751.辿り着いた我が家
※加筆修正を行いました。
ソフィがラルグ魔国領に入り、そのまま自分の屋敷のある『ゼグンス』の街に向かった。
ゼグンスに辿り着くと、ソフィの姿に気づいたゼグンスの住人たちが、通りがかりに次々と声を掛けて来る。
「ソフィ様! いつラルグに戻られたのですか!」
「お帰りなさい ソフィ様!」
ソフィは手を振って挨拶を返しながら、自分の屋敷へ向かって歩いていく。ゼグンスの住人たちは誰もがソフィの顔を見ると嬉しそうな表情を浮かべている。その様子にソフィもまた、嬉しそうにしながら歩いていく。やがて自分の屋敷に辿り着くと、ソフィの匂いを嗅ぎ取ったのだろう。
『名付け』を行った配下のロード達、サーベルやハウンド達が、一斉にソフィに飛び掛かってきた。
「むっ!」
ロード・グランドサーベルタイガーや、ロード・ハウンド・ドッグは上位の魔物達である。
事情を知らない者達がこの風景を見たら十歳程の少年が、魔物に襲われているように見えるだろう。
しかし彼らはソフィの忠実な配下達であり、主人であるソフィが戻ってきた事で嬉しそうに、じゃれついているだけである。
「クックック、お主達元気だったか」
ソフィがそう言ってサーベルたちの身体を撫ででやると、嬉しそうにお腹を見せながら声を出す。
「しかしお主達はレイズ魔国の警備をするように命じていたはずだったが、レルバノン達に命じられて屋敷に戻ってきたのか?」
ソフィがそう言うと、遠くからこちらに向かって歩いてくるベアが返事をする。
「すみません、ソフィ様。リーネ様が自分の家に帰りたいと仰られた為、私の判断でソフィ様の直属の配下達であるロードの者達と、ベイルを連れてこの屋敷に戻ってきてしまいました」
そう言葉に出したのは、体躯が五メートルはあろうかという程の熊の魔物で、ソフィから授与された『金色のメダル』を首からぶら下げているベアだった。
この金色のメダルは正式名称を『契約の紋章』といって、ソフィに認められた者にしか手に出来ない代物である。
(※このメダルを持っている者は、アレルバレルの世界では『九大魔王のみ』である)
屋敷の庭を見渡すと、他にもキラーやクラウザー。それにデスやベイルがソフィに頭を下げていた。
どうやらソフィが、直接名付けを行った配下達だけがこの屋敷に戻ってきたようである。
「そうだったのか。シスの言っていた厳重な警備とは、お主達の事だったのだな」
彼らはソフィから直接『名付け』が行われた者達の為、本来の彼らと比べて戦力値が上昇している。
しかし子供の状態のソフィに加えて『第一形態』の『魔力』の為、アレルバレルの世界で『名付け』を行っていた場合に比べると、大した上昇では無い為『名付け』前とそこまでの差は無い。
本来のソフィの姿の迸る程の魔力を維持した状態で『名付け』が行われていたら、彼らは今頃、大魔王領域であっただろう。
そんな事にもなっていれば、この世界の均衡など完全に崩壊して『ラルグ』魔国が難攻不落の魔王城になり果てていたかもしれない。
(※既に現在でも三大魔国は、難攻不落とだとヴェルマー大陸の魔国間ではいわれている)。
「ささ、お前達その辺にしておけ、ソフィ様はリーネ様に会いに来たのだぞ」
ベアがそう言うと、ソフィの気を引こうとお腹を差し出していた者達は寂しそうにしながらも、立ち上がってその場に『お座り状態』でソフィを見上げるのだった。
そんなサーベル達の頭を撫でると、ソフィはベアと共に屋敷に向けて庭を歩いていく。離れ際にもちろん『ベイル・タイガー』の『ベイル』の頭も撫でた。
ベイルはグルルと唸り声をあげたが、内心ではとても嬉しそうにしていたのだった。
「む? お主……、少し腕をあげたか?」
リーネの待つ屋敷の中へ向かう際中、横に並び立つベアを見てソフィは、常人では気付かぬ程の僅かなベアの力の余波を感じ取ってそう声を漏らした。
「気づかれましたかソフィ様! 我らはサイヨウ殿に稽古をつけてもらったのです」
ベアはそ饒舌に話を始める。どうやらソフィに気づいて貰えたことが、余程嬉しかったようである。
「ほう……。あのサイヨウにか?」
(サイヨウに……? 何故あやつがレイズに来たのだろうか)
リディアやラルフ達が組織の総帥であるミラと戦う『ソフィ』の元へ向かう途中にサイヨウに止められたという事情を知らないソフィは、何故レイズ魔国にサイヨウが来たのかと、疑問に思うのだった。
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