968.絶望との再会
※加筆修正を行いました。
セルバスが戦闘態勢の準備を行い始めた頃、そのセルバスのオーラによって、生じる魔力の増幅をソフィ達も感じ取っていた。
「どうやら俺達と戦うつもりらしいな。完全に隠れるつもりは無くなったらしい」
そう言ってヌーは笑みを浮かべながら、横に居るソフィを見る。
「お主が先程から魔力を隠そうともせずに居るからだろう」
ソフィはこちらに視線を向けて来るヌーの顔を見て溜息を吐いた。
ここに来るまではソフィもヌーも魔力値コントロールを使って能力を隠していたが、ヌーが急に隠すつもりを失くしたようで、魔力を隠さずに通常通りに動き始めた為に相手にバレたようであった。
「俺達は天下の『アレルバレル』の世界でトップ争いを行ってきた魔族だぞ。そこらの雑魚共のように、コソコソ隠れるなんざやっていられるかよ」
鋭利な歯を見せつけながら『最恐』の大魔王は『最強』の大魔王に説き始める。
この世界のエイジやあらゆる自分より強き者の存在に、お前は取るに足らない存在だと言われ続けたヌーだが、それでも屈する事無く、これまで通りの態度を無理なく取り続けられている。
このぶれない態度を見せる男こそが、大魔王ヌーの本髄なのだろう。何処まで行っても彼は変わる様子は無い。
「クックック、お主らしいと言えばお主らしい事よ」
そしてそのヌーの邪悪な笑みを見たソフィもまた、色々と『煌鴟梟』の捜査や尾行についての作戦に対して思惑はあったようだが、ヌーという魔族の本質を再びその目で確認出来た事で、安堵という様子で片目を閉じながら笑みを浮かべるのであった。
「――」(まぁ、馬鹿なこいつらしいよね)
そしてそんなヌーだからこそ契約を交わした死神テアも憎まれ口を叩きながらではあるが、嬉しそうな笑みを浮かべている。こうなってしまった以上は、おとりの捜査という意味では破綻するが、ソフィやヌーは『魔瞳』が使える為に、このまま戦う事を選択しても最悪の場合でも『金色の目』を使って操り、アジトへ案内させる事も出来る為『煌鴟梟』の居る場所を、探し当てることは出来るだろう。
この世界に来て初めての魔族との戦闘にソフィは、俄かに期待を込めるのであった。そして力を開放しているセルバスの魔力を頼りに、ソフィ達は遂に彼の元に辿り着くのであった。
……
……
……
ソフィ達がこの場所へ来る少し前、セルバスは先に『魔力探知』で尾行を行っている者達を見つけたが、その追って来る人数までは分からなかった為に、仕方無く探知したその相手の魔力を先に測っておこうと『魔力感知』を試みる事にするのであった。
(まぁ、万に一つだが、相手が俺よりも強い野郎であったならば『漏出』を使うのは危険だからな『魔力感知』にしておくか)
セルバスはそう心の中で呟いて、先程『魔力探知』で見つけた追手を対象に『魔力感知』を放つのであった。
そして未だに余裕を見せていたセルバスの表情に、遂に異変が生じるのであった。
「なっ!?」
決して『魔力探知』では探る事の出来なかった、尾行している者の魔力の大きさに加えて、この魔力の持ち主である存在が彼のよく知る魔族の物であった事を知る。
――大魔王『ヌー』。
――アレルバレルの世界のNo.2にして『最恐』の大魔王。
(な、何故……、奴がここに居る!? アイツは『ダール』の世界に居るんじゃなかったのか!)
セルバスが狼狽していると、遂にこちらにも追手達の声が聞こえてくる。
「さて、この世界で出会う初めての魔族だ。お主の復讐の邪魔はせぬが、少しくらいは我にも話をさせてもらうぞ」
「ふん、勝手にしろ」
…………
(こ、この声は、ま、ま、まさか!?)
セルバスは相手の顔を確認する前に、直ぐ様自身に『隠幕』を使い始める。もはやそこまでの距離は無い為、やり過ごす事は不可能といえるが、それでも彼はこの場に近寄って来る『二体』の魔族の存在を理解して、何とかして『世界間移動』を行う為の時間を稼ごうと動き始めたのであった。
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