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8.雑で危険な作戦

「と、いう事だから、魔王倒してくれる?」

 シアンはニコニコしながら聞いてくる。

 ふぅ、と涼真は大きく息をつく。そして、涼真は真剣な目で聞いた。

「ここがコンピューターでできた世界で、管理ができているならテロリストなんてすぐに見つかるんじゃないんですか?」

 するとシアンは肩をすくめて言う。

「テロリストって元は星のシステムの管理者(アドミニストレーター)たちだったのよ。それが(よこしま)な思想にとりつかれ、徒党(ととう)を組んで僕たちに楯突(たてつ)き、システムの不備を突いて潜伏しているの」

「それは駆逐できないんですか?」

 シアンは目をつぶって首を振る。

「君、簡単に言ってくれるね。日本のメガバンクのシステムなんて何度も障害起こしながら全く直らないだろ? 巨大システムって一筋縄ではいかないんだよ。ここのシステムは銀行のシステムに比べたら複雑さは何兆倍……。それを全部解析って、いやぁ、無理無理。一応止めてスクリーニングかけたりしてるけど、そう簡単にシッポは出さないよ」

「そ、そうなんですね……」

「でもね? テロリストの支援を受けながら悪さしてる魔王を、君たちが叩いてごらん? 侮ったテロリストはちょっかいを出してくるよ。それを僕が解析して叩けば解決!」

 シアンは名案だといわんばかりにドヤ顔で言う。

 涼真は彩夏と顔を見合わせ、思わずため息を漏らす。

 そんな雑で危険な作戦、絶対にやりたくない。

「もし……、断ったらどうなるんですか?」

「君たちの記憶を消してさようなら。面倒くさいから星も廃棄だね」

 シアンは手のひらを上に向けて首をかしげる。


 涼真は腕を組み、考え込む。確かに危険な話だが、やらねば彩夏のガンの再発リスクは残ったままということだ。彩夏が苦しむ事は絶対に避けなければならない。であればどんなに危険でも、それは飲まざるを得ない。


 涼真はギリッと奥歯を鳴らし、大きく息をつくとシアンを見据えて言った。

「分かりました。やってみます。その代わり彩夏のガンは完治させてくださいよ」

「オッケー!」

 シアンはうれしそうに元気いっぱいに答える。

「わ、私にも手伝わせてください!」

 彩夏がバッと立ち上がって言う。

「え? 彩夏、俺がやるからいいよ」

 涼真はそう言って制止する。

「私だって手伝えることはあるはずよ。涼ちゃんだけに押し付けられないわ」

「いや、でも、危険だって」

 涼真が冷や汗を流しながら説得していると、シアンが言った。

「あー、やる? 彩夏にも少しだけ巫女さんの血が流れてるからね、活躍はできるかもね」

「ありがとうございます。頑張ります!」

 涼真の心配をよそに、彩夏はニコッと笑って両手のこぶしを握った。

「じゃあ、明日の夕方から研修開始。忘れずに来てね」

 シアンはニコニコしながら言った。


       ◇


 その夜、涼真と彩夏は母親の珠代から話を聞いた。

 珠代はまず彩夏の快復を自分の事のように喜ぶ。そしてしばらく何かを考えていたが、大きく息をつくと彩夏を見つめ、優しく語り始めた。

「彩ちゃんはね、私のシンママ友達、緑ちゃんの子なのよ。ガンで……亡くなっちゃったの。彩ちゃんがまだ一歳の頃だったわ。そして、亡くなる前に託されたのよ。成人する時に打ち明けるつもりだったけど、黙っててゴメンね」

 珠代はそういうと彩夏を優しくハグした。彩夏は一瞬困惑しながらもハグを受け入れ、しばらくお互いの体温を感じていた。

「ほ、本当のママは……、どんな人だったの?」

 彩夏が震える声でつぶやく。

「アルバムを持ってくるわね」

 珠代はそう言うと、戸棚の奥から丁寧に整理されたアルバムを出してきて広げた。そして、一枚一枚、その時の思い出を含め、心をこめて説明していく。

 彩夏は、初めて見る自分の母親の生き生きとしたシーンに戸惑いながらも、真剣に写真を見入っていった。

 涼真はそんな二人を眺めながらコーヒーをすすり、仲良し三人家族がこれからも続くといいなとボーっと考えていた。


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