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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
旅籠編

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941.殺意を滲ませる男

※加筆修正を行いました。

 ソフィから事情を聞いたコウゾウだったが、報告にあった内容と違い過ぎた為にどうするかと考え始めるのだった。


 今、この宿の地下にはテアを襲おうとした者達が居る。この町でご法度の喧嘩を行ったとして、一応捕まえてはいるが、そこまで重罪というワケでは無い為に、怪我の治療とある程度彼らにも話を聞いた後は釈放しようとコウゾウは思っていた。


 しかしソフィ達から聞いた事情ではこれは単なる喧嘩では無く人攫いの犯行である。

 もし彼らの証言が真実なのであれば、このまま解放させる訳には行かない。


 だが、この報告をしてきた者は、()()()()()()()()()であった。それも彼らが泊まっている『宿()()()()』である。


「おい、誰か!」


「はいっ! どうされましたか隊長!」


 何を考えるように俯いていたコウゾウだったが、突然大声をあげて他の部屋に居る者を呼ぶと、直ぐに今居る小部屋に向かって、数人の護衛隊員が入り込んできた。


「俺は少し地下へ行く。お前達には悪いが彼らの応対を頼む」


「はっ! 分かりました!」


 コウゾウは部下の返事に頷きを見せた後、ソフィ達に視線を向ける。


「すまないが、俺が戻るまでここで待っていて欲しい。お前達を会わせるわけにはいかなそうだからな」


 コウゾウは部屋の隅に居るヌーを一瞥した後、ソフィ達にそう説明をするのであった。どうやらこのコウゾウという男にも今のヌーの目に見えぬ殺意を感じ取っていたようである。


 ソフィもエイジも理解を示して頷くと、コウゾウはその場から立ち上がった。


「いいか? 彼らは報告にあったような者達じゃない。丁重にもてなせとまでは言わんが、不自由無くしてもらってくれ」


「分かりました、コウゾウ隊長!」


 どうやらソフィ達の事情をある程度信じてくれたのだろう。地下に居る連中よりは、ソフィ達を信用してくれたようである。勝手に帰るような真似をしなければ、悪いようにはならないだろう。


「では、よろしく頼んだ」


 コウゾウはそう言い残して、部屋を出て行こうとする。そこでコウゾウは何かを感じたのか、部屋の襖を開ける直前。近くに居るヌーを一瞥する。


「……」


「……」


 ヌーはコウゾウに視線を向けられたが、そちらを無視して目の前の畳を見続けている。


「気のせいか」


 コウゾウはそう告げると、後ろ手に襖を閉めて地下へ向かっていった。その場にはソフィ達とコウゾウに言いつけられた『予備群』の護衛が二人残された。


 一人は女性の隊員で、もう一人は男の隊員であった。


「何かお飲みになられますか?」


「ああ、それじゃ悪いが、お茶を人数分頼むよ」


 気を利かせてくれた女性の隊員に、エイジがそう告げると、笑顔で頷いて隊員達はお茶を淹れに行った。


 護衛達が部屋を出ていったあと、それまで不気味な程に静かだったヌーが顔をあげた。

 決意を漲らせたその表情は、これから何を行おうとしているのか、火を見るより明らかだった。


「ヌー殿。何をやろうとしているか分からぬが、殺気が漏れ出ておるぞ。気持ちは分かるが今は堪えるのだ」


 ――否。エイジの『()()()()()()()』は、あくまでも一般常識での言葉であり、ヌーの今の気持ちは理解出来てはいない。


 ヌーはエイジの言葉を無視して、そのまま襖に手を掛けて外へ出て行こうとする。


 彼はテアが襲われたと聞かされてから態度が急変した。つまりは、これから()()()()()()()()()()()()()


 その事を分かっているテアは、慌ててソフィの顔を見る。どうやら自分の所為でヌーがどういう行動に出るかを察したテアは、自分の為に怒ってくれたであろうヌーに嬉しさも感じたが、それ以上に事が大きくなりすぎてしまい、ソフィを怒らせたらどうしようと、そこまで考えて止めようかどうしようか悩んだ末にソフィを見たようである。


「待て、ヌーよ」


「……」


 そのまま出て行こうとしていたヌーだが、流石にソフィに声を掛けられた事で、襖を開ける手を止めた。


「止めるなよソフィ、お前であればわかるだろう?」


「当然それは分かっておる。だが、事情がもう少し分かるまでは待てぬか?」


 ヌーにとっては真相がどうであれ、自分が相棒と認めた死神貴族。そのテアが襲われていたと言うのに自分は酒を飲んでいて気づかなかった。タッグを組むと決めたというのに、これ程に情けない事は無いだろう。


 ソフィが一緒に居てテアを襲った連中がただの人攫いの屑だった為、今回は事なきを得たが、これがもしソフィも一緒に酒を飲んでいて、宿にテアが一人で待っていて、そこにヒュウガとかいう『妖魔召士(ようましょうし)』が、差し向けた追手であったならば下手をすれば、テアはやられていたかもしれない。


 ヌーは現在この宿の地下に居る者達に苛立っているというよりは、自分の覚悟の甘さに対して苛立っている様子である。あくまで地下に居る連中に、これから行おうとする事はヌーの八つ当たりに過ぎない。


「藪を突いて見れば、想像の埒外に居るような、蛇が飛び出すかもしれぬぞ?」


 ヌーはその言葉でようやく動きを完全に止めた。

 このままテアを襲おうとした者達を屠ったところで真相は闇の中であり、肝心な事はこれが偶然に起きた事なのか、それとも誰かの指図で動いていたかである。


「どうでもいいような連中であれば、お主の好きにすればよい。だが、面倒な連中が背後に居るのであれば、突きとめておくことが大事だ」


 ソフィは別にヌーが手を出す事に関しては、止めるつもりは無い。彼もまた仲間が傷つけられるような真似をすれば、()()()()()()()()()()()()である。


 しかし今はヒュウガやその追手に、狙われているかもしれないという状況であり、事件と関係性があるのかどうか、それを確かめる必要性があるとソフィは判断する。


「だったら、それを確かめに行くぞ。癪だがてめぇの言葉は一理あるからな」


「クックック、やけに物分かりがいいではないか」


 そう言うとソフィも立ち上がった。エイジやテアは話の流れについて行けず、ソフィもまた一緒に地下へ向かおうとし始めるのをみて、その様子を見つめるだけしか出来なかった。


「俺はあくまで『天衣無縫(エヴィ)』を見つけるのを手伝うだけだ。それ以外の事に関しては俺の好きにさせてもらう。構わないな、ソフィ?」


「うむ。構わぬよ。奴らが何も関係がなければ好きにするがよい」


「よし。言質はとったぞ。後から文句だけは言うなよ」


 二人は互いの顔を見ながら頷き合い、そして笑みを浮かべた後、ヌーは襖を開けてコウゾウの後を追いかけるのだった。


 そしてソフィがその後をついて行こうとした為に、慌ててエイジとテアもその後ろをついて行く。


 目指すは真相を知る人攫いの疑いがある者達の居る場所――。


 ――この護衛隊の屯所の地下であった。


 ……

 ……

 ……

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