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ローナミア・フィエンゼ編 一章 エドワーズ町の怪事件

千六百九十七年、一月十日。

大陸の東西を結ぶ大運河ミリア河の中部、十一号停泊所が領土内にあるチダリア国は何処を見ても雪景色だ。

上空からはチダリア軍の軍人がミリア河へ向かうのが薄っすらと見える。

ミリア河の停泊所には、ラグジェパレス社のの輸送船団と護衛役の駆逐艦リドニーが停泊用意を行っている。


チダリア海軍所属駆逐艦リドニー。

全長三十五メートル最大幅九メートル。

十五センチ連装砲二基、十五ミリ対空砲四基、三連雷管二基、爆雷投射機一基を搭載。

西楓重工業で近代化改修を受けた五十年前の軍艦。


船団の到着から少しすると、軍人たちは忙しなく動き始めた。

「奴らは物資を下ろし始めました。ののさん、狙うなら今です」

爆撃特化型雪風1は真下に停泊しているラグジェパレス社の輸送船団を見てそう言った。

「爆撃を開始せよ」

のの・爆撃特化型雪風は地上を見てそう言った。

指示を受けた爆撃型雪風たちが急降下した。

一人のチダリア軍人が運んできた木箱を置くと何か異変に気が付き、真上を見た。

(行ける!)

エアブレーキを展開し、狙いを定めた爆撃特化型雪風1は慌てる軍人たちを見た。

軍人たちは双眼鏡で雪風爆撃隊を見て慌てていた。

「撃て!撃て!撃てぇー!!」

駆逐艦リドニーの甲板に居るチダリア海軍の軍人たちは十二ミリガトリングガンや七センチ単発対空榴弾砲で爆撃特化型雪風を攻撃し始めた。

駆逐艦リドニーの上空へ到達した爆撃特化型雪風たちは駆逐艦リドニーの甲板に居るチダリア海軍の軍人たちを見た。

駆逐艦リドニーの甲板に居るチダリア海軍の軍人たちは濃縮液体爆薬式爆弾を見て何か叫んでいた。

水飛沫が上がると、駆逐艦リドニーの左舷が傾き、港に激突した。

「ここは俺たち海兵に任せろ!住民を避難させられるのはお前たち陸軍兵だけだ!」

チダリア陸軍の軍人、リム・ローデル・ウッドはチダリア海軍の軍人に掴まれ駆逐艦リドニーから投げ飛ばされた。

リムは小麦粉袋に落ちて苦しそうに呻くも、すぐにフラフラと立ち上がった。

「クソ・・・」

次々と爆撃され、燃える駆逐艦リドニーを見るリムは起き上がりながら言った。

爆弾は次々と河とラグジェパレス社の輸送船団に弾着し、爆発した。

上空から見えるのは激しい炎と黒煙のみ。河の一部は激しい炎と黒煙で確認できない。

爆撃型雪風六機から成る西川爆撃隊は駆逐艦リドニーを撃沈したと判断し、チダリア国ヴィニ州エドワーズ町へ。

しかし、チダリア海軍の駆逐艦リドニーは爆撃を受けて大破したが、完全な沈没だけは避けていた。


逃げたリムたちはエドワーズ町へ走った。

「避難だ!!避難するぞ!!橘花軍が来た!!」

リムは町内を走りながら叫んだ。

リム以外のチダリア陸軍兵たちはハンドルを持ち出し、多重ギアの装置にハンドルをつけて回す。

すると、空襲を伝える大きな鐘が動いて鳴り始めた。

「・・・」

鐘の音を聞いたリムとスージーは防空塔を見た。

「・・・」

防空塔に居るチダリア陸軍兵たちはリムとスージーに敬礼してうなずいた。

「・・・」

リムとスージーはチダリア陸軍兵たちに敬礼を返した。


リムたちは住民と一緒に歩いて防空壕を目指して町から出始める。

目的地である防空壕は、集落から二・七キロメートルほど離れた岩肌の山にある洞窟をりようしたもの。

馬ですら貴重なこの町民は、その洞窟まで歩いて行かなければいけない。

子供が多いこの町は避難にかなり苦戦している。

(案の定、ガキがみんなの足を引っ張っているな)

のの・爆撃特化型雪風はリムたちを見た。

「お姉ちゃんに任せとけ」

リムはそう言いながら子供を抱え、歩き始めた。

「何の役にも立たないガキを守るなんて・・・くだらない」

のの・爆撃特化型雪風は地上を見ながらそう呟いた。

その時、のの・爆撃特化型吹雪の頭上を薄紫色の稲妻が走った。

「!?」

のの・爆撃特化型雪風は雷鳴を聞き、振り返った。

振り向くと、そこには薄紫色の電気の波のような光が空に走る幻想的な光景が広がっていた。

「・・・なんて気見の悪さだ・・・」

のの・爆撃特化型雪風は周りを見てそう言った。

「早く終わらせて戻りましょうよ!」

爆撃特化型雪風1はのの・爆撃特化型雪風を見てそう言った。

「そうだな」

のの・爆撃特化型雪風はそう言うと、地上を見た。

のの・爆撃特化型雪風が目を離したうちにリムたちは結構な距離を進んでいた。

「クソ・・・結構進んでやがる・・・」

のの・爆撃特化型雪風は地上を見てそう言った。

「任せてください!あんな標的一発だ!」

低空から侵入した爆撃特化型雪風2は住民たちを見てそう言った。

住民たちはパニックになり、リムは低空飛行する爆撃特化型雪風2に歩兵銃を構え、狙いを定めた。

その時だった。

薄紫色の雷が爆撃特化型雪風2に直撃して爆散した。

冷や汗をかいたリムは歩兵銃を落とし、大人たちは空を見て悲鳴を上げ、何人もの子供を抱えて防空壕まで途轍もない速度で走った。

不穏な風が吹き、雷鳴が轟く中爆撃特化型雪風たちが次々と落雷を受けて爆発していく。

「はぁ・・・はぁ・・・」

圧倒的な力を目の前に息を荒げるのの・爆撃特化型雪風は冷や汗を垂らしながら急いで周りを見渡し、ゆっくりと少し上を向いた。

「戦禍を撒くだけの存在・・・君たちは実にくだらない存在だ」

黄眼、白髪ツインテール。白色と黄色と緑色が基調の戦闘服で身を包んだ色白な肌の女性、ローラ・エリザベス・アディはのの・爆撃特化型雪風を見てそう言った。

「う・・・うぅ・・・うわぁぁぁぁ!!!!」

全身から冷や汗を垂らし、酷く焦り、怯えるのの・爆撃特化型雪風は雷気で身を浮かせ、翼膜が薄紫色に輝く龍翼を広げるローラを見て叫び、がむしゃらに逃げた。

しかし、のの・爆撃特化型雪風は過電流によって装備が煙を上げて停止し、降下し始めた。

のの・爆撃特化型雪風は数分の滑空を経て少し滑りながら不時着した。

「なんだ・・・!何なんだあいつはぁッ・・・!!」

不時着したののはそう言いながら酷く震えた手で土を掴んで這いずり、大きな岩に身を隠した。

その瞬間、薄紫色の光がエドワーズ町に広がり、辺りが静寂に包まれた。

この世の雷と金切り音を集約させたような轟音が静寂を打ち砕き、衝撃波が地上に到達した。



同年、一月十三日。

レムフィトのフィトナーゼラジオ放送局が放送したチダリア国エドワーズ町在住の軍人、リム・ローデル・ウッドの奇談がレムフィト中で話題になっていた。

その奇談とは、雷のドラゴンが橘花軍とエドワーズ町を消し飛ばしたというものだ。

レムフィト国レミリア州にあるレムフィト基地の食堂でもこの奇談は話題の中心となっている。


「橘花軍の戦姫たちに爆撃される!と思った時だった!薄紫色の雷が橘花軍の戦姫たちを襲い、いとも簡単に撃破した!」

「へぇ~、それで?」

「その雷を見た私たちは信じられないほどの力を出せたんだ!その雷のおかげで何とか防空壕まで逃げることができたと言って良い!町の子供たちも無事だ!みんなに聞けば本当だって分かる!」

「戦場ではショックから集団幻覚を見ます」

「急な悪天候がドラゴンに見えたのでしょう」

「本当なんですよ!!それに!エドワーズ町も壊滅したんだ!!」

「爆撃を受けて壊滅したんでしょう」


「・・・」

黄緑眼、黒紫髪ツインテール。桜色のワンピースで身を包んだ微褐色肌の少し大人っぽい少女、リリー・グローニア・ハッゼウは放送が流れるラジオを見ていた。

「この放送、ボスはどう思う?」

青緑眼、黒髪にツインテール。藍色のワンピースで身を包んだ色白な肌の少女、エコー・ユニ・マルガレーテはテレビを見るリリーを見てそう言った。

「不思議な話ではありますよね」

ローラン・F・ベネトはテレビを見るリリーを見てそう言った。

「橘花国にそんな余裕あったっけ?」

リリーはラジオを見てそう言った。

「そうなんですよ、そこなんです」

「エドワーズ町は文明発展度の低さと埋蔵資源の少なさから重要視されていませんが、土地だけで言えばかなり広いです」

ローランは少し考えながらそう言った。

「国境戦線、東和海戦、春雫海戦に戦力を裂いている橘花軍がエドワーズ町を壊滅させるなんて限りなく不可能に近いんです」

ローランはリリーを見てそう言った。

「西川爆撃隊が潜水空母から発艦してミリア河の重要港を爆撃するって橘花国の国営ラジオ放送で聞いたよ」

赤眼、黒髪ツインテール。黒い服を着て赤いスリムパンツを穿いた色白な肌のグリードリヒ・ポリー・ヤングブラッドはリリーを見てそう言った。

「その放送、うちも聞いたにゃ」

青眼、黒髪ショートヘア。灰色のワンピースで身を包んだ褐色肌の少女、ミッケ・ローゼ・カーリンはグリードリヒを見てそう言った。

「その潜水空母から発艦した部隊がエドワーズ町を?」

緑眼、白髪ツインテール。緑色のワンピースで身を包んだ色白な肌の少女のような女性、ジュリア・トムソン・レイモンドはミッケとグリードリヒを見てそう言った。

「その可能性が高いんじゃないかな」

グリードリヒはジュリアを見てそう言った。

「その爆撃隊がエドワーズ町を壊滅させたって??」

ジュリアはグリードリヒを見て少し笑いながらそう言った。

「潜水空母から出せる戦姫の数なんて精々十機だ。爆撃を目的とした大型装備なら三から六機だろう」

リリーはスプーンを手に取ってそう言った。

「その六機がN2爆弾を積めるなら話は別だけど、そもそも戦姫にN2なんて積めるはずないし、東和連合にそんな威力の戦姫用爆弾もない」

リリーはアージヴァイズたちを見てそう言った。

「まさか・・・神軍の兵器?」

考えるローランはラジオを見てそう言った。

「うん・・・神軍が何かしたって言う方が現実的だよね」

茶眼、黒髪ミディアムボブヘア。白と紺色が基調のセイラー服で身を包んだ色白な肌の少女のような女性、カレン・ジェイド・フリエルはリリーたちを見てそう言った。


ローランは総帥室へ行くと、クリスティーナ・オブ・クーパーレムフィトレムフィト国総帥と話をした。

「クォーツの産地は判明しましたか?」

ローランはクリスティーナを見てそう言った。

「いや、まだだ。採掘に関わった採掘職人を捕まえて聴取を行ったが、話す前に病死してしまった」

クリスティーナはローランを見てそう言った。

「病死?全員が??」

ローランは椅子に座りながら言った。

「採掘職人が病死するのは珍しいことじゃない。酸素濃度が薄い場所や有毒ガスが発生している場所での作業を強いられるからな」

クリスティーナは資料に触れながら言った。

「・・・また何もわからないままですか・・・」

ローランはクリスティーナを見てそう言った。

「仕方ないさ・・・どうにかできることじゃない」

クリスティーナはローランを見てそう言った。

クリスティーナとローランが見つめ合っていると、ドアがノックされた。

「入れ」

クリスティーナはドアを見てそう言った。

ドアが開くと、レムフィト政府の官僚が来た。

「総帥閣下。例のクォーツを密売していた商人が情報を吐き出しました」

レムフィト政府の官僚はクリスティーナを見てそう言った。

「産地は」

クリスティーナはレムフィト政府の官僚を見てそう言った。

「それが・・・レムフィト北西部のルーズレッド州にある廃キャンプ場近くの川だと言うんです」

レムフィト政府の官僚はクリスティーナを見て少し不思議そうに言った。

「・・・ベネト副総帥。レムフィト軍で調査を行ってくれ。もちろん、極秘でな」

クリスティーナはローランを見てそう言った。

「わかりました」

ローランはクリスティーナを見てそう言った。


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