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ローナミア・フィエンゼ編 十一章 1684 奇跡の日

同年、二月十五日。

レムフィト政府は寄付金を使って旧王宮の再建築計画を始動させた。

庭園中央エリアの修復に四千二百リズ、庭園東部エリアの修復に六千リズ、庭園西部エリアの修復に二千八百リズ、時計塔の再建に二十八万リズ、礼拝堂の再建に四十八万九千三百リズ、王宮本殿の再建に一億五千三百万リズとはかなりの資金が必要であるため、旧王宮の再建には寄付金の他に政府が神軍から借り入れした資金が投じられた。

「結局借金ですね」

シルフィはレミリアを見てそう言った。

「まぁね・・・」

頭を抱えたレミリアはタブレット端末を見てそう言った。

「まぁ、観光業が始まればすぐに取り返せる!前向きに行こう!」

レミリアは笑みながらそう言った。


一方、アージヴァイズたちはクリスティーナと共に再建工事が行われる旧王宮に来ていた。

「体大丈夫?」

ジュリアは杖を突いたクリスティーナを見てそう言った。

「大丈夫だ。しかし、気が抜けてから老いるまで早いな・・・正直驚いた」

杖を突いたクリスティーナはジュリアを見て笑みながらそう言った。

「クリスティーナさんって何歳なの?」

オレンジはクリスティーナを見て笑みながらそう言った。

「千六百三十五年生まれの六十歳だ」

クリスティーナはオレンジを見て笑みながらそう言った。

「山下さんとかフィービーと同い年なんですね」

レイチェルはクリスティーナを見て笑みながらそう言った。

「山下さんって元総帥と同い年なの!?」

エコーはレイチェルを見て驚きながらそう言った。

「うん、三十五年生まれの神様」

レイチェルはエコーを見て笑みながらそう言った。

「神様って老いるの遅いの?」

エコーはレイチェルを見てそう言った。

「ん~細かいことは流石にわからないかな・・・詳しいことは神軍の書庫で調べるとかして」

レイチェルはエコーを見て笑みながらそう言った。

そんな話をしているオレンジたちをよそにアージヴァイズとミッケとカレンは旧王宮について話をしている。

「旧王宮って一般人も入れたんだな」

アージヴァイズは古いパンフレットを見てそう言った。

「皇国が栄えてた時は庭園と礼拝堂前がちょっとした商店街になってたらしいにゃ」

ミッケはアージヴァイズとカレンを見て笑みながらそう言った。

「はぁ~・・・旧王宮・・・すっごく楽しみ・・・」

目を輝かせたカレンはうっとりしながらそう言った。

「アーヴァンを受け入れたから皇国が崩壊したっていう本を神軍の書庫で見たにゃ。アーヴァンってもっと良い人だと思ってたのに、イメージと違ってびっくりしたにゃ」

ミッケはカレンを見てそう言った。

「アーヴァンって神軍が出した損害が可愛く思えるほどの超真っ黒国家だからね!?七千年の間に神軍より生き物を殺して物を壊して大陸を滅茶苦茶にしたんだから!!」

カレンはミッケを見て大声でそう言った。

「そんな悪いことをする国があったのか!?」

アージヴァイズはカレンを見て驚きながらそう言った。

「大陸に根付いた民族差別も宗教差別もアーヴァンが始まりだからね!?領有権争いもアーヴァンが始まりだからね!?」

カレンはアージヴァイズとミッケを見てそう言った。

「マジかよ!」

驚くアージヴァイズはカレンを見てそう言った。

「大陸中にある戦争の始まりも元を辿ればアーヴァンからだから!!アーヴァン王国と取り巻きの共栄圏が戦争ビジネスをするために起こしたんだから!!」

「マジかよ!!」

驚くアージヴァイズはカレンを見て大声でそう言った。

「ヒートアップしてんね・・・」

オルガはアージヴァイズたちを見て苦笑いしながらそう言った。

「アーヴァン王国の末期ってどんな感じだったの?」

オレンジはクリスティーナを見てそう言った。

「アーヴァン王国の末期か・・・そうだな、民衆を恐怖政治では抑えきれなくなり、情報統制も行えず、かなり非難されていたな」

クリスティーナはオレンジを見てそう言った。

「恐怖政治って?」

エコーはクリスティーナを見てそう言った。

「言うことを聞かない国民を捕まえたり、殺したり、そういうことをして国民を怖がらせて国を纏めてたんだ」

クリスティーナはエコーを見てそう言った。

「じゃあ、アーヴァン王国の末期は言うことを聞かない国民を捕まえても殺しても国民が従わなかったってこと?」

「そういうことだ」

「もうダメじゃん・・・」

「アーヴァン王国の最後は?」

アージヴァイズはクリスティーナを見てそう言った。

「詳しいことは何もわからない。ただ、アーヴァンは夜に消えた・・・という記事が出回っていたことは覚えている」

クリスティーナはアージヴァイズを見てそう言った。

「アーヴァン王国消滅事件だっけ?色々な説があるよね」

レイチェルはグリードリヒを見てそう言った。

「そうなの?」

グリードリヒはレイチェルを見てそう言った。

「あるよ。兵器実験に失敗して起きたとか、国際警察の調査を恐れて自爆したとか」

ジュリアはグリードリヒを見てそう言った。

「どっちにしろ自滅じゃね?」

アージヴァイズはジュリアを見てそう言った。

「まぁね」

ジュリアはアージヴァイズを見てそう言った。

「でも・・・夜に消えたって・・・」

冷や汗をかいたミッケはカレンを見てそう言った。

「違和感?」

カレンはミッケを見てそう言った。

「いや・・・夜って聞いたら天星神が思い浮かんだから・・・」

「天星神?そいつも神か?」

アージヴァイズはミッケを見てそう言った。

「うん・・・」

ミッケはアージヴァイズを見てそう言った。

「確かに、天星神が関わってるかもしれないけど・・・そこまで強い神だっけ?」

カレンはミッケを見てそう言った。

「天星神は天照(あまてらす)、六合に続く三番目の大神(おおかみ)だって聞いたことがあるにゃ」

ミッケはカレンを見てそう言った。

「オオカミ?天星神ってデカい犬なのか?」

アージヴァイズはミッケとカレンを交互に見てそう言った。

「大きいに神と書いて大神。最上位級の神様のことだよ」

眉を顰めたカレンはアージヴァイズを見てそう言った。

「神軍幹部総括者のあいつと同じようなもんか・・・」

アージヴァイズは考えながらそう言った。

「全く違うにゃ。ナハトは龍神より格上」

ミッケはアージヴァイズを見てそう言った。

「じゃあ、神軍幹部総括者のあいつ何人分だよ」

アージヴァイズはミッケを見てそう言った。

「龍神が数万体集まっても傷一つ付けられない」

「それ、ヤバ過ぎだろ!!」

アージヴァイズはミッケを見て酷く驚きながらそう言った。

「そんな神様だったらアーヴァン王国を消すことだってできるよね!?」

オレンジはクリスティーナを見てそう言った。

「まぁ、そうだが・・・その夜が広がったという話は新聞社が用意した作り話という説が濃厚でな・・・」

クリスティーナはオレンジを見てそう言った。

「新聞社の職員が奇談にしたら儲かると思ってやったって自白してましたもんね」

キャロルはクリスティーナを見てそう言った。

「なんだよ!先言えよ!」

アージヴァイズはクリスティーナとキャロルを見て少し怒りながら言った。


同年、二月十六日。

ミッケはカレンと一緒に神軍拠点艦イクイノックスに乗艦していた。

「ミッケの師匠ってどんな人なの?」

カレンはミッケを見てそう言った。

「うちの師匠は各地で調査を行う七陽の勇者だにゃ」

ミッケはカレンを見て笑みながらそう言った。

「七陽の勇者!?マジ!?」

カレンはミッケを見て目を輝かせながらそう言った。

「ミッケちゃーん」

ミッケを見て笑んだミューテは手を振りながら大声でそう言った。

「師匠!」

ミッケはミューテを見て笑みながらそう言った。

「ほ、本物の七陽の勇者!!」

カレンはミューテを見て目を輝かせながらそう言った。

「ミッケちゃんのお友達?」

ミューテはカレンを見て笑みながらそう言った。

「うん、元疑似神姫乗り、元月浜打撃軍メンバーっていう面白経歴の友達」

ミッケはミューテを見て笑みながらそう言った。

「ミューテ・レン・アンソロジーです。よろしくね」

ミューテはカレンを見て笑みながらそう言うと、手を差し出した。

「カレン・ジェイド・フリエです!マジ感激です!」

カレンはミューテを見て笑みながらそう言うと、ミューテの手を握って握手した。

「ねぇ、師匠」

ミッケはミューテを見てそう言った。

「何?ミッケちゃん」

ミューテはミッケを見て笑みながらそう言った。

「カレンが聴きたいことがあるって」

「うん、答えられる範囲で答えるね」

ミューテはミッケを見て笑みながらそう言うと、カレンを見て笑んだ。

「アーヴァン女王について、アーヴァン王国消滅事件について聞きたいんです」

カレンはミューテを見てそう言った。

「結構踏み込んだ質問してくるね。どっちも個人的なふわっとした話になっちゃうけど、大丈夫?」

ミューテはカレンを見て笑みながらそう言った。

「はい!!」

カレンは目を輝かせながら嬉しそうに言った。

「アーヴァン女王の出生地ってどこなんですか?」

カレンはミューテを見てそう言った。

「北極のアヴァンヘスク島だよ」

「アーヴァンって本名なんですか?」

「本名だよ。アーヴァン・ヘスタ・ラークン」

「本人は神だと自称してましたけど、あの猫耳みたいな髪形の中に猫の耳が入ってますよね?ただの人ですよね?」

「見たことあるわけじゃないから何とも言えないけど、神じゃないことは確かだね」

「アーヴァン王国消滅事件ってどうして起きたんですか?」

「その時のことは聞いたけど、話せるような内容じゃないんだ・・・ごめんね」

「夜が広がったっていう話があったみたいですけど、天星神が関わってる可能性はあるんですか?」

「否定はしない・・・かな」

「アーヴァン王国はあの事件があってもなくても崩壊してたの?」

ミッケはミューテを見てそう言った。

「崩壊する要因はたくさんあったからね・・・どちらにしても崩壊してたと思う」

ミューテはミッケを見てそう言った。


一方、オレンジとキャロルは神軍が介入した直後アウスに来ていた。

「アウスってこんな感じになっちゃったんだ・・・」

キャロルは数々の衝突で荒廃したアウスの町を見て悲しそうに言った。

「私の地元が・・・」

オレンジは数々の衝突で荒廃したアウスの町を見て悲しそうに言った。

「私の地元でもあるんだよ・・・」

「キャロルもアウスの人だったんだ」

オレンジはキャロルを見てそう言った。

「うん」

キャロルはオレンジを見てそう言った。

「って言っても、住んでたのは結構前だけど」

眉を顰めたキャロルはオレンジを見て笑みながらそう言った。

「私のママがやってた蜜柑畑知ってるの?」

オレンジはキャロルを見て笑みながらそう言った。

「一応知ってるよ。食べたことはないけど」

キャロルはオレンジを見て笑みながらそう言った。

「フィリスお姉ちゃん・・・フィリスっていう月浜人がよく買ってたんだ」

「フィリスって、フィリス・エリザベス・ダーヴィル?」

キャロルはオレンジを見てそう言った。

「そうだと思う」

「あの人もアウス出身だからね。故郷が恋しかったんだろうね」

「な、何だって!?」

オレンジとキャロルが話していたその時、怒声のような悲鳴のような声が聴こえて来た。

「そんなこと言って私から財産を奪う気だろ!!」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性はカスミを見て怒鳴った。

「話聞いてました?あなたが持ってる土地権利証はアウス政府が独自で発行したものなんで、効果がないんです」

カスミは青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性を見てそう言った。

「また強制搾取だ!!神軍も極東連合と同じだ!!」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性は周りに叫び始めた。

「ミッケのお姉ちゃん、どうしたの?」

オレンジはカスミを見てそう言った。

「アウス復興作戦の一環で土地の回収作業を行ってるの。こういう仕事をしてるとよくあるんだよ・・・」

眉を顰めたカスミはオレンジとキャロルを見て笑みながらそう言った。

「ディールズに申請するっていう方法もあるけど、流石に間に合わないもんね」

キャロルはカスミを見てそう言った。

「アウスが行う権利の管理がずさんだってことはことはわかってたから神軍は神軍でディールズに頼んで申請する権利失効猶予期間とかは設けてたんだけど、それでもやらなかったからさ」

カスミはキャロルを見てそう言った。

「やり方がわからなかっただけなんだ!!」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性はカスミを見て怒鳴った。

「わからなかったらわからなかったでやるべきことはありますよね?」

カスミは青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性を見てそう言った。

「私に何をしろって言うんだ!!」

「先ずは神軍の仮設拠点に行って問い合わせる。その拠点にいる係員にわからないことを聞く」

「・・・」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性はしょんぼりして黙った。

「一人でできないなら係員が手伝います。難しいことですか?」

「い・・・いいえ」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性はしょんぼりしながらそう言った。

「何とかできないの?」

眉を顰めたオレンジはカスミを見てそう言った。

「どうにもできないよ。ディールズの土地権利管理局を動かすのだって陛下が頼み込んでやっとだったんだから・・・」

眉を顰めたカスミはオレンジを見てそう言うと、去っていった。

「はぁ・・・これからどうしよう・・・もういっそのこと、海に飛び込んでしまおうか・・・」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性は頭を抱えてそう言った。

「・・・あなたって社長さんですか?」

キャロルは青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性を見てそう言った。

「えぇ・・・木材を扱う会社だったんです・・・東和連合が介入した当初は良かったんですけど、東和連合が劣勢になって極東連合が来てから軍事奉仕だ何だと物を持ってかれる日々が続いて・・・」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性はキャロルを見てそう言った。

「もしかして・・・ユニ・マルガレーテだったりします?」

「えぇ、そうですよ」

「エコーのママ!?」

オレンジは青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性を見て驚きながらそう言った。

「エコー!娘を知ってるんですか!?」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性はオレンジを見て慌てながらそう言った。

「う、うん。知ってるよ。友達だから」

オレンジは青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性を見て驚きながらそう言った。

「生きてるのか!?娘は生きてるのか!?」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性はオレンジを見てそう言った。

「もちろん生きてるよ。今は休みを利用してベラ・ジ・ルルのマッケリスを観光してる」

オレンジは青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性を見て笑みながらそう言った。

「・・・い、生きてる・・・私の娘が・・・」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性は泣き崩れながらそう言った。

「・・・だ、大丈夫?」

眉を顰めたオレンジは青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性を見てそう言った。

「何もかも失ったと思ってた・・・!極東連合の話は・・・やっぱり嘘だったのか・・・!!」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性は泣きながらそう言った。

しばらくして泣き止んだ青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性は深呼吸して立ち上がった。

「やっぱり、何とかして会社を続けるよ」

青緑眼、黒髪ロングヘア。カッターシャツを着てリクルートスカートを穿いた女性はオレンジとキャロルを見て笑みながらそう言うと、走り去った。

「・・・良かったのかな・・・」

眉を顰めたオレンジはキャロルを見てそう言った。

「良いんだよ。ここで諦めてたら、あの人はきっと後悔してた」

キャロルはオレンジを見て笑みながらそう言った。


一方、エコーとエリーとレイチェルはベラ・ジ・ルル皇国のマッケリス都の神軍第二拠点に来ていた。

「ローラ、お客さんだよ」

エリーはお茶を淹れるローラを見てそう言った。

「わかっている。拒むつもりはない」

ローラはそう言うと、ティーポットを置いた。

「・・・」

レイチェルは歩みを進め、出入り口の前に立ってローラを見た。

「・・・」

エコーはレイチェルを見て笑んだ。

「歓迎しよう。エコー、レイチェル」

ローラはエコーとレイチェルを見て笑みながらそう言った。

「・・・」

レイチェルは笑みながら部屋に入った。

エコーは少し緊張しながら部屋に入る。

「二人って親しい仲なんだよね?」

エコーはローラとレイチェルを見てそう言った。

「否定はしない」

ローラはエコーを見てそう言った。

「何そのあいまいな答え・・・」

エコーはローラを見て苦笑いしながら言った。

「アディさんの肯定方法って特殊なんだよ・・・」

レイチェルはエコーを見て笑みながらそう言った。

「飲み屋街にある天星麦酒とか、アディさんが用意させたの?」

レイチェルはローラを見て笑みながらそう言った。

「あの酒は梨々香さんが好きなんだよ。友に教えてもらった銘酒だと語っていた」

ローラはレイチェルを見てそう言った。

「あの神様もお酒好きなんだ。ちょっと意外かも」

「というか、あの神様って人と関わってるの?今まで目撃報告もなかったみたいだし」

エコーはローラを見てそう言った。

「梨々香さんはどうも他者との関わりが苦手なようでな・・・」

ローラはエコーを見てそう言った。

「コミュ障なんだ」

「否定はしない。ただ、理由が少し特殊でな」

「特殊?」

レイチェルはローラを見てそう言った。

「あのお方は俗世に属していない特殊な一柱だ。俗世の制限を受けない代わりに、俗世の常を自分で学ばなければならない」

ローラはレイチェルを見てそう言った。

「俗世の制限?」

エコーはローラを見てそう言うと、ティーカップを持ってお茶を飲んだ。

「俗世の制限とは、俗世に住まう者たちにかけられた制御装置だ。この制御を受けなければ文明は生まれなかっただろう」

ローラはエコーを見てそう言った。

「どういうカラクリで文明が生まれないって言えるんですか?」

レイチェルはローラを見てそう言った。

「これを説明しようとなると器と魂の解説が必要でな・・・学習会になってしまう」

ローラは少し困ったように言った。

「勉強は嫌だな~・・・」

エコーは嫌そうに言った。

「それと、少し聞きたいことがあって・・・」

レイチェルはローラを見て少し緊張しながらそう言った。

「それが本題なのだろう?」

ローラはレイチェルを見てそう言った。

(ば、バレてた・・・)

エコーはローラを見て冷や汗をかいた。

「はい・・・」

「話せる範囲の話であれば話そう」

ローラは腕を組んでそう言った。

「アーヴァン王国消滅事件・・・あれはどうして起きたんですか?それと、夜に消えた・・・とは本当に作られた奇談だったんですか?」

「ローラ、そろそろ・・・」

エリーはローラを見てそう言った。

「構わんよ」

腕を組んだローラはエリーを見て笑いながらそう言った。

「神軍に残ると決めた者たちだ。いずれは知る時が来るだろう」

ローラはそう言うと、ティーカップとソーサーを持ってお茶を飲んだ。

「だが、これはあくまでも私の経験談だ。感情の錯綜、それによって足らない部分もある。承知して聞くように」

ローラはエコーとレイチェルを見てそう言った。

「はい・・・」

エコーとレイチェルはローラを見てそう言った。


-回想-

千六百八十四年、九月十六日。

私は後の神軍、当時"星々のお茶会"のメンバーとして極東地域の監視を行っていた。

私を含め、星々のお茶会はとある神を探して各地の監視を行っていた。

その神は、星々のお茶会のメンバーである六合が二百五十回目の回帰(かいき)の眠りについてから姿を消し、星々のお茶会のメンバーである天照が回帰したその日に消息不明となった。


「なぜこの神に固執するのですか?」

ローラはお茶を淹れる梨々香を見てそう言った。

「妻が残した日記に彼女のことが書かれていましてね・・・」

梨々香はティーポットを置きながらそう言った。

「彼女は強い後悔から自身を恨んでいる。だから、気にかけてあげて欲しい。と」

梨々香はローラを見てそう言った。

「後悔・・・ですか」

ローラは前に置かれるティーカップとソーサーを見てそう言った。

「彼女の後悔を晴らせるのは私だけです。だから、どうにかして見つけ出したい」

梨々香はお茶を飲むローラを見てそう言った。

「協力してくれませんか?」

梨々香はティーカップをソーサーの上に置いたローラを見てそう言った。

「あなたの願いを断るつもりはありませんよ。このお茶会のメンバーとして」

ローラは梨々香を見てそう言った。


千六百八十四年、九月十七日。

極東地域の監視を行っていた時、強烈な神気波動(しんきはどう)が極東に流れた。

発生地は高咲(たかさき)邸、深度は二万一千メートル。

当時、人が科学技術で到達できた最高深度は九千九十六メートルだった。

この事実から、私は何らかの神力(しんりょく)が空間を生み出したと考えた。

「神気炉の制御を乱すほどの神気・・・間違いない」

ローラはノートパソコンを見て笑みながらそう言った。


千六百八十四年、九月十八日。

深さが全くわからない世界中が揺れるような異常地震が発生した。

間違いなく何かが起きようとしている。

遠く離れた極東にいる私にもわかった。

そんな時、私の携帯端末に電話がかかって来た。

かけてきたのは同じく星々のお茶会のメンバー、グイードリヒだった。

そして、これが紅雷(テリュス)グイードリヒとの最後の通話となった。

「みんな、今すぐアーヴァンに行け・・・!梨々香様が二本の刀を持ってアーヴァンに向かれわれた・・・!!」

私はこの発言を聞いた瞬間、翼を広げて飛び上がった。

アーヴァンに行かなければ・・・この地震は間違いなく自然現象ではない。


千六百八十四年、九月十九日。

極東地域を飛び去った私はアーヴァン王国の付近まで来た。

アーヴァン王国は目の前だった。

だが・・・

「・・・」

龍翼を広げたローラは空に昇る夜空色の光柱を見て目を見開いた。

次の瞬間、アーヴァン王国の都市が消滅し、闇色の渦が空まで登り、衝撃波がローラを吹き飛ばした。

-回想終了-


「私が目を覚ました時、アーヴァン王国はもう滅んでいた。この目で得られた情報は限りなく少ない」

ローラはエコーとレイチェルを見てそう言った。

「・・・ただの自滅ではなさそうだね」

エコーはレイチェルを見てそう言った。

「間違いなく・・・」

レイチェルはエコーを見てそう言った。

「その後は?」

レイチェルはローラを見てそう言った。

「その後はお茶会で様々な話し合いを行った」

「残念ながら、この話はお茶会メンバーの秘密になっているため話せない」

エコーが何か言おうとする前にローラがそう言った。

「神軍の秘密ってこと?」

レイチェルはローラを見てそう言った。

「違う。お茶会メンバーの秘密だ。神軍になってから入った者は誰一人として知らない」

ローラはレイチェルを見てそう言った。

「神軍の上に星々のお茶会っていう組織があるっていうこと・・・?上には上がある的な??」

冷や汗をかいたエコーはレイチェルを見てそう言った。

「星々のお茶会は名前が変わって、神軍になったんだよ。その時のことだけはその時のメンバーだけの秘密っていうこと」

レイチェルはエコーを見てそう言った。

「うーん、なるほど!」

考えたエコーはレイチェルを見て笑みながらそう言った。

「絶対わかってないじゃん・・・」

レイチェルはエコーを見て苦笑いしながらそう言った。

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