ローナミア・フィエンゼ編 二十一章 希望の名を持ちし悲壮の華。
正午十二時。
弁当箱を持った梨々香はかつて橘花国に存在した世界最強の隠密部隊、八重の隊長、八重 桜と共に王宮跡地に訪れた。
アーヴァン王国跡地で唯一崩壊している王宮跡地には様々な気が残留していて、混沌としている。
「この甘さと酸っぱさが混ざったような香り・・・神具があった場所で食事は些か気が引ける」
弁当箱を持った梨々香は宮殿跡地を歩きながらそう言った。
「俗世に染まった者共が多いと語らい辛いじゃろう?」
桜は笑みながらそう言った。
梨々香と桜が半壊した柱を横切った瞬間、雰囲気が一気に変わった。
「出てくるとは思わなかった」
弁当箱を持った梨々香は笑みながらそう言うと、横を向いた。
「随分と良い度胸じゃな・・・」
最上大業物燦海で青く輝く刀を防ぐ桜は笑みながらそう言った。
「小娘」
最上大業物燦海を握った桜は目を見開いてそう言うと、青く輝く刀を弾き返した。
「・・・」
青く輝く刀を握ったTT-42B-100 アイリスは滑りながら下がると、青く輝く刀の刀身に揃えた指を当てるように構えた。
最上大業物燦海を握り込んだ桜は途轍もない速度でアイリスに向かった。
「太陰・・・」
青く輝く刀の刀身に揃えた指を当てるように構えたアイリスは振られる最上大業物燦海を見て驚きながらそう言った。
アイリスは最上大業物燦海を瞬時に避けるも、衝撃で首が大きく抉れた。
「・・・」
最上大業物燦海を握った桜は飛び下がったアイリスを睨みながら最上大業物燦海を一振りして付着した液状闇を飛ばした。
(姿が乱れて見える・・・早すぎて予見できない・・・)
構え無しに向かってくる桜を見て驚くアイリスは飛び上がりながら青い光針を放った。
青い光針が揺らいだ瞬間、青い光針が巻き戻るように舞い上がった。
(これが世界三剣士の一柱・・・)
アイリスが目を見開いた瞬間、飛び上がった桜が目の前に来た。
「俗世よ、愚かなる妖魔を切り裂き給え」
最上大業物燦海を握った桜はそう言った。
(剣星、八重 桜)
アイリスは振られた最上大業物燦海を見た。
その瞬間、空間が歪み、青く輝く刀とアイリスが切断された。
「な、何が起きた!?」
轟音を聴いた神軍組織員たちは驚きながら言った。
驚く神軍組織員たちの真上をヴェルベサが通過していった。
「燦水天狐族は何度見ても恐ろしいですね」
傷だらけの梨々香は上下真っ二つに斬られたアイリスを見てそう言うと、ボロボロのカッターシャツに触れてカッターシャツを直した。
(斬られた・・・なす術なく・・・)
断面から液状闇を垂らすアイリスは冷や汗をかきながら体を再生した。
「グッ・・・」
胸ぐらを掴まれたアイリスは声を漏らした。
「よくも儂らの前に顔を出せたのぉ・・・腐れ外道の盗人が・・・」
怒筋を浮かべた桜はアイリスを見て怒りが籠った声でそう言った。
(なんて力だ・・・化け物め・・・)
口から闇を垂らすアイリスは桜を見つめた。
投げ飛ばされて転がったアイリスは体を再生させた。
(お前だ・・・・・・お前が私を狂わせた・・・)
ゆっくりと立ち上がったアイリスは冷気を放ち、青く輝く刀を生成して握り、梨々香を見た。
肌を刺すような寒さ・・・薄暗く、常夜のような世界・・・
そんな世界が年に一度、少しの間、温かく、明るくなる。
天陽顕現祭。
祭りの時だけ温かな光を放つ棺に島民が集まり、活発に動く。
たくさんの灯りで島が光り、温かくなる。
天陽の神は世界の中心だった。
私はこの瞳の力で島民に崇められる存在となった。
しかし、この力も結局、天陽の神の力だった。
島民が崇め、祭っていたのは私ではなく天陽の神だったのだ。
南極大陸で繁栄する人種、燦水天狐族の間で"王の瞳"と呼ばれている瞳。
太陽を司る神から寵愛を受けた証であり、世界の執政者である証。
私はどこへ行っても崇められた。
一人になることはなかった。
でも!!誰も私のことなんて見ていなかった!!
全てはこの瞳!!天陽の神の力!!
誰も私のことを見てくれない!!
「お前さえ・・・お前たちさえ居なければ・・・私が神として崇められることも!私が神を目指すこともなかった!」
震える手で青く輝く刀の刀身に揃えた指を当てるように構えたアイリスが怒筋を浮かべ、目を見開き、梨々香を見てそう言うと、体が崩れて青く輝く刀が腕ごと地面に落とした。
「お前さえ居なければ・・・そう言いたいのはこっちじゃ・・・」
桜はアイリスを見て悔しそうに言った。
「・・・」
アイリスは桜を見て目を見開いた。
「お前さえ居なければ・・・六合様も万象様も・・・姐君たちも苦しまずに済んだ!」
桜は悲しそうに言うと、九ミリ弾が込められたリボルバー拳銃をホルスターから取り出してアイリスの目を撃った。
ゆっくりと全身が崩れるアイリスは悲鳴を上げた。
「貴様の私情で満ちたバカげた戦争が広がることもなかった・・・!」
桜は泣きながらそう言うと、拳銃の引き金を引いた。
足を撃たれたアイリスは悲鳴上げながらもがいた。
「同胞が死ぬこともなかった!」
桜は泣きながら怒鳴ると、拳銃の引き金を何度も引いた。
四発の銃声が響くと、銃声が止んだ。
「・・・」
弾が切れた拳銃の引き金を引き続ける桜は灰を見ると、拳銃をホルスターにしまった。
「ご飯・・・という気分にはなりませんね」
梨々香は桜を見てそう言った。
「いいや・・・食べましょう」
桜は涙を拭いてそう言った。
「どんな時でもお腹は空きますから」
桜は梨々香を見て笑みながらそう言った。
しばらくして、梨々香と桜の所にヴェルベサが来た。
「梨々香お兄ちゃん!」
紫色がかった黒い龍翼を羽ばたかせて梨々香の近くに着地したヴェルベサはおにぎりを食べる梨々香を見てそう言った。
「どうかしましたか?」
おにぎりを持った梨々香はヴェルベサを見て笑みながら言った。
「すごい音がしたよ?バリバリしてるような音」
ヴェルベサは梨々香を見てそう言った。
「気のせいじゃろう」
おにぎりを持った桜はヴェルベサを見え笑みながら言った。
「・・・一応、周辺を調査するね」
桜を見たヴェルベサは梨々香を見てそう言った。
「何かわかったら教えてください」
梨々香はヴェルベサを見て笑みながら言った。
一方、アイリスの魂は光の中を飛んでいた。
「・・・ここは・・・私は死んだの?」
アイリスの魂は光の中を飛び続ける。
「ラーフィア様・・・!」
アイリスの魂は光の中を飛び続け、少し遠くに見える明白の霧を見つけた。
「ラーフィア様、どうか私にもう一度・・・」
明白の霧に向かって飛ぶアイリスの魂は異変に気が付いた。
「小娘、また会ったね・・・」
何者かの声が聞こえると、明白の霧の中から人影が現れた。
「おッ・・・お前はッ!!」
アイリスの魂は人影を見て驚いた。
「小娘、私は忠告したはずだ」
声が聴こえた瞬間、白い世界に折り紙で折られたような景色が広がって一気に色がついた。
「・・・」
香澄は冷や汗を垂らしながら周りを見た。
「小娘」
白い狐の面を被った六合はそう言うと、香澄を見た。
「お前はいつかこの俗世を敵に回すだろう。世の主たる私に恐怖を抱くなら、一つ一つの行動をより多くの視点で、より深く考えろ。一つ、また一つと間違えば、世界から消えることになる」
白い狐の面を被った六合が香澄を見てそう言った瞬間、周りの景色が灰のように消えた。
「あ・・・あぁ・・・」
アイリスの魂はいつの間にか近くに来た人影を見た。
「お前は間違え過ぎた。お前の悪行の数々、地獄に行く程度では償えない」
人影は逃げようとしたアイリスの魂を掴んだ。
「あ・・・アァァァァ・・・!!」
アイリスの魂はキュウキュウ甲高い風船のような音を立てながら潰れる。
アイリスの魂はどす黒い液体をまき散らしながら弾けた。
午後七時十三分。
晩御飯が梨々香の拠点で始まった。
梨々香と一緒に昼食を取るのは、ヴェルベサ、グラディス、ローラ、メアリーの四人だ。
「ピザうま~」
ピザを一切れ持ったグラディスは幸せそうにピザを食べながら言った。
「なんだかこうして大勢で食べると幸せな気分になりますね」
ピザを食べた銀眼、銀髪ベリーショートツインテール。白い服を着て藍色のショートパンツを穿いた乙女、メアリー・ジョアン・ポヴェイは梨々香を見て笑みながら言った。
「気が合う者同士で食べるから美味しいのだよ。親しくっても、気が合わなきゃ一緒に食べていても不快なだけだ」
白色と黄色と緑色が基調の浴衣で身を包んだローラはピザを食べながら言った。
「経験者が言うと良い感じに重いな」
グラディスはローラを見て笑みながら言った。
「食事というのは気を遣わず、のんびり行うと美味しく感じるものだよ」
梨々香はグラディスたちを見て笑みながら言った。
食事を終えたグラディスたちが各々部屋でのんびりし始めると、梨々香とヴェルベサはお酒を飲み始めた。
「もしさ、立華 香澄が居なかったら・・・」
赤ワインが入ったグラスを持ったヴェルベサは赤ワインを見てそう言った。
「やめよう。居なかったら・・・なんて、とても悲しい考えだ」
ウイスキー入りのグラスを持った梨々香はそう言うと、ウイスキーを飲んだ。
「・・・南極の華千﨑から白の棺を奪ったのも、お義姉さんの回帰を妨げたのも、宿幼の潜伏を許したのも・・・全部立華 香澄じゃん」
赤ワインが入ったグラスを持ったヴェルベサは梨々香を見てそう言うと、赤ワインを飲んだ。
「白の棺はそう簡単に持ち出せるものではないし、回帰もそう簡単には妨げられない。下手に恨まれてしまった私のせいでもある」
梨々香は氷を見ながらそう言った。
「・・・何があったの?梨々香お兄ちゃん」
ヴェルベサは梨々香を見てそう言った。
「砲神テルメス・・・彼女はあの時から感情をむき出しにして私を探している。主の命令を無視するくらい必死に・・・」
梨々香はそう言うと、ヴェルベサを見た。
「・・・」
邪眼、赫灰色髪縦ロール。奇妙な金属製の装飾品がついた黒色のミニコルセットドレスを着た乙女は砲神眼、ブロンド髪ロングヘア。銅色のミニドレス調の服を着た乙女、テルメス・クレイス・ガンズを見つめる。
「剣王・・・剣・・・王・・・」
壁画を血塗れになった爪で引っかくテルメスは笑いながらそう言った。
「会いたいならさっさと行けばいいのでは?東大陸に居ますよ?」
邪眼、赫灰色髪縦ロール。奇妙な金属製の装飾品がついた黒色のミニコルセットドレスを着た乙女はテルメスを見てそう言った。
「あれだけ私を弄んで・・・憎い・・・この私に傷をつけた癖に・・・!」
壁画を引っかくテルメスは笑いながらそう言った。
壁画の太陽がテルメスの赤黒い液状神気で赤黒く染まる。
「私の話聞いてます?」
邪眼、赫灰色髪縦ロール。奇妙な金属製の装飾品がついた黒色のミニコルセットドレスを着た乙女は蔑んだ目でテルメスを見てそう言った。
「やめろ!!私をそんな目で見るな!!私は悪くない!!私は何も悪くない・・・!!」
テルメスは頭を抱えて丸くなり、怯えて震えながらそう言った。
「これ戦えないでしょ・・・なんでこんな奴を送り込んだのさ・・・」
邪眼、赫灰色髪縦ロール。奇妙な金属製の装飾品がついた黒色のミニコルセットドレスを着た乙女はため息交じりにそう言った。
「戦える。私は戦える。あの男を殺せるのは私だけ」
テルメスは頭を抱えて丸くなった状態でそう言った。
「元に戻った・・・情緒どうなってんの・・・?」
邪眼、赫灰色髪縦ロール。奇妙な金属製の装飾品がついた黒色のミニコルセットドレスを着た乙女は蔑んだ目でテルメスを見てそう言うと、宙に手を伸ばして掴んだ。
邪眼、赫灰色髪縦ロール。奇妙な金属製の装飾品がついた黒色のミニコルセットドレスを着た乙女は手刀で宙を切り裂いて界を生み出し、界の中に消えた。




