967.誤った判断と選択
※加筆修正を行いました。
運命の悪戯というべきか『煌鴟梟』に入り込む事を選んだ時点で彼は運が無かったと言わざるを得ないが、だがまだこの時に捕らえられていた男を見捨てて『煌鴟梟』という組織をも捨てて彼だけでも『隠幕』を使ってやりすごす道を選んでいれば、彼はソフィやヌーと会わずに、この世界で無事に本体の体力を戻すまで好き勝手に生きていられる可能性もあったかもしれない。
そして彼の判断ミスの要因は慢心も大きな要素ではあったが、それ以上に先程大きな魔力を感じた時に使った魔法が『魔力探知』だった事も失敗であった。
『漏出』に『魔力探知』や『魔力感知』は近くに他者がいるかどうかを判断する時に使う魔法として重宝する魔法ではあるが、相手が自分より魔力が高い場合は『漏出』を使う事は危険性が生じる。
そういった場合に使われるのがこれら『魔力探知』と『魔力感知』である。この二つの魔法は『漏出』とは違い、相手の明確な魔力の数値を出すわけでは無い為、近くに何かが居るかを確かめるという意味では非常に扱いやすい。
『魔力探知』と『魔力感知』にはあまり差異は無く、使う魔力の消費量もほとんど変わらない。
――では、この二つの魔法の明確な違いは何かというと『魔力探知』は、魔力を持つ者達の魔力の奔流をある程度測る事が出来る。
つまりは探知した相手の魔力を探る事に特化しているといえる。
(※例 相手の魔力の流れを掴み、今魔法を発動しようとしているのかどうかをある程度判断が出来る)。
『漏出』を使うのは危ないが、それでも対象が魔法を使おうとしているかを側面的な部分から情報を得る時には、魔力探知の方が重宝すると言う事である。
『魔力感知』は魔力探知と同様に相手の魔力を察知する事が出来るが、今その察知した相手が魔法を使おうと魔力を使おうとしているかどうかまでは詳細を得ることは出来ない。
では『魔力感知』を選ぶ利点は何かといえば、こちらもまた『漏出』と似たような恩恵に預かる事が出来る点なのだが、魔力感知で測る対象相手の魔力が、自分の知っている魔力であるかどうかそれを魔力感知で判断出来るのである。
『魔力探知』は、相手の魔力の奔流や居場所を探る事が出来て『魔力感知』は、探る相手の魔力が自身の知っている相手かを見極められる。
どちらも違う側面からではあるが、相手の居場所を魔力で判断出来る。そしてどちらも同じ魔力量、魔力位階である為に『漏出』を選べない選択肢の場合は、この二つは詠唱者の好みである程度、使う魔法を選ぶ事が出来るのである。
だが、今回に関していえばセルバスは『魔力探知』では無く『魔力感知』を使っていれば、この段階でこの魔力の種類を……。彼のよく知る魔族、大魔王ヌーであった事に気づけた事であろう。これこそがセルバスが判断を誤ったといわざるを得ない二つの要因であった。
「さぁて、先程の魔力の位置からの進み具合からすると、あともう僅かでここに来る頃だろうな」
戦う事を選んだセルバスは『煌鴟梟』の男を操ったまま、先にミヤジやボスたちが居るアジトへと向かわせて追手達を処理する為にその場に残る。
彼はまだ『代替身体』に馴染んでいない為、本体と『代替身体』の魔力の違いの調整を行い始める。
『オーラ』や『魔瞳』の使用には、本体とそこまで差異は感じられなかった。後は戦闘で使う配分の魔力の使用量を測らなければならないであろう。
極大魔法一つとっても、本体よりも魔力は少なくなっている為に、バカスカ好き勝手に魔法を打ち続ける事は出来ない。そして詠唱無しで発動していた魔法の威力では、ここに来るであろう大魔王相手に、通じるか分からない為に、超越や最上位規模の魔法で相手の動きを止める必要性を測る。
やるべき事を脳内でシミュレーションを行いながら、この場に来る大魔王達を待つセルバスであった。
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