673.配下の帰還と新たな配下達
※加筆修正を行いました。
その頃『アレルバレル』の魔王城の玉座に座るソフィは、まだ戻ってこないレアの事を考えていた。
既にソフィはユファに頼んで、リラリオの世界へ先に向かったレア達の様子を見てくれと頼んで、跳んでもらっていた。
ユファには何か危険を感じれば、直ぐに戻ってくるように伝えてある。
万が一ではあるが、先程ディアトロスと会話したように組織の者達が、この世界に居るソフィを蚊帳の外に置いて、リラリオの世界へ向かった場合の可能性を考慮したのである。
ソフィは自分自身で『概念跳躍』を使えない事に歯痒さを覚えていた。
そしてこの中央大陸に多くの魔力が近づいてくるのを感知したソフィは、静かに横に居るディアトロスに顔を向けた。
「イリーガル達が戻ってきたようじゃな」
「うむ、直ぐに出迎えにいくぞ」
「クックック、そうじゃな」
ソフィが偉そうにふんぞり返るような奴では無いと知っているディアトロスではあったが、直ぐに自分から配下を出迎えようとするソフィを見て、笑みを浮かべて頷くディアトロスだった。
ソフィ達が外に出た頃。中立のリーダーであった『ステア』達と一万近い魔族達。さらには護衛を頼んでいた『イリーガル』と『リーシャ』。そして『ブラスト』の姿もあった。
「ソフィ様！ ただいま戻りました」
イリーガルが親分であるソフィに報告をすると、その場にいたリーシャやブラストが、即座に跪いてソフィに頭を下げる。
ステア達はその光景を目の当たりにして慌てて自分達も跪く。
「そんな真似はしなくてよい。道中大丈夫だったか、誰も怪我をしておらぬか？」
ソフィが心配そうに声を掛けると、リーシャが立ち上がり口を開いた。
「組織の連中が途中で襲ってきたんですけど、イリーガル様が全て片付けてくれました」
リーシャが誇らしげにそう告げると、ソフィはイリーガルの顔を見る。
「イリーガルよ。我の近くへ来るがよい」
「ハッ！」
ソフィから命令されたイリーガルは、直ぐに立ち上がってソフィの元へ向かった。そしてソフィの目の前まで来たイリーガルは、親分であるソフィの顔を見る。
「ふむ、怪我は僅かのようじゃな」
イリーガルの様子を見たソフィがそう口にすると、イリーガルに向けて手を翳す。次の瞬間には、イリーガルの身体が青い光に包まれたかと思うと、瞬く間に体力や怪我が全快するのだった。
これはエルシスが生み出した『魔法』でかつては『神聖魔法』と呼ばれて現在は『根源魔法』に分類される『救済』という魔法であった。
全ての傷が癒えたイリーガルは、感動するような表情を浮かべながら声を出す。
「ソフィ様、ありがとうございます！」
「うむ。よく彼らを守ってくれたな。しかし魔力までは戻すことは出来ぬ。城で安生よく休むのだぞ」
「ハッ！」
イリーガルはソフィに回復してもらった後、ディアトロスの隣に移動する。
「魔界の各地から集まってくれた者達よ。知っているかもしれぬが、我がこの城の主であるソフィだ。 『煌聖の教団』との戦争が終わるまで不便をかけるかもしれぬが、この大陸で少しの間、生活をしてもらいたい」
近くには精霊達の住む街や、少なからず軍の拠点などもある。中央大陸以外の場所は、どこに煌聖の教団が潜んでいるか分からないが、この中央大陸はすでにソフィやブラストの手によって高位の結界が張られている。
大賢者ミラといった存在がくれば、この場所の結界も絶対に安全だとは言い難いが、他の魔界にある大陸に比べるとその安全は保障されているといえるだろう。
「ありがとうございます、ソフィ様！ 我々はこれより、ソフィ様の魔王軍の傘下に加わらせていただきます。いつでもご命令を下さい！」
「これから宜しくお願いします。大魔王ソフィ様！」
大魔王ステアの言葉の後、一斉に中立の者達であった魔族達は、ソフィに忠誠を誓うように声を揃えるのだった。
……
……
……
「うむ。宜しく頼む。精霊女王よ、すまぬがお主達の住処や、この大陸にある街々を、案内してやってくれぬか？」
「ええ、ソフィ。分かったわ」
傍で聞いていた『精霊女王』であるミューテリアは、微笑みを浮かべながら返事をする。
「それでは案内するから、来てもらえるかしら」
新たにソフィ達の配下となった彼らは『精霊女王』の言葉に頷き、後をついていった。
この中央大陸には魔王城の他にも、ソフィの保護下に置かれている精霊達の住処や、魔王軍に所属していた者達の家族が住んでいる街が数多くある。
リーシャの住んでいた集落に比べるとそれなりに人口も居るが、当然全員が魔族である。この中央大陸に住む者達は、皆ソフィを信頼している為、彼らが移住する事になっても歓迎をする事だろう。
ソフィは話が終わった後、ディアトロス達と共に魔王城の中へと入っていくのだった。
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