639.スベイキアに向けて
※加筆修正を行いました。
全ての龍族達を束ねているスベイキアの国の王である『イーサ』龍王に会う為、遥々と魔人達の大陸から見渡す限り大海の空を渡ってきていた。
そしてようやく『アサ』の龍族達の大陸に辿り着いたエイネは、ここまで案内をさせていた『ヴァルーザ』龍王に止まるように合図を送る。ヴァルーザはそのエイネの合図に頷き、龍族達の大陸の空でそのまま制止する。
「ここが貴方たち龍族達の大陸なのね」
「ああ。一応は私の国のイルベキアの領土だ」
変わった言い回しをするヴァルーザ龍王に、エイネは眉を寄せる。
「一応?」
「あ、いや……。私の治める領土で間違いはない。それでどうするのだ? このままイーサ龍王の居る国に向かうのか?」
どこか誤魔化すような態度をとる『ヴァルーザ』龍王だったが、今は余り時間がない事を思い出したエイネは直ぐに頷きを返した。
「そうね。貴方が役に立たない以上は、直接龍族達を支配している王様に会わないといけないでしょう?」
「それでは移動を再開しても?」
嫌そうな表情を浮かべながらヴァルーザ龍王は、エイネに声を掛けて再び動き出そうとする。
「ええ、案内してもらおうかしら」
これみよがしに溜息を吐きながら、エイネについて来いと目で合図をして動き出す『イルベキア』の龍王だった。
再び移動を開始したエイネの周囲には、エイネにビクビクしながら龍達が遠慮がちに空を並走する。本来は魔族など遠慮するような種族ではないと考えている龍族達だが、既にエイネが恐ろしい存在だという事を嫌と言う程知らされた龍達は、スベイキアに辿り着くまで生きた心地がせずに移動をするのだった。
…………
そしてイルベキアの領土だと告げられた場所から凡そ十分程空を飛んだ頃。一際大きな国を発見する。
至る所に大きな建物が並び立ち、空にはこれまで見てきた龍族とは違う龍種が並んでいた。
「魔族エイネ。ここがイーサ龍王の居るスベイキア大国だ」
そう話すヴァルーザ龍王は、少しだけ緊張した面持ちで、こちらを見張るように睨んでいる同じ龍族だが、体格も色も何から何までも違う『龍種』達を見る。
「どうやら貴方たちとはまた違う『龍達』が、この国にはいるようね」
「彼らは『コープパルス・ドラゴン』という龍族達の『最上位種』の龍だ」
「『コープパルス・ドラゴン』……」
エイネはヴァルーザ龍王の言葉をオウム返しするように告げると『コープパルス・ドラゴン』の姿を見る。
向こうもこちらに視線に気づいたのだろう。
ヴァルーザ龍王の後に、エイネの方へと視線を向けて少し驚いた様子を見せた。やがてエイネを見ていたコープパルス・ドラゴンの一体がこちらに近づいてきた。
「ヴァルーザ龍王様。イーサ様からご連絡は受けています。さぁ、こちらへ」
「ああ、宜しく頼むよ」
ヴァルーザ龍王はスベイキア大国の兵士の龍にそう言葉を返すと、自分達の配下達であるブルードラゴン達にこの場で待つように指示をする。
「こちらでお待ちいただく間。宜しければ『スベイキア』の駐屯地でお預かりしましょう」
コープパルス・ドラゴンのスベイキア兵がそう言うと、ヴァルーザ龍王は素直に頷きを見せる。
「すまないな。そうしてくれ」
その言葉にスベイキア龍兵は、満面の笑みを浮かべる。
「分かりました」
そのスベイキア兵は周囲を見張っていた他の『コープパルス・ドラゴン』に合図を送ると、こちらに近づいてくる。
「イルベキアの方々を例の場所へ丁重に案内してくれ」
「ああ、分かった」
コープパルス・ドラゴンの兵士がイルベキアのブルードラゴン達についてくるように合図を出した後、この場から一斉に移動していった。
その後ろ姿を見ていた『スベイキア』兵は、改めてこちらを振り返る。
「お待たせしました。それではこちらへ」
コープパルス・ドラゴンのスベイキア兵はそう告げると、エイネ達を先導して空から街の中へと入っていくのだった。
「……」
ヴァルーザ龍王は難しい表情を浮かべながらも一度だけエイネの顔を窺った。そしてエイネに頷きを見せた後『コープパルス・ドラゴン』の兵士の後をついていくのだった。
「どうやら龍族達の間でも色々とあるようね」
一人取り残されたエイネはぼそりと声を発した後に、龍族の後を追いかけるのだった。
……
……
……
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