平穏はやはり長くは続かない
ほのぼのなカンジの後にはきっちり波乱を!
市場で噂好きなおばちゃんたちがどよめいていた。
朝に出会った"二人"が、朝とは全然違う様子でもどってきたからだ。
「なんで女の子が男の子のほうを引きずっているのかしら…」
誰かが呟いたこの言葉が、二人を眺める人全員の気持ちを要約していた。
そう、今なぜか、少女が少年を引きずっていた。少女は背負おうとしているようだが、少年の身長の方が高く、足が今もズリズリと音を立てていた。
「う〜……確かに無理矢理あんなコトさせたのには罪悪感くらい感じるけどさ〜っ!せめて自分で歩いてよ〜っっ!」
少女のこの発言に周囲は色めきだつ。『あんなコト』といったらソレしかない、と。皆、一様に薄く頬を染めて、いまにも『あらあら…』とか『お盛んね〜』なんて言い出しそうな雰囲気であったが、生憎と、少女は少年を運ぶのに忙しいため気付いていない。
「あ"ぁ"ぁ"………俺が……可愛く……男なのに……。ゔぅ……俺、男の子だよな…?男の娘とかじゃないよな……?」
男の子の方は、自分自身のことさえわからなくなってきているようだった。しかし、そんな彼の言葉など気にもせず、自分達だけで話を盛り上げまくる周囲のおばちゃん軍団。状況は次第に混沌としていった。だが、そんな空気も長くは続かなかった。
「「ん?」」
二人は突然感じた"波"に眉をひそめる。風ではない、陸地にはありえないはずの、確かな波だった。
「「「「「「えっ…!?」」」」」」
騒いでいたおばちゃん軍団が一斉に目を剥く。
果たしてそこにあったのは―――
いちゃつく少年少女の姿ではなく、ゲインとシーリス(リス)の姿だった。
次回からまた物語本編(?)が加速します。[要約:寄り道しないで進める予定です。]
今後の展開に期待してくださる方、どうか評価をタップしてください。