ほんわか日常〜紅茶〜
本日2つ目は茶番だぜ!
どうぞお楽しみください。
「でも外を歩き回るのが危険なコトに変わりはないかな…よし!ゲインくん!君にはこれから私の家に来てもらいます!」
「は!??」
なんてことがあってから1時間も経たない頃、ゲインはリスに連れられてリスの家に来ていた。…来てしまっていた。
(どうしよう俺!?知り合って間もない女の人の家に来ちまった!?ど、どどどどどうしよう〜っっ!?)
『元』婚約者の家にもほとんど行ったことのなかったゲインは大混乱だ。頭の中は、『なぜ?』という疑問と人間不信からくる疑惑、『助けてくれたのだろう』という感謝に『これって大丈夫なのか?』という常識、それと『女子の家とかヤバい…』という理性に、あと十数個くらいの感情が入り混じり過ぎて、もう逆に真っ白である。
「あ、飲み物とかいる〜?」
そんな様子を気にもせず、リスはまるで客人をもてなすかのように対応する。
「ふぇー…」
絶賛オーバーヒート中のゲインは、そんな変で間抜けた返事を返すので精一杯だった。
そこに、カップ2つとティーポットをお盆にのせたリスが戻ってきて、ゲインを見て苦笑いを浮かべた。
「え、大丈夫?なんか目の焦点が合ってないように見えるけど」
「…大丈夫れす」
明らかに大丈夫じゃない類の返事にリスは再び苦笑い。
「ま、これでも飲んで落ち着いてよ。安心して、毒とかはないただの紅茶だから」
静かにポットの中身を注ぎ、うち一つをゲインの前に置き、ゲインを見ながら言外に「飲んで」と言ってくる。しかし、ある意味内心穏やかではないゲインは、なかなかそのカップを手に取らない。すると何を思ったのか、じーっとゲインを見つめていたリスが、自分のカップを手に取って―――
コクン
と小さく口をつけた。
「うん、まぁまぁの出来かな。ほら、飲んでみてよ」
そのまま流れるようにゲインにも飲むように促すリス。どうやらまだ毒の心配をしていると思い、自ら毒見をしたらしい。しかし、ゲインが心配しているのは、耐性がないにも関わらず女子の家にお邪魔してしまっているという事実なので、実際は紅茶ではなくその空間こそが目の毒になっている、とも言える状況だった。
しかし、ここまで勧められながら飲まないのは失礼にあたる、という常識的な思考がなんとか働き(正確には常識的な思考がめちゃめちゃ頑張って失礼のない行動をさせようとしたことで)、カップを手に取ることができた。
ゴクン
「美味しい…」
「よかった。せっかく用意した紅茶が無駄にならなくてよかったよ」
紅茶が喉を通ると同時に頭の中も綺麗に流されたゲインは、ようやくまともにモノを考えられるようになった直後に質問を投げつけた。
「で、なんで俺をわざわざ招き入れた?」
「え?困ってる人は助けてあげるのが当然でしょ?違うの?」
(天使かよ)
国王と勇者とその仲間と『元』婚約者と比較してそう感じたゲインは、遠い目をしてまたリスに心配されるのだった。
茶番も書くのは楽しいです。
どうでもいいけど、1話あたり1000文字くらいを目標にしてるので、短いと思った方、ごめんなさい。
評価&感想をおまちしておりますデス!
ฅ^•ﻌ•^ฅ