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58.盗賊たちのアジト

※加筆修正を行いました。

 洞穴の中は薄暗く灯りが無いと何も見渡せない程だった。


「む……。流石に松明のようなモノが必要のようだな……。よし、少し待つのだ」


 ――根源魔法、『消える事のない灯り(エテル・リヒターン)』。


 ソフィが何やら『魔法』を使うと洞穴全域が光に包まれて、次の瞬間には外と同じ程の明るさになった。


 先程まで真っ暗で見えなかった洞穴が、その細部まで見渡せる程の明るさになったのを見てミナトが顔を引きつかせながら驚く。


「す、凄いですね……」


「もうソフィのやる事にいちいち驚いていたらきりがないわね」


 リーネはそう言って深く考えないようにした。


 洞穴の中はコウモリたちが騒ぎ立てるように外に向かって出ていった。


 ソフィ達侵入者を本能的に危険を察知したのかもしれない。


「む? どうやらここがアジトの最奥らしいな」


 アジトの奥には盗賊達が溜め込んでいたのか、多くの金品財宝が見える。


 壁には槍や刀といった武器類が多く立てかけられており、近くの壺には銀貨や銅貨が山ほど詰まっていた。


 そしてその周りには酒が大量に樽ごとおかれていた。


 ――盗賊達は余程に儲けていたようである。


「これだけあるとは思わなかったな。盗賊達が盗んだ物は一般的にギルドに渡せばどういう扱いになるのだ?」


「届け出たのが冒険者の場合だったら、全て没収をされる代わりに報奨金と『冒険者ポイントの上乗せ』が一般的かしらね」


 リーネがソフィに丁寧に説明してくれた。


「ふむ、これだけの金品があれば『レグランの実』が困る事ない程に食べられるのだろうな」


「別に馬鹿正直にギルドに渡さなくてもいいんだけどね。律儀に全部渡す冒険者も珍しいわよ? ギルドも盗賊を捕まえてもらえれば、文句はないんだし」


 リーネはそういうが別にソフィはもらうつもりはなかった。


「我は別にいらぬが……。そうだミナトよ、お主が欲しいのであれば何枚か持っていってよいぞ?」


 元々この依頼がなければ来る事も盗賊達を捕まえる事もなかったのだから、ミナトが欲しいと言うのであれば、ソフィは本当に渡すつもりなのだった。


「い、いえ大丈夫です。私は『ステンシア』の町まで護衛をしてもらえるだけで満足ですから」


 そういってミナトも受け取らなかった。


「遠慮は要らぬのだぞ? どうせお主が受け取らなければ全てギルドに渡すだけなのだからな」


「ありがとうございます。ですが……、その……、やっぱり結構です」


 そう言って頭を下げられてまで断られるならば、ソフィもそれ以上勧める理由はない。


(しかし商人というのはもう少し欲があるモノだと思っていたのだが、この世界の商売人はどうも欲がないように思えてしまうのだが……、商人とは皆こういうものなのだろうか」


 そう言えば『グラン』の町の露店主の『おやじ』もよく商品の『レグラン』の実を渡してくれるし、ソフィが『白金貨』と『レグランの実』を一山のザルと交換でいいと告げても受け取らなかったなと、過去を思い返すのであった。


「うむ、そうか。ではこれはギルドに持っていこうと思うが、お主の荷馬車に積ませてもらってもよいか?」


 ミナトはソフィの言葉に快く頷いてくれた。


 ソフィ達が盗賊たちの金品を荷馬車に詰め込むと、ようやくソフィは盗賊達に掛けていた『魔瞳(まどう)』を解いて盗賊達の意識を戻させる。


「ハッ……!? お、俺達は一体……?」


 意識を戻したミシェイル達は数秒程混乱していたが、やがて全てを思い出したのか再び『ラルフ』を見て震え始めた。


「お主達を『ステンシア』の町のギルドに連れて行くつもりだが、くれぐれも逃げようとは思わぬ事だ、よいな?」


 二人は何度も頭を上下に振って頷いた。


 逃げた所で今度こそ自分達の息の根を止められるだけだと理解している盗賊達は、頷く以外の選択肢がなかったようである。


「うむ、では頼むぞミナト」


 ソフィの言葉に頷きミナトは荷馬車を動かした。


 そしてその後は特に何も問題は起きずに平和そのもので、他に盗賊も出る事もなく順調に『ステンシア』の町付近まで辿り着くのであった。


 そしてコチラに気づいた『ステンシア』の門番達が駆け寄ってくる。


「失礼します! 町に入るのでしたらこちらに全員の名前の記入をお願い致します」


「分かりました。それとここに来る途中で盗賊達を捕縛したのですが、引き渡しをお願いしたいのですが構いませんか?」


 ミナトの言葉に門番達が険しい顔に変わり、門番同士で何かを確認するように互いの顔を見る。


「お、お待ちください、もしかしてそれは『グラン』と『ステンシア』を結ぶ橋に、最近出没している盗賊団の事でしょうか?」


 門番の一人が狼狽える様に口を開く。


「はい、そうだと思います。彼らが襲ってきたのは、確かに橋の所でしたので」


 ミナトがそう答えると、二人居たステンシアの門番の一人が慌てて町の中へ走り出した。


「す、少しこちらでお待ち頂いても宜しいでしょうか?」


 残った一人の門番がミナト達にそう告げる。


「わ、分かりました」


 ミナトが後ろを振り返ってソフィ達に同意を求めると、ソフィ達はコクリと頷いた。


 そして数分程が経ってから、ギルドに向かった門番が戻ってきた。


「お待たせ致しました。申し訳ありませんが、町に入られましたらまずは捕縛した盗賊を連れて、ギルドの方へ向かって頂けますか?」


「分かりました、では町に入っても宜しいですね?」


 ミナトが確認すると『ステンシア』の門番二人が同時に頷いた。


「お待たせしました。既にギルドの方には話を通してありますので、並ばずにそのまま受付に申し出て頂いて結構です。それではお願いします!」


 そう言って『ステンシア』の門番達は道を開けた。


 ここ『ステンシア』のギルドは冒険者が多い為に、窓口に行くにも並ばなくてはいけないらしく、本来であれば相当に待たされる事になっていただろう。


 しかしソフィ達は盗賊達のおかげというべきか、そのまま並ばずにすんなりと窓口に優先されるらしい。やはり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とソフィは思うのであった。


「うむ。それでは行くとしようか?」 


 ソフィの言葉を聞いたミナトは頷いて、荷馬車の手綱を引いたのだった。

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