12.絶望の青色レーザー
オレンジ色に輝きながらマッハニ十でカッ飛んでいく弾頭は、射弾観測機器に同期してモニタの中でしっかりと表示されている。
「十、九、八、七……」
着弾予定のカウントダウンがされるモニターに、涼真はくぎ付けとなった。
「三、二、一……」
そして、モニタが閃光で光り輝く。直後、オレンジ色の輝きを放ちながら何かが下へと落ちて行った。
「撃墜!」
涼真はガッツポーズで叫ぶ。初弾から命中、なんと優秀な兵器だろうか。
「目標沈黙よ!」
彩夏がスマホを見ながら嬉しそうに出てくる。
「イェーイ!」「いぇー!」
二人はハイタッチで撃墜を喜んだ。
と、その時だった、辺りが青く明るくなっていく。
「あれ? なんだこの青い光は……」
涼真が空を見上げてつぶやくと、彩夏は涼真に飛びつき、
「ダメッ! 逃げなきゃ!」
そう叫んで涼真に抱えたまま高速で飛び出した。
直後、電磁砲が閃光に包まれ、大爆発を起こす。
うわぁ! きゃぁ!
直撃は免れたものの衝撃波をまともにくらい、二人とも空中でクルクル回りながら岩山のふもとの森へと落ちて行った。
バサバサバサッ!
二人は木の枝に当たりながら落ち葉の積もる地面に落ちていく。神の力で減速させてはいたが、無様にゴロゴロと転がってしまう二人。
魔王を撃墜したらいきなり攻撃を受けてしまった。
涼真は体中についた落ち葉を払い落しながら起き上がる。
「くはぁ……なんだあれは?」
「衛星軌道からのレーザー攻撃よ。シアン様が座学で言ってたじゃない!」
「え? そんなこと言ってたっけ?」
涼真が首をかしげてると、
「居眠りでもしてたんじゃないの?」
と、彩夏はジト目で涼真をにらんだ。
「ま、まぁレーザー攻撃だったとして、誰が……?」
涼真がそう言った時だった、薄暗い森の中に閃光が走り、輝く何かが上から降りてくる。
ひぃっ! うわっ!
思わず腕で目を覆う二人。
「それは私です」
神経質そうな高い声が森に響いた。見るとヒョロリとしたダークスーツの男が宙に浮いている。
「あ、あなたは……デュドネ?」
青い顔をしながら彩夏が聞く。
「そう! 僕はこの星の元管理人デュドネ・リュバン。君たちは田町の……手先……かな?」
デュドネはいやらしい笑みを浮かべながら二人を睥睨する。
「テロリストめ! 何てことするんだ!」
涼真はキッとにらみながら叫ぶ。
「テロリスト? それは田町の勝手なレッテル貼りだ。私はこの星をここまで繁栄させ、豊かな文化を育んだ功労者……。それを勝手にテロリスト呼ばわりして追放とか……あり得んよ」
デュドネは肩をすくめ首を振る。
「女の子を次々とレイプしてたって聞いたわ!」
彩夏は涼真の後ろに隠れながら叫ぶ。
「レイプ? 神であるこの私に犯されることは名誉であり光栄なこと……神からの施しであり、福音だよ」
悪びれず、嬉しそうに言う。
「何が福音よ! 嫌がる娘を犯すのは犯罪よ!」
「んー? 嫌がる女がイヤイヤ言いながら、快楽におぼれて行くさまが最高なんじゃないか」
デュドネは犯してきた女の子たちを思い出し、恍惚の表情を浮かべる。
「変態! シアン様に成敗してもらうんだから!」
彩夏は鳥肌を立てながら叫ぶ。
「シアン? 奴らはこの星には来れないよ。量子コンピューターでも破れないセキュリティでロックしたからね」
勝ち誇ったように言うデュドネ。
「え……?」
青ざめる彩夏。
涼真も彩夏も研修を受けただけのただの囮である。手練れの元管理人相手には分が悪い。
「君……、可愛いね。どんな声で鳴くのかな……」
デュドネはそう言いながら右手に紫色の光を纏わせた。
「逃げるぞ! 彩夏!」
涼真はそう言って彩夏の手を握ってワープしようとした。しかし……。
「あれっ? えっ?」
ワープはできなかった。
「無駄だよ。このエリアではワープ機能をロック済みだ。逃げられちゃ困るからねぇ」
デュドネはニヤッといやらしい笑みを浮かべた。