レディフ・フィアンゼ編 十一章 動き出す神々。
「まだやれてない!撃ち込めるだけ撃ち込め!!」
爆刃発射機に爆刃を装填するドロシー・カックエルは煙が上がる地上を見てそう言うと、爆刃発射機の引き金を引いて爆刃を地上に飛ばした。
疑似神姫たちは次々と地上に爆刃を撃ち込んだ。
「・・・」
ニーナ・カルジェルドは地上を見つめていた。
「挨拶が過ぎますわよ。特殊組織イェーツの皆様」
緑眼、黒髪ロングヘア。薄緑色が基調の戦闘服で身を包んだ色白な肌の女性、エミー・オブ・スチュワート=ジャレットはニーナ・カルジェルドたちを見てそう言った。
神軍幹部第六位、エミー・オブ・スチュワート=ジャレット。
ヴェルベサ六番眷属神、嵐天龍アリクの力を受け継いだ上位神。
嵐を天に広げ、地上を浄化する。
(クソ!神気探知も意味がないッ!!)
ドロシー・カックエルはエミーを見ながらエミーに爆刃発射機を構えた。
ドロシー・カックエルは引き金を引き、爆刃発射機は爆刃を発射した。
爆刃はエミーの遥か手前で起爆し、消えかけた黒煙だけがエミーに触れた。
「・・・」
エミーは軽く服を叩いた。
「赤紫ノ破壊弾」
指を銃の形にしたニーナ・カルジェルドはそう言うと、指先程度の小さな赤紫色の光弾を発射した。
指先程度の小さな赤紫色の光弾はエミーの遥か手前で大爆発を起こし、途轍もない衝撃波がドロシー・カックエルたちを襲った。
「直撃ではないけど・・・ダメージは入ったはず・・・」
息を上げるニーナ・カルジェルドは光を見てそう言った。
光が消えると、無傷のエミーが姿を見せた。
「神の残滓を利用しているだけ・・・と。そういうことですか」
エミーはニーナ・カルジェルドを見て笑みながら言った。
(トップの奥儀で無傷だって!?嘘だろ・・・??)
ドロシー・カックエルはエミーを見て唖然とした。
「我らが主神ヴェルベサが降臨した際のものでしょうか・・・」
エミーは少し考えながら言った。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
冷や汗をかいたニーナ・カルジェルドは息を挙げながらエミーを見つめた。
「まぁ、たかが残滓です。すぐに葬って差し上げましょう
エミーはそう言うと、手を広げて前に向けた。
エミーが表に向けた手をゆっくり内向きに握ると、エミーの髪と服が軽く靡き、神気風が放たれた。
「ごぼぁ・・・」
神気風を受けた多くの疑似神姫が液状疑似神気を吐きだし、墜ちていった。
(聴覚が・・・めまいも・・・)
液状疑似神気を吐き出すドロシー・カックエルはエミーを見て目を見開いた。
(これが・・・これが神軍幹部・・・)
液状疑似神気を吐いたニーナ・カルジェルドはエミーを見て怯えた。
次の瞬間、途轍もない勢いで嵐が発生し、残った疑似神姫たちが雨風に砕かれた。
嵐の中、額の龍角が黄金色に輝くエミーは嵐の中を舞うように移動し始める。
同年、九月二十八日。
アージヴァイズたちを乗せた軍用車両がレムフィト内地にあるレムフィト基地へ少し遅れて到着した。
後退先のレムフィト基地は、モントベルワーズビーチ基地より規模こそ小さいものの、レムフィトにある軍事基地の中で最も設備が自動化されていて快適な場所である。
「はぁ・・・荷物ほとんどなくなっちゃった」
ソーサーを見るレース付きの藍色のワンピースで身を包んだエコーはため息をついてそう言った。
「ティーカップについてくる皿が無事だっただけ良いじゃねぇか」
黒い服を着て黒いショートパンツを穿いたアージヴァイズはエコーを見て笑みながら言った。
「ソーサーだよ」
エコーはアージヴァイズを見て呆れたようにそう言った。
アージヴァイズたちが荷物を見ていると、レムフィト軍人とクリスティーナが来た。
「大丈夫か?」
クリスティーナはアージヴァイズたちを見てそう言った。
「大丈夫そうだよ」
アージヴァイズはクリスティーナを見てそう言った。
橙色のワンピースで身を包んだ微褐色肌のオレンジたちはクリスティーナを見てうなずいた。
「そうか。それは良かった」
クリスティーナはアージヴァイズたちを見て笑みながら言った。
「と言うか、副総帥と来るんじゃなかったのか?」
アージヴァイズはクリスティーナを見てそう言った。
「あぁ、ちょっと事件があってな・・・」
クリスティーナはアージヴァイズを見てそう言った。
「事件って?」
エコーはクリスティーナを見てそう言った。
「・・・皇女陛下の死後、何かが各地で無差別攻撃を行っている。というものだ」
クリスティーナはエコーを見てそう言った。
「何か?」
灰色のワンピースで身を包んだミッケはクリスティーナを見てそう言った。
「何かって?」
アージヴァイズはクリスティーナを見てそう言った。
「全くわからない。神気が観測されていないため、月浜やその関係国の行いではないだろう」
クリスティーナはアージヴァイズを見てそう言った。
「色々考えられるが・・・正直、この件に深入りしたくはない」
クリスティーナはアージヴァイズたちを見てそう言った。
「無差別攻撃なら止めようよ!何が相手なの?」
オレンジはクリスティーナを見てそう言った。
「・・・・・・神軍だ」
冷や汗をかくクリスティーナはオレンジを見て重苦しそうに言った。
「前にリリーが言ってたな」
アージヴァイズはクリスティーナを見てそう言った。
「東和連合の上層部が怯えてたね」
エコーはアージヴァイズを見てそう言った。
「東和海での被害報告があり、それに神軍が関与しているとされている」
クリスティーナはアージヴァイズたちを見てそう言った。
「しかし、神軍に関する話は都市伝説や怪談に近い。海難事故を隠蔽するために作られた架空の組織と考えて良いだろう」
眉を顰めたクリスティーナはアージヴァイズたちを見てそう言った。
「架空の・・・」
ミッケはクリスティーナを見てそう言った。
「新しい情報が入り次第、君たちに報告する。場合によっては退避命令が出る。退避用意をしておいてくれ」
クリスティーナがアージヴァイズたちを見てそう言うと、アージヴァイズたちが顔を見合わせた。
「また退避!?」
アージヴァイズたちは驚きながらそう言った。
一方、月浜の疑似神姫たちはフィーキンス国上空を哨戒していた。
「本当に来るの?」
赤眼、黒髪ツインテール。黒と赤が基調のレオタードタイプの戦闘服で身を包んだ色白な肌のTT-42B-60 グリードリヒ・フォンドレシアは飛行しながらレーダー情報を見てそう言った。
「イェーツが観測したんだ。間違いない」
飛行するエミリア・ミーティアはレーダー情報を見てそう言った。
「・・・」
グリードリヒ・フォンドレシアは途轍もなく不服そうにエミリア・ミーティアを見た。
(タンコック准尉の亡命と疑似神気エネルギーの完全除去が知られてから特殊組織イェーツの統率が激しく崩れている・・・このままじゃ完全崩壊は時間の問題・・・何とかここで奴に一撃与え、威厳を見せなければ・・・)
エミリア・ミーティアはグリードリヒ・フォンドレシアを一瞬見てから再びレーダー情報を見た。
橘 みよりの死後、月浜海軍中尉のクレア・リー・リンパニーと月浜陸軍伍長のファルム・レベッカ・ロイルがノースドラゴニア残地経由でレムフィトへ亡命した。
疑似神姫の更なる亡命を恐れた月浜軍部は強力な情報統制を行い、ベネローブを含めた疑似神姫の亡命を完全非公開にした。
ニーナ率いる特殊組織イェーツでも情報統制が行われたが、時既に遅し。
インターネット上に公開されたベネローブの幸せそうな写真を見た疑似神姫たちから不満が途轍もない勢いで漏れ出している。
だが、これは月浜の自業自得とも言える。
こんな状況に陥った要因は、月浜軍の教えと月浜の世論にあるからだ。
軍事産業大国である月浜は戦争を続けたい。
戦争を続けるために民間企業も協力して主戦力である疑似神姫に不安を植え付けた。
過度な不安を覚えさせた結果、ただの一枚の写真から不満が漏れ出したのだ。
(何とか止めなければ・・・)
エミリア・ミーティアがそう考えた時、途轍もない熱風がエミリア・ミーティアたちを襲った。
熱風を受けたバリアが瞬時に割れ、全身が燃え上がる。
その直後、フィーキンスの町に立つ木造家屋が水蒸気爆発と共に激しく燃え上がった。
フィーキンスは見る見るうちに炎に包まれる。
「うわぁぁぁぁ!!!!」
燃えるグリードリヒ・フォンドレシアたちは叫びながら急降下し、ある程度減速しながら湖に入った。
「う、嘘だ・・・!!触れるどころか・・・姿すら見ていない・・・!!」
燃えるエミリア・ミーティアは周りを見てそう言うと、水色の疑似神気を纏って防御態勢に入った。
熱は高まり続け、湖の表面で小さな数位蒸気爆発が連続で起き始めた。
「ッ!!」
エミリア・ミーティアは驚きながら上を向いた。
エミリア・ミーティアが見たのは、途轍もない速度で急降下してくる激しく燃える赤炎の塊だった。
「・・・ごばぁッ!」
大火傷を負った緑眼、白髪ツインテール。黄緑色と赤色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだ生者とは言い難い肌のジュリア・トムソン・レイモンドは口から水を吐き出し、急いで起き上がった。
ジュリアは起き上がった激しく咳き込み、水を吐き始めた。
「良かった。全員無事ですね」
水眼、青黒髪ツインテール。青黒色が基調のスカートタイプの戦闘服で身を包んだ色白な肌の乙女、ユリカ・本白水・グレニスターは笑みながらそう言った。
「・・・お前・・・」
息を上げるジュリアはユリカを見てそう言った。
「全員生きていたか」
黒い赤いシャツを着て黒いコートを羽織り、黒い長ズボンを穿いた梨々香は歩みを進めながらそう言った。
「神軍の・・・トップ・・・!!」
ジュリアは梨々香を見て目を見開き、そう言った。
「ここは神軍拠点艦一番艦の甲板だ」
歩みを止めた梨々香はジュリアを見てそう言った。
「安心しろ。月浜まで送る」
梨々香はジュリアを見て笑みながら言った。
「そ、そんな・・・!」
ジュリアは大声でそう言うと、火傷の痛みで悶えた。
「陛下」
眉を顰めたユリカは梨々香を見て呆れたようにそう言った。
「冗談だよ」
梨々香は少し笑いながらそう言った。
「治療が終わり次第好きな所へ送ろう。大体わかっているがね」
梨々香はジュリアを見て笑みながらそう言うと、振り向いて歩き出し、艦内に戻っていった。
「陛下は俗世とのズレを気にしておられるのです」
ユリカはジュリアを水泡に包みながらそう言った。
「また水ッ!!」
ジュリアは驚き、水の中でもがきながらそう言った。
「あれ?息ができるし、喋れる」
驚くジュリアは両手を見てそう言った。
「俗世とのズレ?」
ジュリアはユリカを見てそう言った。
「陛下は遥か昔のお人であり、神であります」
ユリカはジュリアの傷を治しながらそう言った。
「この世の神ですら、陛下が使う古の言語を理解できません」
ユリカは少し悲しそうに言った。
「・・・」
ジュリアは複雑な表情を浮かべ、少しずつ治る傷を見た。
「陛下はこの世の言葉を覚えるのに、随分と苦労したそうですよ」
ユリカはジュリアを見て笑みながら言った。
「あの人、何年生きてるの?」
ジュリアは水泡を見てそう言った。
「怪しまないでね!ちょっと聞いただけだから・・・」
ジュリアはユリカを見て慌ててそう言った。
「そうですね・・・星の大海が無へ帰る時を幾度も見た。とは仰っていました」
ユリカは治る傷を見て笑みながらそう言った。
数時間後。
レムフィトとノースドラゴニア残地の国境付近を哨戒していたリリーがジュリアたちを連れ、レムフィト基地に帰還した。
「また疑似神姫・・・」
アージヴァイズは薄青色の着物を着たグリードリヒたちを見て驚きながら言った。
「計六人・・・」
ローランはジュリアたちを見て困惑しながら言った。
リリーはグリードリヒたちを連れて食堂に向かった。
グリードリヒたちは何だか気まずそうで、黙っていた。
「そう言えば、お腹空いてる?」
リリーはグリードリヒたちを見てそう言った。
「え?」
急に話しかけられたジュリアは声を裏返してそう言った。
「亡命者にはとりあえず飯を食わせろっていう感じだからさ」
リリーはグリードリヒたちを見て笑みながら言った。
「お腹は・・・一応空いてる」
グリードリヒは少しうつむきながら言った。
「なら良かった」
リリーは前を見てそう言った。
食堂へ行くと、グリードリヒたちが椅子に座った。
「リリー・・・久しぶりだね・・・」
薄青色の着物を着たグリードリヒ・ポリー・ヤングブラッドはリリーを見て気まずそうに言った。
「久しぶりだね」
リリーはグリードリヒを見て笑みながらそう言った。
「というか、マジで亡命者増え過ぎじゃね?月浜って生活に困らない最高の環境だろ?」
リリーはグリードリヒたちを見て苦笑いしながら言った。
「タンコックの写真って本物なの?めっちゃ幸せそうじゃん」
水色眼、白髪セミロングヘア。薄青色の着物を着た生者の肌とは言い難い肌のキャロル・スウェイル・ロッシュはリリーを見てそう言った。
「疑うような写真か?あんな写真、ネットにあるそこらの写真と何ら変わりないじゃないか」
リリーはキャロルを見て少し笑いながら言った。
「ネットって・・・そんな気軽に使えないからわからないんだよ・・・」
「そっか。まぁ、私がさっき言ったとおり、そこらにあるただの写真だよ」
リリーがグリードリヒたちを見て笑みながらそう言うと、ジュリアたちは顔を見合わせた。
「で、なんで亡命者が増えてんの?一週間で十人だよ?」
リリーはグリードリヒたちを見て少し笑いながら言った。
「タンコック准尉が幸せそうだったし・・・」
銀眼、白髪ツインテール。白薄青色の着物を着た生者の肌とは言い難い肌のオルガ・エレノア・ホープはリリーを見てそう言った。
「実はさ・・・副総帥が神軍と関わりがある企業を排除し始めてから月浜の経済状況が良くないんだよね・・・」
茶眼、黒髪ミディアムボブヘア。薄青色の着物を着た生者の肌とは言い難い肌のカレン・ジェイド・フリエルはリリーを見てそう言った。
「超高額納税者は全員神軍の組織員って話だし・・・マジで東月戦後問題が現実になりそうなんだ・・・」
黒眼、黒髪セミロングヘア。薄青色の着物を着た生者の肌とは言い難い肌のレイチェル・オブ・ヒューム=キャンベルはリリーを見て辛そうに言った。
「まぁ、大体わかった」
リリーはグリードリヒたちを見てそう言った。
「・・・」
グリードリヒたちはリリーを見つめた。
「ちょっとくらい揶揄ってやろうと思ってたのに月浜も返還交渉をしてこないし・・・」
リリーは少し落ち込みながら言った。
「少しゆっくりすると良いよ」
リリーはジュリアたちを見て笑みながら言った。
「・・・なんか一気に気が抜けた・・・もっと早く亡命すれば良かった」
グリードリヒは背もたれにもたれ、天井を見てそう言った。
「亡命に成功したんだから、もう良いじゃないか」
カレンはグリードリヒを見て笑みながら言った。
「ねぇ、リリー。神軍にお礼したいんだけど、何か方法知らない?」
ジュリアはリリーを見てそう言った。
「神軍に?」
リリーはジュリアを見てそう言った。
「そう」
「レムフィトからじゃ無理だよ。ベラ・ジ・ルルの郵便局に行く必要がある」
「ベラ・ジ・ルル・・・結構遠いね」
ジュリアはリリーを見て少しめんどくさそうに言った。
「ベラ・ジ・ルルからなら神軍に手紙を送れるの!?」
少し前のめりになったグリードリヒはリリーを見てそう言った。
「送れるよ。誰がどう読んでるのかはわからないけどね」
リリーはグリードリヒを見て笑みながら言った。
「失礼します」
ワゴンを引く月浜打撃軍の軍人1はリリーたちを見てそう言うと、食堂に入った。
ワゴンには食事とワインが乗っている。
「レムフィト式ワイン?」
レイチェルはワイン瓶を見て笑みながら言った。
「ベラ・ジ・ルルから仕入れてるワインです」
月浜打撃軍の軍人1は広げられる料理を見るジュリアたちを見てそう言った。
「甘いお酒だーいすき!」
レイチェルはワイン瓶を見て笑みながら言った。
「好きに食べ飲みしな」
リリーはレイチェルを見て笑みながら言った。
リリーがそう言うと、グリードリヒたちがご飯を食べ始めた。
一方、アージヴァイズたちはローランから話を聞いていた。
「一時間ほど前、フィーキンス国が消失しました」
少し元気がないローランはアージヴァイズたちを見てそう言った。
「消失・・・?」
オレンジは少し元気がないローランを見て首を傾げながら言った。
「皇女陛下の死後、何かが各地で無差別攻撃を行っているって総帥が言ってたよね」
エコーは少し元気がないローランを見てそう言った。
「フィーキンスはそれなりに国土が広く、戦姫や疑似神姫と戦えるような防衛設備もあります」
少し元気がないローランはエコーを見てそう言った。
「疑似神気エネルギーを作る燃料炉がいくつもありますから、燃料炉が何かしらの故障で爆発、誘爆、融合爆発を起こした。と考えるのが良いでしょう」
少し元気がないローランはため息交じりにそう言った。
「事故ってことか・・・」
アージヴァイズは少し考えながら言った。
「でも、融合爆発の事故って何回かあったよにゃ?」
ミッケは少し元気がないローランを見てそう言った。
「えぇ、昔に何度か」
少し元気がないローランはミッケを見てそう言った。
「昔の切り抜きとか見たことあるけど、町一つ消し飛んだとかそんな感じだったにゃ」
「つまり、あり得ないということか」
アージヴァイズはミッケを見てそう言った。
「やっぱり神軍だよ!神軍が攻撃したんだ!」
オレンジは少し元気がないローランを見てそう言った。
「その考え、本気ですか?」
ローランはオレンジを見て驚きながら言った。
「絶対にそうだよ!」
オレンジはローランを見てそう言った。
「・・・神軍は存在しませんよ」
笑ったローランはオレンジを見て少し笑いながら言った。
「どうしてそんなこと言い切れるの!?」
オレンジはローランを見て怒りながら言った。
「良いですか?疑似神気燃料炉を搭載した月浜の試製戦艦がジェマノ島沖で沈没事故を起こしたことがあるんです」
ローランはオレンジを見て笑みながら言った。
「へぇ~」
アージヴァイズはローランを見てそう言った。
「月浜はこの試製戦艦を人類が誇るべき最強の戦艦だと言っていましたから、事の真相が知られることを恐れた月浜が隠蔽するために神軍という架空の組織を生み出したんです」
「うぅ・・・でも、東和連合の上層部も神軍って名前を聞いて怯えてたし・・・」
オレンジは落ち込みながらそう言った。
「軍部が海難事故を隠蔽するために言いだしたことを鵜呑みにしているんでしょう」
「ボスも言ってたし!」
眉を顰めたオレンジはローランを見てそう言った。
「わかりましたから」
ローランはオレンジを見て笑みながら言った。
「わかってない!!」
怒って膨れたオレンジはローランを見て怒鳴った。
「うるさいよ。何騒いでんのさ」
リリーはアージヴァイズたちを見て大声でそう言った。
「あ、グローニア総長」
ローランはリリーを見てそう言った。
「食事終わったよ」
リリーはローランを見てそう言った。
「あぁ・・・」
ローランはグリードリヒたちを見てそう声を漏らすと、リリーを見た。
「わかりました」
リリーを見るローランは笑みながらそう言った。
「ねぇ、ボス!神軍って存在してるよね!?」
立ち上がったオレンジはリリーを見てそう言いながらリリーに駆け寄った。
「なに?急に」
リリーはオレンジを見て少し笑いながら言った。
「フィーキンスが消滅するという事故が起きたんです。それが神軍の仕業だって言うんですよ」
ローランはリリーを見て呆れたようにそう言った。
「どういう考えで事故だという結論に至ったのか、説明した?」
リリーはローランを見てそう言った。
「えぇ、疑似神気エネルギーの燃料炉が故障したことによって融合爆発が起きたという風に説明しました」
ローランはリリーを見てそう言った。
「じゃあ、どんな感じで消滅したのか、教えてくれる?」
リリーはローランを見て笑みながら言った。
「どんな感じで消滅したか・・・?」
「例えば、燃えて消えたとか、水で流されたて消えたとか」
「消滅なんですから、わかりませんよ」
ローランはリリーを見て笑みながら言った。
「燃えれば爆風で飛ばされた灰が隣国などで見つかるかもしれないし、水で流されたならどこかに瓦礫があるかもしれない」
「何も見つからなくても、上空から神気濃度を計れば何かわかるんじゃないか?」
リリーはそう言うと、ローランに手を差し出した。
「?」
ローランはリリーの手を見た。
「部屋の鍵」
リリーはローランを見てそう言った。
「あぁ・・・!これ、部屋の鍵です」
ローランはリリーを見て笑み、鍵を渡しながらそう言った。
「はい、確かに」
リリーは鍵を受け取ってそう言った。
「まぁ、この人数なので少し狭いとは思いますが、心臓移植手術が終わり次第、家を渡しますので我慢してください」
ローランはグリードリヒたちを見て笑みながら言った。
「・・・うん」
グリードリヒたちはローランを見て返事した。
「グローニア総長」
ローランはリリーを見てそう言った。
「ん?」
鍵を持ったリリーは振り向き、ローランを見て笑みながら言った。
「あなたはどこまで知っているんですか?もしかして、何でも知ってるんですか?」
「何でもは知らないよ。知ってることだけ」
リリーはローランを見て笑みながらそう言うと、部屋から出た。
リリーたちは部屋から出ると、話を始めた。
「あの子、頭大丈夫?ストレス性の障害とか抱えてない?」
レイチェルはリリーを見て少し心配そうに言った。
「あると思うよ。まだ五歳だからね」
リリーは前を見続けてそう言った。
「そう考えると氷鳥たちは化け物だね」
グリードリヒはリリーを見てそう言った。
リリーたちは部屋へ行くと、再び話を始めた。
「意外といい場所じゃん」
キャロルは部屋を見渡しながら言った。
「と言うか、リリーって神軍に詳しいよね。どういう関係なの?」
椅子に座ったグリードリヒはリリーを見てそう言った。
「詳しくはないよ。私が知ってるのは、神軍に手紙を送る方法とベラ・ジ・ルルが神軍とどういう関係かっていうことだけ」
リリーはグリードリヒを見てそう言った。
「充分詳しくない?」
グリードリヒはリリーを見てそう言った。
「そう言うのって簡単に知れないでしょ?」
ジュリアは蔑んだ目でリリーを見てそう言った。
「ウェブにあるベラ・ジ・ルルの政府公式ホームページに書いてあることだよ。端末を買ったらネットで調べてみると良い」
リリーはジュリアたちを見て笑みながら言った。
「本当に全部調べるからね?」
ジュリアはリリーを見てそう言った。
「うん。情報はたくさん持っておくと良い」
リリーはジュリアを見て笑みながら言った。