表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
ケイノト編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

913/2237

898.煽りの劉鷺

※加筆修正を行いました。

 突如として現れた、背中に羽を生やした人型の存在は、退魔組の退魔士である『イバキ』を抱き抱えて逃亡を続けている。


 イダラマ一派最大の護衛剣士である『アコウ』と『ウガマ』。彼らは敵方の『スー』を倒した後、逃亡する二人を追いかけて森の中を駆け走っていた。


「中々に距離を詰められんな……」


 大男の『ウガマ』がそう言うと、並走している『アコウ』から返答があった。


「人を一人運んだ状態で俺達から逃げ遂せているのは大したものだが、そろそろこの展開は飽きたな」


 サカダイが管理する森の中を長い間走り続けている二人だが、全くスタミナが落ちておらず、会話を行う程の余裕を見せている。


「もうすぐ森を抜けてしまう。奴らの目的は『加護の森』へと誘い込んで『ケイノト』の連中に『結界』を通じて俺達の事を知らせようとしているのだろう」


「どうする? イダラマ様が何もしなかったという事は、このまま取り逃がしても問題はないと判断されたからだと思うが」


 劉鷺(りゅうさぎ)たちが走り去った後、直ぐに追尾を開始した二人だったが、イダラマの思惑は理解しているようであった。


「まぁ、このまま逃がしてやってもいいんだがよ」


 そう言いながらも長いピアスを耳につけた男『アコウ』は、腰鞘から刀を引き抜いた。


「イダラマ様の古参護衛が二人揃って追いかけてむざむざと逃したとあったら、他の奴らに示しがつかねぇだろう?」


 そう言って走りながらアコウは刀に力を込め始める。


「うむ、正にお主の言う通りだな」


「へっ、ようやく気が合ったじゃないのよ」


 並走しながら二人は笑みを浮かべ合う。


「いいか? 俺が仕掛けるから貴様は、奴の態勢が崩れたところを狙え!」


「合点承知!」


 ウガマからの返事を受け取った後、アコウはその場で立ち止まり、目を瞑って精神を統一させる。


 その間にも並走をしていたウガマは、その先を行く劉鷺(りゅうさぎ)たちを追いかけて行く。


 一人その場に取り残されたアコウだったが、一切の意識を断ち切るかの如く、自分の刀以外に意識を向けない。


 ――やがてアコウは目を見開き、手にかけていた刀を前方へと振り切った。


 アコウの放ち切った衝撃波はあっさりと、自分を置いて前へ向かっていったウガマを追い抜き、恐るべき剣圧を以て、その更に前方に居る劉鷺(りゅうさぎ)たちの元へ向かっていく。


 後ろを振り向かなくても『劉鷺(りゅうさぎ)』は迫りくる敵の一撃を察知する。


 イバキは『解放の行(かいほうぎょう)』を行ってくれている最中だったが、間に合うかどうかは微妙である。


 必死に『劉鷺(りゅうさぎ)』は脚に力を入れて走りながら、空へ跳躍する為に背中の羽を羽搏かせ始める。


「律」


 真後ろというところまでアコウの放った衝撃波が迫った瞬間。イバキは『解放の行(かいほうぎょう)』の詠唱を終えて『劉鷺(りゅうさぎ)』との『式』が解除された。


 ――この瞬間。本来の妖魔としての劉鷺はその力を取り戻した。


「主殿、しっかり捕まってろよ!」


 『式』であった頃の劉鷺(りゅうさぎ)と、本来の妖魔に戻った劉鷺(りゅうさぎ)。同じランク『3』である以上、そこまで大きく力が変わったわけではない。


 しかし僅かに『式』であった頃より、微々たる差ではあるが今の方が力がある。だが、その微々たる差が結果を変える。


「逃すかっ! とった!!」


 羽を使って空へと飛翔してみせた劉鷺(りゅうさぎ)の元に、大男『ウガマ』が、劉鷺(りゅうさぎ)の脚を掴もうと迫ってきていた。


劉鷺(りゅうさぎ)!!」


 両腕に抱き抱えられていたイバキが、背後から跳躍してきたウガマを見て大声をあげる。


「分かっているさ、主殿」


 羽を使って空中に浮いている状態でくるりと体を一回転させながら、自分の足を掴もうと手を出してきていたウガマの顔を劉鷺(りゅうさぎ)は、思いきり足蹴にしながら衝撃波を躱す。


「うぎっ!」


 そして反動を利用して更に高く飛び上がって見せる。


「ふははははっ! 人間、()()()()()()()()!」


 鼻血を出しながら地面へと落されていくウガマに煽り散らかすようにそう告げた後、翼をバサバサとはためかせて、一気に鷺の妖魔『劉鷺(りゅうさぎ)』はその特性を生かすように、天空を駆け抜けて森から恐るべき勢いで離脱していった。


「ぐ、ぐぅううっっ!!」


 まるで猫のように空中で体を器用に回転させて地面に着地をした大男の『ウガマ』は、もう見えなくなった空を仰ぎ見て、体よく自分の身体を利用されて逃げられた事に気づき、悔しそうに呻いた。


 そしてようやくウガマに追いついたアコウは、悔しそうにしているウガマに声を掛けた。


「あーあ。してやられたな。おい……! もう追いつけねぇんだ、さっさと頭を切り替えろ」


「うるせぇっ! あの野郎は次にあったら……! 俺が殺す!」


 普段であれば逆の立場であり、キレやすいアコウをウガマが宥める間柄だったが、今回ばかりは空を睨み続けて悔しそうにするウガマを逆にアコウが落ち着かせるのだった。

『ブックマークの登録』や『いいね』また、ページの一番下から『評価点』を付けていただけると作者のモチベーションが上がります。宜しければお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ