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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
旅籠編

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923.魔神の威圧

※加筆修正を行いました。

 力の魔神を呼び出したソフィは、こちらを見て微笑んでいる魔神に口を開いた。


「突然呼び出してすまぬな。しかしお主でなければどうする事も出来ぬのでな、悪いが呼ばせてもらった」


 ソフィがそう言うと『魔神』は慌てて首を横に振った。むしろソフィに頼ってもらえたことが相当に嬉しかったようで、上機嫌で何でも言ってくれとばかりに微笑んでいる。


「それでは少し、お主にテアとの通訳を頼みたい」


 そう言ってソフィが目を丸くして驚いているテアの方を見ると、そこでようやく力の魔神は、死神のテアの存在に気づいたのだろう。魔神は死神のテアを見た瞬間、恐ろしい程の威圧をテアに向けた。


「――!?」(ひゅぎ!?)


 テアは死神としても相当に神格が高い死神貴族なのだが、神位そのものが違いすぎる『魔神』の威圧をその身に受けて、奇妙な声をあげながら震え始めた。


「魔神よ、その威圧をテアに向けるのをやめるのだ。これではまともに会話も出来ぬ」


 テアを睨み続ける魔神にソフィが注意をすると、慌てて魔神はテアに放っていた威圧を解除する。


「――」(死神がどうしてここに居るのかは分かりませんが、貴方、この方に迷惑をかけていないでしょうね?)


 威圧を放つのをやめたとはいっても、高圧的な態度でテアに話しかける魔神。


「――」(と、とんでもないです! いつもよくしてもらっています!)


「――」(いつもよくしてもらっている……? 一体何をしてもらっているというのかしら!!)


「――」(ひぃぃっ!!)


「威圧をやめろと言っているのだ、お主、我の話を聞いておるのか?」


「――」(ごめんなさい、つい……)


 魔神はソフィに失望されては困るとばかりに慌てて謝ると、そこからは大人しくなるのだった。


 しかしもう時は遅かったというべきか、魔神が大人しくなる頃には、テアはトラウマを植え付けられたようでガクガクと震えながら、まるで死刑宣告を待つかの如く、その場で正座して魔神とソフィの顔をちらちらと覗くのだった。


 ソフィはその様子にヌーに聞かせたくない事をテアと話そうとしていたのだが、違う意味でこの場にヌーが居なくてよかったと思い始めるのだった。


 もしこの場にヌーが居れば、テアを相当気に入っているヌーは魔神と殺し合いを始めるかもしれない。半ば冗談でそんな事を考えたソフィだったが、ケイノトの町でのヌーとテアの様子を思い出して、冗談が冗談でなくなる可能性もあるなと、そう考えるのであった。


 ソフィはそこまで考えて、急いで話をした方がいいと口を開き始めた。


「まず、我はこの死神のテアに頼みたい事があるのだが『念話(テレパシー)』をしようとしても神々である死神と波長を合わせる事は難しい。そしてテアもまた我の言葉が分からない状態でな、このままではどうすることも出来ぬ為に、同じ神であるお主を通せばテアと話が出来ると思いここに呼んだのだ。ここまでは分かったか?」


 ソフィが一から説明をすると、魔神はこくりと首を縦に振った。テアはまだソフィが何を言っているのかを教えてもらっていない為に、どんな話が交わされているのかと、ドキドキしながら待っている。


「――」(この死神に、貴方の言葉を伝えればいいのね?)


「うむ。そう言う事だが、頼めるか?」


「――」(もちろんよ、何を伝えればいいの?)


「まずはテアにヌーの事を聞いておきたい。お主はヌーと契約を交わしておるらしいが、何処までの範囲でヌーを守るつもりなのかを……だな」


「――」


 ソフィの内容をそのままそっくりと、テアに伝える魔神。突然自分に話しかけてきた魔神に、テアは驚くが直ぐに耳を傾ける。


 互いに神格を持つ神々だが、そもそもの神位に差がある為に魔神からこうして直接話をされる事に、死神のテアは緊張していた。そしてソフィの言葉を通訳されたテアは、内容をじっくりと考える。


(ソフィさんはあいつの事を心配されているのか。正直に言って、契約自体の話で言えば、アイツの魔力の供給分の働きはもうし終えているから、本来であれば直ぐに帰っても問題はないんだよなぁ……)


 ――そうなのである。


 元々『死司降臨アドヴェント・デストート』で呼び出された死神は、魔力供給分の契約に従って手を貸すのだが、そもそもは最初の加護の森での戦闘を終えた段階で幽世へと帰る死神も居るくらいである。


 最初はテアもここまで長くは一緒に居るつもりはなかった。


 久しぶりの現世(うつしよ)で気分が良かった事に加えて、呼び出してきたヌーとはダールの世界で一度見ていた事もあり、あの時は敵であったヌーが契約主だという事で面白そうだとテアは考えて、少しだけ付き合ってやろうという気持ちでケイノトまでついてきたのだった。


 だが、ケイノトの町についた時点では、町を出る頃には幽世(かくりよ)へと帰ろうと考えていたテアだったのだが、ヌーにご飯を奢ってもらった時に居心地がいいなと思い始めて、その後一緒に行動している内にヌーを少しずつ気に入り始めていった。


 気が付けば町を出た後、更には里まで一緒について行って、そしてこの町に来た今でもまだ一緒にいたいなと思っている自分が居た。


 こんなに長く契約を共にした奴は過去には居なかった。まるで幽世(かくりよ)の世界に居る同胞達と一緒に居るような安心感が、ヌーの元にはあったようである。


(何処までの範囲でアイツを守ってやる……か)


 今いちど真剣に考え始めたテアはヌーが何者かと戦い、そこでやられそうになっているところを想像して、何かよく分からないゾワゾワ感が自分の身体を這っている感覚を味わった。


(あいつがやられるところは見たくないな。出来る限りは何とかしてやりてぇ……)


 結論に至ったテアは、何て言う風に伝えたらいいだろうとばかりに、魔神とソフィの両者の顔を見ながら悩み始めるのだった。

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