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【4月/14日コミックス1巻発売】魔術師の杖 短編集 ネリアとレオポルドのじれじれな日常  作者: 粉雪@4/14『魔術師の杖』コミックス1巻発売
発売5周年記念SS

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水かけ祭り 中編

シリーズ発売5周年記念、トートバッグ5月29日発売!

税込3,300円(送料が別に550円かかります)

挿絵(By みてみん)

6巻表紙の画像を、よろづ先生が陽光の色調にレタッチして下さいました。

サイズはMとL、色は生成りと黒の2種類です。

 レオポルドは口をへの字にしたままだ。


「濡れるぐらい、かまわん」


 わたしは彼に考えを変えさせるべく粘った。


「護符だって失くしちゃうかも」


「もともと消耗品だ」


「ええとぉ……」


 断る理由を探していると、レオポルドの眉間のシワがぐぐっと深くなる。


「まだなにかあるのか」


 だってさ……うるさいお目付け役なんて、ついてきてほしくないじゃん。


 ……とは言いづらい。


「ん-むむむ」


「口がタコみたいだぞ」


「え、変な顔なんだから見ないでよ!」


 あわてて両手で顔を隠せば、盛大にため息をつかれた。


「真正面に座っていながら、なにをぬかす」


 そうなんだけどね!美形に指摘されたくはないんだよ!


「じゃあ、『お兄ちゃん』やってくれるならいいよ」


「は?」


「ヌーメリアの甥のアレクを連れて遊びに行くんだもん。わたしも『お姉ちゃん』やるし。年長者として、ちゃんとめんどう見てくれなきゃ」


 彼はぎょっとしたように、目を見開いた。


「私がか?」


「もともと、ひとりでアレクを連れて行くつもりだったし。手伝ってくれるんなら、いっしょに来てもいいけどぉ。いかにも魔術師団長なローブだって禁止だからね」


「…………」


 ほらね。めんどくさければ彼だって渋るに決まってる。水かけ祭りは監視抜きで楽しまないと!


「承知した」


「へ?」


 じゃまな前髪を払うようにかき上げてから、彼はギロリとわたしをにらみつける。


「で、水かけ祭りはいつだ?」


「あさってだけど……」


「では、あさっての昼に。研究棟へ迎えに行く。では帰れ」


 ポイッ。そんな感じでわたしは塔の外に追いだされた。え、レオポルドもくるの?マジで?


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 彼の返事を聞いたものの、半信半疑のまま水かけ祭り当日になった。アレクといっしょにでかける準備をしていると、ソラがわたしのところへやってくる。


「ネリア様、青いレオがやってきました」


 青いレオ……西武ライオンズ?


 わたしのガオォ……な想像は、すぐに打ち砕かれた。白いライオンはどこにもいない。


「あ……青っ!」


 顔はレオポルドだけど、アレクのような青く長い髪と瞳を持つ、長身の人物が研究棟の入り口に立っている。いつもだと光を放つ銀糸のような髪が、濃い青に変わっている。なんと、まつ毛までしっかり青い。


「用意はできたか」


「あ、うん。収納ポシェットにお財布とタオルも入れたし、もうでかけられるけど……髪も瞳も青くしたんだね」


 彼は顔をしかめて自分の髪をつまむと、気にいらないようすで首をひねっている。


「『お兄ちゃん』だというから……塔にちょうど青い髪の魔術師がいるから、色を抽出してみたが、あまりしっくりこないな」


 そっか、アレクの『お兄ちゃん』設定⁉


 魔術師団長……といっても、青いとそんな雰囲気はない。ふだんと違って、どこか軽薄な感じもして、わたしも首をかしげた。


「そうだね。違和感があるけど……抽出ってその人、無事なの?」


 心配になってたずねると、彼は淡々と答える。


「錬金術師じゃあるまいし、髪をひと房切り取っただけだ。驚いて真っ青になっていたが……」


 いやいやいや。魔術師団長にいきなり髪を切られたら、びっくりするし怖いでしょうが。


「錬金術師だって人間相手に、乱暴なことなんかしないわよ!」


 けれど彼は眉をひそめて問いかけてきた。


「人間を錬金釜に入れるのではないのか?」


「し・ま・せ・ん!」


 騒ぎを聞きつけて、アレクがひょっこり顔をだした。


「ネリア、その人だれ?」


「えと……レオだよ」


「へえぇ」


 じーっ。わたしの手をキュッと握り、アレクはあいさつもせずレオを見上げた、彼は彼でまばたきをして、十歳の少年を無言で見下ろしている。


 どうしよう。けれど……レオポルドは顔にださないだけで、髪の色も変えてくるぐらいだから、もしかして水かけ祭りに参加したかったの?


 つまりガチ勢なのかも!


「それならそうと、言ってくれればいいのに!」


「?」


 なーんだ。わたしも王都ではふだん、ネリィとして楽しんでいるもん。レオポルドだって師団長の肩書きを外して、はっちゃけたいときはあるよね!


 じゃ、思いっきり彼に水かけても平気なんだ。そっかー。


 おっしゃあぁ!


 なんだか妙な気合が入る。遠慮せず行かせてもらいますとも!


 わたしはウキウキとアレクに話しかけた。


「あのね、アレク。彼もすっごく、水かけ祭りに参加したいんだって」


「この人も?」


 アレクが目を丸くした。


「そう。すんごく行きたいみたい」


「おい……」


 レオポルドはなにか言いたげだったけれど、アレクはわたしとレオの顔を交互に見て、ついでにソラのこともチラリと振り返ってから言った。


「べつにいいけど……レオって、なんだかソラに似ているね」


 子どもならではの遠慮ない指摘に、彼はビキリと固まった。耐えてる。レオポルドも子ども相手なら、ちゃんと耐えるんだぁ。妙なところにわたしは感心する。


 アレクは無邪気そうなようすで、わたしの手をクイクイと引っ張り、小さな声でこそっとささやく。


「でもさネリア、つき合うならカッコいい竜騎士団長のほうがいいと思うよ?」


 ラララ、ライアス⁉


「こここ、この人とはそんなんじゃないから!」


「そうなの?」


「そうだよ。勝手についてきたんだもん」


 コソコソ話のつもりが、彼の耳にはしっかり聞こえていたらしい。


「おい……ずいぶんな言い草だな」


「だって、ついてきてなんて頼んでないもん。行こう、アレク」


 わたしは日差しを避けるために帽子をかぶり、アレクと手をつないで歩きだした。その数歩うしろを、レオポルドは黙ってついてくる。三人でテクテク通路を歩いて通用門へと向かう。


「ネリア」


 アレクはまた、わたしの手をクイクイと引っ張り、小さな声でこそっと聞いてくる。


「ホントに僕、お邪魔虫じゃない?」


「もぅ、アレクったらそんなんじゃないってば。だいじょうぶだよ。彼はホントに水かけ祭りに行きたいだけなんだから」


 わたしは笑って否定して、アレクに歩調を合わせる。


「そうだなぁ、わたしも彼がついてきたのは意外。だけどせっかくだもん、楽しもうよ。人生最高の水かけ祭りにしよう!」


「あはは、ネリアってば。僕ら初めてだから、どうやったって人生最高の水かけ祭りだよ」


「そうそう!」


 アレクは安心したように笑うと、もういちどレオポルドを振り向いて、「やっぱりソラに似てるなぁ」とつぶやいた。

あれ、前後編で終わるつもりが(汗

書籍版ではアレクとレオポルドの接点はないのですが、今回はいっしょに過ごさせてみました。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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