裏切りの始まり
楽しんでいただけるよう頑張ります。
傷付きボロ雑巾のようになった体を引きずってやっと王都へたどり着いた。
「はやく、知ら…せ、ないと…」
俺は『元』勇者パーティの魔法剣士、ゲイン。俺達勇者パーティはつい先日、魔王討伐のために魔王城へ向かった。戦いは熾烈を極め、結果として俺達は魔王に勝利した。
―――同時に勇者の裏切りという最悪の状況を生み出して。
◇◇◇◇◇◇
後少しで魔王を倒せる、というところで勇者は俺に言った。
『【アレ】をやる!時間を稼いでくれ!』
勇者の言うアレとは、いわゆる必殺技だ。威力が桁違いな反面、少しの"溜め"の時間が必要となるその技を勇者は放とうとしていた。俺の役割はその時間稼ぎ。そのはずだった。
(まだアレの準備が終わらないのか!?)
しかし、いくら時間を稼いでも勇者が一向に合図を出さない。しびれを切らして後ろを振り向くと、そこには――――
下卑た笑みを浮かべて俺ごと魔王の命を刈り取らんとする勇者の姿があった。
『ッ!!?』
慌ててその場を脱すべく左へ飛びのくが、もう遅かった。膨大な熱量を持つ光線が俺のすぐ右を貫いていた。
『ガアァッ!?』
勇者の光線の熱で逃げ切れなかった魔法剣を持つ右腕は、剣皮膚共にドロドロに溶けて、右足に至っては一瞬にして文字通り消し飛ばされてしまった。
魔王は俺が影になって見えなかったらしく、俺の右足同様に蒸発して消えた。きっと痛みを感じる間もなかっただろう。
『ぐっ…!ゆ、勇者…お前一体何を………!?』
『チッ!死ななかったか。いや、その方がお前の苦しむ姿が長く見られるからいいか』
この場には勇者と俺の他に、魔術師と治癒術師の女がいたが、二人に驚きの表情はない。…まさか、こうなる事を知っていたのか…?
『随分と無様な格好ね』
『ええ、今までで一番滑稽で…戦闘中に笑いを堪えるのに苦労しましたよ』
悪い予感は見事に的中。つまりコイツらははじめから…
『結託、して…嵌めたのか…!!』
『ピンポンピンポ〜ン!だ〜いせ〜か〜い!ご褒美に俺が刺してやろうか〜?』
ニヤニヤと俺を見下す勇者パーティの3人からは、先程までの英雄のような雰囲気は微塵も感じられなかった。
『そもそも、はじめっから全部自作自演なのよ』
『ええ。魔王だって裏では勇者様や王国の重鎮達が操っていたのですからね』
絶句。
それ以外の反応が取れなかった。
自作自演?なんだよそれ。じゃあ、そんなクソのために苦しめられていたのかよ…!命を落としたヤツだっていたんだぞ!
視界が溢れ出した涙で歪む。しかし、そこで俺は一つの魔法を使った。
ボンッ!
『なっ!』
王都へ行けば、なんとかなるかも知れない。俺は逃走の一手を取った。このままではきっと、魔王の代わりに勇者が悪逆の限りを尽くすだけだ。そうなる前に、王国に、王都にこの情報を…!
『チッ。うまいこと爆発の魔法を使ってにげやがったか。だが、まぁいいか』
『そうそう。どうせ王都へ行けても、誰もアイツなんかの話を聞くやつなんていないでしょうし。それに―――』
『あの人に待っているのはさらなる絶望でしょうね。今からあの顔が歪む姿を見るのが楽しみです』
そんな勇者達の声は、王都へ必死になって向かう俺の耳には届かなかった。
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