ローナミア・フィエンゼ編 三章 神軍幹部総括者、ヴェルベサ・アンドリーネ・クリスティーナ・ロードハーツ
同年、一月十四日。
エリーは調査のため、チダリアへ来ていた。
「・・・極限夜光・・・まるで何かに反応しているかのように起きている・・・一体誰が起こしているんだ・・・」
水色眼、銀髪ロングヘア。銀色のミニコルセットドレスで身を包んだエリーは生気水晶を見てそう言った。
生気水晶。
溶けた器が固まってできた黒紫色の水晶。
光を当てると中に閉じ込められた色とりどりの粒が複雑怪奇に煌くため、宇宙を閉じ込めた石英と呼ばれ、装飾品として人気である。
「・・・」
エリーは振り向いて家の中を見た。
家屋内部は綺麗で、リビングと思われる部屋に冷めたスープや冷めた蒸かし芋が残されている。
「・・・リベードリヒは梨々香と一緒にいたはず・・・となると・・・リベードリヒと同じ力を持つ者が・・・」
エリーは考えながらそう言った。
「・・・誰だ・・・お前・・・」
黒と青が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだアージヴァイズはエリーを見てそう言った。
「・・・どうしてこんな所に居るの?こんな神気濃度が濃い場所に」
エリーはアージヴァイズを見て驚きながらそう言った。
「そ、その声・・・お前!エリーか!?」
アージヴァイズはエリーを見て驚きながら言った。
「チダリアで起きた異変について調査してるの。エリーは何してたの?」
オレンジはエリーを見てそう言った。
「私も調査だよ。大した収穫はないけど・・・」
エリーがそう言った瞬間、轟音が響き、地面が大きく揺れてアージヴァイズたちが倒れて転がった。
オレンジとエコーとミッケは気を失っている。
「・・・夜光・・・誰のものか、考える前に動くしかない!」
髪と服が靡くエリーは窓から入って来る闇を見てそう言うと、銀色の龍翼を生やして広げた。
「エリー!!」
髪と服が靡くアージヴァイズはエリーを見てそう言うと、窓を見て目を見開いた。
窓の外に闇色の光柱が発生し、窓から闇が入ってきていた。
「や、や、や・・・」
闇を見たアージヴァイズは冷や汗をかき、酷く焦りながら無線機の電源ボタンを押した。
しかし、無線機は全く反応せず、ノイズすら発生しない。
「・・・終わった・・・」
冷や汗を垂らすアージヴァイズは激しい耳鳴りと共に強烈な光を放つ闇の光柱を見てそう言った。
「銀星龍神技!銀光波!!」
銀色の龍翼を広げたエリーがそう叫ぶと、空中に六華が現れた。
六華は銀色に染まると同時に冷凍光線を放つ。
放たれた冷凍光線が闇色の光柱の膨張を止め、床や壁が見る見るうちに凍りついた。
「何とか・・・止めないと・・・」
そう言う銀色の龍翼を広げたエリーの腕の龍麟が割れ、飛び散り始めた。
「エリー!」
冷や汗をかいたアージヴァイズはエリーを見て大声でそう言った。
「クッ・・・」
エリーは左手で銀色の六華を押し、脚を青く堅い氷で固定するも、青く堅い氷が砕けて下がり始めた。
「・・・」
アージヴァイズは闇色の光柱を止める氷を見て目を見開いた。
その瞬間、闇色の光柱を止める氷にひびが入り、弾けた。
「・・・」
凍てついた床に転がったアージヴァイズは微かに聞こえるオレンジの声を聴いて目を覚ますと、オレンジを見た。
「アージヴァイズ!」
眉を顰めたオレンジはアージヴァイズを心配そうに見てそう叫んだ。
「・・・エリーは!?」
アージヴァイズは周りを見てそう言った。
「・・・」
ボロボロになったエリーは地面に倒れていた。
「エリー・・・」
アージヴァイズはボロボロになったエリーを見てそう言うと、立ち上がり、足を引きずりながら近づいた。
「あなたは本当に私の上司か?」
ローラはボロボロになったエリーを見てそう言った。
「神軍幹部第四位・・・」
ボロボロになったエリーの前に立ったアージヴァイズはローラを睨みながら言った。
「少しは褒めてやれよ!!エリーは私たちを助けたんだぞ!!」
アージヴァイズはローラを睨みながら怒鳴った。
「神軍幹部第二位は上に立つ者として褒められるようなことはしていない」
ローラはそう言うと、液体が入った小瓶を生成して握った。
「神気濃度が濃い場所に人が数百人と居るのに、人の避難より独自で行う調査を優先した。最悪な行動と言える」
ローラはエリーに無色透明な液体、神泉をかけながら言った。
「私たちは調査のために来たんだ。避難なんて必要ないよ」
オレンジはエリーを抱えるローラを見てそう言った。
「・・・」
オレンジの言葉を聞いたローラはオレンジを見て眉を顰めた。
「そうか」
ローラは呆れて様子でそう一言だけ言った。
「まぁ、好きにすると良い。だが、我々の邪魔をするなら容赦なく消す」
エリーを担いだローラはアージヴァイズたちを見てそう言った。
ローラにビビったアージヴァイズたちは一度退き、チダリア調査班の拠点に戻った。
しかし、拠点には人がいない。あるのは生気水晶だけだ。
「これは・・・」
ミッケは生気水晶を見てそう言った。
「み、みんなは??」
オレンジは困惑しながらそう言った。
「これだ・・・これがみんなだ」
生気水晶を見るミッケはそう言いながら生気水晶に触れた。
「そ、そんな嘘つくな・・・面白くねぇよ・・・」
アージヴァイズは生気水晶を見てそうそう言った。
「嘘なら良かった・・・全部、嘘なら・・・」
ミッケは生気水晶に閉じ込められたレムフィト軍の懐中時計を見て悲しそうに言った。
アージヴァイズたちは生気水晶に閉じ込められたレムフィト軍の懐中時計を見て目を見開き、冷や汗をかいた。
「驚いた。この濃さの神気に耐えられる人間がいるなんて・・・」
龍王眼、白髪セミロングヘア。黒いコルセットドレスで身を包んだ色白な肌の少女はアージヴァイズたちを見てそう言った。
「!?」
ミッケ以外は驚きながら龍王眼、白髪セミロングヘア。黒いコルセットドレスで身を包んだ色白な肌の少女を見た。
「神軍幹部総括者・・・」
ミッケは龍王眼、白髪セミロングヘア。黒いコルセットドレスで身を包んだ色白な肌の少女を見てそう言った。
「そ、総括者・・・?」
アージヴァイズたちはミッケを見て冷や汗を垂らしながらそう言った。
ミッケは近づいてくる龍王眼、白髪セミロングヘア。黒いコルセットドレスで身を包んだ色白な肌の少女を見続けている。
神軍幹部総括者ヴェルベサ・アンドリーネ・クリスティーナ・ロードハーツ
かつて表裏二柱の内一柱を務めた龍神。
名に龍が付く神はヴェルベサから誕生した。
「濃い神気に晒された生き物は形を失い、こうなる」
ヴェルベサは生気水晶を見てそう言った。
「わ、私たちはどうして・・・」
オレンジは自分の手を見てそう言った。
「神気に耐性がある。又は、神から強い加護を受けている。その両方かもしれないけど」
ヴェルベサはアージヴァイズたちを見てそう言った。
「・・・」
アージヴァイズたちは不安そうにヴェルベサを見た。
「まぁ、とりあえずこっから離れよっか。近くに船が来てるからおいで」
ヴェルベサはアージヴァイズたちを見て笑みながらそう言った。
一方、梨々香はチダリア上空でリベードリヒと戦っていた。
「・・・」
神刀華炎を握った梨々香は神刀華炎を振り、闇の剣を受け止めた。
神刀華炎と闇の剣が鍔迫り合いをして華炎眼の梨々香と邪眼のリベードリヒが睨み合った。
(華千﨑・・・蘇ってから百年でここまで力を取り戻すとは・・・この速度なら術の復活も時間の問題か・・・)
闇の剣を握り込んだ邪眼のリベードリヒは神刀華炎を握り込んだ梨々香を見つめた。
神刀華炎を握り込んだ梨々香と闇の剣を握り込んだ邪眼のリベードリヒは空中で何度も打ち合う。
打ち合う度に赤い炎と黒い炎が発生し、赤い火の粉と黒い火の粉が散る。
「ッ!!」
闇の剣を握り込んだ邪眼のリベードリヒは手を伸ばす梨々香を見て目を見開いた。
(一瞬で良い・・・刀に力を宿す必要もない・・・指先の数センチで構わない!!)
手を伸ばす梨々香は邪眼を見て目を見開いた。
「照赫ッ!!」
手を伸ばした梨々香は手に力を込めながらそう言った。
伸ばした梨々香の手にリベードリヒの眼から抜け出した暗黒の霧が集まり、球体に変化する。
(たった百年程度だぞ・・・自分の命が尽きようと構わないというのか・・・??)
暗黒の霧が閉じ込められた球体に目が現れ、梨々香を見た。
梨々香が手に力を籠め続けていたその時、暗黒の霧が閉じ込められた球体にひびが入り始めた。
暗黒の霧が閉じ込められた球体は日々から細かな淡い橙色の水晶片を大量に吹き出す。
暗黒の霧が閉じ込められた球体は甲高い音と轟音を鳴り響かせながら砕け散った。
「・・・」
リベードリヒを抱きかかえた梨々香は落下した。
戦闘から三時間後、リベードリヒは目を覚ましてゆっくりと起き上がった。
リベードリヒが周りを見ると、切り株に乗った淡い橙色の水晶、聖陽水晶を見る梨々香がいた。
聖陽水晶
陽の力を宿した聖なる水晶。
世界一高価な物質として有名な水晶でもある。
淡い橙色、橙色、淡い赤色、赫色の順に効力が強くなる。
「梨々香・・・」
リベードリヒは梨々香を見てそう言った。
「起きたか。良かった」
梨々香はリベードリヒを見て笑みながらそう言った。
「・・・梨々香・・・もう戦わなくて大丈夫だよ・・・」
リベードリヒは起き上がりながら言った。
「・・・」
聖陽水晶を見る梨々香は聖陽水晶を手に取った。
「私が何とかする・・・だから・・・」
リベードリヒは梨々香に近づきながらそう言った。
「もう、私のために何かをするのはやめて」
リベードリヒは梨々香を見てそう言った。
「勘違いするな」
梨々香がそう言うと、リベードリヒが目を見開いた。
「これは私のためにやってることだ」
梨々香は聖陽水晶を見てそう言った。
「だから、今は黙って見ていてくれ」
梨々香はリベードリヒを見てそう言った。
「あなたを絶対に助ける。あなただけなんだよ。私に残ってる家族は・・・」
梨々香はそう言うと、小走りで向かってきたリベードリヒを受け止めた。
「あなたと居るためなら、幸せでいるためなら・・・どんな障壁でも斬ろう」
梨々香はリベードリヒを抱きしめながら言った。
「・・・梨々香・・・泣いて良い?」
リベードリヒは梨々香を抱きしめながら言った。
「涙は取っておいてくれ・・・終わった後、涙が出ないって言われたら困るからね」
梨々香はリベードリヒを見て笑みながらそう言った。




