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始まりの悲鳴

 ザハルの号令により、騎士が連れてきたのは枷で手足を繋がれ、奴隷服を着た一人の女性──マーリンだった。


 枷を繋がれた手首足首は、長年放置されていたのか酷い色をしている。髪は伸びっぱなしで、かつては湖の巫女とも称されていた美しい青色は見る影もない。


「さて、話してもらおうか。お前はアイツの居場所を知っているのか?」


 大司祭・オベロの前に立たせ問えば、マーリンは口角を吊り上げる。


「カカッ。お前達に話す事など何もないわ。神に魂を売りし者よ」

「戯れ言を。まあよいわ。オベロ、マーリンの目を見るんだ」


 騎士にマーリンを押さえつけさせ、ザハルは無理矢理に目を開く。


「……無理だ、ザハル殿」

「無理、だって? 半魔には効力がないって言うのか?」

「いいや。ないなら、あんな発言はしないですよ。マーリン……こやつの目を見てください」


 そう言われ、髪を掴みあげ目を見て驚愕した。


「お前、自ら視界を絶ったのか?」

「カカッ。視力など妾にとってはあってもなくても同じものよ」


 余裕な態度をとるマーリンをザハルは投げ飛ばし、鞘走らせる。


「ほう? 首をはねるか? 妾は構わぬよ」


 切っ先を首元に当てても恐れる素振りひとつない。寧ろ、首を強く押し当ててくる。なんて怖い女だ。


 流石は、嘗てカルナただ一人に唯一、心を許し道を示した助言者なだけある。覚悟が違う。


「まあいい」と、剣を鞘に戻そうとした刹那、鋭い光がオベロを穿いた。


「な、なんだ?!」

「まったく、人とは行動力にかける」

「貴方は……まさか」


 見た目はオベロそのものだ。何の変哲もない老爺だ。しかし違う。彼のうちから滲み出るものが規格外であり、予想外のものだった。


 堪らず息を呑んだザハルの開いた口は塞がらない。


「こんな半魔如きに何を手間取っているのだよ」

「これはこれは、サリエルじゃないか」

「ふん。不本意ではあるな、お前のような汚れに名を呼ばれるのわ」

「サリエル様! 此処は俺が必ず」

「黙れ人間。余の行為を無駄にする気か?」

「い、いえ……」

「では聞こう、マーリン。カルナは今何処にいる?」


 ただならぬ殺意。気を緩めたらこちらが命を絡め取られそうだ。


「カカッ。言っているだろ? 知らないと」

「そうかそうか」


 サリエルは首の根をつかみ、意図も簡単に枷に繋がれたままのマーリンを持ち上げた。


「魔性が神性に勝てぬことぐらい分かっているだろ?」

「……グッ……カカッ。で、だからどうしたのだ?」

「まあよい。お前は半分人間なのだろ? 楽には死ねぬよ」


 純白の光がオベロから解き放たれ、それは何本もの矢と成した。


「身も心も焼き焦げるがいいさ──カウサ……プリスクス」


 その声と共に矢は一斉にマーリン目掛け降り注ぐ。慈悲もなく容赦なく突き刺さる矢を相手に初めは笑みを浮かべていたマーリンだったが──


「がっぁぁぁあ」

「ほれほれどうした? まだまだ余は続けられるぞ? カウサ・プリスクス」

「ぐぁぁぁあぁあ」


 これだけの絶叫だ。人間である部分が消滅したのだろう。しかし、力を投薬により減少させてるとは言え、フレアドラゴン(危険種一級)程度なら楽に殺せるマーリンが一方的とは──


「どうした? 痛いか? 苦しいか?」

「カカッ。まだ……まだ」

「ほう。そうか、それは残念だ。カウサ・プリスクス」

「ぐぐぁぁぁあ!!」

「流石は第七天使サリエル様だ」


 これで人の体を依代にしてるのだ。実際はどれだけの力なのだろうか。考えただけで恐ろしい。


「ふむ」


 何かを納得したような声音と共に、朽ち果てたマーリンが落ちる音がする。


「なるほどな」

「分かったんですか? サリエル様」

「うむ。それはコイツに触れた時既に分かっておった」

「なら今の納得したような素振りわ一体」

「半魔とは中々楽しませてくれるという事だ。天界は愉悦が少なくて適わないからな」


 なんて恐ろしい。ただ自分が楽しみたいからという理由でマーリンを弄んでたと言うのか。

 だが、嫌悪を抱く事は赦されない。ザハルは息を整え慎重に言葉を選んだ。


「カルナの所在は」

「その事だが……そうだな。この国の魔力を持つものを百名を此処へ集めろ」

「分かりました。急ぎ集めます」

「面白くなるぞ、今までにないほどにな」

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