ほんわか日常〜お買い物(服)〜
ほんわか日常=ネタ回
朝。
市場で噂好きなおばちゃんたちが微笑ましげに"ある二人"を眺めていた。
「あらあら、あれって恋人同士かしら」
「若いっていいわねぇ」
そんなマダム達の視線の先には―――
「別にそんなに服に気を使うこともないだろ。あの(クソ)勇者様と違って、特別かっこいいってわけでもないんだから」
「そういうわけにもいかないよ!ここは男の子よりはファッションを気にする女の子として、ばっちり着飾ってあげるんだから!一度決めた以上、何としてでもかっこよくしてやる〜!」
(……たかが変装用の衣服に張り切り過ぎじゃないか?いやまあ、オシャレのオの字も知らないくらいに無頓着だから助かるっちゃ助かるんだけど………)
そんなワケで、服を買いに昨日も訪れた市場の、衣服を取り扱うエリアに来ていた二人は無駄に注目を集めていた。
「じゃあまずはあのお店から!」
そう言ってリスは男物を主に扱っている店を指さす。ゲインは観念した様子でため息をついた。
◇◇◇◇◇◇
一時間後
二人がその店を離れたのは入店から一時間も後だった。ゲインの両手には紙袋に入った服がどっさり。
「あー買った買った!」
「重い…」
『いい仕事をした!』と言わんばかりの晴れやかな笑顔のリスとは対照的に、ゲインはひたすら着せ替え人形にさせられた影響でどんよりしていた。
「ではでは次のお店は――――」
「えっ!?まだ行く気なの!?」
割と本気で絶望の表情をしかけるゲイン。実は先程からすれ違ったおばちゃん数人に、『頑張りなさいよ』とでも言いたげな目で肩を叩かれており、かなり精神的に疲れていたところにこの追い打ち。はっきり言って瀕死のゲインだった。
「う〜ん……そうだね。ホントはもう2つ3つ回りたかったけど、やっぱり男の子にはこういうのって大変っぽいし、今日のところはこの辺に…」
一転してパッと瞳を輝かせたゲイン。
「あ、ごめん。もうちょっとまって。私も自分用に少し見ておきたくて。最後にあそこのお店に寄らせて?」
「……あと一つくらいなら、まぁ………」
「ホント!?ありがと!ちょっと待っててね、すぐ戻ってくるつもりだから」
そう言って店に駆け込むリス。しかし、10分ほどして
「ねぇ、ちょっと申し訳無いんだけど、その………」
「おいおい、まさかあと一時間、とか言わないよな…?」
「え?違う違う。その、やっぱりついてきてくれない?手伝って欲しいというか協力して欲しいというか…」
「はやく済むなら何でもいい」
そう言ってリスについていくゲインはまだ知らない。この後、昨日より恥ずかしい思いをすることになることなど。
◇◇◇◇◇◇
30分後
ただ待っていただけなら、『さっきよりは短いしいいか…』なんて言えただろうにと、ゲインは遠い目をしながら考えていた。
「やっぱりめちゃめちゃ似合うっ!私の目に狂いはなかったっ!!」
「お客様、最高でございます!お、お持ち帰りしてもよろしいでしょうか………ッ!」
ゲインを遠い目にさせた原因。それは―――
女装、であった。
その後しばらく、意気投合した店員とリスの着せ替え人形と化したゲインは死んだ魚のような目で解放されるまで耐えていたという。
女の子の思考はわかりません。
それはそうと、評価は欲しいのでよろしくお願いします。