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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
ノックス編

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803.ミカゲの式、擬鵺

※加筆修正を行いました。

 ミカゲと呼ばれていた男は驚きの表情を浮かべていたが、やるべき事を思い出したように、かぶりを振った後『式』の札を空に放り投げる。


 ひらひらと舞いあがる札は、ボンッという音を立てて、一体の妖魔が使役されるのだった。


 使役された妖魔の見た目は変わっており、あらゆる動物が組み合わさったような体つきをしていた。それは猿のような顔をしているがタヌキのような胴体をしており、手足は虎のようであり、尻尾は狐のようである。


 ひょう、ひょうという鳴き声をあげるその生物は、地に四肢をつけて御影を守るように立ちながら、オーラに包まれているソフィを見て舌なめずりをする。どうやらその生物はソフィの事を()()と認めたようであった。


「『擬鵺ぎぬえ』よ、油断をするな。お前がやるべきことは、私に時間を稼がせる事だ」


「……」


擬鵺(ぎぬえ)』と呼ばれたその生物は、ミカゲの言葉に頷くように首を動かす。そしてミカゲは、擬鵺の他にも『式』を使役する。


 その多くが鳥の類の『式』だった。


 空に放たれた式達はどうやら戦闘に参加する様子はなく『ミカゲ』の命令を待っている。


「お前達は『屯所』に居る同志達にこの事を伝えて直ぐに、ここ『加護の森』へ向かわせろ」


 命令を受け取った『式』達は、一斉にこの場から離れて飛び立っていく。その様子を見ていたヌーは、ソフィにどうするかと視線で尋ねる。


「我達の目的はあくまで『エヴィ』だ。仲間を呼んでもらった方が、知る者が増える可能性がある」


 ソフィの言葉にヌーは頷き、静かに『スタック』していた魔力を閉じる。この場に居るヌーやソフィであれば『式』が仲間達を呼びに行く前に、一匹残らず魔法で落とす事が可能である。


擬鵺(ぎぬえ)』を使役した男が左手を挙げると、結界の魔力が消えるのをソフィ達は感知する。どうやら『式』をこの場から離れさせる為に、男は『結界』を解いたのだろう。


「お主に聞いておきたいのだが、何を目的として我らに絡んで来ておるのだ?」


「しらばっくれるな、悪しき妖魔たちよ! それ程の力を持っておる者が、この森で何を企んでいた! 貴様ら妖魔達の主である『()()()()()()()()か?」


「いったい何を言っていやがるんだコイツは……」


 どうやら彼らは勘違いをしているらしく、ソフィ達を彼らの国を襲った妖魔達の一味だと思い込んでいるらしい。


「何を勘違いしておるのか分からぬが、我はこの世界に跳ばされた仲間を探しに来ておっただけだ。別にお主らと争うつもりはないぞ?」


「ええいっ! そんな誤魔化しが通用する程、我ら『ケイノト』の『退魔組衆(たいまぐみしゅう)』は甘くはないぞ!」


(『退魔組衆(たいまぐみしゅう)』? 魔物を討伐する町の自警団のようなモノか?)


 ソフィがそんな事を考えていると『擬鵺(ぎぬえ)』と呼ばれていた妖魔が四肢に力を入れたかと思うと、ソフィを食い千切ろうと飛び掛かってきた。


 ソフィは『擬鵺(ぎぬえ)』の攻撃を完全に見切り、薄く笑みを浮かべながらその鋭利な前足の爪を躱す。空気の抜けるようなひゅう、ひゅうという音を口に出しながら、攻撃を躱し続けるソフィを追尾しながら攻撃を続ける。


「クックック、確かに重そうな攻撃だな? だが、そんな調子では我には永遠に当てる事は敵わぬぞ」


擬鵺(ぎぬえ)』の繰り出す攻撃の一撃は確かに重く、当たると致命傷となる程の威力はあるのだろう。しかし今のソフィの目には全く脅威に映らなかった。 


「『擬鵺(ぎぬえ)』の速く重い攻撃が全く通用しておらぬ。私ではどうする事も出来ない程、こいつらは格上の妖魔なのか……!」


 ソフィは擬鵺の攻撃を躱し様に、鋭い一撃をカウンターで入れる。


「がぁっ!」


擬鵺(ぎぬえ)』と呼ばれた妖魔はその一撃でフラつき、胴体がブルブルと震え始めたかと思うと、動きが止まった。


「もう終わりか?」


 『擬鵺(ぎぬえ)』の動きが止まったのを確認し、ソフィも動きを止めて『擬鵺(ぎぬえ)』の近くで様子を見る。


「好機! 『擬鵺(ぎぬえ)』よ、あれを使え!」


 ソフィは突然声を出し始めた人間の方を一瞥し、擬鵺から視線を外してしまった。

 

 その次の瞬間、震えて止まっていた擬鵺の目が光り、黒煙を周囲にまき散らしながら、近くに居たソフィの身体を覆い尽くした。傍からはソフィと妖魔の姿が見えなくなった。


「しめたっ……! 『擬鵺(ぎぬえ)』よ、そのまま呪い殺せ!」


 ミカゲの命令が聞こえたかと思うと、黒煙に包まれた中で、ひゅう、ひゅうという声が周囲にも聞こえる程に『擬鵺(ぎぬえ)』の鳴き声が呪詛のように響き渡るのだった。

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