777.完全な支配の目
※加筆修正を行いました。
リディアの左目が『紅色』に、そして右目が『金色』に変わる。すると次の瞬間、リディアに斬りかかった『紅羽』の動きがピタリと止まった。
「!?」
ソフィはリディアの両の目が、あのレキの使っていた『支配の目』と同一だと気づく。放った魔瞳の影響で、その周囲一帯の空間が全く別物に変わり、その空間の時をリディアがコントロールをし始める。
リディアの目の前で完全に動きを止められた『紅羽』は、意識だけはしっかりと持っていたが、手足が全くいう事を聞かずにされるがままだった。
「残念だったな」
――『空蝉十字斬り』。
完全に動きを止められた『紅羽』は、リディアの代名詞と呼べる大技を放たれてその身を十字に斬り伏せられるのであった。
「ぐぅっ……! あああっ!!」
怨嗟の声が鬼女の『紅羽』からあがり、まるで断末魔のような叫びが響き渡った後に、ボンッという音と共に『紅羽』は姿が消えて一枚の札に強制的に変わるのであった。
「あれはレキの使っていたのと同じ目か!」
鬼女の『紅羽』が恐ろしい形相で襲い掛かった時、振り返り魔瞳を使った、リディアの様子に、レキのあの目を思い出すソフィであった。
「凄いだろうソフィ? 今やあの目もあの子は、あの瞳を自在にこなせるようになったんだよ」
金色のオーラを纏う事で魔人版の『特異』とも呼べる技能『支配の目』を人間のリディアが完全に使いこなして見せるのであった。
そしてそれは苦しくも魔族の『ミデェール』が『紅い目』によって『特異』を自在に操る事と瓜二つと呼べるのであった。
ソフィはレキにあの目を使われた後、自身がいくら使おうと躍起になっても使う事が出来ず、発動の糸口さえ掴むことは叶わなかった。
しかしそんな『魔瞳』を見事に使いこなして見せたリディアを見て、ソフィは再びリディアに強い期待を持ち、闘争本能が胸に脈打つのを感じる事となった。
「クックックッ!! お主は本当に凄いな」
この場でリディアに襲い掛かりたくなる衝動に駆られながらも必死に抑えて、言葉でリディアをたたえてみせるソフィであった。
ソフィが第二形態以降だった場合、衝動を抑えられなかったかもしれない。それ程までにソフィは高揚感に包まれていたのだった。
ゆっくりとサイヨウは歩き出し、地面に落ちた『紅羽』の式札を手に取り懐に直す。
「うむっ、見事なり」
そして見事に怯えの本懐を克服し、その相手であった鬼女『紅羽』を蹴散らして見せたリディアに、たたえる言葉を贈るサイヨウであった。
その言葉を聞いたリディアは鼻を鳴らして纏っていたオーラを消し、柄の無い二刀の刀を消す。
「アイツが見ている前で無様な姿を見せられないからな……」
ぽつりとリディアは近くに来たサイヨウにだけに、何とか聞き取れる声量でそう呟くのであった。
(どうやらソフィ殿がこの場に居た事で本来の力を出し切れたようだな。しかしそれにしても力を抑えておるとはいっても、こんなにも早く『紅羽』を倒す事を可能にするとは……。末恐ろしい人間だな)
『紅羽』はサイヨウの居た世界でも十分に強い部類に入る『鬼人族』であった。まだまだリディアやラルフでは、今の『紅羽』でも倒す事は出来ないであろう程の力量だとサイヨウは考えていたが、こんなにもあっさりと紅羽を倒して見せたリディアにサイヨウは『次』はどうするべきかと考える。
『紅羽』を倒せる力量を持っているというポテンシャルをサイヨウは見る事が出来たが、流石に次からの封印式神は、一気に戦力値が跳ね上がる。
『紅羽』はサイヨウの国でも『災厄級』とされる妖魔であるが、次からの妖魔はサイヨウが『捉術』を駆使して全力であたり、封印した彼の世界の最強クラスの妖魔である。
(※サイヨウの世界で定められている10段階のランクで8とされる妖魔であった)
今のリディアでは次からの妖魔は、最低値の状態に抑え状態でさえ『支配の目』があったとしても到底相手は難しいだろう。
そこまで考えたサイヨウは、一つの結論を出す。
次の段階では『支配の目』を使わずにこの状態の『紅羽』を圧倒する事が出来れば、次は『紅羽』に施している封印の『捉術』の力を弱めて、もう一段階『紅羽』の強さを戻して戦わせる。
あまりに戻し過ぎると再び『紅羽』が言う事を聞かずに暴れだすかもしれない為に、リディア達の強さを更に上げる必要があるだろうと『サイヨウ』は考えるのであった――。
【種族:人間 名前:リディア 年齢:26歳 状態:金色のオーラ
魔力値:544万 戦力値:88億2700万 職業:剣士】。
こうしてラルフだけではなく、リディアもまた力をつける事で着々と上の存在へとその身を近づけるのであった。
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