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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
大魔王シスVS大賢者ミラ編

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689.山伏のとある行動

※加筆修正を行いました。

 ――少しだけ時は遡る。


 シティアスに向かおうとしていたラルフ達だったが、レイズ魔国の空を飛んでいたレキオンが、突然その動きを止めたのであった。


「どうした?」


 リディアがレキオンに声を掛けるが、レキオンは声を出せずにそのまま上空で固まっていた。意識を失っているわけでもなく、リディアの声は聞こえているようだった。


 しかし身体が動かずにそのまま空で、固定されているような状態だったのである。


 リディアとラルフがお互いの顔を見合わせていると、そんな彼らに話しかけてくる者が居た。何処から飛んできたのか、その人物はレキオンの背に腰を下ろす。


「やれやれ。小生は空を飛べぬから苦労したぞ。龍よ、すまないが少しの間だけ小生も背に乗せてくれ」


 リディアはいつの間に自分の隣に居たのか、全く気付かなかった。そしてそれはラルフも同じであり、信じられないものを見る目で山伏の恰好をした男を見る。


 ここは地上から遠く離れた上空である。どうやらこの人間に見える男は空を飛べないらしいが、どうやって空を飛んでいるレキオンの背に乗ったのか、リディア達はまるで理解が出来なかった。


「何なんだお前は」


「貴方は……!」


 ラルフはこの山伏を知っていた。素性や詳しい事は分からないが、過去に闘技場でキーリと戦う前に一度、この山伏と会っていたのである。


 だが、リディアは会ったことがない為、誰かと尋ねるのであった。


「小生の名は『サイヨウ・サガラ』という。お主らと同じ人間だ。お主達はこの先の戦場へ向かおうというのだろう? 小生はそれを止めに来たのだ」


「何だと? 何故そんな真似をする必要がある」


「お主達はソフィが大事にしておる者達だと小生は知っている。このまま死地へお主らを向かわせて死なすわけにはいかぬからな」


 突然現れたサイヨウというわけの分からない人間は、リディア達を死なせたくないからシス女王の元へと向かわせたくないらしい。


「お前とソフィがどういう関係なのかは分からないが、俺達の邪魔をするな。これでも自衛出来る程には戦える」


 リディアがそう言って、金色のオーラを纏って見せる。


 エルシスによって鍛え抜かれたリディアは、既に『支配の目(ドミネーション・アイ)』を使わずに、自由に金色を纏えるようになっていた。


 そんなリディアのオーラのコントロールを見て、ラルフはどれだけ今の自分と差があるかを理解して悔しそうにするが、強くなると決意を持っている今、悔しいと思うだけで諦観は持たなかった。


「どうだ? これで俺達がただの人間じゃないという事は理解でき……!?」


 分かったらレキオンを自由にしろと言いかけたリディアは、それ以上喋る事が出来なくなった。


 サイヨウという男がレキオンと同じように、リディアを何らかの力を使って縛り付けたからである。


「残念だが、足りぬ。そんな程度の力量ではこの先へ向かえば、お前達は数秒で命を落とすのが分かる。悪いことは言わぬ、このまま引き返せ」


 今のリディアは金色を纏っている状態である。

 しかしそんなリディアであっても、サイヨウには手も足も出なかった。


「こ、この……、力を解き……、やが……れ!」


 しかし次の瞬間、今まで喋る事の出来なかったリディアが口を開くのだった。

 サイヨウは驚きながら目を見開いた。


「これは驚いた。お主、ワシの術にかかっていながら喋る事が出来るのか?」


 しかしサイヨウはすぐさま術を強めようと何やら詠唱を開始した。


 その様子を見ていたリディアは横目でラルフを見る。


 ラルフもまた顔を動かせないリディアが必死にラルフを見ようとしているのを感じ取り、ほんの少しだけリディアの横側へと寄る。詠唱に集中しているサイヨウには気づかれなかったらしい。


(私に何かをさせようとしていますね?)


 小声でリディアに向けて早口で話す。喋る事が出来ず、顔を動かすことも出来ないリディアは、目だけで必死にラルフを見続ける。


 ラルフはそれだけでリディアが、自分に何かをする事を求めていると察する。そしてこの状況下で考えられる事は一つ。あのサイヨウという人間からリディアを自由に動けるようにすることである。出来る事は何もないかもしれないが、リディアはじっとラルフを見続けている。


(やれやれ、ここまで彼に期待されてはやらないわけにはいかないでしょう)


 ラルフの目が据わり、詠唱をしていたサイヨウの頸動脈を右手で狙いながら、左手で同時に耳の後ろの急所の突起を狙う。この距離であれば、ある程度速度は関係ない。レキオンの背の上でラルフは殺し屋だった時の技術を全て使って、サイヨウを殺すつもりで本気で襲い掛かった。


「こりゃ、何をしておるか!」


 しかし立ち上がったその勢いのままでサイヨウに襲い掛かったラルフは、リディアと同じように何らかの力によって動けなくなった。ラルフ程度であればリディアを止めるのに必要な強い術は必要なく、あっさりとラルフは縛られてしまった。


 しかしほんの僅かだったが、リディアから意識が逸らされた事で、リディアを縛る力が弱まった。


 次の瞬間、リディアの()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ――魔瞳、『支配の目(ドミネーション・アイ)』。


(これは、まずい!)


 サイヨウはリディアの目が変わった瞬間に、彼の目も()()()()()。そして、これまでのお遊びのような速度で術を使わずに敵を相手にする時のように術を使った。


 ――僧全捉術、『動殺是決(どうさつぜけつ)』。


 リディアの目は『支配の目(ドミネーション・アイ)』に変わっているが、サイヨウの術がリディアに影響を及ぼす方が早かった。


 リディアが何をするかは分からなかったが、サイヨウは危険だと判断して、最も相手の行動そのものを抑制させる『動殺是決(どうさつぜけつ)』を用いたのであった。


 その効果は甚大で先程の単なる動きを封じる術だけではなく、今のリディアは大脳の働きそのものをサイヨウにコントロールされているような状態である。


 サイヨウの術は恐ろしく、本気で殺すつもりでこの術を使えば大脳支配だけでは無く、小脳や脳幹すらも操り、感覚を奪い呼吸すらさせなくする事も出来る。今のリディアは目の前が霞みがかったような状態で、まともに考えられなくなっている。このままの状態が続けば、サイヨウが本気では無くとも身体そのものが、もう1ステージ危険な状態へ移行してしまうだろう。


 そこでぼうっと虚空を眺めているリディアの額に手を置き、何かを詠唱し始める。するとリディアは意識を失い、そのままレキオンの体の上に倒れ込むのであった。


 そこでようやくサイヨウは二人の術を解いた。


「り、リディア!! こ、この……!」


 リディアが殺されたと誤解したラルフが、再びサイヨウに襲い掛かろうと手を伸ばす。


「落ち着け。このまま術を掛けたままだと、こやつ自身の命が危なかったから、意識を失わせただけじゃ。殺してはおらぬ」


 そう言って逆上するラルフに、説明を行うサイヨウであった。


「……」


 その言葉に少しだけ落ち着きを見せたラルフは、リディアの首元に手を置いて呼吸をしているか探る。


「どうやら本当のようですが、この男を殺そうとするなら私をも殺しなさい。さもなくば、全身全霊を以て貴方を殺しますよ」


 元Aランクの殺し屋であったラルフは、勝てぬと分かっていてもそんな事は関係なく、サイヨウに本気で警告するのであった。


「安心せい。最初に小生は言ったであろう? この先に行かせたくないだけだと。このままお主らの国に引き返せば小生は何もするつもりはない」


「分かりました、このまま戻ります。しかし貴方の事を詳しく教えて頂きたい」


「それは構わんよ。素直に戻ると約束するなら小生の事を話そう」


「お願いします」


 サイヨウは頷くとレキオンに掛けていた術を解き、レイズ魔国へ引き返すように告げるのであった。

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