私という一人の人間
なんと本日3本目!
今話はかなり頑張って書きました!
とりあえず、リスが天使なのはわかったが、それはそれで心配になるところもある。
(そんな簡単に男連れこんじゃって大丈夫なのか?)
「いやいや、そんなふうにホイホイ連れ込むわけじゃないから」
リスがまるで心を読んだかのようにそう返事をした。当然、ゲインは驚き過ぎて、体が意図せず10cmほど飛び上がるくらいだった。10cmは大袈裟かもしれないが、本当に飛び上がるほど驚いた。
「いやいや、そこまでびっくりする?どういうつもりだったのか知らないけどさ、普通に口からもれてたよ。それはもうダダもれってくらい」
「な……!?」
自分の口から漏れ出していたとは露ほども思っていなかったゲインは唖然とした。しかし、このままでは格好がつかないと思い直し、コホンと咳払い。
「それだったら、なんで俺は家にいれたんだ?俺が突然元気になって自分が襲われるとか思わなかったのか?」
「う〜ん、考えてなかったな〜…」
「オイ。ダメじゃねえか」
思わず、といった様子でツッコむゲイン。
「それに、君はそんなことするような人間じゃないでしょ?」
「ッ!……何を根拠に」
「目。そんな強引なことをするような人間だったら、あんな目はしない。あんな、心を壊されてしまったような悲しい目は」
「………」
無言でリスの言葉を聞くゲインを見ながら、リスは一拍置いてこう続けた。
「だってそうでしょ?強引なことをする人はそんな目をする側じゃなくてさせる側になるはずだもん」
ゲインが顔を上げると、そこには真っ直ぐと自分の目を見つめるリスがいた。そこにさっきまでの笑顔はなく。代わりにどこまでも純粋で。そして今まで誰もしてくれたことのなかった、労ってくれているような。そんな表情のリスがいた。いてくれた。
「君がなんで、指名手配されるようなことになっているのかは、私は知らない。でも、きっと何かワケがあるんでしょう?安心していいんだよ。もう苦しまなくていいんだよ。苦しいならそう言ってくれたらいい。泣きたいなら泣いてくれたっていい。もう、君は一人が悩む必要はないよ。私が、一緒にいてあげるから。一緒に悩んだりしてあげるから。これは聖女としての言葉じゃない。これは―――――」
「私という一人の人間としての言葉だから」
それはゲインがずっと欲しかった言葉。今まであいつらにはかけてもらえなかった、本当の心。
ゲインの頬を何かが伝う。見れば、それは温かい雫だった。
「うっ…!うううぅぅ………!」
堰を切ったように溢れ出した涙が床を濡らし、抑えきれない嗚咽が喉から漏れる。そんな子どものように泣きじゃくるゲインを、リスは黙って優しく抱き締める。せめて、その気持ちを受け止められるように。わかちあえるように。
しばらくの間その部屋には、すすり泣く音が響いていた。
今話のあらすじ
ゲインくんは少し救われました。
あと、リスは実は人たらし?
◇◇◇◇◇◇
どうだったでしょうか!?
面白いと思った方、感動したという方、あと自分もリスに慰めて欲しいという方はぜひ評価をください!
場合によってはリスの(今話のような)超天使なシーンが増えるかも。