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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
ケイノト編

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915/2251

900.さらば、ケイノト

※加筆修正を行いました。

 加護の森に向かっていったイバキ達を見届けた後、ソフィはエイジの長屋に戻り、明日に備えて休む事にした。


 エヴィと一悶着あったという『ゲンロク』とやらの居る里に、エイジが案内してくれるという事になったのである。


 そして今朝方ソフィは、エイジの長屋で目を覚ました。


 全員が長屋の一室の畳の上で雑魚寝している為に少し狭かったが、それでも十分に足を伸ばして寝る事が出来た。


「ちっ、ようやく目を覚ましやがったか……」


 ソフィが声を掛けられた方を見ると、既に目を覚ましていたヌーが片膝立てながら壁にもたれ掛かってこっちを見ていた。


 テアやゲイン、それにエイジもまだ、寝息を立てて眠っているようだった。


「うむ。まだ外は薄暗いようだな。あれからどれくらい経ったのだ?」


「ああ。四時間程といったところだな。ここから『加護の森』に向かったら連中は、まだ帰ってきていねぇな」


 それはイバキ達の事を言っているのだろう。ソフィが外で見届けていたイバキ達をヌーもまた魔力で様子を窺っていたようであった。


 ヌーはソフィにどうするんだ? と視線で訴えてくる。


 どうやらイバキと親しくしていたのを顧みて、ソフィが『加護の森』へ向かうかもしれないと判断したようであった。


「そちらも気になるところではあるが、我達は最初の予定通り、ゲンロクとやらの居る場所を案内してもらうつもりだ」


 ソフィがそう言うのを聞いて、ヌーは軽く縦に首を振った。


「そうか。しかしあれだな、この世界の人間も侮れやしねぇな。逐一『天衣無縫(エヴィ)』の奴の魔力を探知しようとしていたが、至る所に結界が施されていて満足に探れやしねぇ」


「ほう……。お主もエヴィを探してくれていたのだな」


 これは予想外だったとソフィは少し嬉しそうにそう口にすると、ヌーは舌打ちをするのだった。


「単にこの世界の人間共が、どれだけヤルのかを確かめていただけだ」


 不機嫌そうにそう言うと、話は終わりだとばかりに、再び横になって顔を背けるヌーであった。


「クックック」


 暗い部屋の中、ソフィは静かに笑うのであった。


 ……

 ……

 ……


 それから数時間後の日が完全に昇りきった朝、ソフィ達は『退魔組』を創設した『ゲンロク』という『妖魔召士(ようましょうし)』の居る里へ向かう為に準備を始める。


 朝早くから自分の長屋の戸を修理していたシュウだったが、こうして出発前になるとエイジの長屋にシュウが顔を見せに来ていた。


「どうやら昨晩の討伐隊の派遣の後、退魔組に退魔士の幹部連中が顔を出したらしい。また何か分かったらエイちゃんに『式』を飛ばして伝えるよ」


「ああ、それと息子(ゲイン)の事も頼む」


「分かってるエイちゃん。ゲインの事は俺達に任せてくれ」


 そう言ってシュウは、エイジの息子の『ゲイン』の頭を撫でる。エイジはシュウを信頼して、留守中を任せるようであった。


「それじゃあ、いい子にしているんだぞ?」


 エイジがゲインにそう告げるとコクリと頷いた後に、ソフィ達に視線を向けて来る。


 ソフィもゲインの頭を撫でると、嬉しそうに笑みをソフィに見せる。


 どうやらゲインは父の味方をしてくれたソフィを相当に気に入っている様子であった。


「では、行くとしようか」


 ゲインを撫でていたソフィが、ゆっくりと立ち上がってそう言うと、一同も頷きを見せるのだった。


 ゲインはソフィ達が見えなくなるまで手を振って、ソフィ達を見送ってくれるのであった。


 ……

 ……

 ……


 この町に来た時と同じように門人達の前に姿を見せたソフィ達だったが、今回はエイジが町を出る手配を全て引き受けてくれた為『金色の目(ゴールド・アイ)』を使ったり、誤魔化すような真似はせずに無事に門の外へと出る事が出来るのであった。


 …………


 ――こうして『ノックス』の世界に来たソフィ達は、最初に辿り着いた『ケイノト』の町を後にして『ゲンロク』という妖魔召士達の長の居る里へと、歩を進め始めるのだった。

※今回が11章の中の一つの区切りの回となります。


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