927.突然の襲撃者
※加筆修正を行いました。
「何だ？ 女以外にも誰かいるぞ」
「構わねぇ、一緒に攫っちまってから殺せばいい」
突然ソフィ達の部屋に入ってきた複数の男たちは、各々が好き勝手を言いながら光物を抜いた。
彼らが見ているのはソフィではなくテアの方だった為テアの方だった為、やはりヒュウガの手の者ではないようだった。
しかしそれならば彼らは一体何なのだろうかという疑問が残るが、自分達の泊まる部屋に土足で上がり込んで襲ってきた以上は、ソフィ達もこのまま黙っているわけには行かない。
「お主が何を考えて襲ってきたかは知らぬが、そんなものを抜いた以上はもう冗談ではすまさぬぞ？」
テアを襲おうとしていた男たちは、ソフィが突然そんな事を言い出した為、笑みを浮かべながら吹き出した。
「おいおい、状況を理解してねぇのか？ 生かしてほしけりゃ黙ってその場で怯えていろ」
襲ってきた男の一人がそう言うと、取り巻き達も大笑いを始めた。
ソフィは魔力をあまり感じられない男たちに、一応は力を隠しているかもしれないと判断して『漏出』を放つが、彼らの戦力値はここに来るまでに出会った人間達の誰よりも数値が低かった。
この世界に降り立った時に『加護の森』で襲ってきた退魔組の狐面を付けた者達よりも、遥かに劣っている。
ヒュウガの手の者ではないだろうと、男たちが部屋に入ってくる前から薄々は感じていたソフィだったが、テアに手を出そうとするところを見ると単なる強盗や人攫いの類なのだろう。
「うーむ『魔瞳』で大人しくさせて、エイジの言っていた町の治安を守る者達に引き渡すとしようか」
そう言ってソフィが、目を金色にした瞬間であった。
「――」（勝手に私に触ろうとしてんじゃねぇ！！）
しかし次の瞬間、襲ってきた男の一人が部屋の窓を突き破って、外に放り出されてしまった。
テアは自分の胸を弄ろうとしてきた男たちに我慢ならなかったのか、ソフィが魔瞳を使おうと考える前に襲ってきた男たちに手を出してしまうのだった。
「なっ！？」
後に続こうとしていた襲撃者たちは、テアに首を掴まれてそのまま外へ投げ出されたのを見て驚いて立ち止まった瞬間、ソフィの『金色の目』で足を縛られるが、そんなものは関係がないとばかりに、テアが次々と男たちを掴んで外へ投げ飛ばしていく。
「――！！」（気持ち悪いんだよぉ！！）
バリーン、バリーンと、次から次に窓を突き破って二階の部屋から男たちは外へ投げ出されていく。
「……」
目を金色にさせながらソフィは、再び自分とテア以外誰も居なくなった部屋で茫然と、テアを見つめるのだった。
ソフィの視線に気づいたテアはようやく我に返ったらしく、顔を赤くしてソフィに視線を返すのだった。
「――」（す、すみません、つい……）
自分を見ているソフィが勝手に手を出した事を咎めようとしていると、そう勘違いしたテアは慌てて頭を下げるのだった。
言葉は分からないが、頭を下げるテアを見てソフィは察する。
「いや、謝らなくともよいのだがな……」
まさかここまで取り乱すとは思わなかったソフィは、テアの変貌振りに少しばかり驚いた様子だったが、直ぐに外の喧騒を耳にしたソフィ達は、風通しの良くなった窓から外を見下ろすのだった。
「何事だー！」
「この町で喧嘩は法度だ、暴れている奴らはどこだ！」
どうやらエイジの言っていたこの旅籠の護衛達なのだろう。
ケイノトの退魔組のような組織の連中が、町で喧嘩をしている者達が居ると勘違いをして旅籠の前に外に集まってきていた。
「あの宿の二階を見ろ！ 窓が割れている！！ あそこから投げられたようだぞ、いくぞ！」
「全員、ひっ捕らえろ！！」
「……」
「――」（や、やべぇ！！）
自分達の宿の前に剣士の恰好をした者達が続々と集まってきているのを見て、旅籠の自分達の部屋でソフィとテアは顔を見合わせるのだった。
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