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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
封印式神編

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792/2220

778.先祖の魔力の残滓

※加筆修正を行いました。

 リディアの『支配の目(ドミネーション・アイ)』を見たソフィは、ゆっくりとリディアに近づいていく。


「お主、()()()()()()()()()()()()?」


「レキだ。アイツのところにいた頃にだが、俺には『()()()()()()()()()()』と教えられてな。この『支配の目(ドミネーション・アイ)』を使えるようになれと言われた」


 口では簡単に言うが、使えるようになるまでかなりの苦労があった。それに使えるようになった後も、実戦では僅か数秒程しか使えず、エルシスの元で修行をつけてもらうまでは、全く役に立たないものであった。


支配の目(ドミネーション・アイ)』は魔人の秘術の『魔瞳(まどう)』だが、それを自在に操れるまでには相当の年月を要する。


 リディアが未熟なのではなく、本来は寿命の長い魔人族が数百年、数千年とかけて覚えていくものなのである。レキはリディアにここぞという場面で使う時の為に教えてはくれたが、その後は放ったらかしであった。


 人間は寿命が短く『リディア』が『支配の目(ドミネーション・アイ)』を発症させても自在に扱えるとまでは、レキも思ってはいなかったのだろう。本気で困ったときに戦いの選択肢として持っていればいいという程度のつもりで教えたに違いない。


「その目は『支配の目(ドミネーション・アイ)』というのか」


 ソフィは成程合点が言ったとばかりに、長い溜息を吐くのだった。


「どうした?」


「いや、あやつと戦った後に、我も使えぬかと試したことがあったのだ」


 ソフィがそう言うとリディアは笑った。


「ふっ、そうか。残念だったな。これは先祖に魔人を持つ俺だけの特権だ」


 ソフィの肩に手を置きながらリディアは、少しだけ勝ち誇った顔を浮かべる。そんなソフィとリディアの元へ、タタッと掛けてくる足音が聞こえた。


「ねぇ、今の話ほんとぉ?」


 ――足音の正体はレアであった。


 落ち着かない様子でリディアを見るレアに、ソフィはリディアと視線を交わす。


「残念だが俺の両親は人間だ。先祖とはいっても俺はその存在すら知らなかった。詳しく話せと言われても困るぞ?」


 何やら色々と聞きたそうにしているレアに、最初から釘を打つリディアであった。


「そ、それでもいいわぁ! 少し貴方の魔力を探らせてもらってもいいかしら?」


「探る……? まぁ、勝手にすればいいが」


「ほんとぉ? ありがとねぇ!」


「ほう」


 ソフィは一連のリディアとレアの会話を聞きながら『丸くなったな』と、リディアを見て声を漏らすのだった。


 ミールガルド大陸で初めて会った頃のリディアであれば、こんなにもあっさりと、自分の魔力を探らせる事はなかった。


 常に尖った刃のような殺気を漂わせて斬る事ばかり考えていた。それが今ではこんな風に、レアに頭を触らせている。それがソフィは少し嬉しく、そして感心する。


 やがてリディアの頭に手を置いて魔力を探っていたレアの目から、()()()()()()()()()()()


「貴様、何を泣いていやがる?」


 自分の頭に手を置きながら泣くレアに、流石にリディアも焦ったようだった。


「そう、そうだったのかぁ……! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ちゃんと()()()()()()()()()のねぇ、よかったねぇ……。ラクスちゃん……! ぐすっ」


 リディアの頭に手を置きながら、聞いた事の無い名前を呟き、顔をクシャクシャにして泣き始めるレアであった。


「ラクス?」


 気になったソフィがそう尋ねるが、レアは感慨に耽っており、返事をするでも無く泣き続けるだけだった(※ラクスとは過去のリラリオの世界で『レア』に拾われた魔人の名である。第356話『魔王レアのファーストキス』に登場している)。


「今はそっとしておいた方が良いようだな。ではリディアよ、後を頼んだぞ」


「お、おい! 俺にどうしろというんだ! ソフィ!! おい、お前も待て、ラルフ!!」


 リディアと頭に手を置きながら泣き続ける幼女をその場に残し、ソフィはサイヨウ達の元へと歩いていく。ソフィが歩き出すとラルフも当たり前のようにソフィの後を追っていき、その場には二人だけが残されるのだった。


「ちっ、仕方がない!」


 やがて諦めたのか、リディアはその場にどかっと座り、自分の手に頭を置き続けているレアを見つめるのだった。


 ソフィに丸くなったと思われているリディアだが、それでも自分に触らせる程甘くはない。


 しかしそんなリディアはこの小さな魔族の手に触られていると、どこか安心する事に気づき、振り払うような事はせずにその場に座り、レアが満足するまでされるがままになる事にするようだった。


 そんなリディアの気遣いに気づいているのかいないのか、レアは余程に思う事があるのだろう、ずっとリディアを撫でながら泣いている。


「お前、俺の先祖の知り合いなのか?」


 リディアは溜息を吐きながらもそっと懐から布を取り出して、レアの顔を拭いてやるのだった。

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