645.煌聖の教団の本隊
※加筆修正を行いました。
アレルバレルの世界からソフィの命令を果たす為に『世界間転移』を行ってリラリオの世界に姿を見せたレアだったが、その跳んだ先であるリラリオでかつて仲間だった『バルド』と『煌聖の教団』の『ルビリス』が一緒に居るところを発見して姿を隠して会話を聞いていた。
かつてレアが居た集落の長老をしていたバルドは、もう今『煌聖の教団』と行動を共にし、ソフィ達に反旗を翻した『ミラ』達側についたのだと理解したレアは、直ぐにその場を離れようと準備をし始めた。
しかしその直後『バルド』と『ルビリス』の居る場所から少し離れた場所の空の空間に、次々と亀裂が入ったかと思うと大きな穴が開き始める。
(つ、次は何なのよぉ!?)
レアは空へと飛び上がろうとしていたのを慌てて取りやめて、そのままバルド達から死角になる岩陰の裏側へと移動を開始する。そして空から次々と大魔王領域の魔族達が姿を見せたかと思うと『ルビリス』達の元へと向かっていく。
その数は十体や二十体ではなく、今もどんどんと空に亀裂を作りながら姿を現し続けている。
完全にレアは逃げ出す機会を失ってしまい、自分の居る岩陰のすぐ傍に次々と空から大魔王が降り立ってはバルドの元へ向かっていく。
(そ、そんな……!)
レアはソフィからリラリオ世界の様子や『リーネ』の事を見てきて欲しいと言われていた。
しかしまさかそんなリラリオの世界に『煌聖の教団』の大部隊が集結してくるとは思っていなかった。
レアは姿や魔力を隠蔽する事が出来る『隠幕』の『魔法』を使ったまま岩陰から、現れた魔族の一人に『漏出』を照準してみるが、次の瞬間には恐ろしい程の激痛がレアの頭を襲う。
慌ててレアは『漏出』の使用をやめて『魔力感知』に切り替える。
止めた理由はあの魔族がレアの魔力量を遥かに上回っていると判断した為である。
ずっと『漏出』を使い続けていれば、脳が焼き切れてしまうが、今のように一瞬で判断して切り替える事が出来れば、相手の力をある程度把握出来た上で死の危険はないという事である。
あっさりとレアはその切り替えを行ってみせたが、これは『基本研鑽演義』を多くの者達より理解が出来ているからこそ行える芸当であり、いわばレアだからこそ出来る技術である。
しかし次から次に現れる魔族達に対しても同じ結果が伴ってしまう。
このまま切り替えずに『漏出』を使い続けると出る表記は『測定不能』となる事だろう。
もちろん表記が出るまで馬鹿みたいに待っていれば、脳が焼き切れて絶命してしまうだろうが、レアは感覚で『測定不能』が出るだろうと判断していくのであった。
「そ、そんな……。この場に現れたアイツラ全員が私より強いってことぉ? い、いや、そんな筈ないわよねぇ。私が『金色』や『戦力値コントロール』をしていない通常状態だからアイツラの魔力を測れないだけよぉ、きっと……。そ、そうよねぇ?)
レアはなんとかそう思い込む事でこの恐怖の場と化した岩陰から、自分をしっかりと保とうと頑張るのだった。
そしてレアはゆっくりこっそりと岩陰から音を立てずに移動を開始しようとする。目指す場所は今居る岩陰から更にバルド達から離れた岩陰への方へとである。
その岩陰伝いには『シティアス』の拠点へとつながる洞窟が近くにあり、この洞窟を通っていけばシス達の居る『レイズ』魔国へと辿り着く事が出来るのである。そしてそれは空を飛んで行くより遥かに遠回りとなるが、こうなってしまえば空から向かうのは危険である。
『隠幕』を使った状態で岩陰から、一歩踏み出そうとするレアだったが、そこでルビリス達の会話が耳に入ってくる。
「ミラ様からご命令を受けて、この場に全隊が集結致しました」
ルビリスに向かって声を出したのは『煌聖の教団』の本隊総隊長である『ネイキッド』であった。
「おやおや。これはこれはご苦労様です。ミラ様の姿はお見えになられていないようですが、現在もまだ『ダール』の世界ですか?」
「ハッ! 現在ミラ様は大魔王『フルーフ』に攻撃を受けた事によるヌー殿の傷を治している最中だと思われます」
そのネイキッドの言葉を聞いて、移動を開始しようとしていたレアの足はピタリと止まった。
(……フルーフ様ですって!?)
レアは動揺から『隠幕』をする為に使っていた『魔力コントロール』を誤り、少しだけ魔力の余波を外に漏らしてしまった。
その瞬間に『ルビリス』『バルド』『ネイキッド』を含めた大魔王全員が、一斉にレアの居る岩陰へと視線を送り始める。
(ま、まず……い!)
もし彼らが『真なる魔王程度』の魔族であれば、レアの僅かに漏れた魔力程度では気付かなかったかもしれない。
しかしこの場に居る『煌聖の教団』本隊は『アレルバレル』の魔界中から集められた大魔王達である。全ての者達がレアより遥かに強い戦力値を持っている魔族達の為に、僅かであっても見逃す事はしなかった。
(どうする、どうする、どうする!? 『概念跳躍』は間に合う筈がない! 空を飛んで『高速転移』で逃げる!? い、いやこの数を振り切れる筈がない! ううっ! どうしよぉ!!)
レアは僅かな時間で目まぐるしく考えを張り巡らせるが、時間は待ってはくれない。
仕方なくレアは『隠幕』を使ったまま『高速転移』を用いて、空ではなく洞窟のある連なった岩の方へと駆け出していくのであった。
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