現パロ 奈々と三人組
『魔術師の杖』の現パロです。
以前X に掲載した物を、加筆して載せておきます。
本編だと三歳差ですが、みんな高校生です。
私、松瀬奈々は高校に入学してさっそく最大のピンチだ。
目の前に並ぶのは壁!
ひとりは短髪の凛々しい顔の、いかつい体格をしたイケメン。
もうひとりはどこまで伸ばす気だってぐらい、髪を長く伸ばした……なんだか神々しいぐらいの美形。
そして最後は黒縁眼鏡をかけた、いたってふつうな感じの人なんだけど。
どんなタイプだろうと、三人並べば肉の壁だ。
なんでこいつら全員背が高いの?
うちのアニキより高い……何食ったらそうなるのよ!
長髪の美形が私を見おろして、ぽそりと言った。
「子猫……」
短髪のイケメンが、その意見に首をかしげる。
「子兎では?」
黒縁眼鏡の男が、眼鏡のブリッジに指をかけた。
「いや、子犬ちゃんだろ」
「ととと通していただけますかっ⁉」
眼鏡の奥にある、緑がかった目がスッと細められる。
「ほら、キャンキャン言うし。やっぱ子犬ちゃん」
「がるるぅっ!」
私としてはグワッと口を開けて、牙をむいたつもりなんだけど……相手にはまるで効果がなかった。眼鏡の男はうれしそうに、にんまりとする。
「いいねぇ、もっとかみついてほしいなぁ。お気に入り認定しちゃお」
威嚇、大失敗!
「於堂、何人お気に入りを作る気だ……これで十人目だぞ」
短髪のイケメンが注意すると、眼鏡の男――於堂というらしい――は肩をすくめる。
「えぇ?にぎやかな方が楽しいじゃん」
(十人……まちがいなく女の敵!)
私が警戒を強めていたところに、長髪の美形がすっと何かを差しだしてきた。
「やる」
「へ?」
とんでもない美形に差しだされたのは、ピチッとラッピングされた鶏肉の固まり、つまりサラダチキンだった。
そのままかじってもいいけれど、手で裂いてサラダに混ぜてドレッシングやチーズと食べてもおいしい。ただ美形からそれをもらう理由がわからない。
「あ、ありがとうございます?」
疑問形をつけたままお礼をいうと、於堂が驚いた感じで声をあげる。
「え、玲央ってば気に入っちゃったの?」
「…………」
「わぁ、ちょっと。玲央君てば暴力反対!」
玲央と呼ばれた長髪の美形は、ガシッと於堂の肩をつかむと、ズリズリと引きずっていく。意外と力もあるらしい。ポカーンと見送っていたら、短髪のイケメンが眉を下げて謝ってきた。
「騒がせてすまない。君の名前は?」
「えと……」
「あっ、いきなりじゃ警戒するよな。俺は来亜須という」
にっこりするだけでまぶしい笑顔なのに、白い歯までキラッと光る。
(何この人、めっちゃイケメン!コワモテだけど笑顔やさしい!)
「私は松瀬……奈々です」
「奈々か、よろしくな!」
「は、はいっ!来亜須さん、よろしくお願いします。それであの……このサラダチキン、もらっといていいのでしょうか?」
来亜須は私の手にあるサラダチキンを見おろした。
「玲央が『やる』と言ったんだし、食べてしまっていいと思う」
「はぁ」
(いや、いきなりサラダチキンもらっても、ふつうは食べないでしょ。どうしよ……家に帰ったらアニキに食べさせちゃえばいっか……)
三人が去り、ようやく開けた視界の向こうには校舎、そして奈々の手にはサラダチキン……。
果たして奈々の高校生活はどうなる⁉️
サラダチキンは玲央の非常食で、お腹が空いたら食べます。あれは持ち歩きやすくコスパがいいのです。同じ理由で魚肉ソーセージを持ってたりします。
今は奈々にあげてしまったので、於堂を引きずって学食にパンを買いに行きました。お坊ちゃんですが於堂の教えたジャンクフードも好みます。









