った。

「お疲れ・・・」

橙眼、金髪にツインテール。白いカッターシャツを着て黒いミニスカートを穿いた微褐色肌の少女、オレンジ・V・ドリェシェパノは椅子に座りながらそう言った。

「月浜から結構な数が来るみたいだにゃ」

椅子に座った青眼、黒髪ショートヘア。黒いカッターシャツを着て黒い長ズボンを穿いた褐色肌の少女、ミッケ・ローゼ・カーリンはエコーたちを見てそう言った。

「あぁ~・・・だから幹部が不在なのね」

黒眼、黒髪セミロングヘア。黒いカッターシャツを着て黒い長ズボンを穿いた色白な肌の少女のような女性、レイチェル・オブ・ヒューム=キャンベルはミッケを見てそう言った。

「ここにも組織員として何人か来るんだって」

オレンジはエコーたちを見てそう言った。

「なぁ、その新人たちって強いのか?」

アージヴァイズはミッケとオレンジを見て笑みながら言った。

「わからない」

ミッケはアージヴァイズを見てそう言った。

「そろそろ部隊長級昇進試験も始まるから、グリードリヒたち任せたよ?」

ミッケはグリードリヒたちを見てそう言った。

「任せておきな!」

グリードリヒはミッケを見て笑みながら言った。

「任せておけない・・・」

眉を顰めた緑眼、白髪ツインテール。白いカッターシャツを着て黒いミニスカートを穿いた色白な肌の少女のような女性、ジュリア・トムソン・レイモンドはグリードリヒを見てそう言った。

「なぁ、お前たち何かすんのか?」

アージヴァイズはミッケとオレンジを見てそう言った。

「部隊長級昇進試験を受けるんだよ」

オレンジはアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「部隊長級昇進試験?」

アージヴァイズは首を傾げながら言った。

「うん!その字の通り、部隊長級組織員に昇進するための試験!これに合格したら部隊長級組織員だよ!!」

「・・・すげぇ!!私もその試験受けたい!!」

アージヴァイズはオレンジを見て笑みながら言った。

「残念、この時期だともう無理」

「部隊長級組織員三人、又は、幹部からの推薦が必要だからね」

眉を顰めたオレンジはアージヴァイズを見てそう言った。

「なんだ」

アージヴァイズはオレンジを見てそう言った。

「それくらいすぐに集められる!」

アージヴァイズはオレンジを見て笑みながらそう言うと、走って食堂から出た。


アージヴァイズはレムフィトに居る部隊長級組織員に話しかけ始めた。

「なぁ!部隊長級昇進試験を受けたいんだ!推薦状が欲しい!」

アージヴァイズは部隊長級組織員たちを見て笑みながら言った。

「この時期に?」

カミラ部隊長級組織員柄はアージヴァイズを見て困惑しながらそう言った。

「まぁ、向上心があるのは素晴らしい!」

ラパン部隊長級組織員柄はアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「模擬筆記試験は受けたか?」

サラティン部隊長級組織員柄はアージヴァイズを見てそう言った。

「受けたなら点数を教えてくれ」

タブレット端末を生成して持ったサラティンはアージヴァイズを見てそう言った。

「筆記試験?実技試験?」

アージヴァイズは首を傾げてそう言った。

「・・・はぁ・・・」

カミラたちはアージヴァイズを見て黙ると、深いため息をついた。

「それも知らずに推薦状が欲しいと言ったのか?」

ラパンはアージヴァイズを見てそう言った。

「予想してたより酷い・・・」

カミラはアージヴァイズを見て苦笑いしながらそう言った。

「知らないけど部隊長級になりたいんだ!後悔はさせない!」

アージヴァイズはカミラたちを見て笑みながら言った。

「その根拠は?証拠は?」

サラティンはアージヴァイズを見てそう言った。

「根拠とかそう言うのはねぇけど、とにかく後悔させない!推薦しないと逆に後悔するぞ!」

アージヴァイズはカミラたちを見てそう言った。

「どうして推薦をしなければ私たちが後悔すると言える。その根拠は?」

サラティンはアージヴァイズを見てそう言った。

「それは・・・」

アージヴァイズはサラティンを見てそう言った。

「他を当たれ」

サラティンはアージヴァイズを見てそう言うと、ラパンたちと共に去っていった。

「・・・」

少しうつむいたアージヴァイズは歯を食いしばった。

「私が推薦しましょうか?」

梨々香はアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「・・・神軍の長・・・」

アージヴァイズは梨々香を見てそう言った。

「受けてみますか?」

「良いのか!?」

アージヴァイズは梨々香を見て笑みながら言った。

「えぇ、もちろん」


同年、五月五日。

部隊長級昇進試験・筆記が開催された。

部隊長級昇進試験は厳しい筆記試験と厳しい実技試験で構成されている。

部隊長級昇進試験の総合点数は百点。

筆記試験は四十点以下で即失格、空欄があった場合失格に加えて翌年の試験を受けられなくなるというペナルティが付く。

「・・・」

ミッケは試験官から鉛筆一本と消しゴム一つを受け取り、机の上に置いた。

「・・・」

緊張するオレンジは机を見つめた。

「それでは、試験開始」

試験官がそう言うと、受験生が一斉に鉛筆を握り、解答欄を埋め始めた。

(なんじゃこりゃ・・・筆記試験って国語とか算数じゃないのかよ・・・)

鉛筆を握ったアージヴァイズは解答用紙を見た。

(なんて読むかわからねぇ・・・)

鉛筆を握ったアージヴァイズは頭を掻いた。

「・・・」

ミッケとオレンジは必死に解答欄を埋めている。


試験が終わると、その場で採点が行われた。

採点中の空気は地獄。時々嗚咽も聞こえる。

「アージヴァイズ・ベルコント・ニコル」

試験官は解答用紙を見てそう言った。

「は、はい!」

アージヴァイズは立ち上がりながら言った。

「論外だ。帰宅しろ」

試験官はアージヴァイズを見てそう言った。

「そ、そんな・・・」

アージヴァイズは驚きながらそう言った。

「お見送りします」

着物を着た女性たちはアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「・・・」

唖然とするアージヴァイズは着物を着た女性たちに優しく両腕を掴まれて連行された。

「シャーリー・スター・ヘンリクス。惜しくも三十九点!次は頑張りなさい」

試験官は大声でそう言った。

「・・・」

シャーリーは立ち上がり、お辞儀して試験会場から出た。

筆記試験の段階で十六名が失格となり、百七名が残った。


正午十二時。

失格となったアージヴァイズが梨々香と会っていた。

「残念でしたね。次はしっかり勉強して挑みましょうか」

梨々香はアージヴァイズを見て笑みながら言った。

「お前・・・こうなるとわかってて私に推薦状を出したんだろ!!」

アージヴァイズは梨々香を見て怒鳴った。

「えぇ、わかってましたよ。ですが、私は一パーセントの確率に賭けてみたかったんです」

「お前に推薦されたせいで私は恥をかいた・・・」

アージヴァイズはうつむいてそう言った。

「そうですか。それは失礼しました」

「私は!!お前のその態度が気に入らない!!どこか人を小ばかにしているような態度!!」

アージヴァイズは梨々香に指をさして怒鳴った。

「そうですか?そんなつもりはないんですけどね」

「どれだけ前から生きてるか知らねぇけど、エラそうにしやがって!!」

「約五十億年は生きています。こう見えて結構偉いんですよ?」

「・・・テメェ・・・」

怒筋を浮かべたアージヴァイズは拳に力を込めた。

「ヒーリアズラビットの小娘。話が済んだのなら席を譲っておくれ」

八重(やえ) (さくら)はアージヴァイズを見てそう言った。

「・・・」

冷や汗を垂らすアージヴァイズは桜を見て立ち上がり、逃げるように食堂から去った。

「少しは自分を見つめなおせただろうか・・・」

梨々香はため息交じりにそう言った。

「あの程度じゃ無理だろう」

桜は梨々香を見てそう言った。

「----に会うまでには何とかしないと」

梨々香は桜を見てそう言った。

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