聖女への疑惑と再燃の怒り
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また今回長めです(いつもよりは)。
「やっぱりお前らか――――クソ勇者どもがああぁぁァァアッッッ!!!?」
市場にゲインの怒声が響き渡る。
「また俺を虐めに来たのか!?それとも、また何かを奪っていく気か!?これ以上てめぇ等の好きになんてさせるものかッ!!」
だがそんなゲインとは反対に、勇者は落ち着いた口調で話しかけてくる。
「おいおい、そう興奮すんなよ。アタマの血管切れてぶっ倒れても知らねぇぜ?……ま、そんなことよりさ。言ったろ、俺らはただお礼をしに来ただけだよ」
ゲインは額に青筋をビキビキと浮かばせながらも話を聞いていた。"黒"も主の意思に従うかのように、暴れることをやめていた。もっとも、いまにもまた暴れださんばかりにプルプルと小刻みに震えていたが。
「…それで?はぐらかしてないでさっさと要件を言えよ。どうせ自分達がボコられたから、俺に報復でもしに来たってところだろうが」
「よく分かってるじゃん。さっすが、フリとはいえ一緒に戦ってきただけのことはある。でもな〜ちょっと報復とは違うんだよな〜?」
「なに…?」
怪訝な顔に疑問符を貼り付けたゲインなどお構いなしに勇者は続ける。
「ま、どっちにしてもお前にくれてやるものには違いないんだけどな―――というワケで、聖女サマ?」
「っ!」
勇者が今まで黙って話を聞いていたリスに話しかける。
「実は勇者パーティ今回さ、この件でゲインに協力していたやつの処断まで任されてるんだわ」
勇者はリスの耳に顔を近づけ、こう囁いた。
「あんまフザケたこと言うようなら、覚悟くらいは決めてもらうぜ?」
小さなリスの背中がピクリと跳ねる。
「じゃ、まずは詳しい話を聞かせてもらおうか………おい、そこの野次馬ども、そこの女を兵士の詰め所に連れていけ」
野次馬達がざわめく。仮にも聖女にそんなことをできるのか、と。しかし、
「ざ、罪人に協力したんだ…聖女だって同じ罪人だ……」
誰かの呟きに全員が反応する。そして、徐々にリスを取り囲み………遂に両腕を拘束された。
だが、ゲインがそれだけで済ます筈もなかった。
ブワッ!
"黒"がリスを捕まえていた人間に向かって飛ぶ。
「「「う、うわあぁぁ!」」」
野次馬達は蜘蛛の子を散らすように散り散りになる。
ゲインは怒りがこもっていながらも、静かな声で野次馬達に話しかける。
「オイてめぇ等、何してやがる」
ゲインの顔を見た野次馬達はそろって顔を青くした。それもそうだろう。なぜならゲインは、ただでさえ恐ろしい破壊力――否、あえていうなら消滅力を抱えた"黒"を纏っているにも関わらず、さらに自身の魔力を全開にしてあらゆる魔法を、あらゆる角度から、あらゆるモノを対象に展開していたのだから。当然、野次馬のみならず勇者達にさえ逃げ場など、ない。
「そいつに手を出す必要はねぇ。そいつは俺が弱みを握って脅されてやってたんだからな。つまるところ、そいつも被害者だ。まさか勇者ともあろう者が、被害者を傷付けたりなんてしないよなぁ?そんなことしたら、もうその『正義』の仮面なんてかぶっていられなくなっちまうもんなぁ?」
それにもっとも大きな反応を示していたのは、他ならぬリスだった。
(!?ど、どういうこと…!?突然何を言って……それになんでそんな煽るような、悪者ぶったことを……!)
「俺を連れていきたいなら好きにしろよ。いくら勇者じゃない俺だって、無関係なやつを巻き込んで死なすのは寝覚めが悪いんだわ。だから、もう一度言う。俺を連れていきたいなら好きにしろよ。だがな、俺以外に手を出したりしたら―――関わった人間全員、血祭りで済むと思うなよ。灼いて砕いて潰して吹き飛ばして、そんで最後は」
ゴクリ
誰かの息を呑む音が聞こえた。
「そんで最後は、塵さえ残らず消し尽くしてやる。てめぇ等の存在そのものさえ、欠片も残さず滅ぼしてやる。覚悟しとけよ、クソ勇者共と勇者の味方の一般人」
今話の振り返り
リスが危なくなってゲインは啖呵を切りました。
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